古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜   作:黒い小説家

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四十八話 風魔一族VS草薙家

 午後六時半になる頃、空には雲一つ無く、星々と満月が上る綺麗な夜。

 

 茶の間に武尊、大和、和生、紅虎、幽々子の五人が集結している。しかし今回の幽々子は戦力外であり、人数には入れていない。

 

「さてと……」

 

「よう兄弟、準備は良いか?」

 

「おう大兄貴」

 

「何時でもやれるぜ」

 

 迷彩服に防弾チョッキ、拳銃やアサルトライフル、ナイフやマガジンになど完全武装をする和生。

 

 そして袴に道着を身に纏い、片手に自分専用の武器である鉄刀を手に持つ大和。

 

 同じく袴に和服を身に纏い、腰に日本刀を携え、背中に弓矢を背負い、片手には2メートルをゆうに超える長巻野太刀を担ぐ武尊。

 

「わかってると思うが……これは遊びとか訓練じゃあねぇ、言わば殺し合いだ。てめぇの命はてめぇで守れ。それが出来ないって言うならその場で死ね!!」

 

「おう」

「あぁ」

 

「良いか?俺達は草薙家だ。平安時代から代々伝わる古き一族、かつて神秘殺し最強と謳われた末裔だ!!

 その名を背負い、先祖に恥じること無く、気高く生き誇りを持ちやがれ!!」

 

 これから戦争が起きるためか、自分の兄弟を鼓舞する武尊。その言葉の一つ一つに重みと草薙家を背負うプレッシャーのようなものを感じる。

 

 戦争への不安、死の恐怖、草薙家を背負う重み、八雲紫への恐怖、幽々子を守れるかの不安、色んな思考がある。

 

 しかしやるべき事、目的は決まっている。草薙家の名を落とすことなく守り通すこと、戦争を制して生き残ること、そして八雲紫から幽々子を守り抜くこと、それが使命であり戦争の意味でもある。

 

 ならば見せてみよう。誰に戦争を申し込んできたのか。草薙家の恐ろしさと言うものを教えてやろう。奴らに俺達の恐怖を植え付けてやろう。

 

「敵の数は恐らく圧倒的に多い、俺達の何十倍もいるだろう。それに対して俺達はわずか四人しかいない一個小隊に過ぎない。

 だがてめぇらは一騎当千の古強者だと俺は信仰している。ならば俺達はてめぇらと俺で総力100以上の軍集団となる。

 恐れることは何もない。目に入った敵を殲滅し、大将の首を取ることのみ考えろ!!倒れた仲間は見捨てろ!!例えそれが救える命だろうともだ!!」

 

「良いぜ大兄貴、そういうの好きだぜ。柄でも無いが血が滾ってくる。要するに俺達の恐ろしさをあいつら風魔一族に見せつければ良いんだな。」

 

「簡単に言っちまえばそういうことだ。まぁ取り敢えず生き残って生還しろ。流石の俺も兄弟の死は堪えるからな」

 

「言われなくても生き残ってみせるさ。幽々子のためにも俺は死ねないんだよ」

 

「その心意気だ。その言葉忘れんなよ」

 

 弱気になって臆病風に吹かれていた昨日とは打って変わって強きで面構えも良い大和、どうやら幽々子のためにも頑張り生還するという感情が大きく働いてるらしい。

 

 風魔一族と闘うのは結構だが、八雲紫と闘うことに関してはは恐怖がある。今でもあの能力を思い出すと手足の震えが止まらない。しかし、それ以上に幽々子を失うことの方が嫌だし、耐え難い恐怖がある。

 

 だから俺は八雲紫と闘う。例え自分の命を失おうとも、死んでもその首元に噛み付いてやる。幽々子がいなくなるくらいなら死んだ方が良い。幽々子を失うことに比べたら、肉親の死別すら取るに足らない。

 

「私は見物でもしてます。私が参戦したらつまらない戦争になってしまうと思うので。

 まぁ、大和が危機になったら応戦でもしましょうか」

 

「それで構わねぇよ、丁度良いハンデだ。」

 

