古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜 作:黒い小説家
紅魔館のメイド長、十六夜咲夜との戦いが終わった後のこと。
かなりの苦戦を催し、身体に幾多の傷を負いながらも大和は勝利を収めて一息付く。
身体中に刺さった数本のナイフを引き抜くと、そのままナイフを地面に落とす。斬で十分だったのでこれ以上の武器は必要なかったからだ。
「十六夜咲夜か……とんでもねぇ相手だったな……」
時を止める能力に加えて美鈴と同等のあの身体能力、まさに見事なまでの異能と体術の融合した理想の姿。
今回の戦い俺が勝ったが、正直勝てるかどうかも怪しかった。間違いなく人間のままだったら勝てなかっただろう。それだけ十六夜咲夜は強かった。
異能があるとはいえ、肉体の最高峰とも呼べる大和が身体能力で負ける可能性があった異常事態、もしそんなことを草薙家の一族が知ったら十六夜咲夜を総出で一族に迎え入れていただろう。
「悪いな。お嬢様とか言う奴に会わせてもらうよ。」
しかし、咲夜は返事をしない。
最後の袈裟懸けを喰らって気を失っていたのだ。
幸いなことに呼吸はしているので死んでいる訳では無い。ちゃんと息もしてるし心臓も動いてる。
まぁ、大和も殺す気で袈裟懸けを喰らわしたわけではなかった。一撃を与える瞬間に力を緩めて威力を殺し、死なない程度のダメージを与えただけだ。
しかし、それでも袈裟懸けによって与えた傷口はかなり深く、骨や内蔵までは達してないものかなりの出血が見られており、このまま放置していると死ぬのも時間の問題だった。
殺さないように手加減したのに、このまま死んだらただの無駄骨だと思ったのだろう。大和は風呂敷を開いて傷薬を用意する。
そして、何を思ったのか霊夢に近づいてその今出した傷薬と包帯を手渡そうとする。
「霊夢、悪いけどこの傷薬、咲夜ってやつに塗ってくれないか?」
「はぁ!?あんた何考えてるの?」
霊夢には到底のことながら理解し難いことだった。
自分を殺しに掛かった相手をなぜ生かそうとするのか?この咲夜は妖怪の下僕なのに救おうとするのか。それなら何故自分がやらないのか。
この大和のやってることはとてもながらわからなかった。
「助けたいならあんたがやれば良いでしょ?それをなんで私が……」
「先に進みたいのもあるけど、そもそも俺は男じゃん?見ず知らずの女性の服を脱がせたり触るのはあれじゃん?」
命に関わるとはいえ、セクハラ動向の問題ではなくなる。明らかな性犯罪。異変解決しにきたはずが女性の服を脱がして触ったことを嫁が知ったら間違いなく殺される。
それなら簡単、俺が触らなければ良い。幸いや事に少女の霊夢がこの場にいる。なら任せるのが的確で最適だろう。
「まぁいいや。取り敢えずよろしくな。」
「待ってください。私も!」
「あっ!ちょっと待ち………!」
霊夢の言葉を最後まで聞くこと無く、大和は走ってそのまま射命丸と共に先へと進んでいった。
紅魔館の玄関で取り残された霊夢と気絶してる咲夜。
あまりにも自己中過ぎる大和に対してはぁ〜とため息をつく霊夢、それからふと咲夜に視線を向けて見つめる。
「ほんっと、どうしようもない馬鹿ね」
先程まで命を取り合う殺し合いをしていたのにも関わらず、致命傷を負わせて勝ったと思えば、殺すどころか寧ろ助けると言う始末。
あまりにも優しすぎるうえに甘すぎる。どこかの正義の味方のように非殺の心得や誰であろうと殺してはいけない理由でもあるのか?
