古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜   作:黒い小説家

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二十三話 無刀流『超体術』

 新たな体術の研究をしてから数日後のこと

 

 いつものように朝の鍛錬をした後、大和は妖夢と一緒に朝食を作った。

 

 それから幽々子が目覚めた後、すぐに朝食に入り三人で団らんしながら朝食を食べる。

 

「いただきまーす」

「いただきまーす」

「いただきまーす」

 

 三人はそれぞれご飯を食べる。

 

 今日の朝食はサンマの塩焼き、わかめと豆腐の味噌汁、ご飯、山盛りのキャベツ、牛肉のステーキ。

 

 極めて普通の朝食。

 

 しかしながら幽々子の食欲は尋常ではなく、朝だというのに大盛りご飯をすぐに三杯も平らげる。

 

 大和も食べるが幽々子ほどではない。いつものように並盛りのご飯を二杯も食べれば十分だった。

 

 そんな朝食を食べてる中、大和は妖夢に対して一つだけお願いをする。

 

「妖夢、悪いけど飯食い終わったら実戦相手になってくれ。俺も準備運動はしとくから」

 

「えっ?実戦相手ですか?でもどうして……?」

 

「ちょっとな。まぁ、研究の成果を見せる時が来たってやつさ」

 

 そう、妖夢には内緒にしていたが大和は独自の体術の研究をしていた。

 

 それがついに完成したのだ。あとは実戦で使えるかどうかを試してみるだけだ。正直かなり考えに考えて作り出したので自信は有る方だ。

 

 妖夢は数日間、大和が何か一人で隠し事をするかのように何かに没頭してる姿を見ていた。しかし何に没頭しているのかはわからない。

 

 しかしながら大和が今日、実戦相手になってくれというのは恐らく武術や業の実験台になるということは確かにわかった。

 

 大和は戦闘における技術は天才的過ぎる。特に半妖になってからは自分のあらゆる技術を取り込み、自分の物にしている。おそらくほとんど教える技はない。

 

 そんな彼が研究の成果を発揮するというのは正直楽しみにしてる反面、恐ろしさを感じるほどだ。

 

「わかりました。私も片付けを終えて準備運動をしてから相手になります。」

 

「あぁ、頼むな。」

 

「楽しみね妖夢、大和がどんな武芸を披露してくれるのか、私も楽しみでお茶菓子用意しちゃうわ」

 

 どうやら幽々子も二人の実戦を見るらしい。というのは建前で本当はただ実戦を見ながらお茶菓子を食べたいだけらしい。

 

 しかし、夫の晴れ姿を見るのは本音らしく。大和がどんな武芸を披露してくれるのかは本当に楽しみではある。

 

 三人はそんな悠長に話しながら朝食を食べる。これが白玉楼の日常でもある。

 

 

 

 

 

       《〜少年少女食事中〜》 

 

 

 

 三人が朝食を食べ終えたあとのこと。

 

 妖夢は食事中に言った通り食器を片付けて台所で皿洗いをする。それに対して大和は枯山水の庭でウォーミングアップをする。

 

 一方幽々子の方は枯山水の庭が見える縁側でお茶菓子やおにぎりなどの食べ物を用意して二人の実戦を見る準備をしていた。さっき朝食を、しかも大盛りご飯を5杯以上も食べたのにも関わらず、まだ食べるとでも言うのか。

 

 妖夢が片付けを済ませ、愛刀の二本を持ってウォーミングアップを始めた頃には大和は既に全身から汗がひたりと滲み出るくらいに身体が温まっていた。準備は万全のようだ。

 

 妖夢も負けじと柔軟体操をして身体を解す。

 

 正直、戦闘経験豊富な上に半妖と化した大和がどんなことをしてくるのかわからない。少からず自分が想いもしないほどに急激な成長をしていることは確かだ。

 

 油断は絶対に出来ない。もし一瞬でも隙を見せれば間違いなく負けることは確かだ。

 

 妖夢もすぐに準備をする。

 

 しっかりと身体を解す。ただひたすら。

 

 数分後、妖夢も身体が暖まると実戦の準備をする。

 

 準備を終えた妖夢を見て、もう大丈夫だろうと思ったのだろう。大和は妖夢に向かって話しかけてくる。

 

「準備終えたようだな。さっさと始めようぜ」

 

「何時でもかかってきて良いですよ。」

 

「それじゃあお構いなく」

 

 すると何を血迷ったのか。大和は愛刀の斬をその場に置く。

 

 これは慢心なのか、それとも愛刀を使わなくてもてめぇなんて素手で十分という侮蔑なのか、それはわからない。

 

 しかし大和は自ら徒手空拳というハンデを選び、有利を捨てたのだ。

 

「……っ!?」

 

