古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜   作:黒い小説家

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一週間休んで申し訳ございません。
 まだ体調は治ってないんですが、無理やり身体を奮闘させて執筆させて頂いてます。
 もしかしたらまた休載するかもしれません。


十六話 人里での戯れ

 人里にて。

 

 大和と幽々子。二人は冥界から抜け出してきて、再び人里に降りてきた。

 

 大和にとって何も無い冥界は実に退屈だった。

 

 鍛錬、飯を食う、寝る、嫁との会話、それ以外にやることはほとんどなかったからだ。

 

 人里はそんな退屈を紛らわせてくれる。

 

 武器屋、飯屋、娯楽、人との会話、冥界では味わえないことが沢山ある。

 

 しかし、八雲紫がいなければ滅多に来れないことが問題点と言ったところか。

 

 人里を歩いていると、幽々子が話しかけてくる。

 

「今日は何する?」

 

「取り敢えず飯でも食うか。」

 

 すると幽々子は周囲をキョロキョロと見渡す。

 

 そして見つけたのが、一軒の食事屋だった。

 

 その店に向かって指を差す。

 

「あそこで良いんじゃない?」

 

「そうだな。行ってみるか。」

 

 二人は店に向かって歩き出した。

 

 そして、中に入る。

 

「いらっしゃい。」

 

 店員が迎え入れてくれる。

 

 店の中は店員二人と店長しかいなかった。

 

 客は誰もいなかった。

 

 まぁ、昼過ぎだし。空いてるのは無理もない。

 

 幽々子と大和の二人は席に座る。

 

 テーブルに置いてあったメニュー表を見る。

 

 意外と色々な料理があり、豊富だった。これなら食べるものに困ることはない。

 

「すいませーん。」

 

 大和は店員を呼び出す。どうやら食べるものを決めたらしい。

 

「はーい。」

 

 二人の前に店員がやってきた。

 

 それも水とコップを持ってきた。

 

 コップに水を注いで、二人の前に出す。

 

 そして、注文を聞く準備をした。

 

 それが終わると、大和はとんでもないことを言う。

 

「取り敢えず、全部持ってきて。」

 

「全部っ!?」

 

「そう、なんか問題でも?」

 

「それは良いんだけだ、時間掛かりますよ?」

 

「全然大丈夫。そんな飢え死にしそうな程の空腹ではないから。」

 

「本当に大丈夫ですか? そんな沢山頼んで。」

 

「金はあるし、多分全部食える。寧ろ足りなくて追加で注文する可能性はある。」

 

「わかりました。」

 

 それを聞くと、店員は店長に注文を報告しに行く。

 

 それを見た幽々子はくすくすと笑う。

 

「うふふ、面白いわね。」

 

「別に変なこと言ってるわけじゃねぇんだけどな。」

 

 それから三十分と言ったところか。店員が数回に分けて料理を持ってくる。

 

 時間が掛かるとは言っていたが、意外と早く来たもんだ。

 

「これで全部です。」

 

「ありがとな。」

 

 その料理の数々はと言うと。まるで満漢全席のようだった。普通の人なら絶対に完食することはできない。桁外れの量だった。

 

 料理が全部置かれると、二人は手を合わせて。

 

「いただきます」

「頂きまーす」

 

 料理を淡々と食べる。

 

 がっつりと食べているが下品と言うわけではなく、綺麗で作法のなった食べ方で沢山食べている。

 

 少しずつだが、満漢全席並の量はある料理を減らしていく。

 

 本当に全て食べてしまいそうな勢いだった。

 

「妖夢の飯も良いけど、たまには外で食う飯も旨いもんだな。」

 

「そうね。たまには違う人の料理を食べても良いわね。」

 

 ずっと俺や妖夢が作ってた料理を食べていたのだ。

 

 たまに他の人の作った料理を食べると、また自分が作った料理とは異なる味などがわかる。

 

 この店の料理は普通に美味しい。

 

