古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜   作:黒い小説家

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二十四話 紅霧異変

 超体術を披露してから一ヶ月は経過しただろうか。

 

 あれから大和は独自で鍛錬を積み、あらゆる武芸の練度を高めていた。完全に妖夢から独立していた。

 

 誰に何かを言われることもないはずなのに、ひたすら鍛錬を続けていた。まるで何かを追い求め、近づき追い越すために必死に努力していた。

 

 無理もなかった。大和の目標は兄の武尊と御巫紅虎を追い越すこと、そのために人生の半分以上を鍛錬と強さのために注いできたのだ。

 

 力や強さこそ、自分を表現できる唯一の証。大和から力や強さを奪えば、残るのは幽々子への愛だけになってしまう。

 

 鍛錬を終えて、風呂場で汗を流し、妖夢と昼飯の準備をして、三人でご飯を食べる。いつもと変わらない日常。

 

 正直なことを言うと大和は退屈していた。

 

 鍛錬に鍛錬を重ね、力が身に付き強くなったことを感じれば陶酔感に浸れる。

 

 しかし、その力や強さをぶつける相手や実戦相手がいないのはとても窮屈だった。

 

 幽々子に仇なす敵も相手もいない。況してや兄の武尊や紅虎さんはいない。何のために俺は強くなっているのか考えてしまう。

 

 誰かいないのか、俺の血を滾らせる熱い戦いを繰り広げることができる相手は。

 

 実戦がしたい。誰かにこの力を見せつけて圧倒したい。自分が強いことを証明したい。

 

 そんなことを思いながらも幽々子と一緒に縁側で夫婦一緒にくつろいでいた。

 

 幽々子はお茶菓子を食べながら。いつもの風景を楽しみ、大和と一緒に過ごせる幸福を感じながら笑顔で時間を過ごしていた。

 

「平和ねぇ〜」

 

「そうだな。」

 

 嬉しそうにしている幽々子に対して、大和はとても退屈そうな感じだった。

 

 別に幽々子と一緒にいることが退屈なんではない。寧ろ一緒にいることが嬉しいまである。

 

 しかし、やっぱりこんな何の変哲もない日常の日々を過していると何か変わったことがないのかと思ってしまう。

 

 やっぱり実戦がしたい。大和の心はそれで一杯だった。

 

 大和が退屈している、何かを求めていることを察したのだろう。幽々子は大和に向かって喋りかけてくる。

 

「どうしたの大和?私と一緒じゃ退屈?」

 

「いや、そんなことはないよ。寧ろ一緒にいれて嬉しいし楽しいよ。」

 

「そう?退屈なら夫婦の営みでもする?」

 

「……ぶっ!?」

 

 大和はお茶を吹き出した。

 

 それから何度も咽る。

 

「それどうゆう意味か知ってるのか?」

 

「意味ってちょっと抱き合ったりキスとかするだけよ。何考えてるの?もしかしていやらしいこと考えたのかしら?」

 

 幽々子は大和以外の男を知らない。男を知らずに生きてきたのだ。男と女がすることは何なのかわかっていない。つまり性知識があまりにも浅すぎる。千年以上は生きてるのにも関わらず。

 

 一方大和は外の世界で義務教育を受けている故に男女が、しかも夫婦の営みがどうゆうことなのかある程度わかっていた。だから動揺していたのだ。

 

「いや、ごめん。なんでもない。俺の心が汚れいただけだから。」

 

「そう?」

 

 まさか幽々子がこんな幼い少女のように純粋無垢だとは思わなった。まさか夫婦の営みがキスやら抱き合ったりするだけだなんて、もっと生々しいことをすると思っていたから。完全に俺の心が汚れている。幽々子を穢すことができない。

 

 それにしても、今の俺は幽々子を護ることの出来る力を持っているのか?妖夢から免許皆伝を貰ったとはいえ、どのくらい通用するのか想像つかない。果たして幻想郷で俺の力や強さは通用するのか?

