負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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最終話 これからも負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!

 レベリオン王国の復興は進み、土地だけでいえばたった数年で元通りに戻ってしまった。

 これには魔法技術の急激な発展も貢献していることだろう。

 しかし、人の心というものはそう簡単に立ち直るものではない。

 新たな国王と王妃は国民の心に寄り添い真摯に国家を運営していくしかないのだ。

 

「あのさぁ! 王妃の仕事大変なんだけど!」

「いや、だってポン子王妃だし……」

 

 数年後、国王と王妃という関係になったスタンフォードとポンデローザは人払いのされた玉座の間で言い争っていた。

 

「父上も母上も存命で兄上達だって手伝ってくれてるだろ? ポン子が自由な時間を確保できるように最大限譲歩はしてるじゃん」

「うぐっ、それはそうだけど……もっとこう青春時代が欲しかったというかさぁ!」

 

 学園卒業後、スタンフォード達はすぐに様々な式典や儀式を済ませ、それぞれ国家の重要な役職に就いた。

 最終決戦が終わってからもあまり遊ぶ時間が取れなかったことを考えればポンデローザの不満もわからなくはないのだ。

 

「学園生活だってきちんと卒業まで待ってもらったし、青春も十分謳歌できたろ?」

「わかっちゃいるんだけど、さ」

 

 学園生活での日々は、ポンデローザにとってかけがえのない思い出だ。

 その中でも、スタンフォードと共に過ごした日々は宝物のような時間だったのだ。

 

「やっぱり、二人でこそこそ作戦会議していろいろやってた頃が楽しかったなぁって思っちゃうのよ」

「まあ、いろいろあったからねぇ」

 

 本当に濃い時間だった。

 スタンフォードはポンデローザに出会ってからの日々を思い出す。

 あのとき、ポンデローザが手を差し伸べてくれたからこそ、自分は逃げずに運命に立ち向かい、幸せを手にすることができた。

 犠牲になった者もいたため、手放しで喜べることではないことはわかっている。

 

「でも、僕は今幸せだ」

 

 それでも、こうしてせわしなく働いている今も幸せだとスタンフォードは心から思っていた。

 

「あたしもよ。ごめん、ちょっと最近忙しくて愚痴っちゃっただけだから」

「ま、ポン子に限らずみんな今はバタバタしているだろうからね」

 

 スタンフォードはそれぞれの道へと進んだ仲間達の顔を思い浮かべる。

 

 ハルバードは改めて世界樹の巫女の血を引くマーガレットと婚約を結んだ。

 これは貴重な光魔法の血を守るための措置だった。

 どう見ても政略結婚なのだが、当のマーガレットは前世で生涯独身だったこともあり、イケメン王子との婚約に思いのほかノリ気だった。

 ある意味、マーガレットは今世でもスタンフォードの姉になったということでもある。

 

 コメリナはスタンフォードの側室となり、王城魔導研究施設の長も勤めている。

 現在は子供を身籠りながらも魔法の研究を続けており、ここ数年の魔法技術の発展にも大いに貢献している。

 最近では、記憶を抽出する装置の開発を進めており、ポンデローザは日本にいた頃の記憶を振り返れると大喜びだった。

 

 セタリアは相変わらず世界中を旅して回っているが、時折リア名義で裏ルートから手紙が届き近況も報告されている。

 相変わらず聖剣となったブレイブが目覚める兆候はないが、風のように自由な旅を満喫しているとのことだった。

 

 ルーファスは父であるスティールから騎士団長の座を引き継ぐことはせず、スタンフォードの側近として自由に動ける戦力であることを望んだ。

 スティールも存命なこともあり、ルーファスの願いは聞き入れられ、現在は騎士団長の候補としてアロエラが上がっている。

 

 アロエラは最初こそ辞退しようとしていたが、スタンフォードと兄であるセルドの勧めもあって最近では騎士団長になることを前向きに検討している。

 

 そのセルドは執政官としての道を進んでおり、ハルバードと共にスタンフォードを支えるべく、日々精進している。

 

 スタンフォードの妹であるフォルニアは弟であるカールと共に王立魔法学園へ入学した。コメリナのおかげで二人共魔法を高水準で使えるようになったのだ。

 学園では共に入学したブレイブの妹であるミモザと仲良く鍛錬に励んでいるとのことだった。

 またフォルニアがスタンフォードの友人であるジャッチに猛アタックをしていると報告が上がっていたため、スタンフォードたっての願いにより最近二人は婚約した。

 

 そのジャッチは王国魔導士団に入団しており、フォルニアの卒業後は結婚式が待っているため、最近ではどこか落ち着かない様子だ。

 