「全く仕方ないわね。」
大和の願い通り、嫌々ながらも霊夢は咲夜の服を脱がして、傷口に傷薬を塗る。
本当に妖怪の下僕の人間、しかも異能を持つ人間を生かしておいても良いのかと思ったが、また悪さをしたら自分が退治すれば良い話だったので、まぁ、今回は特別に治療してやろうと思った霊夢だった。
一方その頃、大和と射命丸は強い気配を辿ってある場所へと到達していた。
『〜一方、大和達は〜』
数分前に大和と射命丸は長い廊下を走っていた。
先程戦ったのにも関わらず、傷がみるみると治っていく。痛みも少しずつだが引いていく。妖気のせいなのか凄い再生能力。人間とは比べ物にならないくらいだ。
しかしそんなことよりも大和は気になることがあった。
次に相手になるのは誰なのか、どんな奴が相手になるのか。
武術や体術を極めた美鈴、技術と身体能力と異能を融合させた咲夜、みんな曲者だった。
それと同時に理解してしまい、恐ろしいと思ったのが、二人とも戦い方が明らかに異なること。
美鈴は体術を駆使して戦う接近戦、咲夜は異能を使って遠距離からナイフを飛ばす遠距離戦。
次の相手も恐らくは自分が思いもしない能力を使って戦闘をする相手だろう。
油断はできない。気を抜けば死ぬ可能性がある。
そんなことを考えながら一階を探索していると強い妖気?いや、妖気とは異なるが強い気配に導かれる。
強い気配を辿ってみると、そこには地下室に通じる階段があった。
『〜大図書館〜』
本の世界と言ったら良いのだろうか?
地下室の扉を開くと、そこには大部屋、大豪邸が丸ごと入るほどに広い大部屋だ。
全てに自分の身の丈を遥かに超えた巨大な本棚があり、そこにはほとんど隙間なく本が並べられていた。外の世界の一番大きな図書館では歯が立たないであろう膨大な量、恐らく人生を何十回と繰り返さないと読みきれない程の量だった。
「なんだこれ?図書館か?」
それにしてはあまりにも膨大過ぎる。こんな量の本を読める奴なんて不老不死くらいだろう。
「すごいですね!」
射命丸は尽かさず写真を取る。
大和は歩く、強い気配のある方向へと。
しかし何だこの気配は?妖気でも人の気配でもなければ、妖精とも異なる。全く真新しい気配。
それも辿ればいずれわかる。しかし、なんか嫌な気配だ。
そんなことを考えていると、一人の少女がこちらに向かって来た。
霊夢と同い年ぐらいの少女が箒に乗ってこちらに突っ込んできたのだ。
片側だけおさげにして前に垂らした金髪と金色の瞳。リボンのついたつばの広い黒い三角帽、黒系の服に白いエプロン、可愛らしい魔法使いのような身なりをしている。
そのまま大和のボディーに向かって突っ込んでくると、大和は少女に張っ倒されて馬乗り状態になった。
「いってぇな……いきなりなんだよ」
「悪い悪い。よそ見して逃げてたらぶつかって。」
「逃げてた?」
取り敢えず大和は立ち上がると、小柄な金髪の少女を猫のように持ち上げて立たせる。
それにしても逃げてたって何から?ここには妖怪もいなければ咲夜のような人間の気配もしない。
しかし、なんか妙な気配、人の気配ではない。しかし妖気に似たような気配を前方から感じた。
そして、こちらへと近づいて歩いてくる。
現れたのは二人の少女だった。
長い紫髪の先をリボンでまとめ、紫と薄紫の縦じまが入った、ゆったりとした服を着用。さらにその上から薄紫の服を着、ドアキャップに似たZUN帽を被る。また服の各所に青と赤と黄のリボンがあり、帽子には三日月の飾りが付いている。全体的にゆったりとしており、服装は寝間着にちかいものだ。
それに側近なのか、紫髪の少女の隣にはまるで秘書のような人間の形をした悪魔のような少女がいた。
赤い長髪で頭と背中に悪魔然とした羽、白いシャツに黒褐色のベスト、ベストと同色のロングスカートで、ネクタイを着用している。
「何か変だと思ったら、またネズミが入り込んでたのね」
ネズミというのは俺達のことを言ってるのだろう。人間とも妖怪とも思っていないようだ。
