古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜   作:黒い小説家

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二十一話 新たな武器

 腹部に怪我を負ってから数日後、大和は驚異的な回復力により怪我をほとんど完治させ、御巫医院にあるリハビリ室で普通に身体を動かしていた。

 

 本当なら完治させるのに一週間以上掛かるところ、大和は驚異的な回復力と自己再生能力により約三日程度で完治させた。

 

 これには流石の紅虎も予想外だったのだろう。驚きはしなかったものの、『良い意味で私の予想を覆してくれましたね』と言っていた。

 

 ちなみに紅虎から怪我が完治するまでは絶対安静と言われていたので、その期間は学校を休ませてもらった。

 

 時間はだいたい八時頃、御巫医院にあるリハビリ室には色々なトレーニング器具やリハビリ器具があるが、現在の大和は一切の器具を使わずに片手で長時間逆立ちをしていた。

 

 それからある程度の時間が経過すると、大和は全身を支えている腕を出来る限り曲げた瞬間、まるでジャンプでもするかのように瞬間的に腕を伸ばして高く飛び、全身を宙に浮かせた。

 

 そして宙に浮いたまま回し蹴りを二回放ったあと瞬時に身体の体勢を整えて、ゆっくりと両足で地面に着地する。

 

「相変わらず凄い動きをするわよね、衰えと言うものを知らないのかしら?」

 

「いや、やっぱり以前と比べて身体が鈍ってる。また鍛えて取り戻さないといけないな」

 

 数日程度、一切の運動をしたかっただけで、腕力、握力、腹筋、背筋、足腰は若干弱くなったし、身体の反応速度が以前に比べて遅くなった気がする。

 

 しかし、それがわかるのは自分の身体の事を良く理解している大和だけであって、幽々子からしてみれば以前と何が違うのかよくわからなかった。

 

「そうかしら? 今のままでも十分強いと思うのに」

 

「俺の目標は紅虎さんと兄貴を倒すこと、だから今のままでは不十分過ぎるくらいだ。身体を鍛え直したあとは、技術面も磨かねぇとな」

 

 俺の今までの信念は誰よりも強くなること、そのためには最終的に師匠である御巫紅虎、そして兄の武尊を武倒さなければいけない。

 

 考えてみれば、俺が今まで強くなるために鍛練やトレーニングをしてきたのは、師匠の紅虎と武尊を倒すためだったのか。正直なところ、今の俺の実力では越えることは出来ない壁だが。

 

「そういえば紅虎さんって何であんなに強いのかしら?」

 

 超人的な戦闘能力を持つ大和をまるで赤子の手をひねるかのように簡単に倒してしまう御巫紅虎、その強さはまさに怪物と呼ぶのに相応しい。

 

 それに以前の闘いでは、大和相手に余裕な態度を見せており、それから察するに紅虎は底を見せておらず、本気を出してはいなかったのだろう。

 

「それは俺も知らねぇな、てかあの人の事はほとんど知らねぇ」

 

 紅虎さんの強さの秘密どころか、年齢、出身、家族構成、過去の経歴、今までにどうゆう武術や鍛練に精通してきたのか、わからないことや謎に包まれていることが沢山ある。

 

 それに幽々子さんに言われてみればそうだな、俺 も中学の頃から色んな奴を相手にしてきたが紅虎さんの強さは文字通り異常、どうやったらあんな強さを身に付けれるのか?

 

「気になったことはないの?」

 

「ねぇな、紅虎さんの鍛練をこなす事だけで精一杯だったし」

 

 紅虎さんの作ったトレーニングメニューは文字通り殺人的過ぎて、そんなことを考える余裕も暇もなかった。

 

 その頃の俺はまだ中学くらいだったが、今思えばアスリートでも音を上げるようなハードトレーニングだったな。マジで死ぬような思いを何度も味わったよ。

 

 そんな昔の事を思い出しながら、大和は次に逆立ちをしながらゆっくりと指立て伏せを始める。

 

「そんなに知りたいならよ、本人に聞いて来な。俺はもう少し身体動かしてるから」

 