 

 それに対して幽々子はやっぱり大和の様子が変だと思ったのだろう。何かを見透かしたような眼光で大和を見る。

 

「やっぱり退屈してるわね?もしかして自分の力を試したいとかかしら?」

 

 完全に大和の心を見透かしていた。いや、大和があまりにもわかりやすいだけなのか。

 

 大和は自分の心情を幽々子に見抜かれたことがあまりにも予想外だったのだろう。若干驚いたような表情をする。

 

 もう隠し事なんてしなくてもいいと思ったのか、大和も自分が退屈していること、自分が力を示したいという欲求を隠さなくても良いと思ったのだろう。幽々子に腹を割って話そうとする。

 

「そうだよ。その通り。でもなんかきっかけが無いからできないんだよ。」

 

「そうねぇ〜妖夢じゃあマンネリ化して相手不足だし、だからと言って相手がいるわけじゃないもんねぇ。誰かが異変でも起こしてくれれば大和の欲求も満たせると思うんだけど」

 

「異変?なんだそれ?」

 

 初めて聞いた言葉に大和は頭に?マークが付く。

 

 異変とはなんだ?なんかの現象か何かなのか?言葉では想像しづらい。一体どうゆうことを異変というのだ?

 

「異変はね。妖怪とか神様が引き起こす超常現象、幻想郷規模で起こること、結構大変なことだから紫とか博麗の巫女が解決するために働くの」

 

「博麗の巫女?」

 

 また初めての単語が出てくる。

 

 博麗の巫女、つまり人間なのか?しかし妖怪や神が引き起こす超常現象を阻止するなんて本当に人間なのか?俺が人間だった頃、並の妖怪ですら手こずるどころか負けて殺されかけたのに、妖怪や神に勝てる人間がいるとでも言うのか?

 

 それはもはや人間ではない。妖怪の強さは戦った俺が一番よく知ってる。妖怪に勝てる人間はもはや化物。人間の枠から外れてるはずだ。

 

 幽々子は博麗の巫女に疑問を持った大和にすぐ気づいたのだろう。すぐに説明してくれる。

 

「博麗の巫女はね、簡単に言えば楽園の巫女。妖怪退治や異変解決を仕事としてる巫女なの、もちろん強いわよ。強大な霊力や能力を持ってるから」

 

 つまり紫さんのようなあのスキマ能力のような能力を持っているのか、それはそれで恐ろしいな。

 

「それにしても異変か……起きたら楽しいだろうな。」

 

「今起きてるわよ」

 

 突然のことだった。

 

 二人の背後にスキマを開かせて、上半身を露わにする八雲紫が登場した。

 

「あら紫、お久しぶりね」

 

「元気にしてた?幽々子は相変わらず食いしん坊さんね」

 

「なんだよ突然、異変が起きてる?」

 

「そうよ、幻想郷で紅い霧が空を覆う異変が発生しているの」

 

 紅い霧?空を覆う?それがなんの異変なのか?確かに外の世界ではありえない現象だが、ただ紅い霧が空を覆うだけで何があるのか?

 

「それがなんで異変なんだよ?」

 

「紅い霧には妖気が混じってるの、しかも濃厚で触れれば人間の人体に被害が及ぶような、もう人間の里にも被害者が出てるわね」

 

 なるほど、それは確かに危険だな。

 

 しかし、何故に紅い霧が発生したのか、幽々子の言葉から推測するに妖怪、しかも強大な力を持っている極夜のような大妖怪であることは確かだろう。

 

 それを聞いた瞬間、大和はワクワクが止まらなかった。心が高ぶり血の滾る闘いができそうだと思ったからだ。

 

 大和の闘争心や気の昂りを察したのか、八雲紫は一つの提案をしてくる。

 

「ねぇ?良ければ異変解決手伝ってくれないかしら?霊夢……博麗の巫女も動いてるんだけど、貴方も参加してくくればもの凄い戦力になるはずだもの」

 