どうにも解せない。まるで自分たちの方が実力が格上だと言わんばかりに。
「てめぇなんだ?あの紅い霧はお前たちの仕業か?」
「そうよ。あの霧で幻想郷は永久の闇に閉ざされ、この紅魔館の主レミリア・スカーレットものになるの」
レミリア・スカーレット、それがこの紅い館の主であり、この異変の首謀者の名前。
名前を聞いてやっと分かった、この異変の首謀者は俺達のような東洋の妖怪ではなく西洋の妖怪だった。
それならこの西洋の紅い館も納得がいく。
ようやく謎が解けたような感じだった。
「そうはされるかよ。てめぇら全員ぶっ飛ばして異変を解決してやる。」
すると何を思ったのかパジャマのような服を着た紫髪の少女は呆れたような表情を浮かべて溜息をついた。
「やれやれ、流石は幻想郷。ちょっと力があるだけで慢心してる辺り、自分よりも強い相手と戦ったことがないのね」
「……あぁ!?」
そんなことはない。自分よりも強い相手とは何度も戦ったことがある。
兄の武尊、師匠の御巫紅虎、八雲紫、どれも自分よりも遥かに強かった。そして勝てなかった。
だからこそ分かる。自分の実力がどれほどなのか。
それに、この紫は俺の実力を分かっていない。
紅美鈴、十六夜咲夜を俺が倒したことを知らないのだ。
二人は間違いなく強者だった。その二人に俺は苦戦はしたが勝ったのだ。
「見せてあげるわ。私の魔法を」
「その前に名前を名乗れ!名前も知らん奴を倒しても意味ないからな!」
「やれやれ、話しが通じないのね。それに、その日本の武士のような思考?幻想郷の平均的な知能が思いやられるわ。
まぁ、良いでしょう。私はパチュリー・ノーレッジ。レミリア・スカーレットの知人であり魔女よ。」
「俺は草薙大和。てめぇを倒す名だ!」
「どうでも良いわ貴方の名前、いちいち中途半端に強い妖怪の名前なんて覚えてられない。」
「なんだとこの野郎!?」
パチュリーってやつ、完全に俺のことを見下している。それに中途半端、自分から言うのは良いが他人から言われるのは嫌いな単語だ。
絶対に許せない。もはや戦いの火蓋を切るのには十分過ぎる。
怒りのあまりに大和は抜刀する。
「やれやれ、ちょっと本当のことを言っただけで怒るなんて、本当に沸点が低いのね。カルシウム取ったら?」
「余計なお世話だ!」
「まぁ良いわ。それじゃあ見せてあげる。貴方の知能や常識では遠く及ばない魔法を」
パチュリーは手に持っていた鈍器のような本を空中で開くと、周囲に魔法陣のような紋章が展開される。
戦いの火蓋が切られた合図だった。
大和は瞬時に瞬歩を使って間合いを詰めた。
相手に反撃も攻撃を繰り出す隙を与えない。音速を超えた神速の動きで相手の命を刈り取る
射程距離範囲内まで間合いを詰めた。
大和が刀剣を振りかざす。
しかし。
パチュリーは驚きもしなかった。いや、寧ろどこか余裕を持っている。
そしてパチュリーの周りにバリヤーのようなものが張られた。
しかし、構わなかった。
大和はバリヤーに向かって刀を振るう。
「ちっ!」
しかし、案の定、パチュリーが張ったバリヤーは見事に大和の攻撃を防いで刀を弾いた。
「なるほど、美鈴みたいな奴ね。身体能力で戦うタイプか」
今のでわかった。異能は持っていない。ただ身体能力を酷使して真っ向から勝負を挑む。原始的でわかりやすいタイプの戦闘型の妖怪。
だが、美鈴よりも妙な技を使う。見たことのないとても珍しい技だ。
それに普通の妖怪と思っていたが、何かが違う。
普通の妖怪は単細胞で知能も低い。
しかしこの大和、技を使うし武器も扱う、そして攻撃の精度もまるで居合道のように正確。
「ちょっと試してみようかしら?」
何を思ったのか、パチュリーは周囲に霧のようなものを発生させる。
妖気?なのか?しかし若干異なる。別の気のように感じる。
大和が霧に触れると。
「……ッ!?」
急に身体が軽くなった。それに先ほど負った傷がみるみると塞がっていき回復していく。
なんだこの霧?俺の回復のためのものなのか?
何故だ?敵に回復させて不利な戦法に走るのか、何かあるのか?