「良いの?」

 

「構わねぇよ、俺の運動見てるよりはマシだろうし、気にせずに行ってきな」

 

 そう言うと、紅虎と話をするため幽々子は大和を置いてリハビリ室から出ていった。

 

 それから幽々子が退室したことを確認したあと、残された大和は再び逆立ち指立て伏せを始める。

 

「さてと、どうやって元に戻すか?」

 

 衰えた肉体をどうやって元に戻そうかと、大和は逆立ち指立て伏せをやりながら考えていた。

 

 長年鍛え続けた大和の肉体は一般人とはものが違う。仮に準備運動をするとなると、まず並みの運動量では心臓が起き上がってこない。

 

 F1の車がローギアで走り続けるとエンストを起こしてしまうように。

 

 故にアスリートが音を上げる程のハードなトレーニングをやり続けなければ、元の身体能力を取り戻すことはできない。

 

 これからのトレーニングメニューを頭のなかで考えながらも、大和は休憩する暇もなく常に運動をし続けた。

 

 

 

 

 

《御巫医院・診察室》

 

 

 

 

 診察室には椅子に座ってくつろぎながら患者のカルテを片手に眺めている紅虎がいた。

 

 患者が誰もやって来ないとき紅虎は仕事と暇潰しのため、基本的にカルテや様々な医学の本を読んでいる。

 

 そのため検察室にある本棚には基礎医学や現代医学はもちろん、漢方医学や鍼灸医学などの東洋医学と、幅広い医学の本がずらりと並んでいる。

 

 突然ドアをノックする音が聞こえると、その直後にドアを開けて幽々子が診察室に入ってきた。

 

「おや幽々子さん珍しいですね、私に何かご用ですか?」

 

「どうも紅虎さん、ちょっとお話の相手になって貰っても大丈夫ですか?」

 

「構いませんよ、今のところ患者さんは誰も来ていないので」

 

 そう言われると幽々子は紅虎の目の前にあった椅子にゆっくりと腰を下ろした。

 

 それに対して紅虎は手に持っていたカルテを机の上に置いて幽々子の方向に身体全体を向ける。

 

「それで幽々子さん、お話とは何ですか?」

 

「その…単刀直入に言いますと、紅虎さんの事を色々知りたいです。大和がほとんど知らないと言ってたので」

 

「なるほど、つまり探求心を満たしたいということですか」

 

 そう言うと紅虎は右手を頬に添えると、何か考えているような素振りを見せる。

 

 そして、それから数分程度無言の時間が続いたあと、ようやく紅虎が口を開いた。

 

「わかりました。ある程度のことなら何でも答えてあげますよ」

 

 何を悩んでいたのかは知らないが、取り合えず質問しても良いらしい。

 

 紅虎さんに関して知りたい事が色々盛り沢山あるが、まずは比較的に軽い質問を最初にしてみよう。

 

「それじゃあ最初に、紅虎さんの歳は幾つ?」

 

「年齢ですか、確か今年で三十になりましたね」

 

「えっ!? そんな歳には見えないわ」

 

「ふふふ、良く言われます」

 

 外見から判断して二十代前半、多く見積もっても二十代後半だと思ったのだろう。それに容姿や声が女性にかなり近いからか、紅虎の的確な年齢を判断することが非常に困難。

 

 と言うよりも紅虎の見た目は何処からどうみても容姿端麗な女性の外見をしており、今でも幽々子は紅虎が本当に男なのかと疑ってしまうレベル。

 

「じゃあ次に、家族はいるのかしら?」

 

「家族ですか、両親はもう他界してしまいましたし兄弟は誰もいません、それと私はこの通り独身です」

 

「恋人はいないんですか?」

 

「残念ながらいませんし、作る気もありません」

 

 表情や態度は一切変わらなかったものの、その時の紅虎は何処か悲しそな雰囲気に見えた。

 

「どうしてですか?」

 

「昔の話ですが、取り返しのつかない過ちを犯してしまいましてね、もう二度と恋とか愛はしないと誓ったのですよ」

 

