古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜   作:黒い小説家

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三話 草薙和生

公園を離れてから数十分が経った後、二人は薄暗い町中をゆっくりと歩いていた。

 

 辺りに自分達以外の人がいる気配はなく、所々の家に電気の灯りが点いているだけだ。

 

 特に何もなく歩いていると、さっきから自分との距離を置いて歩いている大和が気になったのか、幽々子は大和の顔を見て問いかけてくる。

 

「ねぇ大和、何で私から離れているの?」

 

 幽々子が話し掛けてくると、別に理由なんて何も無いと言わんばかりに取り澄ましたような表情で大和は答える。

 

「いや、特に理由なんてないよ」

 

 本人はそう言っているが、大和が幽々子から距離を置いている理由、それは二つある。

 

 一つは女慣れしていないこと、もう一つは男女が二人して夜道を歩いているところを誰かに見られて誤解を招くのが嫌だからだ。

 

「ふーん、もしかして私と一緒に歩くのが恥ずかしいのかしら?」

 

 まるで大和の心を見通したかのように幽々子がそう言ってくると、図星だと言わんばかりに大和は動揺し照れたような表情を浮かべる。

 

 確かに俺は人とコミュニケーションを取るのが苦手だし、そのうえ女性と関わることがあまりない。

 しかし自分の心境を読み取られた上に、ここまでストレートに言われると、例え本当のことでも否定したくなる。

 

「そっ……そんな訳無いだろ」

 

 真っ向から否定しているが、明らかに動揺した大和の態度を見ると、察したかのように幽々子はクスッと笑みを浮かべてくる。

 

「うふふ、わかったわ、そう言うことにしてあげる」

 

 言うまでもないが完全に図星だとバレている。単純にわかりやすいとはいえ、自分の感情をここまで読み取られると恥ずかしいとしか言いようがない。

 

「……はぁ~ …まったく」

 

 自分の感情を読み取られたことが余程のショックだったのか、大和は呆れた表情を浮かべると自分の顔を手の平で押さえて深く溜め息をついた。

 

 出会ってまだ間もなく、況してや女性にここまで心境を読まれたのは生まれて初めてだったので、どう対応して良いのか全然わからなかった。

 

 そんなことを話しながら歩いていると突然、目の前から五人程の男達がこっちに向かって歩いてくることに気がついた。

 

「……あっ」

 

 見るからにみんな知らない顔だが、近づいてくる男達のピリピリとした雰囲気から悟って、恐らくこのまま通り過ごすことは無理だろう。そう考えると大和の表情は次第に真剣になっていく。

 

 さっきナンパされたせいなのか、近づいてくる男達に気が付いた幽々子は怯えたような表情を浮かべながら、何も言わずに大和の身体に寄り添ってくる。

 

「……大丈夫だ、安心しろ」 

 

 怯えて自分に寄り添ってきた幽々子を少しでも落ち着かせようと、大和は優しく小さな声で励ましてくる。

 

 表情には一切出さなかったが心情的には驚いていた。まさか出会ってまだ間もない幽々子が自分をここまで頼りにしてくれるなんて、思っていもいなかったのだ。

 

 そして大和が考えていた予想通り、こちらに向かって歩いてくる男達は二人の目の前に立ち止まって行く手を阻んでくる。

 

「ちょっとまてよガキ」

 

 数人はいる男達が目の前に立ちはだかってくると、二人はその場で足を止める。

 

「なんだよ……何か俺に用か?」

 

 すると他の男達と比べて体格が大きい、威厳のある男が大和に話しかけてくる。雰囲気から察して、恐らくこいつが男達のリーダー的存在なのだろう。

 

 予想だと、大きな体格と威厳のある雰囲気が見かけ倒しじゃなければ、こいつは他の男達とは違って骨のあるやつだと考えられる。

 

「俺のダチが世話になったからよ、その礼をしに来たんだ」

 

 周りの男達を良く見てみると、さっき公園で会ったような会わなかったような奴がポツポツと見える。まぁ大したことがない奴のことなんて全然覚えていないが。

 