大和の様子を見て何かを悟ったのか?パチュリーは納得したような表情をする。
「なるほど……」
大和の動きが加速する。そして無数の斬撃を放つ。
斬撃が精確に鋭く的確に、音速を超えるほど素早く、明らかに基礎能力が上がっていた。
斬撃は威力を増し、バリヤーを揺るがすほど強大になる。
しかし、パチュリーはびくともしない。寧ろまだ余裕を持っているほど。
数百の斬撃を放ってもバリヤーは破れない。
後退して大和は様子を見る。
「その程度ね。それじゃあ私からいくわ」
空中に火の玉を精製する。それはとても熱く、まるで小さな太陽のようだった。
火の玉は徐々に大きくなっていき、熱風が周囲に発生する。あまりの熱気に汗が流れる。
まさかとは思うが、本当に太陽を作っているのか?
「ロイヤルフレア」
パチュリーは大和に向かって太陽のような火の玉を放つ。ロイヤルフレアと言う技らしい。
恐らく喰らえば丸焦げ、最悪消し炭になる可能性が高い。
しかし大和は逃げることも隠れることもせず、太陽に向かって立ち向かう。
それに、この太陽の玉は妖気に似たものを感じる。もしかしたらあの技を使えるかも知れない。
大和は目を凝らす。
そして視えた。
妖気と妖気の境目。
斬撃破を撃つための虚空の裂け目が。
「……斬撃破!!」
大和は斬を虚空の裂け目に沿って振るう。
そして発生する。
斬が大和の妖気を喰らうと、斬は刀身から巨大な妖気の斬撃を繰り出す。
斬撃は非常に大きく、向かってくるパチュリーのロイヤルフレアを相殺するどころか丸々と喰らい尽くす。
ロイヤルフレアを喰らったことによって更に斬撃は大きくなり、更に火属性を帯びることになる。
そのまま、パチュリーに向かって斬撃は襲いかかる。
「……っ!?」
流石のパチュリーも大和の斬撃破には驚いたのだろう。あまりにも予想外のことに驚きを隠せずにいた。
しかし、驚いても対応できないわけではない。
永年集めて蓄えてきた知識が本領を発揮する。
パチュリーは水を纏った石の城壁を少し傾けて自分の前に配置する。
そして、斬撃と水と石の城壁がぶつかり合う。
水の城壁は太陽のような火を纏った斬撃を防ぐと、あまりの熱量に壁に纏った水が蒸発する。
大量の水蒸気が発生し、周囲が白い霧に包みこまれる。
だがそれでも、壁と斬撃の戦いは終わらない。
しかしその戦いもすぐ終わりを迎える。
単なる偶然なのか、それともパチュリーの計算通りなのか、斬撃は傾いた壁に沿って軌道がズレると、そのまま標的であるパチュリーから大きく外れる。
そのまま斬撃は本棚にぶつかり、派手に本と巨大な本棚を破壊尽くす。
パチュリーは一旦落ち着きを取り戻し、一息ついた。余程今の攻撃には焦ったと見える。
「驚いたわ。まさか飛ぶ斬撃、しかも私の魔法を取り込んでカウンターする技なんて」
「外したが、今度は当てる。」
「ふざけないで、今の技でわかったわ。貴方に大型魔法を撃つのは危険過ぎる。貴方のその技+私の魔法を反撃で喰らうなんて嫌よ。」
どうゆうギミックで発生するのかはわからない。しかし、最初から撃てないということは何か特殊な事をしない限りは使えないはずだ。
それにこの半妖、一見何も変化は無いと思われるが、先ほどで妖気がかなり消費して弱まっている。
これは推測だが、今の斬撃は持ち主の妖気を刀が喰らうことによって、刀が巨大に肥大化させた妖気を刀身から斬撃を放つという、至ってシンプルで強力な技だと思われる。
そうだとすれば、何度も撃てるはずがない。
妖気が無くなれば、妖怪は死ぬのも同然。それにあの巨大な斬撃を撃つのに大量の妖気を消費している。
精々、撃てたとしてもあと二~三発が妥当か。
「魔法撃たなくてもな。こっちには接近戦があるんだよ!!」
大和は再びその場からいなくなる。
そして次に現れた時にはパチュリーのバリヤーを袋叩きに刀で何度も斬ろうとする。
先程よりもスピードが一段と速くなっていた。その速度はもはや音速に匹敵するほどに。
それにパワーも上がっていた。バリヤーを揺るがすほどに強くなっている。
身体の調子があまりにも良すぎる。まるで無限に、永遠に動けるのではないのかと錯覚してしまうほどに。