 その瞬間、まるでこれ以上は深く聞いてはいけないと直感が告げてきたのだろう。 

 あまりにも重い紅虎の発言に幽々子は声を出すことができず、その事に関して何も聞くことができなかった。

 

 それから少し間を置くと、紅虎はにこやか表情を浮かべると同時に、いつも通りの雰囲気に戻り始める。

 

「すいません、今の事は忘れてください。私が恋人を作らないのはその人を幸せに出来そうにないし、養ってあげることができないからです」

 

「そうなんですか」

 

 しかし幽々子の内心はまったく納得していなかった。こんな優しくて良心的な人がそんな理由で恋人を作らないのは何か妙に変だと感じたからだ。

 

「他に何か質問はありますか?」

 

「それじゃあ、紅虎さんの強さの秘訣はいったい何ですか?」

 

「強さの秘訣ですか……これと言って特別なものはありませんが、強いて言えば鍛練ですかね。

 それに私の力なんて別に大したことありませんよ」

 

「それはないわ、大和をあんなに余裕を持って倒しておいて、大したことないなんてありえないわよ」

 

「お言葉ですが幽々子さん、それは勘違いです。あのときは私も結構本気でしたよ。一瞬でも気を抜けば殺られていましたから。」

 

 しかし幽々子には到底の事ながら紅虎の言葉を信じることができなった。

 

 自分も冥界にいたとき、庭師の修行風景などを見ていたので、その人の態度や身動きなどを見ればある程度の実力は把握できる。

 

 本人は結構本気だったと誤魔化しているが、あのときの紅虎は恐らく半分の力も出していない。それにもっと言えば、紅虎がどのくらいの実力を持っているのかは未知数。

 

 どうやったら、そんな化け物染みた強さを手に入れるのか? 本当ならそれを聞き出してみたいが、本人は真面目に答える気はなさそうなので、今日のところは諦めようと幽々子は考える。

 

「さて他に質問がなければ、これでお話を終わりにしますが、どうしますか?」

 

「もう他に聞きたいことはないので、もういいです。質問に答えて頂いてありがとうございます」

 

 自分の話に付き合ってくれた紅虎に対して幽々子はお辞儀をした。

 

 そして診断室から出て大和がいるリハビリ室に行こうとしたのだろう。幽々子は椅子から立ち上がると、ドアに向かって歩いていく。

 

「それと、大和のところに行くのなら、ついでにこれを持っていって貰えませんか?」

 

 そう言うと紅虎は近くにあった、ある物を手に持って幽々子に渡そうとした。

 

 その紅虎が渡そうとしてきたある物とは黒い色の刀袋、その中身は外からではわからない。

 

 まぁ、大和の元に行くことに変わりはないし、決して重そうな物でもないから持っていこうと、幽々子は軽い気持ちで両手を差し出した。

 

 紅虎に黒い刀袋を手渡された瞬間、落としはしなかったものの幽々子の両手にずっしりとした異様な重みが乗り掛かった。

 

「……ちょっ……えっ!?」

 

 刀袋から察して木刀か何かと思ったが、そんな生易しいものではない。持った感じだと恐らく重量は十キロ近くはあるだろう。

 

 見た目では判断できない、異常に重い刀袋に驚きを隠せなかったのだろう。流石の幽々子も唖然とした表情を浮かべ、思わず固唾を呑んでしまう。

 

「これはいったい?」

 

「重いでしょう? 大和専用の武器ですもの」

 

 こんな重い武器を一般人が扱うことは到底できないだろう。しかし裏を返せば常人離れした身体能力を持つ大和だからこそ扱える武器だとも考えられる。

 

 だけどこんなに重い武器、一体中身は何なんだろうか? 以前に大和は簡単な剣術の稽古をしてたし、この刀袋から考えて恐らく刀剣の類いに属する武器だとは思うが。

 

「今は開けてはいけませんよ、中身が気になるなら大和に渡してから見せてもらってください。」

 

「はっ、はい……」

 