 それにさっきの喧嘩で負かされても懲りずに仕返しをしてくるなんて、こいつら無能なのか恐れ知らずなのか、どちらにしても救い様がない奴らとしか言いようがない。

 

 まぁ、こんな状況は中学から日常茶飯事見たいなものだし、喧嘩をして他者に恨みを買うことは正直慣れている。例え自分が撒いた種ではなくても。

 

「……それで? 俺をどうしようと?」

 

 正直わざわざそんなことを聞かなくても、こいつらが今からやろうとしていることはある程度わかっていた。だが、多少の時間稼ぎになると思ったから何となく聞いてみる。

 

「何の抵抗もさせずにてめぇを叩き潰して、そこにいる女を奪う。 とでも言えば納得かい?」

 

「納得いくわけねぇだろ、あまり調子に乗ってると全員返り討ちにするぞ」

 

 男の嘗めた態度がかなり気に食わなかったのか、冷静さを保ちながらも大和は威圧的な眼光で男達を静かに威嚇する。

 

 例え相手が集団で中には体格の良い奴がいても、格闘技や武術をまったく身に付けず、況してや身体もロクに鍛えていない不良相手には負ける気は微塵足りともしない。

 

「おう上等だ、後で吠え面かくんじゃねぇぞ」

 

 まさに一触即発、一体どちらが先に攻撃を仕掛けてくるか、ピリピリとした気配を周囲に散らす。

 

 しかし、今にでも喧嘩が始まりそうな雰囲気が漂っている最中のこと、一体誰なのか大和と幽々子の後ろからこちらに近づいてくる足音が聞こえてくる。

 

「なんだ?」

 

 その足音が二人のすぐ側まで近いてくると、真っ暗な夜道の中から大和と同い年ぐらいの少年がイライラした表情を浮かべながら姿を現してきた。

 

「なんか騒がしいと思って来たら、俺ん家の近所で何してんだよ? 近所迷惑だろうが」

 

 少年は黒髪のナチュラルショートで眼鏡をかけている。また服装は動きやすそうなジャージに長袖を着ており、雰囲気や顔立ちがどこか大和に似ている。

 

「……えっ?」

 

 誰よりも早く少年の気配に気付いて姿を目にすると、雰囲気や顔立ちが余程大和に似ていたのか、幽々子は驚いた表情を浮かべながら隣にいた大和の顔を何度も見てしまう。

 

 それに対して現れた少年は自分をじろじろと見てくる少女を確認した後、周りが暗くて誰かわからなかったのか、少女の隣にいる男の顔を目を細目ながらしっかりと確かめる。

 

「……あれ?」

 

 少女の隣にいた男が大和だと言うことに気が付くと、少年はさっきまでイライラしていたことを忘れて明るい表情で大和に話しかけてくる。

 

「……なんだ、誰かと思ったら兄貴じゃん、こんなとこで何してんだよ?」 

 

 馴れ馴れしい態度と呼び方から察するに、恐らくこの少年は大和の兄弟なのだろう。

 

 話し掛けられたことでようやく少年の正体に気が付く大和、それと同時に何か察したのか、今から悪いことが起きると言わんばかりに、大和は手の平で顔を押さえて絶望的な表情を浮かべる。

 

「うわぁ……マジかよ……最悪な状況だ」

 

 どうすれば良いのか、この場で一番来てはいけない、来て欲しくなかった奴が今ここにやって来てしまった。

 更に正直なことを言うと男達との喧嘩なんて今はもうどうでも良かった。

 

 何故そんなことになったのかって? それは喧嘩よりも先に、俺にはやるべきことがあったからだ。

 

 そんな大和が内心で慌てていることも知らずに、リーダー格の男は少年に対して気安く話し掛けてくる。

 

「なんだお前? こいつの仲間か?」

 

 突然リーダー格の男に話し掛けられると、少年はまたイライラと不機嫌そうな表情を浮かべて体格の良い男を睨み付ける。

 

「……あぁ? 誰か知らねぇけど、雑魚が気安く話しかけてくんじゃねぇよ」

 