 妖夢には大和の考えがわからなかった。

 

 しかし、なんか舐められてるような感じがしもしなかった。まるで自分には刀なんて必要ないと言わんばかりに。

 

 正直なこというと怒りを感じた。半人前とはいえ、こちらも剣に人生を捧げた身故に、これ以上の侮蔑はなかった。

 

 しかし、その考えもこれからの大和の業達によってひっくり返ることは妖夢は知らない。

 

「……行くぜ」

 

 その瞬間、その場から大和の姿が消えた。

 

 例えでも比喩でもなく、本当にその場から大和の姿が消えたのだ。まるでテレポートや瞬間移動のように

 

「……っ!?……どこに!?」

 

 上下左右何処を見ても大和の姿は見当たらない。まるでどこかへ消えてしまったかのように、神隠しにでもあったのか?

 

 妖夢は困惑する。これじゃあどこから攻撃がやってくるのか見当もつかない。正直恐怖を感じていた。

 

 そして次に大和の姿を見たのは。

 

「消えたように見えるほどの爆発的な脚力で移動する縮地走法の上位互換、『瞬歩』方法転換も可能」

 

 大和の声が妖夢の背後から聞こえた。

 

 いつの間にか大和は妖夢の背後を取っていたのだ。

 

 半妖の爆発的な脚力で移動する縮地走法の上位互換『瞬歩』、加えて方向転換も可能という破格の技。

 

 妖夢は振り向いた瞬間、刀を引き抜いて横薙ぎに払う。

 

 しかし。

 

 大和は地面を蹴り、更に虚空を蹴ると強烈な破裂音と共に宙に浮かぶ。妖夢の刀を避けたのだ。

 

「爆発的な脚力があれば宙に浮くことさえ可能。これこそが空中移動術『天駆』」

 

「………なっ!?」

 

 半妖の爆発的な脚力を駆使して空中を蹴り、強烈な破裂音と共に宙に浮く空中移動法『天駆』

 

 軽やかに大和は地面に舞い降りると、まるで挑発するように右手で来い来いと指を曲げる。

 

 驚きの連続だったが、こうも舐められては魂魄の名に恥じると思ったのだろう。

 

 妖夢は歯を噛み締めて容赦なく大和に向かって斬りかかる。

 

 それを大和は無造作に受けた。まともに妖夢の攻撃が袈裟懸けにクリーンヒットしたのだ。

 

 しかし。

 

「………嘘っ!?」

 

 本気で斬った。袈裟懸けに。本来なら血飛沫が舞い散ってもおかしくはない攻撃だった。

 

 だが、大和の身体には傷一つ付いてない。それどころか掠り傷すら与えていない。

 

 妖夢の脳内は解読するのにはあまりにも容量が大きく、今の状況を理解するには内容が多すぎた。

 

「……どうゆう……こと?」

 

「己の五体を極限まで硬質化させ、鎧と化させる防御術『鎧装』」

 

 大和の異常な筋肉繊維と半妖の耐久力を極限まで高めてることで肉体を硬質化させ鎧と化させる鉄壁の防御術、それが『鎧装』

 

 妖夢は戸惑っていた。

 

 どれも見たことがない業、しかも高純度で完成度の高い業の数々、どれを取っても奥義というレベルの質の高い業。

 

 一体自分は何と闘っているのか?こんな異次元の体術を使う相手にどうすれば良いのか?

 

 しかし、思い返してみると。

 

 どれも移動術や防御術、攻撃の業を一度も使っていない。

 

 まさかとは思うが攻撃があるのか?

 

 どんな業を使ってくる?一体どんな攻撃を仕掛けてくるのか想像もつかない。今まで見たことのないような業を使ってきたのだ。自分の想像ではわからない攻撃を仕掛けてくるはずだ。

 

 そして案の定、大和は攻撃を仕掛けてくる。

 

「怪我しないでくれよ妖夢」

 

 その瞬間、大和は両手の爪を立てる。

 

 その爪の立て方、そして体勢が聳え立つ羆や虎のような猛獣の戦い方だった。

 

 大和は爪を振るう。

 

「………っ!?」

 

 大和の爪を妖夢は刀で防ぐ。

 

 すると刀と爪が激しくぶつかり合って鈍い金属音が鳴り響き渡る。まるで鉄と鉄がぶつかりあったかのような

 

 素手の音ではなかった。大和の爪がまるで金属のような、日本刀のような切れ味を帯びていたのだ。

 

 大和の爪は打撃の突き技でもない。それはもはや斬撃と言うべきだろう。

 

 大和は猛獣のごとく爪を何度も振るう。

 

 それに対して妖夢も全て防いでやると言わんばかりに、全て防ぎ切る。

 

(……斬撃!?)