 しかし、今の幽々子に取っては刀袋の中身なんてどうでも良かった。

 

 両手で持っても刀袋が重かったのだろう。幽々子は少し辛そうな表情を浮かべていた。

 

 力が弱いとは思っていなければ、寧ろ庭師からたまに剣術を教わっていたので並みの人よりは力があるとは思う。

 

 刀袋を頑張って持ちながらも幽々子は少しきつそうな表情を浮かべながら診断室から出ていき、大和がいるリハビリ室に向かっていった。

 

 

 

 

 

《リハビリ室》

 

 

 

 

 

 幽々子が紅虎と話している間ずっと身体を動かしていたのだろう。大和は未だに逆立ちで腕立て伏せをしており、回数は数えてないがだいたい数百回ぐらいはやっているだろう。

 

 ずっと動いていたおかげで身体の筋肉は温まり、発汗作用もばっちりと働いている。ようやく準備運動をやり終えたところだな。

 

 さっそく本気でトレーニングをしようと逆立ち腕立て伏せを止めようと思いきや、刀袋を両手で持って幽々子がリハビリ室へと入ってきた。

 

 それに気づいた大和は、まず逆立ちを止めると幽々子がいる方向に歩いていく。

 

「おっ、戻ってきたのか」

 

 それに対して幽々子はリハビリ室に入ってくると同時に大和の姿を見ると、思わず驚きの表情を浮かべてしまった。

 

 恐らく一度も休憩せずに、ずっと動き続けていたのか、大和の身体からは大量の汗が滝のようにダラダラと流れており、床も水溜まりができるほどにびちゃびちゃになっていた。

 

 しかし、これほどの汗をかいても大和が疲れている気配はなく、寧ろまだまだ動き足りなさそうな感じがしていた。

 

「もしかしてずっと運動してたの?」

 

「まぁな、ようやく身体が温まってきたところだ」

 

 汗も大量に流れているし運動も結構ハードに見えたが、今までやっていた運動はあくまでも準備体操のようなものだったのか。

 

 大和の常人離れした肉体に関心している最中、幽々子は紅虎に頼まれていた事を思い出すと、手に持っていた刀袋を大和の目の前に差し出した。

 

「そうだったわ、紅虎さんが大和にこれを渡せって」

 

「なんだそれ?」

 

 幽々子が手に持っていた刀袋を差し出してくると、それに対して大和は何かを察したような表情を浮かべながら差し出された刀袋を軽々と受け取る。

 

「あぁ……これか」

 

 さっき紅虎さんが大和の専用武器とか言っていたがそれも頷ける。かなり重いはずの刀袋を大和はまるで竹刀でも扱うように軽々と片手で持っているのだから。

 

 しかし、それよりも幽々子は刀袋の中身がどうゆうものなのか気になって仕方がなかった。

 

「それはいったい何なのかしら?」

 

 そう言われると大和は紐を解いて刀袋から中身を出す。そして刀袋の中から姿を現したのは一本の武器だった。

 

 全長は120センチ、刃は付いておらず木刀のような形状をしている鋼鉄の鈍器、刀身は光沢のある黒色、金属で作られた長丸形の鍔が付いており、柄には黒いグリップテープが巻かれている。

 

「これは紅虎さんに依頼して作って貰った、俺専用の鍛練具兼武器だよ」

 

 これは純度の高い鋼鉄で出来てた鉄刀、重量も強度も普通の木刀とは比較にならない。例え相手がどんな接近武器を使ってきても簡単に粉砕することができるだろう。

 

 刃は付いていないので人を斬刺することはできないが、その代わりに人の命を断つのには十分過ぎるほどの重量と頑丈さを持っている。

 

「その金属の刀は本当に使えるの?」

 

「まぁ使えるよな、使えねぇといけねぇし」

 

 この鉄刀があれば木刀はもちろん、刃物相手なら受けただけでも間違いなく刃を粉砕することができる。

 

 しかし遠距離武器を除く、近接武器の破壊と無力化を想定して作り上げた武器殺し。ただこの武器の問題点としては単純だが非常に重たくて使いづらいところ。

 

「でも武器を持つ必要があるのかしら? 大和なら素手でも十分強いのに」

 

 武器なんて使わなくても大和は生身の肉体だけ十分に強い。それなのに単純且つ危険なこの武器達を使う必要があるのか?