「マジで!?参加しても良いのか!?」

 

 この食い付きの様はまるで飢えに飢えた猛獣が最上の御馳走を目の当たりにしたようなものだった。

 

 まさか自分の力を発揮できる日が来るなんて思いもしなかった。しかも異変解決に参加できるなんて。それに人の役にたてるなんて

 

 正直、どんな相手が立ちはだかるのか、それはわからない。しかし異変に困ってる人を放ってはおけない。自分の力が幻想郷でどれだけ通用するのかも知りたい。

 

 大和にとって異変解決に参加しない理由がなかった。

 

「どうかしら?異変解決に参加する?」

 

「断る理由はねぇよ。」

 

「それじゃあ早速行って貰おうかしら」

 

「ちょっと待って」

 

 幽々子が二人を止める。

 

 何を思ったのか、愛しい旦那様が異変解決に参加するのが嫌だったのか、それとも他になにか理由があったのか。

 

 しかし、今の大和を止めるのは大和のストレスを貯めることになる。それは勘の鋭い幽々子はわかっているだろう。異変解決に参加することは止めないはずだ。

 

「ねぇ紫、ちょっと準備の時間頂戴?妖夢〜」

 

 幽々子が妖夢を呼ぶと、すぐに妖夢は現れる。

 

「どうしました幽々子様?」

 

「大和が異変解決の準備するの。そのための支度を手伝って貰える?」

 

「わかりました。」

 

 幽々子と妖夢の二人は大和の異変解決の支度のために屋敷の中に行く。

 

 確かに幽々子の言う通りだ。何も支度もせずに異変解決に出向くところだった。

 

 異変解決は言わば戦場、戦いを繰り広げるのは目に見えている。

 

 何も持たずに行くというのは、何の装備も準備せずに軍隊やテロリストに立ち向かうということ。どんな戦場でも物資や武器、装備は絶対に必要だ。

 

 自分が半妖だという事に慢心し過ぎていた。これを紅虎さんに知られたら間違いなく説教案件だった。

 

 数十分後のこと、幽々子と妖夢が何かを包んだ風呂敷を持って縁側に戻ってくる。

 

 何かを包んである風呂敷は比較的に軽量で持ち運びにも丁度い。恐らく無駄なものは入っておらず、必要な物資だけを厳選して風呂敷の中に入れているのだろう。

 

 幽々子がその風呂敷を持っており。縁側にやってくると、すぐに大和に手渡しした。

 

「はい、これ」

 

「ありがとう。これは何が入ってるんだ?」

 

 一応風呂敷の中を見てみる。

 

 風呂敷の中には傷薬と医療キット、携帯食料のおにぎりと竹の水筒と割と単純且つ必須用品だった。

 

 必要最低限で軽量、これなら長期間の戦闘が起きても十分に動くことができる。

 

「怪我しないでね」

 

「大丈夫、無事帰ってくるよ」

 

「それじゃあ連れて行っても良いかしら?」

 

「うん。行ってらっしゃい大和」

 

 まるで最後の別れだと言わんばかりに幽々子は無事に帰ってきて欲しいと願を込めて咄嗟に大和にキスをする。

 

 突然のことに大和も驚いたが、すぐに幽々子を抱きしめる。

 

 幽々子が唇を離すと大和は抱きしめることをやめる。

 

 数秒間の短いキスだったが永遠に感じた。幽々子のためにも無事に帰還することを大和は決意する。

 

 それから大和はスキマの中に入り紅霧異変の解決に向かう。その背中はまるで戦場へ向かう兵士そのものだった。

 

 紅霧異変に向かう大和、果たしてこの先待つのは輝かしい勝利の数々なのか?それとも難行の数々なのか?それはまだだれにもわからない。

 

 しかし、これから待つのは数奇な運命と思いもしない出来事の数々が起きることは、今の大和は思いもしないだろう。

 

 果たして大和は紅霧異変を解決でき、無事に幽々子の元へと買えることができるのか?

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