負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第151話 蘇る前世

 スタンフォード達はルドエ領の本邸でしっかりと休息を取った後、ブレイブの治療のために再起動させた工房へと向かった。

 ガーデルの裏切りについて、スタンフォードは自分の希望的観測を含めず今後も裏切り者として扱うという方針を共有した。

 自分の指示無しにそういう行動に出た以上、たとえ何かしらの思惑があったとしても裏切り者として扱うことが正しいと判断したからである。

 

「本当に治った……! ありがとう、コメリナ」

 

 そして、コメリナとスタンフォードが工房の装置を使い、千年樹の枝を素材にして新たにブレイブの足を再生することに成功した。

 

「コメリナがいなかったらこんなまず治療できなかった。本当に助かったよ」

「ふふん、それほどでもある」

 

 汗を拭うとコメリナは得意げな表情を浮かべる。

 

「何がどうして治ったのかわからないけど、まあいいわ。大事なのはこれからよ」

 

 ブレイブの治療も終わったことで安堵の表情を浮かべたポンデローザは表情を曇らせて目を閉じたままのマーガレットを眺める。

 

「コメリナちゃん、本当にメグは戻せないの?」

「固体化した魂、肉体に入れることできる。でも、また拒絶反応起こす」

「魂を定着させる方法がないんじゃ厳しいか……」

 

 マーガレットの肉体の横には器に入れられた彼女の魂が置かれている。頼みの綱のセタリアは連れ去られ、ブレイブも自分以外の回復はできない。

 現状、マーガレットを救う方法はセタリアを奪還する意外になかった。

 

「クルッポー!」

「えっ」

 

 そんなとき、突然聞こえてきた鳩の鳴き声に全員が一斉に振り返る。

 

「ぼんじり!?」

 

 自身に力を与えて消滅したはずのぼんじりことムジーナの姿を見たポンデローザは目を見開く。

 

「そんなバカな。ムジーナ様は消滅したはずじゃ……」

「いや、違う。お前、リア――ラクリアだろ」

 

 全員が困惑する中、ブレイブだけが確信を持ったように鳩へと告げる。

 

『よくわかったね! さっすがブレイブ!』

 

 すると、鳩から霊体が浮かび上がり初代世界樹の巫女ラクリアが現れた。

 

「ラクリア様、どうしてそんな姿に……」

 

『せっちゃんにお願いされちゃったんだよねー。敵の拷問は全部自分が引き受けるから逃げてって』

 

「リア……」

 

 ヨハンの様子からミドガルズが聖剣ベスティア・ブレイブとラクリアに執着しているのは間違いない。そして、セタリアはそれを考慮してラクリアを自分の中から使い魔に憑依させて逃がしたのだ。

 スタンフォードは切り札が手に入ったのと同時に、セタリアがより窮地に立たされているのだと理解した。

 

「ラクリア様がリアの中にいないってことは、リアは延々と拷問を受けることになる」

「えっ、じゃあ助けなきゃじゃない!」

「私、反対」

「何でよ!?」

 

 声を荒げるポンデローザに対してコメリナは渋い表情を浮かべる。

 

「セタリア、巫女様逃がした。それ逆転の一手。セタリア、助けに動いたら相手の掌の上に戻るようなもの」

「……セタリアの覚悟を汲むべきってことか?」

 

『せっちゃんも自分を助けに来ようとしたら止めてって言ってたよ』

 

「そんな……!」

 

 セタリアを見捨てる選択肢なんてなかったブレイブは悲痛な声で叫ぶ。

 

「どうにかならないのか、スタンフォード!」

「おそらく、セタリアはセルペンテ家のどこかに幽閉されているだろうけど、そこに乗り込むにしても戦力が足りない。せめてルーファスとアロエラがいれば……待てよ」

 

 そこでふと、スタンフォードはあることを思いついた。

 

「ラクリア様、ラクーナ先輩の肉体に宿って魂を蘇生することはできますか?」

 

『どうだろ。昔一回失敗してるからねー』

 

「試すだけ試して見てもらえませんか!」

 

 スタンフォードに懇願され、仕方なくといった様子でラクリアがマーガレットの肉体に入り込む。

 

「おおっ! 本当に入れちゃった! さすがは元々私の体!」

 

 マーガレットの肉体に入り混んだラクリアの魂は見事に適合して動き出した。

 

「よし、ラクリア様。そのままラクーナ先輩の魂を蘇生してください!」

「任された! 〝魂魄蘇生(ソウルリザレクション)〟」

 

 ラクリアは固体化した魂へ蘇生魔法をかける。すると、固体化したマーガレットの魂は胎動し始め、眩い光と共に人の形を取っていく。

 

「えっ、ちょ――」

「は――」

 

 その姿を見てスタンフォードもポンデローザも唖然とした様子で立ち尽くす。

 魂に大量の魔力を注いで蘇生を行った結果、マーガレットの魂は肉体を持たず限界できる精霊のような存在になっていた。

 そして、魂に宿る人格は彼女本来の姿を形取ったのだ。

 

「姉さん!?」

「メグ!?」

「久しぶりだね、進、ミカ」

 

 そこにはスタンフォードの前世の姉であり、ポンデローザの前世の親友、才上慈理の姿があった。

 


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