五分が経過したのであろうか、体感ではまだ数秒しか動いてないと思ったが、千を超える斬撃を放ってもバリヤーは未だに破れない。あまりにも頑丈過ぎる。
それに対してパチュリーは未だに動くことはない。かなり余裕を持っていた。
このまま破れるまで攻撃を続けてやる。そう大和は思った。
しかし、突然それは終わる。
「……ごふっ!!」
身体が動かなくなる。
そして突然、大和は大量の血液を口から吹き出した。
吐血だけではない。身体が痺れて動かない。吐き気もして呼吸も苦しい。心拍数がおかしい。
大和の身体に明らかに異変が起きていた。
内蔵が異常を起こしての吐血、目が充血して血の涙が出てる。脳もしくは神経が異常を起こしてるのか手足が痺れて動かない。呼吸困難。心拍数の増加。
「……なんだ……これ……?」
更に吐血する。しかもその量は尋常ではなく500ml以上は軽く血を吐いてる。
「てめぇ……何をした……?」
「簡単なことよ。貴方半妖でしょ?周囲に人間なら即死する妖気を撒いただけ。残念なことに半分妖怪だから妖気で殺すことはできないけど」
それじゃあ、最初に周囲に撒いた霧は妖気だったのか。
それに俺が半妖と推測と仮定してこの戦法をしたとでも言うのか。
「でも、何故だ?」
「冥土の土産に教えてあげる。妖気とは人間に取って猛毒、半妖も例外じゃない。最初は異常な再生能力と身体能力が爆発的に向上する。
でも過剰摂取をし続ければ話は別、身体が異常を起こして妖気中毒に至り貴方みたいになる。典型的な症状よ」
まさかとは思うが、これを知ってたうえで魔法どころか攻撃しなかったのか?
あの霧で妖気中毒にするために防御に徹底して、しかも俺の身体の妖気の循環を良くするために、わざと攻撃を仕掛けさせていたのか?
失敗した。まさか敵の思惑にまんまとハマるなんて、全てはパチュリーの掌で踊らされていたなんて。
このまま負けるとでも言うのか。
「さて、さっきの斬撃もできなければ、動くこともできない。これで安心して貴方を倒すことができる。」
斬撃を撃てる力もない。それどころか指の一本すら動かすことはできないので逃げることも反撃することも不可能。もはやチェスで言うところのチェックメイトまできていた。
正直、この半妖は強かった。ただ自分の知識と防御魔法と戦法が一歩先を行っていた。
認めてはあげよう。
「それじゃあさようなら」
パチュリーは再び太陽にも似た火の玉、ロイヤルフレアを造り出す。どうやら大和を消し炭にするようだ。
大和は逃げることも回避することもできない。このまま終わってしまうのか。
その時だった。
ロイヤルフレアに向かって突然水の塊が飛んでくる。
そしてロイヤルフレアは大和に当たるどころか、完成する前に爆発して消えていった。
パチュリーは突然何事なのかと驚きを隠しきれなかった。
「またネズミ!?」
魔理沙や大和の他に侵入者がいたのか。
そして、大和の背後から足音と声が聞こえる。
「まったく。なんだそのザマは?」
聞き覚えのある声がした。現代で何度も聞いて昔から知ってる声だった。
その声とは現代で死んだはずの。
「……和生?」
姿を現したのは、現代で八雲紫に殺されたはずの、大和の弟、草薙和生だった。
しかし、容姿が以前とは異なる。
服装は現代にいた頃と変わらず、ジーンズ、青いジャケットに白いTシャツを着ている。
しかしそこではない。
髪の毛が所々金髪になっている。それに身体の至る所の亀裂のような傷跡が刻まれている。
「俺が目標とした奴はこんな雑魚じゃないと思ったけどな。たかがこんな小娘に負けるなんて、とんだ期待外れだよ。兄貴。」
突如として現れた、草薙家の三男、和生。
何故、生きているのか?そしてどうして幻想郷に来たのか。何の目的で紅魔館にやって来たのか?
謎に包まれたヴェールが明かされる。
投稿遅れて申し訳ありません。全然アイデアが生まれなくて迷宮してました。
そしてこの度UA20000回以上、投稿話数が100を超えました。
読者の皆さまありがとうございます。
最後まで頑張って執筆しますので、応援宜しくお願いします。