 丁度良い。武尊の兄貴と紅虎さん、最強の二大巨頭がいると圧倒的な戦力差で戦争が終わってしまう。俺は別に構わないが、何より武尊の兄貴ががっかりしてしまうだろう。

 

 兄貴の考えが少しだけ分かる。お互いの命を削り合う死闘を繰り広げて勝利を収める。それが戦争の醍醐味であり、兄貴の美学とも呼べる主義でもある。

 

「行くぞお前ら。」

 

「「おう」」

 

 武装をして屋敷を出ていき目的地に向かう五人、この先に待っているのは生か死か。

 

 

 

 《公園にて》

 

 誰かが手引しているのか、公園に一般人は誰もおらず誰もいない。あるのは草木が風に吹かれて音を出す自然のざわめきだけだった。

 

 灯と言われるものは設置されている電灯や空に上る星と満月だけ。周囲は薄暗く目を凝らさないと良く見えない。

 

 公園に来てみると、草薙家をずっと待っていたかのように大人数の黒い衣を纏った男達が待ち構えていた。

 

 相手の数は見た感じだと三十人と一人、こちらの数十倍の数はいる。

 

 すると突然、まるで二手に分かれるかのように、黒い衣の男達が頭を下げながら道を開ける。

 

 誰が来るのかと思えば、風魔一族若頭、風間獣蔵が歩いてやってきた。

 

「よう、これはこれは草薙家諸君、今宵は我々のために良く集まってくれた。」

 

「よう風間獣蔵、四日振りだな」

 

「いやぁ、嬉しいよ。上等な獲物が狩れる上に、女まで連れてきてくれるとはね、おかげで探す手間も追い掛ける手間も省けるってもんさ」

 

「誰が幽々子を渡すもんかよ、てめぇら全員返り討ちにして必ず生還してやる。」

 

「そうはいかない。俺達の任務はお前たち草薙家を一家抹殺して、そこにいる女を捕獲することだからな。

 てめぇらに明日は無ぇんだよ。頼むからこの場で潔く死んでくれ」

 

 どうやら俺達を生かす気も逃がす気も無いそうだ。恐らく俺達を殺すことに一切の躊躇いもないのだろう。

 

 与えられた任務を遂行することのみを考えている。まるで入力したことを実行するだけの機械のような奴だ。冷酷で無情、感情や慈悲というものは一切存在しない。

 

 あまりにも一方的な言い様に虫唾が走ったのだろう。今まで何も言わなかった武尊が口を出す。

 

「随分の言い草だな。てめぇらが殺されることは頭に入ってないのか?」

 

「任務を遂行するためになら、たかが数人殺されようが関係ない。部下なんて所詮替えの効く道具に過ぎないからな。」

 

 人の命を何とも思っていない。あまりにも非人道的な思考。しかし、それを承知のうえで連いてきているのか、部下たちは風間獣蔵の言葉を聞いても、眉一つ動かすどころか寧ろ納得したような表情を浮かべている。

 

 恐ろしい。思考や時代が違えど、まるで昔存在した神風特攻隊のような集団、もしくは神の信仰のために死を恐れず異教徒を殲滅する過激派集団、任務のためなら人を殺すことも、自分の命を投げることも惜しまない殺戮集団。それが風魔一族である。

 

「草薙家、一応その歴史を調べさせてもらった。」

 

「それは勉強熱心なことだな。どうだった?」

 

「平安時代から現代までその名を轟かせて語り継いできた古き一族、嘘か本当か、かつて実在したと言われてる神秘殺しの英雄、伝説の侍(・・・・)の末裔、その始祖の名前は未だにわからなかってけどな」

 

「それだけわかっていれば十分だ。良く調べたと思うぜ」

 

 つまり、この勝負はただの勝負ではない。平安時代から続く伝説の侍の末裔と五百年代々続く風魔一族の誇りと生存を掛けた闘い。食料の奪い合いや領土の奪い合いで起こる戦争とは訳が違う。

 

「さぁ、殺し合いを始めようぜっ!!てめぇら全員生かしては返さねぇからよっ!!

