負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん! 作:サニキ リオ
スタンフォード達生徒会メンバーがいなくなった王都でも事件は起きていた。
世界樹の復活と共に王城や学園に潜伏していたミドガルズの手の者が一斉に動き出したのだ。
ミドガルズには肉体的には人間の者も多く存在する。
騎士団、教員、生徒、高位の官僚、長い時間をかけてじわじわと水面下で勢力を伸ばしていたミドガルズが一斉に行動を起こしたことで、王国側は一気に出遅れた。
そして、そのミドガルズのまとめ役を担う男セタリアの父親であるジャラー・ヘラ・セルペンテは国をひっくり返す一手を打っていた。
「世界樹ユグドラシルはレベリオン王国と共にあった恵みの象徴と信じられていた。だが、その実態は根元に住む人を魔力で肥え太らせて食らいつくす魔物だったのだ!」
ジャラーはある演説でそう叫ぶと、世界樹ユグドラシルの危険性を説く。
これまで世界の豊穣の象徴だったものが、実は諸悪の根源だったという衝撃の事実に彼の演説を聞いていた国民達に動揺が広がっていく。
「初代国王ニールはこの事実を知りながらもレベリオン王国を魔導王国として建国し、世界樹が人に牙を剥く前に封印した――そして、封印は解けてしまった」
ジャラーの言葉に人々は息を呑んだ。
「世界樹の封印を解けるのは世界樹の巫女のみ。そして、世界樹の巫女の生まれ変わりであるマーガレット・ラクーナが王家の指示で封印を解いたのだ!」
それは事実無根でありながらマーガレットの持つ特異性と非常事態により人々にとって疑う余地のない真実となって伝わっていく。
「年々この国に溢れる魔力は減り、レベリオン王家は国力の低下を恐れ、国民を危険に晒すとわかっていながら世界樹を再び世に解き放った」
ここでジャラーはわざと言葉を句切って反応を見る。
最初は動揺が見られていた国民達だが、次第にその顔は怒りへと変わっていった。
それは国民の怒りをコントロールする為のジャラーの作戦が成功したということだ。
「国とは民がいてこそ成り立つものだ! それを蔑ろにすることなど許されることではありませんぞ、国王陛下!」
「ジャラー……」
証拠も何もかもが捏造された演説。しかし、それを捏造されたと糾弾することは叶わない。
何故ならそれは王家の信頼を貶めるために長い準備期間を経て出されたもの。
そして、王家を糾弾する高位の貴族達の派閥もかなりの数に及んでいた。
「国王陛下は欲にかられ王家としての使命を忘れた! 故にこの場でその最期の責務を果たしていただく!」
「させるか!」
一陣の風が吹いた刹那、拘束されてたオクスフォード国王が消えていた。
「すまない、スティール!」
「謝らないでください。無事でよかった」
王国騎士団長であるスティールが一瞬の隙をついてオクスフォードを救出することに成功したのだ。
しかし、国中どこにミドガルズの者がいるかわからない状況に変わりはない。
結果、騎士団長であるスティールは多くのミドガルズの息がかかった者から国王陛下を守りながら王都を脱出し、僅かな希望にかけてルドエ領へと向かうのであった。