負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第67話 国家機密級の新情報

 スタンフォードとステイシーの持ち帰った情報を、一同は神妙な面持ちで静かに聞いていた。

 

「こりゃまたとんでもない情報が出てきたな……」

 

 いつもは軽薄な笑みを浮かべているルーファスですら、明かされたルドエ領の秘密には冷や汗を浮かべていた。

 

「はぁ……ご先祖様の魂がまだこの世にあったなんて、一体どうなっているのかしら」

 

 ポンデローザはポンデローザで、原作に全くない情報が出てきたことで困惑していた。

 

「でも、この情報の価値は大きいですよ。敵はミドガルズで確定。その上、彼らの手の及ばない安全な土地を見つけることができた」

「ルドエ領としても、もしものときは全面的に協力します。……お父さんもその頃には復活していることでしょうし」

 

 この情報は当然ステイシーの父であるゴーマにも報告された。

 突然もたらされた現存する国家機密を凌ぐ情報に、ゴーマは白目を剥いて倒れてしまったのだった。

 

「ニール、ムジーナ……ラク、リア」

 

 一方、ルドエ領の秘密をしったブレイブは、頭を押さえながら初代国王と初代守護者、そして初代世界樹の巫女の名前を呟いていた。

 

「ブレイブ、どうしたんだい?」

「……いや、何か思い出せそうな気がしたんだが、何も思い出せなくて」

 

 ブレイブはもどかしげな表情を浮かべ、必死に記憶の糸を手繰るが、記憶が戻ることはなかった。

 原作において主人公であるブレイブの記憶が戻るのはストーリーの終盤だ。

 今はまだそのときではない。

 仮に知っている知識を話したところで自身の手で取り戻さなければ、ブレイブは自分という存在を確立することはできない。

 そう判断したスタンフォードは一旦ブレイブの件は置いて話を進めることにした。

 

「それとポンデローザ様。ひとつ窺いたいのですが、ぼんじりは一体何者なんですか?」

「どういうことでしょう?」

「ぼんじりは、ステイシーですら知らなかった砂の魔女リーシャの工房を見つけ出しました。しかも、リーシャの血を引く者の血が入り口を開く鍵であることも知っていたみたいです。これは賢い鳩という言葉では片付けられることではありません」

 

 リーシャの工房を見つけたぼんじりの行動に違和感を持っていたスタンフォードは、ぼんじりがただの鳩ではないと踏んでいた。

 ポンデローザは肝心な情報をスタンフォードに伝えていなかったりすることも少なくはないため、ぼんじりの件も何か重要なことを伝えていないのではないかと疑っていたのだ。

 

「そう言われましても、ぼんじりはお父様から与えられた鳩ですので、詳しいことは……」

 

 ポンデローザは本気で困惑していた。

 マーガレットに糞を落とすという、原作での役割を果たすために知能が高く生まれただけと思っていただけに、そんなにぼんじりのことは重要視していなかったのだ。

 それが原作でも語られていない重要な秘密を握っている可能性が出てきた。

 この件は、原作頼りのポンデローザにとって頭の痛い話だったのだ。

 

「クル?」

 

 当のぼんじりは首を傾げるのみ。

 人間の言葉を話せるわけでもないぼんじりが真実を語れるわけでもなく、ぼんじりについての謎は謎のままだった。

 

「ハトリンガルでもあれば良かったのでしょうけどね」

「いや、ハトリンガルって……」

 

「んなことより、問題はミドガルズオルムじゃねぇのか?」

 

 解決しようがない問題よりも、目の前の問題を重視した方が良いと判断したルーファスは、二人のやり取りを遮って話をミドガルズオルムのものへと戻した。

 

「実際問題、どう奴の復活を阻止する?」

「初代国王様の墓にさらに厳重な封印をかけるとか……」

「封印の仕方も伝わってねぇから無理だな」

「ですよねー……」

 

 ステイシーの思いついた案は即座に却下された。

 

「俺が、斬る」

 

 そこで、ずっと黙っていたブレイブが口を開いた。

 

「ミドガルズオルムは俺が斬らなきゃいけない……そんな気がするんだ」

「クルルッ、クル?」

 

 そんなブレイブの前にぼんじりが飛び、何かを問いかけるように鳴いた。

 

「ああ、きっと斬ってみせる」

 

 まるでぼんじりの言葉を理解しているかのように、強い決意を瞳に宿してブレイブは頷いた。

 

「ブレイブ、君はぼんじりの言葉がわかるのかい?」

「いや、何となく『お前にできるのか?』って言われてる気がしたから……」

 

 スタンフォードの問いに対して、ブレイブは困ったように笑いながらそう答えた。

 スタンフォードもブレイブの言葉に納得したように頷いた。

 

「動物的第六感ってやつかね。まあ、どっちにしろ現状やることは一つだ」

「そうですね」

 

 ステイシーもスタンフォードの言葉に頷くと、一年生組の三人はルーファスを真っ直ぐに見据えて宣言する。

 

「「「まずはルーファス様(先輩)から一本取る!」」」

 

「ははっ、そいつは楽しみだ!」

 

 それに対して、ルーファスは肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべるのだった。

 

「あの、わたくしは……」

「ほ、ほら、ポンちゃんは最近押され気味だから」

「くっ、そう簡単に負けてたまるか……!」

 

 完全に熱い空気の中、置いてけぼりにされたポンデローザは頬を膨らませて拗ねているのであった。

 


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