 殺れよ風魔一族、俺達の恐怖と威厳を見せてやれ。」

 

「御意」

 

バンッバンッバンッ!!!!

 

 その瞬間、一体何が起こったのか、銃声と同時に三人の風魔一族の額に何か物体が命中して倒れてしまう。

 

「……はっ?」

 

 風魔一族の額を見てみると、BB弾が深くめり込んでいた。相当な威力で撃ち込まれたのであろう。恐らく場所が悪ければ身体に穴が空いているレベルの殺傷能力。

 

 恐ろしい早業で三人にBB弾を撃ち込んだのは何の紛れもない。近代兵器を武装している草薙和生だった。先制攻撃は和生の拳銃、デザートイーグルによる銃撃だった。

 

「悪いな……俺はこんなところで死ぬ気はねぇんだよ」

 

 不意打ちで銃撃をしたが、そんなことは関係ない。俺達は殺し合いをしているのだ。油断していたほうが悪い。殺ったモン勝ちなんだから、どんな汚い手段でも使ってやる。そして生き残ってやる。

 

「やるねぇ、地元で悪い噂だけは耳にしていたが、まさかここまで銃撃の才能があるとはな。」

 

「なんなら今ここでてめぇの額にも風穴空けてやろうか? いや……額と言わず身体中風穴だらけにしてやるよ」

 

「残念だが、お前の相手は俺じゃない。」

 

 風間獣蔵の目の前に複数の部下が立ちはだかる。どうやら闘いの火蓋が切られて開戦の幕開けのようだ。

 

「四人は俺の背後に付け、十五人は武尊と交戦、残りは和生を始末しろ。」

 

「御意」

 

 最大戦力である武尊に大勢で挑むのはわかる。それぐらいしなければ止めれないからだ。恐らく全員で攻めても過剰戦力でも大袈裟でもないだろう。

 

 しかし、残った者だけで和生を仕留めるのはどうかと思う。舐めているのではないのか? 奴も草薙家の一人、大和や武尊よりは明らかに弱いとは言え、並の人間のよりは遥かに強い戦闘力を持っている。本当に仕留めたいのであれば十人ぐらいで掛かった方が良いと思う。

 

「良いか?誰も援護はしない。向かってきた敵を倒すことだけを考えろ」

 

「おう、随分と嘗められたもんだ。残りもんで俺を殺そうなんて、後悔させてやる。」

 

「大丈夫かよ兄貴? 大人数相手にして勝てるのか?」

 

「心配すんな、寧ろ少ねぇぐらいだ。それとも俺が死ぬと思ってるのか?」

 

「いや、そんなことはない。」

 

「じゃあそんな弱音を吐くな。お前はゆゆちゃんを守り、風間獣蔵を討つことだけを考えてろ

 大丈夫だ。俺は死ぬ気はないからさ。」

 

 これから死ぬかも知れないというのにも関わらず、無邪気な子どものように笑顔を振る舞う武尊、まるで自分を心配させないようにわざと笑顔を作っているかのようだった。

 

 しかし期待に答えるとまでは言わないが、俺も生き残るために、幽々子を守るために闘おうと思う。心配や不安にはさせない。もしそう思わせてしまったら確実に命取りになるかもしれないからだ。

 

 武尊の言葉に対して大和は一言だけ、自信満々に答えた。

 

「おう」

 

 大丈夫、俺には兄貴がいる。弟がいる。それに愛しい幽々子がいるのだ。負ける筈がない。いや負けることができないと言った方が正しいのか。

 

 ここで負ければ、兄弟は死に、幽々子が奪われてしまう。当たり前のことから目を逸らすことはできない。自分勝手だが、俺は全てを守り抜く、守り抜いてみせる。

 

「さぁ……開戦だっ!」

 

 戦いの火蓋が切られ、両者共殺気をぶつけ合いながら接近する。容赦や情けなどは一切無い。目の前の敵を無慈悲に殲滅する勢いで戦いに意気込む。

 

 遂に始まった草薙家と風魔一族の戦争。果たしてどのような結末を迎えるのか?

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