負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第75話 調査結果報告会

 長かったルドエ領での調査も終わり、後期の授業が始まる前にスタンフォード達は学園へと戻ってきていた。

 アカズキー遺跡の調査を行っていたセタリアや、ドンブラ湖の調査を行っていたコメリナも特に怪我もなく学園に帰還した。

 学園に戻り、寮で一晩休んだ後に一同は生徒会室に招集された。

 

「まず、みんなご苦労だった」

 

 生徒会メンバーが全員揃った生徒会室で、ハルバードが調査に向かっていた者達に労いの言葉をかける。

 

「君達の尽力のおかげで異形種について重要な情報が集まった」

 

 ハルバードは各地の調査資料に目を通しながら告げる。

 それからハルバードは手始めに、セタリア達が調査に向かったアカズキー遺跡について話し始めた。

 

「まず、アカズキー遺跡の方だが、今まで多くの調査隊が通ることができなかった開かずの間を攻略し、この国に伝わる神器を持ち帰った。これはミドガルズと戦う上で大きな成果だ」

 

 ハルバードの言う神器とはこの国に伝わる神聖な力を持つ武具のことである。

 古の時代より封印されていたそれを異形種調査のついでで手に入れられたというのならば、それは大きな成果である。

 しかし、何故かセルドとセタリアは疲れ切った表情を浮かべていた。

 

「だが、創世紀から存在すると言われているアカズキー遺跡を跡形もなく破壊したのは問題だな。ミドガルズの件もある以上、老朽化と異形種が想定外に暴れたことにして誤魔化しておいたが……」

 

「「面目ない……」」

 

 こめかみに手を当ててため息をつくハルバードにセルドもセタリアもバツの悪そうな表情を浮かべる。

 

「も、申し訳ございませんでしたァァァァァ!」

 

 そんな中、歴史ある遺跡を破壊した犯人、アロエラは泣きながらハルバードに向かって深々と頭を下げた。

 創世紀から存在するアカズキー遺跡の内部には複雑な魔法がかかっており、建物は劣化せず、遺跡内には罠や絡繰り仕掛けなどが多く存在している。

 異形種が出現する中、アロエラは破壊魔法の暴発を繰り返し、最奥にある最難関の謎解きを無視して扉を破壊した。

 そして、アロエラの破壊魔法に耐え切れなくなり崩れ落ちる遺跡を、セルドとセタリアと共に脱出したのだった。

 

「セルド、彼女は君と同じ血筋の子のはずだ。どうにかできなかったのか?」

「情けない話ですが、アロエラの〝破壊魔法〟のバカげた威力は先祖返りによる血の濃さが原因でして……」

「意図せず暴発するというわけか……まあ、終わったことは仕方がない。今は過去の遺物よりも目の前の敵の方が問題だ。アロエラ・ボーア、今回の件は不問とする。次は同じことを繰り返さないように鍛練に励め」

「ぎょ、御意!」

 

 大きな成果と同時に大きなやらかしを起こしたアロエラは縮こまりながら後ろへと下がった。

 

「さて、ドンブラ湖の調査結果だが、こちらも大きな成果を上げているな」

 

 続いてハルバードはコメリナ達が向かったドンブラ湖の報告書に目を移した。

 

「ドンブラ湖には幻竜である水竜ペスカウルスが住み着き、周囲の水棲の魔物も異形種化していたそうだが、ペスカウルスを撃破した上に異形種も完全に駆逐。このまま放置されていたのならば、ドンブラ湖周辺は異形種で溢れかえっていたことだろう」

「幻竜を討伐!? それに異形種を完全に駆逐!? ドンブラ湖ってかなり広かったんじゃ……」

「みんな、頑張った……!」

 

 スタンフォードが驚いたようにコメリナの方を見ると、コメリナは得意気な表情を浮かべて胸を張っていた。

 さすがに討伐時に無傷とはいかなかったが、死傷者もなく幻竜を討伐したとなれば充分過ぎる戦果である。

 

 問題にするほどの出来事は起きない。

 ポンデローザの考察とは違う結果に、スタンフォードはポンデローザへと視線を送る。

 

「ドンブラ湖に水竜……あー……」

 

 ポンデローザはスタンフォードの視線に気づかずに一人でブツブツ呟くばかりだった。

 その様子を見て、スタンフォードはまた何か忘れてやらかしたな、とため息をつく。

 

「最後にルドエ領だが……ステイシー・ルドエ。君はかつてない戦果を挙げてくれたな」

「へ?」

 

 まさか自分の名前が真っ先に出るとは思わなかったステイシーは間抜けな声を零した。

 

「ルドエ領に隠された歴史の真実、王家を欺いていた竜人の撃破、捕縛、どれをとってもこれ以上ない成果だ。リオネスの裏切りは非常に業腹だが、これでミドガルズが敵だと確定したことは大きいだろう」

「る、ルドエ領の秘密に関しては私の成果とは言い難いと思うのですが!」

「君はルドエ家の血を引く人間だろう。もちろん、ルドエ領を守り続けてくれた君の父上を含めたご先祖様には俺も頭が上がらない。初代国王ニールと王妃ムジーナに代わって礼を言わせてくれ、ありがとう」

「あぅ……恐れ多いです」

 

 真剣な表情を浮かべて礼を述べるハルバードにステイシーは涙目になっていた。

 彼女は元々位の低い貴族だ。それがこの国の第一王子であり、生徒会長でもあるハルバードに頭を下げられるということは恐れ多いことだった。これがスタンフォードだったのならば、友人関係ということもあり素直に受け取れたのだが。

 

「竜人、倒した」

 

 幻竜を倒したことで得意気な表情を浮かべていたコメリナだったが、ライバル視しているステイシーが幻竜よりも格上である竜人を倒したという事実に目を見開いていた。

 

「あ、あのコメリナ様?」

 

 黙ったまま物凄い目つきで自分を睨んでくるコメリナに、ステイシーは引き攣った笑みを浮かべる。

 

「負けない……!」

「ああ、また溝が深まった気がします……」

 

 出来ればゆっくりと仲良くなっていきたいと思っていたところを完全にライバル視されたことで、ステイシーはガックリと項垂れた。

 

「ちなみに、ステっちはスタ坊の砂鉄の魔法とポンデローザの造形魔法を合わせた新技使ってリオネス倒してたぜ。いやぁ、俺様も厳しく稽古をつけた甲斐があったわ」

「絶対、負けない!」

 

 

「ルーファス様ァァァ!」

 

 

 ルーファスが揶揄うようにステイシーを褒め称え、さらにコメリナがライバル心を燃やす。

 そんな騒がしいやり取りは、一人で考え事をしていたポンデローザが正気に戻って注意するまで続くのであった。

 


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