負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第82話 滅竜祭開催!

 時間はあっという間に過ぎ去り、ついに滅竜祭の日がやってくる。

 滅竜祭に向けて、生徒会一同は滅竜祭実行委員会と協力して準備を進めていた。

 国の重鎮もやってくるということで、準備は他の学園以上に念入りに行われた。

 その他にも有力貴族や学園の生徒の親族など、多くの来賓がやってくるため警備も厳戒態勢である。

 最近では、異形種騒ぎなどで王立魔法学園の安全面も疑問視されている。

 この国の第一王子であり、現生徒会長でもあるハルバードは今回の滅竜祭は絶対に失敗できないと意気込んでいた。

 

 その結果、生徒会一同は過去最高に忙しい日々を送り、滅竜祭当日には既に疲労困憊の状態だった。

 

「……はぁ、生徒会ってマジで大変なんだな」

「午後から滅竜魔闘って、鬼のスケジュールよねー」

 

 校門周辺の見回りを行っていたブレイブとアロエラはゲッソリとした表情で続々とやってくる来賓達を眺めていた。

 

「何で女子の部が今日なのよ。男子の方が体力あるでしょうに」

「アロエラはそこらの男子よりも体力あるだろ」

「悪かったわね、女の子らしくなくて!」

「そうは言ってないだろ」

「あの、すみません。生徒会の方でしょうか?」

 

 いつものようにアロエラが一方的にブレイブに突っかかるというやり取りをしていると、小柄な金髪碧眼の少女が話しかけてきた。

 

「そうだけど、何か困りごとか?」

「バカ、どう見ても上級貴族のお嬢さんでしょ。敬語を使いなさい」

 

 アロエラは普通にタメ口で話しかけたブレイブの頭を引っ叩いた。

 服装から少女が良家の子女でありことは一目瞭然であり、服の素材には二人が感じ取れるほど強力な魔法までかかっていた。

 そこまで装備を持っている者は貴族の中でも限られる。

 

「申し訳ございません。どうか無礼をお許しください」

「いえ、お気になさらず。本日はお忍びで来ているので、あまりかしこまった対応をされてしまうと撒いた護衛に感づかれてしまうので」

「け、結構アグレッシブね……」

 

 良家の子女とは思えないアグレッシブな行動にアロエラは引き攣った笑みを浮かべる。

 護衛を撒いたという状況を考えれば、裏では問題になっている可能性もある。

 すぐにでも彼女を護衛に引き渡した方が良いのではないかとアロエラが迷っていると、少女は服の裾を摘まんで優雅に自己紹介をした。

 

「申し遅れました。私はフォルニアと申します。ニアとお呼びください」

「おう、よろしくなニア! 俺はブレイブだ」

「よ、よろしくね。アタシはアロエラよ」

「宜しくお願い致します。ブレイブ様、アロエラ様」

 

 フォルニアは年相応の無邪気な笑みを浮かべた。

 ブレイブとアロエラはフォルニアの件が騒ぎにならないように、学園を案内しながら生徒会室へと向かっていた。

 国の重鎮の娘である可能性を考えれば、ハルバードへの連絡は必須だと考えたのだ。

 

「へぇ、ニアは魔法が使えないのか」

「はい、微弱ながら水属性の適性はあるのですが、魔法を発動させることは叶いませんでした」

 

 フォルニアは苦笑すると、憧れてやまなかった王立魔法学園の校舎を眩い物を見るように眺めた。

 

「魔法が使えればこの学園にも通えたのですが……」

「魔法は生まれ持った素質だものね」

 

 アロエラはフォルニアに同情し、優しく頭を撫でた。

 どんなに貴族として位が高くとも、魔法が使えなければ魔法学園に入学することは叶わない。

 位の高い貴族だというのに、魔法が使えないというフォルニアが辛い思いをしていることは想像に難くない。

 

「でも、どうしてそんなに魔法学園に通いたいんだ?」

 

 偶然光魔法に覚醒し、半ば強制的に王立魔法学園に入学することになったブレイブは不思議そうにフォルニアに尋ねる。平和に領地で暮らせれば良いと考えていたブレイブにとっては、そこまでして魔法学園に入学したい理由がわからなかったのだ。

 

「兄達がこの学園に通っているのです。私と違って二人共優秀な魔導士でして、憧れなのです」

「へぇ、そんなにすごいんだ」

「はい! 自慢の兄達です!」

 

 フォルニアはアロエラの言葉に満面の笑みを浮かべて答える。

 その笑顔を見て、アロエラは本当に兄達が大好きなのだろうと微笑ましい気持ちになっていた。

 

「上の兄は自分にも他人にも厳しい人で、学園でも優秀な成績を収めていると聞き及んでいます。側室の子で魔法が使えない私は距離を置かれてしまっていますが、それでも憧れには変わりはありません」

「妹と仲良くするのもダメなのか」

「貴族として立場を重んじる方ですから」

 

 驚いた様子のブレイブに苦笑しながらもフォルニアは続ける。

 

「下の兄は昔から勉学、剣術、魔法、どれをやらせても天才と言われるほどにすごい人でした。側室の子であり、魔法が使えない私にも兄として優しく接してくださいました」

「へぇ、良いお兄さんじゃない」

 

 アロエラは頭の中で妹想いの優しい人格者の兄を思い浮かべた。

 アロエラにも腹違いの兄がおり、表向きはぶっきらぼうに見えるが自分には優しく接してくれるため、兄を慕うフォルニアの気持ちが良くわかったのだ。

 

「高等部に上がってからは全寮制となってしまったので、最近はお会いできていないのでこうして会いに来たのです!」

「なるほどな。だったら兄貴に会いに行こうぜ。俺にも妹がいるし、わざわざ会いに来てくれたら嬉しいからな」

「本当ですか!」

 

 ブレイブの提案にフォルニアは目を輝かせる。

 

「そういえば、ミモザちゃんって今日は来るの?」

 

 アロエラはドラゴニル家と昔から親交があるため、ブレイブの妹であるミモザ・ドラゴニルとも顔見知りだった。

 

「どうだろ。親父は来年入学するかもしれないから見に行くかもしれないって手紙くれたけど、ミモザからは何の連絡もなかったからな。たぶん来ないんじゃないか?」

「あの子ブラコンだし、絶対来るでしょ……」

 

 ミモザがブレイブを慕っていることはアロエラもよく知っている。

 きっとサプライズで来るつもりなのだろうと察したアロエラはそれ以上何も言わなかった。

 

「ちなみに、兄貴はどこにいるんだ?」

「それが私にもよくわからなくて……」

 

 フォルニアは兄達が学園でどういう立場にいるかぼんやりとしか知らなかった。

 

「だったら、生徒会室に行けば解決ね」

「それもそうか」

 

 こうしてブレイブとアロエラはフォルニアを連れて、改めて生徒会室に向かうのであった。

 


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