負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん! 作:サニキ リオ
異変が起きたことを察したスタンフォード達は王都へ向かおうとしていた。
「姉さん、ラクリア様に交代して瞬間移動頼む!」
「オッケー! ラクリア様、交代! ……任せて!」
マーガレットから肉体の主導権を譲られたラクリアは瞬時に光魔法を発動させる。
目の前の景色が一瞬にして切り替わり、あちこちで建物が倒壊した王都の惨状が目に入る。
「ポン子は氷で防壁、リアは住民の避難、コメリナは怪我人の治癒と死人の蘇生、ラクリア様はあのデカブツに瞬間移動をかける準備をお願いします」
一瞬にして状況を把握して指示を飛ばしたスタンフォードはベスティアを発動させて剣を構える。
「ブレイブ、僕に合わせろ!」
「応ッ!」
振るわれた雷の如き一撃は大蛇へと命中するが、やはり効果は薄い。
攻撃が飛んできた方向へと再び鎌首をもたげた大蛇の巨大な口が二人を呑み込まんと迫り来る。
二人は左右に分かれて攻撃を躱すと、隙を突くようにポンデローザの作り出した動く氷像が襲い掛かる。
ベスティアを発動させている影響か、まったく効いていないということはない。
それでも火力が足りない。
創世記に世界を蹂躙した蛇神竜の力は伊達ではないのだ。
「スタン兄様!」
「ニア!? 魔法が使えるようになったのか!」
戦っていたフォルニアを発見したスタンフォードは驚いた表情を浮かべつつも、禄に魔法が使えなかった妹の成長を喜ぶ。
「兄上やセルド様はどうしたんだ?」
「……ハル兄様を含め守護者の方は大臣の指示で牢に捕らわれております。私は捕らえられる前にいつもの抜け道を使って抜け出してきました」
「父上が言っていたことは本当だったんだな」
この国における重要な戦力がいないことに歯噛みしつつも、フォルニアが時間を稼いでいてくれたことに感謝する。
「よくここまで耐えてくれた。ここからは僕達に任せてくれ」
「私も共に戦います!」
「いや、ニアは兄上達の救出に向かってくれ!」
「わかりました!」
自分達がいなくともここまで戦ってくれていたフォルニアの実力を信用し、スタンフォードは指示を飛ばす。
そして、彼女の後方に控えていた友人へ声をかける。
「ジャッチ、妹を頼んだ!」
「任せろ!」
信頼できる友人もいる。
未曾有の危機でも、対処できる人材は揃っている。
「〝
そして、ラクリアによる竜特攻が付与されたことにより、全員の攻撃がミドガルズオルムへと効くようになってきた。
しかし、このままでは王都への被害がどんどん拡大してしまう。
「ラクリア様、瞬間移動はまだですか!」
「スタン君! ダメだ、ミドガルズオルムが動き回るせいで瞬間移動が使えない!」
「一定時間抑えろって無茶言わないでよ、ラクリア様ァ!」
ラクリアの言葉にポンデローザが悲鳴のような声をあげる。
「だったら、あたしの巨大氷結で!」
そう叫び、ポンデローザが巨大な氷塊を生み出す。
「〝
その巨体を取り囲むように氷の結界が張られ、ミドガルズオルムの動きを封じ込める。
「嘘でしょ!?」
だが、氷結による拘束は数十秒としないうちに破られてしまった。
「氷結だけじゃ抑えきれないのか!」
「こっちは全力でブッパしてるってのに!」
ベスティアで強化された氷塊であってもミドガルズオルムには足止め程度の効果しか発揮できない。
有効と思われたポンデローザの拘束が使えない以上、作戦を変えるしかない。
「ブレイブ! 一分でいい、ミドガルズオルムを抑えてくれ!」
「任せろ! 〝
ブレイブは光を纏うと、剣を振るいながらミドガルズオルムの周辺を飛び回る。
「〝滅竜杭!!!〟」
光の刃は強固な鱗を貫きミドガルズオルムの巨体を地面へと縫い付ける。
暴れ狂うミドガルズオルムが攻撃の手を緩めている間に、スタンフォードは魔力を集中させる。
「スタン、どうするの!」
「こうするんだよ……〝
スタンフォードは瓦礫から鉄くずや壊れた武器などを磁力で集める。
砂鉄も舞い上がり、スタンフォードを中心としてミドガルズオルムにも負けない体躯を持った巨人が現れた。
「巨大ロボじゃない! そんなことできたの!?」
「できるようになったんだよ。ミドガルズオルム戦に備えておいて正解だった」
驚くポンデローザに返事を返すと、スタンフォードは雷神巨兵の腕を操作して魔法を発動させる。
「〝雷神砲!!!〟〝雷神砲!!!〟〝雷神砲!!!〟〝雷神砲!!!〟〝雷神砲!!!〟〝雷神砲!!!〟」
「れ、レールガンを乱射してる」
「まだまだァ!」
金属の瓦礫を集めて巨人となった雷神巨兵はほぼ無限にこの魔法を放つことができるのだ。
「殿下! 周辺住民、避難させた!」
「応急処置も完了しています!」
コメリナとセタリアの報告を聞いたスタンフォードは、雷神巨兵を操作してミドガルズオルムへと摑みかかる。
「うおらぁぁぁぁぁ!」
「そのまま抑えてて!」
ラクリアが集中力を高めてミドガルズオルムだけでなく、周辺一帯へ魔法陣を展開する。
「〝
眩い光が周囲一帯を飲み込み、一瞬にして景色が移り変わる。
倒壊した家屋も、転がっている瓦礫も、勇敢に立ち向かう者も、全てを飲み込んだ光は始まりの場所でもある世界樹の根元へと転移させられる。
今、最終決戦の幕が上がる。