負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第70話 進む悪役令嬢

 状況を整理して部屋を出たポンデローザはすぐに行動を開始した。

 

「あれ、ポンちゃん。どうしたの?」

「ちょっとお願いがあってね」

 

 ポンデローザはマーガレットの部屋を尋ねていた。

 原作におけるイベントを乗り越えるには原作通りの結末が不可欠だ。

 今回の看病イベントでは、マーガレットの看病が鍵になる。

 逆に言えば、マーガレットが看病しなければスタンフォードの熱は下がらない可能性があるとまでポンデローザは考えていた。

 

「スタンの看病をお願いしたいの」

「えっ、でもリオネスさんが面会謝絶だって……」

 

 スタンフォード付きのメイドであるリオネスから面会謝絶を言い渡されてたマーガレットは、突然のポンデローザからの頼みに困惑していた。

 

「リオネスはあたしが何とかするわ。メグはあたしがリオネスの気を引いている間にスタンの看病をしてほしいの」

「看病するのは別にいいんだけど……光の治癒魔法は病気の類いは治せないよ?」

「それでもお願い」

「わかったよ。ポンちゃんがそこまで言うなら試してみる」

 

 ポンデローザがあまりにも真剣な表情をしていたため、マーガレットは納得できない部分があってもスタンフォードの看病を引き受けることにした。

 それからポンデローザはリオネスの気を引くために、スタンフォードの部屋へと向かった。

 控えめにノックをすると、すぐにリオネスが顔を出した。

 

「何かご用でしょうか?」

「ちょっと話せないかしら」

「申し訳ございません。今はスタンフォード様の看病で手一杯でして」

 

 食い気味に断りを入れると、リオネスは扉を閉めようとする。

 そこですかさずポンデローザは悪そうな笑みを浮かべて言った。

 

「それはどうかしら」

「……どういう意味でしょうか」

 

 ポンデローザの発現の意図が掴めず、リオネスは警戒心を露わにする。

 

「あなたならこの意味がわかるのではなくて?」

「心当たりがございません」

「そ、ならこのことはわたくしの心の中にしまっておきましょう」

 

 意味深な言葉を残し、妖艶な笑みを浮かべたポンデローザはそのままスタンフォードの部屋の前を去ろうとする。

 

「お待ちください」

 

 それを部屋から顔を出したリオネスが呼び止めた。

 

「あら、殿下の看病で忙しいのではなくて?」

 

 ほら釣れた、とばかりにポンデローザは口元を吊り上げる。

 改めてリオネスの方を振り返ると、彼女はいつもと変わらない無表情のまま告げた。

 

「何か誤解をされているようですので」

「事実でないのならば問題ないでしょう」

「そうもいきません。私は王家に忠誠を誓った身。公爵家令嬢であるポンデローザ様に不信感を抱かれたままでいることは許されません」

 

 食い下がるリオネスを見て、ポンデローザは再度問いかける。

 

「あなたの弁明は殿下の看病よりも重要なこと?」

「スタンフォード様の容態は安定しております。急に容態が悪化することはないかと」

 

 先程スタンフォードの看病を理由にポンデローザの用事を断ったというのに、今度は目を離しても大丈夫だと言った。

 リオネスの掌返しをポンデローザはあえて肯定した。

 

「ふふっ、そうでしょうね。彼はハルバード様のスペア、第二王子という代替品でしかない。わたくし達に病気が感染するより、彼が一人犠牲になるだけの方がいいですものね」

「発言を謹んでいただけますか。今のは王家に対する侮辱に当たります」

 

 あえてスタンフォードを軽んじるような発言をしたポンデローザを、リオネスは少しだけ表情を険しくして諫める。

 そんなリオネスに対して、ポンデローザは強い口調で告げる。

 

「あなたこそ発言を慎みなさい。誰に向かって口をきいていますの?」

「っ!」

 

 ポンデローザは扇子を開いて殺気を放つ。

 それだけでリオネスは動けなくなってしまった。

 

「王家に仕える使用人だからと自分が偉くなったと勘違いしているのではなくて? わたくしはポンデローザ・ムジーナ・ヴォルですわ。主のために立場を超えてでも尽くすのならば、多少の無礼は見逃しますわ。ですが、主の病を建前に無礼な態度を取るのは見逃せませんわね」

「……大変失礼致しました」

「よろしい。では、ついてきなさい」

 

 ポンデローザはそのままリオネスを連れて外へ出て行く。

 身分を笠に着て権力を振りかざす。

 普段のポンデローザならば絶対にやらないことだ。

 

 しかし、当の本人は強引なやり方だったとしても、これでいいと思っていた。

 こうでも言わなければリオネスは動かない。

 原作通りの流れを作るためならば、心が痛もうがどうでもいい。

 その姿はまさにフィクションの中の悪役令嬢だった。

 


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