負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第155話 信頼できる友の言葉

 

 ルドエ領ではスタンフォードをはじめとした守護者の家系の者達がこぞってベスティアの制御を会得しようと情報収集の傍ら鍛錬を行っていた。

 特にスタンフォードとしては〝獅子のベスティア〟を使えるかどうかで今後の戦況が変わる。

 そのため、スタンフォードは初めてベスティアを発動させた相手であるブレイブ相手に鍛錬を行っていた。

 

「〝滅竜光刃・乱舞!!!〟」

「〝武雷閃刃・鳴神!!!〟」

 

 光と雷の刃が飛び交う。ブレイブの四方から放たれる光の剣撃に対して、スタンフォードは雷光の刃で迎え撃つ。

 轟音と共に土煙が立ち上る。

 

「まだまだァ!」

「ったく、君の成長速度はバケモノか!」

 

 土煙を切り裂いて二人が切り結ぶ。二人の実力は拮抗していた。

 ベスティアを覚醒させ、さらに魔法と剣術を極めたスタンフォードだったが、聖剣としての力を覚醒させつつあるブレイブに必死に食らいついている状態だった。

 ほどほどのところで鍛錬を切り上げると、ブレイブはどこか複雑そうにスタンフォードへと声をかける。

 

「スタンフォードは前世の記憶があるんだよな」

 

 慈理の一件でスタンフォードとポンデローザは他の者達にも自分達に前世があることを話した。

 異世界転生と長い間封印され記憶を最近取り戻したブレイブ。違いはあれど、ブレイブは別人として新しい世界生きる先輩としてスタンフォードに話を聞きたかったのだ。

 

「ああ、前世は戦いとは無縁の国で暮らしてたけどね」

「その場合、スタンフォードの意識って前世の自分のままになるのか」

「どうだろうね。僕は物心ついたときから前世の記憶があったからね」

 

 スタンフォードは汗を拭いながらも考え込む。

 

「僕としては、前世に姉さん以外にあまりいい思い出がなかったから人生を一からやり直せると思ってた。だから、何も考えずにスタンフォードとして好き勝手やって――」

 

 その瞬間、スタンフォードの脳内に溢れるかつての愚行の数々。

 

「どうしたんだ、急に膝なんてついて」

「……いや、過去の痛々しい自分を思い出してダメージ受けてただけだよ」

 

 スタンフォードは前世の自分の行いを思い返して頭を抱える。

 精神的に成長したとはいえ、過去は消えない。今後もスタンフォードの黒歴史として定期的に彼を蝕むことは確定事項である。

 

「とにかく! 君とはいろいろ状況が違うとはいえ、言えることは一つだ。人間として生きたいのなら、ミドガルズオルムを倒して過去を清算すればいい。それだけだ」

「スタンフォード……」

「そもそもバカが難しく考えすぎなんだよ。聖剣の力を使ったところで君がブレイブ・ドラゴニルであることに揺るぎないんだ。精々便利な特異体質くらいに思っておけばいいんだよ」

 

 そう言ってスタンフォードはブレイブの胸を拳で叩く。その拳はブレイブが想像していたよりもずっと強く、そして優しく彼の心に響いた。

 

「便利な特異体質、か。ははっ、それもそうだな」

 

 ブレイブは自分のことを一人の人間としてスタンフォードに認めてもらえたことが嬉しかった。

 聖剣の力を持っていようと関係ない。肉体ではなく、ブレイブ・ドラゴニルとして生きた自分自身を認めてくれた彼のことを心から信頼できるのだ。

 

「それじゃ、もういっちょ鍛錬と行きますか。スタンフォード先生?」

「誰が先生だ。でも、いいだろう。ちょうど身体もあったまったところだ」

 

 二人は再び剣を構えて向かい合う。

 

「スタンフォード君、ブレイブ君! 大変です、国王陛下が!」

 

 そんなとき、酷く取り乱した様子のステイシーが駆け寄ってきた。

 

「ステイシー、父上がどうしたんだ?」

「騎士団長と一緒にボロボロの姿でルドエ領に!」

 

 スタンフォードとブレイブは互いに顔を見合わせると、ステイシーの案内の元走り出した。

 


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