負けるな、踏み台君!ファイトだ、悪役令嬢ちゃん!   作:サニキ リオ

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第85話 二組の兄妹

 巡回をしながらも生徒会室に向かっていたスタンフォード達、ブレイブ達。

 

「おや、ブレイブ?」

「おっ、スタンフォード」

 

 何の因果か、二組は同時に生徒会室の前に到着した。

 

「そうだ。ちょうど君を探している子がいて――」

「お兄ちゃん!」

「スタン兄様!」

 

「「は?」」

 

 スタンフォードの言葉を遮り、フォルニアがスタンフォードに、ミモザがブレイブへと抱き着く。

 

「ミモザ! 来るなら来るって言ってくれれば良かったのに」

「えへへっ、お兄ちゃんを驚かせたくって。アロエラちゃんも久しぶり!」

「少し見ない内に大きくなったわね、ミモザ」

 

 ミモザとアロエラは仲良さそうに手を取り合っていた。

 そんな二人を見て、スタンフォード達は固まっていた。

 

「あぁ、紹介が遅れたな。こいつは俺の妹でミモザだ」

「改めましてミモザ・ドラゴニルです。兄がいつもお世話になっております」

 

 ミモザは礼儀正しく再び深くお辞儀をした。

 

「スタンフォード殿下がここまで案内してくださったんです」

「そうだったのか。ミモザが世話になったなスタンフォード」

「いや、僕は生徒会役員として当然のことをしたまでだ」

 

 スタンフォードは、兄妹揃って頭を下げてくるのを制すると自分に抱きついてきているフォルニアに目を向けた。

 

「というか、ニア! お前護衛も付けずに何で滅竜祭に来てるんだ!?」

「護衛は撒いてきました!」

「相変わらずの行動力だね……」

 

 胸を張るフォルニアに対して呆れるようにスタンフォードは笑う。

 

「皆さま、改めましてレベリオン王国第一王女フォルニア・シンバ・レベリオンと申します。以後お見知りおきを」

 

 スカートの裾を摘まんでフォルニアは優雅に一礼する。その姿は王族に恥じない高貴なオーラを纏っていた。

 

「そういえば、カールは来てないのか?」

「カールはどうせ魔導士になれないのに魔法学園を見に行っても仕方ない、って言ってました」

「あいつも相変わらずだね」

 

 フォルニアには双子の兄であるカールもいたが、彼もフォルニアと同様に魔導士としての適性がなかったため、王立魔法学園に足を運ぶことはしなかったのだ。

 

「待って待って、ちょっと待って!」

 

 あまりの情報量に脳がパンクしていたアロエラは、そこで会話に割って入っていった。

 

「ニアの言ってた優しいお兄さんってまさか……」

「はい、スタン兄さまのことです!」

「えぇぇぇ!?」

「……何か言いたげだね。気持ちはわからないでもないけど」

 

 アロエラは生徒会メンバーの中で現状、一番スタンフォードのことをよく思っていない。

 過去の自分の行いも加味すれば彼女の反応は正常とも言えた。

 

「ニアは側室の子で雷魔法も発現しなかった。王位継承権がない弟妹達は基本的に僕達とは接触を避けるように教育されていたんだ。そういう状況で僕がこっそり二人のところに遊びに行っていたから慕ってくれているんだよ」

「スタン兄様は王位継承権を持つ身でありながら私と分け隔てなく接してくださいました。私にとっては最高の兄です!」

「なるほどね……」

 

 アロエラは二人の関係にどこか納得した表情を浮かべた。

 アロエラにも腹違いの兄がおり、彼もまた立場を超えて自分に優しくしてくれた。

 フォルニアがスタンフォードを慕う気持ちは理解できないでもなかったのだ。

 

「そうだ、ニア。兄上は来賓の対応で忙しいから合うのは厳しいと思うよ」

「そうですか……残念ですがお仕事なら仕方ありませんね」

 

 ハルバードは現在、第一王子として、生徒会長として来賓の対応をしている。

 フォルニアとの関係もあまり良くないため、むしろスタンフォードは安堵していた。

 王族兄妹が揃ったことで、ふとブレイブは気になっていたことをスタンフォードに尋ねる。

 

「そういや、来賓には国王もくるんだろ。どんな人なんだ?」

「父上はそうだな……兄上とそっくりだよ」

「あはは……ですね」

 

 苦い表情でそう告げるスタンフォードにフォルニアも苦笑しながら同意する。

 

「オクスフォード陛下は賢王って呼ばれているくらいだもんね。臣下には厳しいけど、国民のことを第一に考えてくれるって王様だって国民の支持はあるのよね」

 

 オクスフォード・クリエニーラ・レベリオン。

 レベリオン王国の国王であり、スタンフォードやハルバード、フォルニアの父親だ。

 

 父親といっても、ハルバードやスタンフォードのような王位継承権を持つ息子達ですらあまり面会の機会はないほどに多忙な人間なのだ。

 

「毎年の恒例行事とはいえ、学園祭にわざわざ二日間も予定を開けてきてくれるのには頭が下がるよ」

「滅竜魔闘で優勝した生徒は陛下からお言葉を賜ることもできるし、やる気も出るってもんよね」

 

 毎年、滅竜魔闘で優勝した生徒は国王から直接優勝を祝われる。

 滅竜魔闘で優勝すると、実力を誇示するだけではなく、もっと大きな栄誉を手にすることができるのだ。

 

「そういえば、女子部門の予選ってそろそろじゃないか?」

「いっけない! アタシちょっと行ってくるね!」

 

 女子の部の予選がそろそろ始まる時間だと気がついたアロエラは慌ただしく、滅竜魔闘の特設会場へと駆け出す。

 

「せっかくだし僕らも見物に行こうか」

「そうだな」

「魔導士の戦いって初めてだから楽しみ!」

「私もです!」

 

 ついに運命の歯車は回り出す。

 スタンフォードは気を引き締め直すと女子の部の結果を見届けるために会場へと急いだ。


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