 もう既に相手を格下だと見下しているのか、突然やって来た少年は粗暴な口調で男達に暴言を吐く。

 

 無論、リーダー格の男は自分を侮辱している少年の態度が気に食わなかったのだろう、喧嘩の標的が大和から少年へと移り変わる。

 

「おい…誰が雑魚だって? てめぇ意気がってると叩きのめすぞ!!」

 

 しかしリーダー格の男がどんなに威嚇をしても、少年は恐れる気配が微塵たりとも無ければ、怯むことすらなかった。

 

「……へぇ~ 喧嘩するってことは、それ相当の覚悟は出来てんだよな?」

 

 好戦的でピリピリとした雰囲気を出している男達に対して、怯むどころか少年はまるで獲物を狙う獣のような鋭い眼光で男達を睨み付ける。

 

(……これはマジの方でやばいな)

 

 その少年の表情を見た瞬間に何か危険なことを感知したのか、内心少し焦りを感じながらも大和は冷静な態度で男達に警告をする。

 

「お前ら悪いことは言わない。こいつと喧嘩するなんてバカな考えはやめて、早く逃げた方が身のためだぞ」

 

 若干口の聞き方が悪いが、これでも大和は男達の身を心配して言っている。

 

 本来、喧嘩する相手のことを心配するのは可笑しいなことだが、今はそんなことを言っている場合ではない。最悪な結末を回避するためにはこうするしか方法がないからだ。

 

「…はぁ!? いきなり何をほざいてんだよ、てめぇは?」

 

 大和の言ったことが気に触ったのだろう、リーダー格の男は今にも切れそうな表情で反発してくる。しかしこうなることは言う前から既にわかっていた。

 

「口答えしないで、早く逃げ……」

 

 大和がもう一度警告しようとした途端、突然の如く少年は一人の男に殴り掛かった。そして言うまでもなく奇襲を仕掛けられた男は最初の一撃でノックアウトされてしまう。

 

「……逃がさねぇよ、喧嘩はもう始まってんだからな」

 

 少年の攻撃は一撃では終わらず、まるで追い討ちを掛けるかのように少年は倒れている男を何度も蹴ったり踏みつける。

 

 少年の攻撃がようやく止まった頃、男は歯をほとんど折られて、口の中は傷でめちゃくちゃ、鼻は潰され唇は深く裂けており、顔全体が酷く腫れ上がっていた。

 

「……何だよあいつ?」

 

「いくら何でもやりすぎだろ……」

 

 あっという間のことだった。少年が一人の男を血だるまにするのに数秒も掛からなかった。

 

 その光景を見て、周りの男達が驚愕して衝撃を受けたのはもちろん、近くにいた幽々子ですら驚きを隠しきれなかった。

 

 男を完膚無きまで叩き潰して戦闘不能にさせると、今度はお前達がこうなる番だと言わんばかりに、少年は不気味な笑みを浮かべながら人差し指を立てて男達を睨んでくる。

 

「……どうした? 突っ立てないで早く掛かってこいよ腰抜け共」

 

「こっ…こいつ、完全にイカれてやがる」

 

 さっきの出来事で少年の戦闘能力を理解してしまったせいか、周りにいた男達の大半は怯え恐れて戦闘意識を失っていた。

 

 しかしリーダー格である体格の良い男は少年に屈することなく戦闘意識を保ち続けている。いや、寧ろこの場合はこんな小僧に恐れて怯える自分が許せないから立ち向かうと言った方が正しいのか。

 

「ガキの分際で調子に乗るんじゃねぇよ!」

 

 どちらが強いのかはっきりさせてやると言わんばかりにリーダー格の男は少年の顔面目掛けて渾身の右ストレートを放つ。

 

 が、そんな攻撃、少年からしてみれば単調で鈍いパンチにしか見えなかったのだろう。少年にあっさりと受け止める。

 

「甘いんだよ、俺を嘗めてんのか?」

 

 そのまま少年は両手で腕を掴んで、男をうつ伏せに倒すと同時に肩の関節を固めると。

 

………ゴキゴキッ!

