負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第138話 プラン変更

 

 ムジーナがぼんじりとして過ごした日々。

 それは幼い頃のポンデローザにとって数少ない救いだった。

 異世界転生し、死という絶望の未来を知っていた孤独なポンデローザにとって身近で寄り添ってくれた存在はぼんじりとメイドのビアンカのみ。

 そんな存在を目の前で殺されて冷静でいられるわけがなかった。

 

「ヨハァァァァァン!」

「ははっ、死人があるべき姿に返っただけでそんなに怒らなくてもいいじゃないですか」

 

 ヨハンはムジーナが死んだことに憤るポンデローザを見て笑っている。

 その笑顔は皮肉なことにスタンフォードが初めて見るヨハンの心からの笑顔だった。

 

「しかし、いつまでもあなたを自由にさせておくのも面倒ですね」

「赤スパ投入! 〝氷結の獅子王(アイシクル・レオ)!!!〟〝氷結の茨姫(アイシクル・バラギ)!!!〟」

 

 ポンデローザは躊躇うことなく奥の手である魔法を発動させる。

 氷像達を生成するのと同時に高純度の魔力を大量に含んだ血液を送り込む。

 真っ赤な氷像達の爪と茨がヨハンへと迫る。

 

「ムジーナならばこの十倍の出力は出せましたがね」

 

 それをヨハンは一太刀で切り伏せた。

 

「行きますよ、ヨルムカンド」

「まずい……!」

 

 剣に纏ったどす黒い魔力から嫌な予感がしたスタンフォードは反射的に魔法を発動させた。

 雷を纏ったスタンフォードはポンデローザへと駆け寄り、魔剣ルナファイを抜いてヨハンの攻撃を受け止めた。

 

「おっと、さすがはスタンフォード殿下。反応が早い」

「ポン子は放っておくと危なっかしくてしょうがないから、ね!」

 

 スタンフォードはコメリナへと目配せをしてポンデローザを放り投げる。

 

「後方支援型が前に出るなっての!」

「悪かったわね! 助けてくれてありがと!」

 

 乱暴に礼を述べると、ポンデローザは氷像に更に魔力を送り込む。

 

「血なら任せて〝血液生成(ブラッドジェネレーション)〟」

「ありがとね、コメリナ。心強いわ……頼むよバラちゃん!」

 

 ポンデローザの想いに呼応するように氷結の茨姫は氷の茨を蠢かせる。そして、瞬く間にヨハンの足元まで広がり巻き付いた。

 動きが止まった隙に、スタンフォードはヨハンに斬りかかる。

 金属同士がぶつかり合う音が響き渡り、火花が散った。

 

「よっと」

 

 そのまま鍔迫り合いになるかと思いきや、ヨハンはすぐに剣を引いた。

 スタンフォードは勢い余って体勢が崩れそうになるも、すぐに立て直して放電をして牽制をする。

 

「いつまでも余裕振ってられると思うなよ……!」

「生憎、創世記に比べれば大したことはないですよ」

 

 ヨハンはユグドラシルの封印が解けたことで弱体化を受けているはずだというのに、その動きはあのルーファスすら凌駕するほどに洗練されている。

 

「千年以上生き続ける間、肉体は変えても研鑽は怠っていませんからね。本気のボクに勝てるのなんて覚醒したブレイブくらいのものですよ」

「竜の力なしでここまでやるのか……」

「竜の力ですか……くくっ、そんなものボクには必要ありません」

 

 ヨハンは邪悪な笑みを浮かべると、再び剣を振るう。

 その一撃は重く鋭いもので、スタンフォードは魔剣で受け止めるのがやっとだ。

 

「あなた達が元々のプランを変更したように、ボクもプラン変更をしたのですよ」

 

 ヨハンは邪悪な笑みを浮かべると、再び剣を振るいながら告げる。

 

「もうミドガルズオルム(ボクの本体)は必要ない! 全ての記憶を引き継いだ分体であるボクこそがミドガルズオルムになるのさ!」

 

 ヨハン・ルガンドの正体。

 彼はミドガルズオルム本人ではなく、闇魔法の転生により記憶のみを優秀な肉体に移植し続けたミドガルズオルムの分体であった。

 


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