 

 ありえない。素手に切れ味を帯びるなんて妖怪ならともかく普通では考えられない。

 

 もはや素手と言うよりも、手足がまるで日本刀のようだ。

 

 防ぎ切ると、大和は後退して技の説明をする。

 

「手足に切れ味を帯びさせ、斬撃として繰り出す斬術『斬撃拳』」

 

 極限まで鍛え上げた大和の手足は鋭い切れ味が帯びてる。その手足から繰り出されるのは日本刀のような斬撃。故に斬術の『斬撃拳』

 

 次々と斬新且つ予測不可能な技の数々を繰り出す大和に妖夢も困惑する。一体どれだけの技を生み出したのか?

 

 大和は次に新たな技を繰り出す。

 

 至近距離ではなく中距離、間合いがありながらも攻撃体制に入る。

 

 空手の正拳突きを思わせるような構えを取ると、中距離なのにも関わらず容赦無く拳を放った。

 

 その瞬間、大和の拳から強烈な爆発したような破裂音と共に妖夢に向かって巨大な衝撃波が放たれた。

 

「……っ!?」

 

 思わず妖夢も防ごうとするが、風圧、衝撃波があまり強すぎて防ぎきれず、そのまま後退する。

 

 その威力は妖夢を五メートルほど後退させる威力で、まるで空気の大砲のようだった。

 

 そしてすぐに妖夢はあることに気づく。

 

(音速を超えて放たれる空気の大砲、中距離ならともかく、至近距離でまともに受けてたら間違いなく再起不能になってた。)

 

 そう、今の技の衝撃波はあくまでもおまけ。真の効果は至近距離で放たれる音速を超えた素手の正拳突き、まとも拳を受ければ間違いなく一撃で仕留めれる必殺技。

 

「全身10か所の関節を回転・連結加速させ、瞬間的に音速に達する『音速拳』、更に衝撃波も発生する。」

 

 足、背骨、腕、全身10か所の関節を極限且つスムーズに回転・連結加速させ、瞬間的に音速に達する『音速拳』、更に衝撃波というおまけもついてる。

 

 至近距離から中距離まで攻撃が許容範囲内という、素手での攻撃の常識を覆した破格の拳法。

 

 妖夢は思った。斬撃拳にあの音速拳があると至近距離はマズイ。しかし自分も至近距離で主に闘うとするスタイル故に相性が悪すぎる。

 

 どうすれば良いのか悩んでいた。

 

 しかしそんなことは構わず。次に大和が繰り出すのはまたもや中距離だった。

 

 大和が横薙ぎに虚空に蹴りを放つと衝撃波が発生する。

 

 音速拳の衝撃波とは違う。まるで切れ味を帯びてるような真空の衝撃波、それはまさに飛んでくる日本刀。

 

 それを察した妖夢は攻撃が当たる前に刀で防ぐ。

 

 しかし、威力があまりに強すぎた。

 

 まるで大の男と鍔迫り合いをしてるかのように押される。衝撃波が止まらない。

 

 全力で防いでいたのにも関わらず妖夢は少しずつ押されて後退していく。

 

 そして五メートルほど押されたのか、ようやく衝撃波が収まる。

 

 防ぎ切ると、流石の妖夢も冷や汗をかき、息を取り乱す。

 

「………はぁ……はぁ……」

 

「爆発的な脚力と音速を超えた蹴りによって鎌風が放たれる飛ぶ斬撃技『風神脚』」

 

 超高速の蹴りによって衝撃波、つまり飛ぶ斬撃を発生させ前方に飛ばす。遠方の標的に繰り出す中距離攻撃。

 

 つまり大和は至近距離はもちろんのこと、人間の時では不可能だった中遠距離の攻撃が可能になったようだ。

 

 技の数々を見て妖夢は絶句した。

 

 どれもこれも奥義級の技、しかもどれもこれも純度も完成度も極めて高い。短期間で作れるような代物では正直なかった。

 

 天才的過ぎる。恐らく独学で武術を完成させる者はこの世にて数人としかいないだろう。

 

 あまりにも想像を絶する技の数々に妖夢も尊敬をするとともに畏怖すら感じた。

 

「凄いですね。短期間でこの技達を作るなんて」

 

「なーに、簡単だよ。紫さんから漫画貸して貰って、そこから使えそうな体術を見つけてそれをアレンジ加えただけだ」

 

 それが凄いと言っているのだ。

 

 たかが本を読んで、しかもできるかどうかもわからない空想の技を見て覚え、更にそこにアレンジを加えるなんて普通では考えられない。

 

 妖夢も色んな技を持ってるいるが、全てお爺ちゃんから教えてもらったものばかり、自分の技はほとんど持っていない。

 

 しかし、妖夢も一つだけ気になったことがある

 