 

 そのまま少年は何の躊躇いもなく、まるで人形の腕をもぐような感覚で男の肩の関節を簡単に外した。

 

 そして、また追い討ちを掛けるかのように少年は既に外れている男の肩を必要以上に痛め付ける。

 

「がぁっ…… あぁっ……」

 

 耐え難い激痛に耐えきれずにリーダー格の男は地面に這いつくばって、ひたすらもがき苦しんだ。

 

「よし頭は潰れたし、あとは…」

 

 敵のリーダーが潰れても喧嘩はまだ終わらなかった。他に残っている男達に狙いを定めて少年は一人ずつ潰しに掛かろうとする。

 

「……ひぃっ!」

 

 唯一の頼み綱であったリーダーが呆気なく倒されてしまった今、残された男達に頼れる者は誰もいない。

 恐ろしさのあまりに男達は走って逃げようとするが、不運にも少年は桁外れの脚力の持ち主であり、少年は逃げ惑う男達を走って追い掛けると、難なく捕まえては一人ずつ確実に蹴散らしていく。

 

 更に捕まえた際には、脳震盪が起こって気を失ったところで顔面に膝蹴りをいれたり。倒れている奴の頭をサッカーボールのように蹴り、更に踵で顔面を踏んで歯を何本もへし折ったりするなど、少年は男達に対して必要以上に暴力を振るう。

 

「……たっ、助けてくれ! おっ、俺たちが悪かったから!」

 

 しかし相手が気絶しようが、怯えて謝ろうが少年は相手に慈悲を与えることもなければ殴る蹴ることを一切止めることはなく、顔面が血塗れでめちゃくちゃになるまで収まる気配はなかった。

 

「無駄口叩いてないで、抵抗してみろよ」

 

 少年の行動は残虐非道そのもの、本当にこれが人のやることなのかと疑ってしまうほどに恐ろしく残酷な光景だった。

 

 そして喧嘩が終わった後、その場に立っていた者は、喧嘩を見届けていた大和と幽々子、そして男達を必要以上なまでに叩き潰した少年だけだった。

 

 それに対して男達は動く気配は一切なく、大半以上が顔面をめちゃくちゃに潰されており、怪我の具合は病院送りになってもおかしくはない状態だった。

 

 その悲惨過ぎる光景を目の辺りにした大和は悔しいを言わんばかりに唇を噛み締めながら、拳を握り締めて後悔に浸っていた。

 

「……バカ野郎共、だから早く逃げろって言ったのに」

 

 俺は喧嘩でも何でも相手を痛みつけるような行為は一切しないし、寧ろ必要最低限の打撃で終わらせることを心掛けている。

 

 しかしこいつの場合は戦闘能力が極めて高い上に、相手が敵だと感知すれば今のように躊躇なく攻撃を加えて、必要以上に加虐的になってしまう。

 

 周りを見渡して敵がいないと判断すると、つまらなかったと言わんばかりに少年は呆れた表情を浮かべながら溜め息をついた。

 

「……まぁ大体こんなもんだろ」

 

 さっきまで惨たらしい喧嘩をしていた奴とは思えないほどに少年は清々しい表情をしながら二人に近づいてくる。

 

「よっす兄貴、不良共に絡まれるなんて災難だったな」

 

 喧嘩を売られた俺達よりも、顔面をめちゃくちゃにされた男達の方が災難だと思ったが、本人の前では口には出さないでおこう。

 

「和生お前、喧嘩とはいえ流石にやりすぎじゃねぇのか?」

 

「…そうか? いつも通りだと思うけど」

 

 ご覧のとおり、こいつは俺と違って残虐非道なことを何の躊躇いもなく行う。これを最初から知ってたからこそ喧嘩をさせたくなかったのだ。

 

 そして二人が話している間、ずっと和生を不思議そうに見ていた幽々子が不安な表情を浮かべながら大和に話し掛けてくる。

 

「ねぇ大和……この人は?」

 