「それにしても本当に旨いな。現代と隔離されて時代が遅れているとは思えないくらい。結構完成度高いと思うんだけど。」

 

「バリエーションは現代には勝てないけど、味は十分だと思うけどね。」

 

「シンプルで旨ければ良いんだよ。」

 

 極論、料理は旨ければなんでも良い。ゲテモノとか奇食は嫌だが、普通であれば料理は美味でなんとかなる。

 

 二人は有り得ない量を食べている。

 

 どんどん無くなっていく。

 

 気が付けば、料理は全部無くなっていた。

 

 満足したのか、一息付く大和。

 

 手の甲で口を拭いた。

 

「ふぅ〜大分食ったな。美味かった。」

 

「久々の外食良かったわね。」

 

 どうやらお互い満足したようだ。

 

 久々の外食は美味かった。たまにすると良いもんだ。

 

「取り敢えず勘定して行くか。」

 

「うん。」

 

 店員を呼んで、勘定を済ます。

 

 そして席を立ち上がり、二人は店を出ていく。

 

 十人前、いや三十人前は軽く食べているのか。たった二人で。

 

 その食事量は明らかに人体の胃袋の許容量を遥かに超えている。

 

 人間ではありえないことだった。

 

 一体そんな身体のどこに食べ物が入っていくのか。

 

 もはや四次元ポケットではないかと。

 

 それも無理はない。

 

 一人は人間ではなく亡霊、もう一人は半人半妖なのだから。

 

 人間の常識が通用するような人物たちではない。

 

 テーブルに置かれた食べ終えた皿が残っている。

 

 どれも食べ物は一片も残されておらず、綺麗に食べられている。その客の教育がはっきりとわかる。

 

「すげぇや。あの二人本当に全部食いやがった。」

 

「あんな量を食べるなんて。」

 

「そりゃあそうだろ。あの客は人間じゃない。」

 

「人間じゃない?」

 

「嬢ちゃんの方は確か亡霊。もう片方の兄ちゃんは初めて見る面だったが、妖怪に近い気配だった。」

 

 亭主はどうやら大和達の正体に気づいていたらしい。

 

 しかし、それをわかったうえで飯を食わせたのだ。

 

「そんな奴らに飯食わせてたのかよ」

 

「今度から出禁にしましょうか?」

 

「関係ない。俺は飯を美味そうに食ってくれる奴と腹空かせた奴に飯を食わせるだけだ。

 それにあの二人は少なくとも悪い奴じゃない。」

 

 人外だろうが化物だろうが関係はなかった。

 

 腹が減ってるなら誰であっても飯を食わせて腹一杯にさせる。

 

 それが亭主の考えだった。

 

 

    《〜一方その頃〜》

 

 

 

 

 大和と幽々子の二人が人里を歩いていた。

 

 次は何をしようか、何処へ行こうか考えていた。

 

 腹拵えは済んだ。

 

 運動をするか、それともどこかで買い物でもするのか。

 

「何しようかしら?」

 

「簪とか見に行くか?」

 

「私に似合うものあるかしらね。」

 

 自分に似合うものがあれば良かったと思った。

 

 大和が可愛いと言ってくれたらどれだけ嬉しいことか。

 

「……んっ?」

 

 そんなことを話していると妙な異変に気づく。

 

「……妖気だ。」

 

 妖気を感じたのだ。

 

 この場には人しかおらず、妖怪は居ないはずなのに。

 

 妖怪の気配を感じた。

 

 以前、八雲紫と対峙した時に奇妙な気配を感じたことがあったから理解していた。あれが妖気だ。

 

 八雲紫と同じ、もしくはそれ以上に強い妖気を感じる。

 

 それも近くに。

 

 どんどん近づいてくる?

 

 そして目の前を見てみると。

 

 黒髪の巨体の青年が歩いていた。

 

「ここにあったか……」

 

 対峙する半妖と妖怪。

 

 この妖怪の目的は一体なんなのか?

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