「今の体術、流派はあるんですか?」

 

「まぁな、色々考えたんだけど名前は単純且つ習得が難しいことを思って無刀流『超体術』って名前つけた」

 

 無刀流『超体術』それは超人的な身体能力を駆使して徒手空拳によりあらゆる盤面に応用できる万能体術、習得は極めて困難だが、物にできれば人間はもちろんのこと、妖怪ですら手球に取れるほどの極めて強力な体術。

 

 これは現在俺が作った出来立てほやほやな体術、この世で俺しか習得していない。

 

 今の大和は半妖の身体能力に加えて、極めて強力な体術も会得した。それはもはや獰猛な猛獣が人間の知能を得て武術を持っているようなもの。

 

 さらなる成長を遂げて、高みに到達した大和、恐らく並大抵の妖怪はもちろんのこと、異能を除く単純な戦い方なら大妖怪にすら匹敵する可能性がある。

 

 妖夢は感心して尊敬すら感じた。自分の弟子がここまで強くなるなんて、もはや自分の手元を離れて独立して進化するように強くなる。これほどの嬉しさはなかった。

 

 もうこの実戦は無意味だ。もう自分のやることは。

 

「わかりました。私の負けで良いです。」

 

「あら、マジかよ。まだ2つ技あるのに」

 

「まだあるんですね。でもこれ以上は無意味です。」

 

 自分がやられることは明白に分かりきっている。もう大和の成長を見て満足したのだ。これ以上の実戦はやらなくてもいい。

 

 移動術の『瞬歩』『天駆』、防御術『鎧装』、攻撃術の『斬撃拳』『音速拳』『風神脚』、どれも素晴らしく、なんて恐ろしい技なんだ。今まで見たことのない技。初見殺しはもちろんのこと、並大抵のことでは対処することはできないであろう。

 

 しかもまだ技が2つもあるという脅威、その技が一体なんなのか想像もつかない。

 

「まぁ良いや。実戦に付き合ってくれてありがとう」

 

「私こそ、弟子がこんなに強くなってくれて凄く嬉しいです。もう私から教えることは何もありません。大和さんは独自で強くなってください」

 

 大和からしてみれば、それはつまり免許皆伝を妖夢が許したということ。

 

 もしかした妖夢は自分の半人前の技量と強さでは、今の大和を成長を邪魔するのではないのかと思ったのだろう。自分が重りの枷になることを恐れたのだろう。

 

 それに対して大和はあまりにも予想外の妖夢の発言に驚いた。それは免許皆伝ではないのかと。

 

「良いのか?もう妖夢に教えてもらえないのか?」

 

「はい。大和さんの成長を邪魔したくないので」

 

 すると大和の背後から、幽々子が抱き着いてきた。

 

「良かったわね大和。妖夢がこんな事言うの初めてよ」

 

「そうなのか?」

 

「うん。私も妖夢から剣術指南してもらってるけど、サボらないとか厳しいこと言ってきて、独自で成長してとか言わないもの」

 

「それは幽々子様が剣術に対して不真面目でやる気がないからです。大和さんとは正反対ですから」

 

 まぁ確かに、幽々子が剣術を真面目に取り組むことは想像できない。食べるところしか見たこと無いし。

 

 だが、幽々子も不真面目に剣術指南に取り組んでいたと聞いたが、普通に高等技術やら使えば剣筋があまりにも良いし、天性の才能だけでも十分通用する。

 

「でも俺は剣術で幽々子に負けてるからな、俺からは何とも言えない」

 

「そうなんですか!?」

 

 人の何倍も努力できる努力家の大和が不真面目でやる気のない幽々子に負けていることが信じられなかったのだろう。妖夢もびっくりする。

 

「まぁ、良いや昼飯にしようぜ俺腹減った。」

 

 この超体術は消費カロリーが尋常じゃない。普通に使えば一般成人男性の必要カロリーを容易く消費するレベル。故にこの先幽々子とまではいかないが、しっかりと沢山の飯を喰わなければいけない。

 

「わかりました。お昼にしましょう。」

 

「よろしくねぇ〜」

 

 それから妖夢は急いでお昼ご飯を用意して、三人でご飯を食べる。その後も何もなく平和に一日を過ごした。

 

 こうして、大和の『超体術』の披露が終わった。

 

 恐らくこの先にどんな敵が立ちはだかろうとも、大和は独学で乗り切り、あらゆる盤面に置いても対処することができるだろう。

 

 これから大和を待つのは夥しい綺羅びやかな勝利の数々か、それとも苦難や難行の数々なのか、それは誰にもわからない。

 

 しかし、幽々子を護ることで本領を発揮する大和。どんな難行でも幽々子のためなら全て乗り切ることができることだろう。

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