「……あぁ~ そういえば幽々子さんにはまだ紹介してなかったな。こいつの名前は草薙和生、俺の双子の弟だよ」

 

 和生と言う少年がさっき大和のことを兄貴と呼んでいたこと、そして顔や雰囲気が大和にそっくりだった理由がようやくわかると、幽々子は納得したような表情を浮かべる。

 

 大和が簡単に紹介をしてくれた後、本人も陽気な態度で自ら自己紹介をしてくる。

 

「どうも草薙和生です、気安くカズて呼んでくれても構わないからな」

 

 さっきまで残虐非道な行為を容易にしていた人とは考えられないほど、明るく爽やかな態度を振る舞ってくる和生。

 

 まるで別人だと疑ってしまうほどの和生の急激な性格の変わりように幽々子は戸惑いの色を隠せなかった。

 

「わっ…私は西行寺幽々子です、こっ…こちらこそ宜しくお願いします」

 

 幽々子は動揺と戸惑いを表情に浮かべながらも自己紹介をすると、その後に和生に対して深くお辞儀をする。

 

 出会ったばかりの大和との対応とは大幅に違い、和生に対しては固まって敬語になっていた。この状況を見ただけでも幽々子が一体どれだけ和生のことを怖がっているのかが一目瞭然でわかる。

 

 初対面とはいえ、幽々子の畏まった態度がよほど不思議に感じたのか、和生は首を傾げると疑問を抱いたような表情を浮かべる。

 

「何でそんな改まってんだ?」

 

 この反応から判断して、和生は自分がやった残虐非道な喧嘩が原因だとは微塵たりとも思っていないのだろう。

 

 それに幽々子が自分に対して何故畏まった態度をしているのかなんてあまり興味がなかったのか、和生はその事に関してあっさりと諦めると別の話をする。

 

「まぁ、そんなことはどうでも良いや。それよりもさ兄貴、何でこの幽々子て言う人と一緒にいるの?」

 

 まるで珍しい光景を見たと言わんばかりに、和生は不思議そうな顔を浮かべる。

 

 まぁ聞かれるのも無理はない。今まで俺が女性と一緒に歩いているなんて今まで無かったのだから。

 

 こいつにも関わることだし幽々子さんのことを普通に説明しても大して問題はないだろう。それに、こいつに限っては後々になって誤解を生むことになったら面倒だから、本当のことを話した方が効率が良い。

 

「色々と縁があってな、取り敢えず今から説明してやるから」

 

 大和は幽々子との出会いと後にあったことを和生に簡略に説明をする。

 まぁ、こいつは俺とは違って理解力も結構あるし、細かく説明しなくても別に問題はないだろう。

 

 

 

《~兄弟会話中~》

 

 

 

「……と言うわけだ、それで当分の間、俺たちの家に泊まらせようと思うんだ」

 

「ふーん、まぁ良いんじゃねぇの?」

 

 話の内容にあまり興味がなかったのか、説明が終わると、和生はどうでも良さそうな顔をしながら適当な返事を返してくる。

 

 だが、一件話を聞き流しているように見えるが、こいつは昔から記憶力や計算能力、理解力は群を抜いて優れており、今の話の内容も全て頭の中に入っているのだろう。

 

 この和生の桁外れの頭脳に関しては正直なところ兄として誇りに思っているが、それと同時に恐ろしい才能だと感じている。

 

「そんなことならよ、こんな所に長居しないで早く家に帰ろうぜ」

 

 和生の言う通り、こんな所に長居していると夜道を遊び歩いている他の男達に絡まれてしまうのもあれば、和生がまた最悪な出来事を起こしてしまう可能性がある。

 

 それに正当防衛とはいえ、時間帯や今までの暴力などの行いを含めて、警察に見つかれば確実に補導されるだろう。いや、寧ろ警察に補導されるだけで済むならまだ良い方なのか。

 

「それもそうだな、じゃあ行こうか」

 

 男達に絡まれたり和生と立ち会ったりなど色々予想外のことはあったが、三人は目的地である草薙家に向けて歩き出した。

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