 

「前にも言っただろ。俺は紅虎さんに武術以外にも武器術を叩き込まれたんだ。

 念のために自分専用の武器の一つや二つ所持してても損はないだろ」

 

 日本刀とか好きなこともあって刀剣類の武器を持っているが。本音を言うと紅虎さんに一つでも武器を所持しろと、威圧を掛けられたのもある。

 

 それに稀のことだが、相手によって素手喧嘩(ステゴロ)だと分が悪いときがあった経験があるので、武器を使うことは決して少なくはない。 

 

「だから武器を持つのね」

 

「ただ問題だったのが、並大抵の武器は脆くて使えないことだな」

 

 別に普通の武器を使えないことはないが、仮に扱ったら俺の力に耐えきれず、ほとんどが一撃で壊れてしまい、結果的に使い捨ての武器になってしまう。

 

 その例で、俺が地元にあった剣道道場へ学びに行ったとき、防具を着た人形を相手に竹刀を振るって、竹刀と人形を一撃で壊したことがある。

 

 他に実戦だと、武器を持った複数の不良達に喧嘩を吹っ掛けられたとき、近くにいた不良から木刀を強奪して他の不良が持っていた鉄パイプをへし折り、それと同時に俺の手に持っていた木刀も粉砕したこともあった。

 

「なんか納得できちゃうわね」

 

「使い捨てになる道具なんて使っても思う存分に闘えねぇからな」

 

 そういう事が何度もあり、俺は自分の力に十分耐えることができる頑丈な武器が欲しいと思った。

 

 そして、どんな武器が相手でも、どんな敵が相手でも決して壊れない武器が欲しいと言う願いが、この武器を生んだ。

 

 武器を刀袋に再び納めると、大和はその刀袋を部屋の隅っこにゆっくりと置いた。

 

「まぁ今では俺を手こずらせるような強い奴は紅虎さんと兄貴以外はいないから、こいつの出番はほとんどねぇけどな」

 

「それなら聞きたいんだけど、大和はどうゆう相手なら武器を使おうと思うのかしら?」

 

「……あっ? いきなりどうゆう奴って言われても、そうだな……」

 

 あまりに突然な幽々子の質問に対して答えがすぐにでなかったのだろう、大和は思わず無言になって頭を抱えてしまう。

 

 今思えば考えたこともなかったな。俺は基本的に素手のみで喧嘩してたが、相手は丸腰はもちろん、ナイフなどの刃物、木刀や鉄パイプなどの鈍器、果ては飛び道具類も使われたことはあった。

 

 俺を本気で仕留めるたいなら大層な銃火器や火炎放射器でも持ってこない限りは話にもならん。

 

 数分間悩んだ挙げ句、まるで吹っ切れたかのように大和は笑顔を浮かべると、幽々子の質問に対して答えを出した。

 

「鬼とか妖怪とか……人間の力ではどうしようもできない、人知を超えた力を持つ化物の類いぐらいかな」

 

 そう言い終えると、大和はその場で手を使わずにバク転を一回やり、バク転をやり終えると今度はシャドーボクシングを始めた。

 

 せっかく温まった身体が冷えることを恐れたのだろう、突然だが大和は運動を再開したようだ

 

 それに対して幽々子は、大和の答えを聞いてから少し暗い表情を浮かべており、小さな声でぼそっと呟いた。

 

「そんなものじゃ……通用しないわよ……」

 

「……あっ? 通用しない?」

 

「あっ…いや……別に何にも言ってないわよ」

 

「そうか? なら良いんだけど」

 

 自分の聞き違いだったのかと解釈して、大和は気に止めることなく運動を続ける。

 

 その後、大和のトレーニングは昼まで続き、昼食を取るまで休むことなく動き続けるのであった。

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