 一番出世したのはステイシーだろう。

 ルドエ家は領の重要性とステイシー自身の功績により、守護者の家系と同格の爵位を賜ることとなった。

 最近では、ルーファスが何かと理由を付けてスタンフォードと共にルドエ領に向かうことが多いため、近々ステイシーが嫁入りする日も近いのではないかとスタンフォードは踏んでいる。

 

「そういえば、ヨハンの処刑は大荒れだったね」

「あー、まあ、あれは仕方ないわよ」

 

 過去を振り返る中、スタンフォードは処刑されたかつての宿敵の存在を思い出した。

 

「民衆はどんな惨めな姿を見れるのかと期待して処刑場まで来ていたわけだからね。あんな堂々とした姿で首を落とされても溜飲は下がらないだろうさ」

「むしろ、カリスマ性がちょっと出てて怖かったわ。大蛮族時代的な感じにならなくて本当に良かったわ」

 

 自分の死を受け入れたヨハンは処刑されるその瞬間まで一切の動揺を見せず、自分の犯した罪を受け入れたうえで首を落とされた。

 その表情は彼が今まで見せたことのない穏やかなものだった。

 

「いつまでもミドガルズオルムのことを引きずるわけにもいかない。ルドエ領の千年樹を無害化する研究だって必要だし、魔力の減ったこの国の国防も固めなきゃいけない」

「目が回りそうね」

 

 こうして次から次へと問題は降りかかってくる。

 そのほとんどは、スタンフォードがこの国を背負う者として解決しなければならない問題だ。その傍で支えるポンデローザも同様である。

 

「そんなポン子に朗報だ。千年樹の調査やガーデルとリオネスの墓参り、これらをまとめてできる土地はどこでしょうか?」

 

 だが、たまには息抜きも必要だ。

 

「はっ、ルドエ領!?」

 

 スタンフォードの意図を理解したポンデローザは目を輝かせる。

 

「ルドエ領、私も行く」

 

 そこへお腹を大きくしたコメリナがやってきた。

 

「コメリナちゃん。あんまり無理しちゃダメよ」

 

 妊娠したコメリナのお腹を気遣いながら、ポンデローザはコメリナが遠出することに難色を示した。普段は喧嘩ばかりだが、何だかんだでこの二人は仲が良いのである。

 

「いや、コメリナもそろそろ出産が近い。環境を考えればしばらくルドエ領で過ごした方がいいはずだ」

「でも、馬車の旅じゃ負担がかかるでしょ」

「というわけで、姉さん。ワープよろしく!」

「人をタクシー変わりに使わないで欲しいんだけど……ま、いっか。弟や義妹に親友のためだもんね!」

 

 いつの間にかやってきたマーガレットは苦笑すると瞬間移動の発動を了承する。

 

「それじゃ、残った仕事を急いで終わらせるぞ!」

「旅行の準備は全部メイドのビアンカに任せましょ!」

「お義姉ちゃん、出産準備手伝って」

「その辺は任せて! 得意分野だから!」

 

 四人は仕事という名目の休暇に向けて慌ただしく動き始める。

 

「よーし、久しぶりにあれやっとくか!」

「いいわね、懐かしいじゃない!」

「私も、やる」

「私も混ぜて混ぜて!」

 

 四人はそれぞれ手を重ねると笑顔を浮かべる。

 

「当て馬同盟ファイト!」

「「「おー!」」」

 

 こうして、スタンフォードとポンデローザによる〝破滅回避作戦〟は形を変えて達成された。

 

 ここから先も彼らの幸せが続くかどうかはわからない。もしかしたらミドガルズオルム以上の脅威が障害として立ち塞がるかもしれない。

 それでも、スタンフォードは止まることなく未来へと進み続ける。

 運命に立ち向う強さも、守りたい大切な者達も、前世では手に入らなかったものが今のスタンフォードにはある。

 

 これは踏み台転生者となった一人の男性が、悪役令嬢に転生した女性と共に運命に立ち向かう物語。

 

 そして、主人公とヒロインに至る物語だ。

 




これにて「負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!」は完結となります。
本当に長い間、お付き合いいただきありがとうございました!
途中、何度も賞への応募のために休載したりなど、作者都合で読者の皆様をお待たせしてしまい大変申し訳ございませんでした。

やや駆け足となってしまいましたが、無事完結できてほっとしております。

また現在、第37回ファンタジア大賞前期 四次選考までいった作品をリメイクして投稿しております。
もしよろしければ、どうぞ!

未来じゃ共依存!
https://syosetu.org/novel/335950/
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