古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜   作:黒い小説家

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十五話 妖怪兄弟 極夜と白夜

 幻想郷に存在する森の中。

 

 この森は妖怪がかなり少ない。

 

 しかし、住処を失い、人里から迫害された野盗が少なくとも存在していた。

 

 良く、人里から降りてきた村人が金品を奪うために野盗に襲われることが良くある。

 

 そんな森の中を一人の青年が歩いていた。

 

 青年の背丈は2m近くある。文句無しの巨体だった。

 

 腰まで伸ばした艷やかな黒髪、妖しくも美しい整った顔立ち、黄色い瞳をしており、左目の下には泣きぼくろがある。耳はエルフのように尖っていた。

 

 服装は白い和服の上に鎧を纏っている。腰には白い刀を差しており、背には巨大な赤い瓢箪を持ち歩いている。

 

 森を歩いていると、人の気配を感じる。

 

 それも一人や二人ではない。

 

 野盗だった。

 

 刀や槍を持って青年を取り囲む。

 

 青年は無表情で足を止める。

 

「良い着物着てるじゃねぇか。」

 

「高価そうな刀や瓢箪を持ちやがって。」

 

 不気味な笑いを浮かべながら、野盗達は青年を品定めするように。

 

 しかし、それに対して青年は何も反応を示さない。

 

 まるで野盗達は眼中に無いと言わんばかりに。

 

 しかし、青年もある物に興味を示す。

 

 青年は野盗の持つ刀を見つめる。

 

「刀か……私は強き刀を求めている。その刀させあれば、より強大な力の主へと、己を変えることができる。」

 

「なにを言ってんだお前?」

 

「頭おかしいのか?」

 

 独り言を言う青年を変わり者のように思う野盗達。

 

 どうやら、こんな人数を相手にして逃げることも闘うことも出来ず、頭のおかしいことを言い始めた。と野盗達は思っていた。

 

「どうやら、まだ私は……自分の力だけでは物足りぬという、未熟な甘えがあるらしい。」

 

「……これは不安なのか? いや、これは単なる限度を知らぬだけだ。無尽蔵に湧き上がる力への渇望。」

 

「殺っちまえっ!!」

 

「うぉっー!!」

 

 野盗が青年に襲いかかる。

 

 刀剣や槍を構えて向ける。

 

 完全に殺す勢いだった。

 

 しかし青年は一歩も動かない。

 

 だが、青年は右腕を前に向ける。

 

 指先から鞭のような光る白い太い糸を出す。

 

 そして襲い掛かってくる野盗達に向けて優雅に腕を振るい、鞭のようなもので薙ぐ。

 

「刀が……私はその強き刀が欲しい。」

 

 野盗達に鞭のような物体が首や胴体に同時に当たる。

 

 それからはあっという間だった。

 

 胴体に当たると真っ二つに引き裂かれ、首に当たれば胴体と首が離れ離れになる。

 

 その切口はというと、凹凸はほとんどなく、綺麗に切れている。

 

 野盗全員は即死だった。

 

 鞭のようなものは日本刀のような切れ味を持っていたのだ。

 

 一瞬の出来事だった。

 

 恐らく野盗は何が起こったのかわかっていない。死んだことさえ理解していないのだろう。

 

 苦痛も何も感じずに死んでいったのだ。

 

 最後に残っていたのは、無惨にザク切りにされた肉塊のみ、立っているのは青年だけだった。

 

「極夜兄様、先に行くなんてひどいよ。」

 

 野盗を殺し終えると、一人の少年が青年に向かって歩いてくる。

 

 白銀のボサボサとしたショートボブ、顔は子供っぽいが整った顔立ちをしている。瞳の色は青色。右目下には泣き黒子がある。

 服装は毛や皮で作られた特殊な紫色の和服を着ている。

 

 少年が人間の死体を目にすると、ぐぅ〜とお腹を空かせた。

 

「兄様兄様、これ食べて良いの?」

 

 人を食う気なのか、少年はご馳走を目の前に置かれたように、口からヨダレを垂らしている。

 

 少年の瞳は輝いており、今にも死んだ人間に食い付こうとしている。

 

「白夜、お前の好きにしろ」

 

「わ〜い。ありがとう兄様。人間を食べるなんて久しぶりに食べるから、どんな味するのか楽しみだな〜」

 

「喰い終わったら申せ。私は少し休む。」

 

 そう言うと青年は軽く飛んだ。

 

 軽く飛ぶと、身の丈を越える。それどころか木の太い枝を軽く飛び越える。

 

 木の枝の上に軽やかに降り立つ。

 

 そして木の枝に座ると大木に横たわり、言った通り休憩をする。

 

 目を瞑り、リラックスする。

 

「は〜い。」

 

 バラバラになった人間の少年は手で拾う。

 煮ることも焼くこともせずに、人間をそのまま生で食べる少年。

 

 まるでご馳走でも食べるかのように、人妖に殺された人間を貪り食う。

 

 ムシャムシャとひたすら肉に齧り付く。

 

 肉に喰らい付くと、ブチブチと音を立てて肉が千切れる音がする。

 

 例え噛み付いた部位から血が吹き出しても、血が顔に滴ろうとも、食べることを止めない。

 

 骨以外の肉片や臓物を一つ残すこと無く綺麗に食べる。

 

 その光景はと言うと実に恐ろしく、そして野生的だった。

 

 人間の形をした化け物が人を貪り食う。実に狂気的な光景。その食べ方は獣のように品が無く、とても野性的な食べ方だった。

 

 それから30分過ぎた頃か、5人分の肉と臓物を全て食い尽くして、骨だけを残す少年。

 

 満足したのか、お腹を手で揺すりながら、とても幸せそうな表情を浮かべていた。

 

「久しぶりの人間、まぁまぁだったかな?」

 

 口に付いた鮮血を舌で舐め取る。

 

 両手に付いた血をペロペロと舐める。

 

 そして、兄様と呼んでいた青年の言う通り、木の上で休んでいる青年の元に登ってやってくる。

 

 木の上には、目を閉じてゆっくりと休んでいる青年がいた。

 

 まるで、眠っているかのように静かだった。

 

「兄様兄様、食べ終わったよ」

 

「そうか。」

 

 青年は目を開く。

 

 木から優雅に軽やかに降りて、地面に降り立つ。

 

「行くぞ白夜。」

 

「は〜い。極夜兄様」

 

 二人の人妖は獣道を歩く。

 

 刀を求めて、強くなるために。

 

 この二人の人妖の名は極夜と白夜。強大な力を持つ妖怪の兄弟。




 いつもお読み頂きありがとうございます。
 お気づきだと思いますが、私は一週間に一回投稿を頑張ってやっきました。
 それで突然ですが、週一連載を中止させて頂きます。
 理由としては体調よる様々な心身共の不調ということで。
 誠に勝手ながら、読者の方々には大変申し訳無いと思っています。
 体調が治り次第、連載を再開させようと思うので、気長にお待ち下さい。
 以上、作者からでした。
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