負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん! 作:サニキ リオ
国王陛下であるオクスフォードが騎士団長と共にルドエ領へとやってきた。
国王陛下と騎士団長とは思えないボロボロの姿にその場にいた全員が言葉を失っていた。
「……何があったのですか、父上」
スタンフォードは深刻な表情をして問いかける。すると、オクスフォードは重々しく口を開いた。
「簡潔に言うと国を乗っ取られた」
「いや、簡潔過ぎるでしょ!」
あっさりと告げられた衝撃の事実にポンデローザがツッコミを入れる。
オクスフォードのあまりにも大雑把な説明にスタンフォードも頭を抱えた。
その横ではオクスフォード達を運んできた騎士団長であるスティールが気まずそうに頬を掻いていた。
その後、一通り事情を語るとスティールは無念そうに告げる。
「……不甲斐ない話ではあるが、予想以上にセルペンテ家の手が国家の中心部に及んでいたのだ。ミドガルズばかりに気を取られていた結果がこれだ。国を守る騎士団長として情けない限りだ」
「そんなのスティール卿のせいじゃない! 政治方面のトップが悪の親玉だなんて防ぎようがないじゃないですか!」
「ポンデローザ嬢、見ない間に随分と変わられたな。いや、戻ったというべきか……」
令嬢らしくない振る舞いになったというのに、スティールはどこか安心したような表情を浮かべていた。
「それよりも父上、クーデターが起きたということは他の王族は……」
「状況はわからぬがあまり芳しい状況とは言えぬだろう。ハルバードは生徒会の者達が付いているから良いが、カールとフォルニアが心配だ」
オクスフォードの言葉にスタンフォードは王城にいるであろう弟妹達を心配する。
「兄上の身動きがとりづらい現状じゃ厳しいな……」
「せめてルーファスとアロエラがいてくれたらよかったんだけど」
ルーファスとアロエラはヒカリエに向かう途中で別れたため消息はわからない。
世界樹が復活し、竜の力が無効化された今は幻竜を狩って回る必要はない。何もなければ大人しくルドエ領に向かっているとは信じたいところである。
「セタリアの救出もしなければいけないし、戦力が足りなすぎるな」
どうしたものかとスタンフォード達は頭を悩ませる。
「ねぇ、すす――スタンフォード。光魔法のワープを使えば戦力を集中させつつ、一気に移動ができるんじゃない?」
そこでマーガレットの肉体に戻って魂の二人羽織状態になった慈理が口を開いた。
「ねえさ――ラクーナ先輩ってワープも使えるのか?」
「私は無理だけど、ラクリアさんならいけると思う」
「なるほど、古代の光魔法ならできることも多いってわけだ」
マーガレットの肉体は元々ラクリアの遺体を闇魔法で魔改造してできたもの。
そこに転生した慈理が血の滲むような努力で鍛え上げた光魔法は奇跡に等しい事象を引き起こすことができる。
「ナイスよ、メグ! その案でいきましょ!」
「待ってくれ。乗り込むのはいいけど、準備は万端にしていかないとまずい」
スタンフォードは乗り込みに待ったをかける。これまで何度も後手に回ってしまったのだ。スピード感も大切だが、無策で突っ込んで勝てる相手ではない。
今すぐにもルドエ領へと向かいたい気持ちをぐっと抑えて、スタンフォード達は今後の動きについて話し合うのであった。
その夜。
「精が出るな、スタンフォード」
ルドエ領の上空に浮かぶ満天の夜空の下で素振りをしているスタンフォードへ声をかける人物がいた。
「父上」
それは軽装に着替えたオクスフォードであった。
絢爛豪華な国王陛下として衣装ではなく、簡素な服装に着替えた父を見てスタンフォードは苦笑する。
こうしてみると本当にただの田舎の父親って感じだ、と。
「スタンフォード、あれから獅子のベスティアは発動できておらんのだろう?」
「どうしてそれを」
スタンフォードが獅子のベスティアを発動させるのに手こずっているのはオクスフォードの知るところだった。何せ彼は王位継承者しか知らない獅子のベスティアの情報を持っていたからである。
「王家に伝わる〝理を捻じ曲げる傲慢なる力〟とされるベスティアは初代国王が厳重な封印を行ったとされている。お前が試合で発現させたのは火事場のバカ力というわけだ」
「コツがどうのこうのって話じゃなかったのですね……」
獅子のベスティアはその性質上悪戯に悪用されないように封印が施されていた。
スタンフォードが発現させたのは本当に彼の運命を捻じ曲げることへの想いが強かったためであり、本来はいつでも発動できるものではないのである。
「封印を解く方法は簡単だ。この状況ならばハルバードも納得してくれるはずだ」
「それって、まさか――」
スタンフォードはその言葉で理解した。獅子のベスティアを解き放つための方法がなんなのかを。
「スタンフォード・クリエニーラ・レベリオン。其方を次期国王に任命する」