負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第27話 すれ違う主人公と悪役令嬢

 一年生の郊外演習の内容が決まったこともあり、生徒会メンバーはいつも以上に忙しなく働いていた。

 王立魔法学園内での生徒会での仕事内容は多岐に渡る。

 学内のトラブル解決、生活態度の指導、授業の補佐、などが代表的だが、仕事内容を全て挙げていけばキリがないだろう。

 激務である代わりに立場は半教師と言っても過言ではなく、生徒会での仕事量をこなすために特別単位が支給される。

 そのため、他の生徒達が授業を受けている時間も、生徒会メンバーは一年生の郊外演習の事前準備に時間を割いていた。

 

「ポンデローザ。今度の郊外演習の際、ムワット森林に異変がないか確認してほしい」

「それは異形種の生息情報ないし、突然変異の原因がないか調査をして欲しいということでしょうか?」

「話が早くて助かる」

 

 ハルバードの言いたいことをポンデローザは瞬時に理解する。

 原作の流れを把握しているということもあるが、長年彼の側にいたこともあり、ポンデローザにとって口数の少ない彼の意図を察するのは容易いことだった。

 

「おいおい、ハルバード。そういう話は婚約者様だけじゃなく俺様達にしたらどうだ?」

「今回の郊外演習はあくまでも一年生の魔法演習が主体だ。故に監督生としての職務と調査を平行して行うのはポンデローザだけでいい」

「つまり、信頼してるってことか。そいつは、仲がよろしいことで」

 

 ルーファスはつまらなそうに天を仰ぐ。

 王子であるハルバードに対してこのような態度が許されているのは、彼が守護者の家系ということもあるが、幼い頃からの付き合いであるということもある。

 そのため、今更ポンデローザもルーファスに態度のことを指摘することはなかった。

 

「ルーファス、お前はスタンフォードが問題を起こさないか注意していろ」

 

 今回の演習では、スタンフォードの組はルーファスが監督生として受け持つ予定となっている。

 原作とは違う組み分けにポンデローザも初めは焦っていたが、ライザルクの出現場所は()()()()()()

 むしろ、戦闘において現状最強クラスの戦力であるルーファスがスタンフォードの組の監督生についたことは喜ばしいことだった。

 

「言われなくてもわかってるさ。スタ坊の奴、昔から調子に乗りっぱなしだからな。ま、最近はどこかの誰かさんのおかげで落ち着いてはいるけどな」

 

 揶揄うようにルーファスは視線をマーガレットへと向ける。

 

「スタンフォード君――殿下が変わってきているのは、彼自身が変わろうとしているからです。私はただ相談に乗ってあげただけです」

「それにしちゃ、自分以外の人間全てを見下してるようなスタ坊が随分と懐いているようだが……色仕掛けでも使ったか?」

「おやめください、ルーファス様。神聖な生徒会室でそのような下品なお話、貴族としての品格を疑いますわ」

 

 下世話な話をしようとしたルーファスをポンデローザが諫める。

 

「そうか?」

「ええ、そうです。それにスタンフォード殿下にはセタリアさんという婚約者がいますの。まるでラクーナさんが彼に不貞を働こうとしている疑いをかける発言は慎んでくださいな。ラクーナさんに失礼ですわ」

 

 ポンデローザがマーガレットを庇うような発言をしたため、マーガレットは驚いたようにポンデローザに視線を向ける。

 

「そいつは悪かったな、マーガレット。だが、婚約者がいる貴族の恋愛はよくある話だろ。中等部はスタ坊だって婚約者ほっぽってハーレム作ってたんだぜ? あれはちとやりすぎだが、将来のために側室を見定めるって意味じゃ悪い手じゃない、まあ、婚約者に対する配慮は最悪だったが」

 

 ルーファスはポンデローザの注意に対して、マーガレットに謝罪しつつも、へらへらとした笑みを浮かべて反論する。

 

「学園時代に婚約者とは別に恋人作るなんて、どの貴族もやってる。そもそも貴族なんて家のため、国のため、民のために人生を捧げるんだ。学生時代くらい自由にしてもいいだろ。なんなら将来側室も作れて一石二鳥だ」

「ルーファスの言っていることも間違いではない。我らのように守護者の家系血筋ならば、世継ぎをより多く残すことは最も重要なことだ。……それにしてもお前は言葉を選ばなすぎるがな」

 

 ルーファスの言葉に、ハルバードはため息をつきながらも同意する。

 魔力の質と量は必ずしも遺伝するわけではない。

 強い魔力を持った両親から魔法の才能がない子が生まれることなどよくあることだ。

 

「ルーファス。ポンデローザの言う通り、言葉は選べ。我らは表だって良いことだとは言えない立場なんだぞ」

「だからこそ、防音完璧なこの部屋で言うんじゃねぇか」

 

 ルーファスにはまるで反省した様子はない。

 彼の辞書にオブラートという文字は存在していなかった。

 

「あの、私は大丈夫なので、ルーファス様。仕事してください」

「ええ、まったくですわ」

 

 無駄口を叩くなと、言外にポンデローザとマーガレットはルーファスを責める。

 そんな抗議もどこ吹く風。

 ルーファスは両手を挙げて勝ち誇ったように告げる。

 

「残念、俺様の分の仕事はもう終わってるんだな」

「あら、それはちょうど良かったですわ」

 

 ポンデローザはニッコリと微笑むと、マーガレットの分の書類の一部をルーファスの前に置いた。

 

「これはラクーナさんに失礼な発言をした罰ですわ」

「おっと、こいつは手厳しいな」

 

 おどけながらも、ルーファスは大人しくマーガレットの分の書類に手を付け始めた。

 

 

 

 午前の仕事が終わり昼食の時間がやってくる。

 取り巻きであるフェリシアとリリアーヌと昼食を取るため、食堂へ向かおうとしたポンデローザにマーガレットが声をかけた。

 

「あの、ポンデローザ様。ありがとうございました」

「いえ、わたくしはルーファス様の言動が不快だったから注意したに過ぎませんわ」

 

 あまり長く話していると、いつぼんじりが来るかわからない。

 

「それではわたくしはこれで」

 

 これ以上仲が拗れるのを防ぐため、ポンデローザは逃げるように食堂へ向かった。

 

「話、できなかったな……」

 

 そんなポンデローザの背中を見送りながら、マーガレットはガックリと肩を落とすのであった。


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