負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第150話 レベリオン王国の敵、セルペンテ家

 ブレイブが父親に敗れ、セタリアはミドガルズの本拠地である実家へと連れ帰られていた。

 暗い牢屋の中でセタリアは俯きながら牢に備え付けられたベッドに座っていた。

 ここに連れ戻されてから既に三日が経過しようとしている。

 肉体的な疲労はそこまでだが、その間ずっと絶望に苛まれていたこともありセタリアの精神には限界が近づいていた。

 自分の一族は国に仇なすために建国時から動き続けていた。その上、自分自身も国を崩壊させるための道具でしかなかった。その事実はセタリアにはあまりにも重すぎた。

 

「やあ、セタリア。具合はどうかな?」

「……ヨハン」

 

 セタリアに馴れ馴れしく話しかけてくる分家出身の少年。その正体は完全にミドガルズオルムの精神を受け継いだミドガルズオルムそのもの。

 

「お父様もあなたも、セルペンテ家の人間全てが王国の敵。そういうことでいいんですよね?」

「うん、そうなるかな」

 

 セタリアの言葉にヨハンは笑みを浮かべる。

 わかっていた答えだ。それなのに聞いたのは、心のどこかで事実を否定して欲しかったからだろう。最もそんなことをしたところで、この現実が変わるはずもないのだが。

 暗い影が降りかかったように表情を落とすセタリアに対してヨハンは再び口を開く。

 

「そんなことよりもラクリアはまだ出てこないのかな」

「彼女は私が囚われてからずっと眠り続けています」

 

 セタリアの中に眠るもう一つの人格、初代世界樹の巫女であるラクリアはセタリアが自分の意志で生きる決意をしてからというもの、表に出てこれる頻度が減っていた。

 ミドガルズ一派としても、それは都合の悪いことだった。

 

「参るね。早いとこあなたには彼女へと体を受け渡してほしいところなんだけど」

「生憎と、私はセタリアとして生きると決めたので」

「家の言いつけを破るとはとんだ不良娘になってしまったものだよ」

 

 肩を竦めるヨハン。そんなヨハンにセタリアは真剣な眼差しを向ける。

 そして意を決したように口を開いた。

 

「セルペンテ家が国に仇なす存在ならば、私は親族といえど容赦はしません。それが王国貴族としての務めです」

「ははっ、巫女の器が粋がるじゃないか」

 

 セタリアの強気な態度にヨハンは余裕の態度を崩さない。

 ヨハンはセタリアが精神を磨耗させ、絶望の縁で全てを諦める日を待っていた。

 

「何でも思い通りになると思わないことですね」

「既にだいぶ予定は狂っている。それもまた一興さ」

 

 セタリアの言葉にヨハンが怪しく笑う。その姿を見てセタリアはただ歯を食いしばるしか出来なかった。

 

「入ってきなよ、ガーデル」

「はっ」

 

 ヨハンの言葉と共に、牢屋へと入ってくるガーデル。その姿を見てセタリアは目を見開く。

 

「あなたはスタンフォード殿下の……!」

「ご無沙汰しております、セタリア様。この度、ミドガルズの方へと鞍替えさせていただきましたぞ」

 

 ガーデルは恭しくセタリアに対して一礼する。

 

「彼はいい仕事をしてくれたよ。スタンフォードの情報を持ち帰るだけでなく、長年王国へ潜り込んでいたヒュドラも回収してくれたんだからね」

「これしきのこと私奴には容易いことですぞ」

「おかげでアタイも自由になれた。感謝するよガーデル」

 

 ガーデルの後ろでは楽し気に笑うリオネスことヒュドラの姿もあった。

 

「ちなみに、世界樹の影響化で竜が国民を傷つけることはできない。だが、例外というものが存在する」

「セルペンテ家の人間はその加護を得ることはできない。そして、セルペンテ家が所有しているこの土地も世界樹の影響を受けることはない」

 

 ヨハンはいやらしく笑うと目線でリオネスへと指示を出す。

 

「つまり、毒竜ヒュドラも本領を発揮できるわけだ」

「気張りな嬢ちゃん」

 

 リオネスは口を大きくあけ、体内で作り上げた毒の吐息を牢屋の中へと放った。

 

「がっ、あぁぁぁ……!?」

「死なないように調整はしてあるさね」

「治癒魔法の使い手も用意しておりますぞ」

 

 死なない程度に調整された毒による拷問。それはセタリアの精神をさらに追い詰めることになるのであった。

 


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