古今西行寺恋奇譚〜恋愛と闘いの幻想物語〜   作:黒い小説家

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 読者の皆様ありがとうございます。これからも頑張りますので引き続きよろしくお願いします。
 これからボスラッシュが始まりますので、戦闘描写が多めになります。


二十六話 宵闇の妖怪

伝統の幻想ブン屋と自分で名乗る射命丸文と合同行動してから数分後のこと。

 

 大和と射命丸は紅霧異変の主犯格がいる場所へと向かっていた。

 

 移動術の天駆で駆ける大和と天狗ならではの飛行法で空を飛ぶ射命丸

 

 射命丸の飛行速度は非常に素早く、大和は追いつくのがやっとだった。

 

 飛行速度が制限される。これは改良が必要だな。

 

 しかし、空を飛ぶ半妖、しかも自分の速度に追いつくのが物珍しかったのだろう。射命丸は余裕を持ったような態度で話しかけてくる。

 

「凄いですねその天駆という技、どこかで習ったんですか?」

 

「いや、俺が作った技だ。だが改良が必要かな」

 

「天才ですね。そんな技を考える半妖がいるなんて」

 

「半妖で悪かったな」

 

 しかし思った。この射命丸、今かなりの速度で飛んでるがこの余裕っぷり本気じゃない。恐らく十分の一程度の速度しか出していないのだろう。

 

 恐らくスピードに特化した妖怪なのか、極夜の瞬間的移動速度や妖夢の縮地走法並のスピードを出せる可能性がある。

 

「そういえば、異変の主犯格の場所は知ってるようだけど、その主犯格さんの面見たのか?」

 

「いえ、まだ見てません。屋敷の中に入れなかったので」

 

「屋敷?」

 

 屋敷というと根城があるというのか?

 

 しかし、相手は妖怪なんだろ?そんな人間みたいに屋敷を持っなんて貴族かなんかか?明らかに普通の妖怪ではない。

 

「はい。わかってることは西洋の紅い屋敷から紅い霧が発生してることです。」

 

「西洋だと?だってここは幻想郷だろ?なんで西洋の屋敷が建ってるんだ?」

 

 つまり、主犯格は極夜や紫さんのような東洋、日本の妖怪ではなく、西洋の妖怪ということなのか、しかも貴族のような高貴で強大な力を持っている。

 

「それがわからないんですよ。突然、霧の湖の付近に現れたと思ったら紅い霧を発生させて」

 

 気になる点がいくつかある。

 

 まず、何故西洋の紅い屋敷が幻想郷にやってきたのか?

 

 紅い西洋の屋敷ということは主犯格は西洋妖怪なのか?

 

 なぜ紅い霧を発生させて人を苦しめるのか?

 

 不可解なことが多すぎて頭が混乱する。正直、情報量があまりにも多すぎる。

 

 しかしわかることが一つだけある。

 

 それは主犯格の妖怪は強大な力を持ち強者だということ、恐らく極夜並の大妖怪だろう。

 

 そう考えると胸が昂り、闘争心が湧いてくる。今までだらけていた闘争意欲に火が付く。

 

 鍛錬に鍛錬を重ね、新たな体術を会得した自分を験すには絶好のチャンス、今闘わずして何時闘うのか?

 

「まぁいい。行ってみればわかる。それにどんな相手が待っているのか楽しみで血が騒ぐ」

 

 戦闘狂になりつつある大和、平和ボケしていた闘争の血が騒いで仕方がなかった。

 

 それに対して射命丸は本能的に大和の闘争意欲と戦闘能力の潜在能力を見通したのか、この先待ってるのであろう難行に立ち向かう大和に期待をしていた。

 

 そんなことを思いながら飛行して移動していると奇妙な物体がこちらに接近していた。

 

「なんだあれ?」

 

 見るからに黒い球体、しかし妙なことに何かを纏っているような感じだった。

 

 不気味だった。妖怪なのかそれとも異変による副産物なのかわからない。

 

 こちらに接近してきて眼の前に現れると黒い球体が消えてその中から少女が現れる。

 

 姿は幼い少女で、目は赤、髪は黄髪のボブ。白黒の洋服を身につけ、スカートはロングである。左側頭部に赤いリボンをしている。

 

 妖怪なのか?だがどんな妖怪なのかはわからない。種族が特定できない。八雲紫と同じく個体種なのか。

 

 そんなことを思いながら考えていると、少女は大和に対してとんでもない発言をしてくる。

 

「わはっ、貴方は食べれる人間?」

 

「……はぁ?」

 

 突然、少女は妙なことを聞いてくる。

 

 食べれる人間だと?俺を喰おうとしてるのか?つまりこの少女は人肉を食べる妖怪なのか。

 

 しかも俺は人間ではなく半妖だ。この妖怪は人間と半妖の区別もつかないのか?

 

「俺は喰えねぇよ」

 

「でも美味しそうな匂いがするー。どんな味なんだろー?」

 

 どっちにしろ俺を喰おうとしてるんじゃねぇか。その質問の意味があったのか?

 

 それはともかく俺は喰えない。いや、喰われる訳にはいかない。この妖怪には悪いが道を明けてもらうしか無い。

 

 力ずくで道をこじ開けるか、それとも話し合いで道を開けてもらうか、まぁ、人を喰う妖怪だ。俺が行うことは前者で合ってるだろう。

 

「退けよ。」

 

「嫌だーお前を喰うのだ!!」

 

 少女は大和に向かって狂気にも似た表情で飛んで襲いかかる。

 

 拳や蹴りなどの打撃ではない。まるで肉や食い物などに噛みつくような、捕食するような体勢だった。

 

 しかし、行動が単純な故に大和はすらりと回避する。

 

 少女は大和を横通る。

 

「おやおや、早速の戦闘ですか!」

 

 射命丸は早速始まった戦闘に歓喜してカメラを構える。どうやらこれをネタにするようだった。

 

 戦闘だ?いや、これは戦闘というよりも獲物を捉え捕食する狩り。少女から戦闘意欲を感じない。寧ろ食べることに退治ての食欲を感じる。

 

 どうやら俺は餌らしい。

 

 横通りした少女は大和に向かって飛びかかる。

 

「喰わせろー!!」

 

 単純でワンテンポだった。知能は見た目の通り幼い子どものようだった。

 

 ただ人間の子どもと違うのは、人間の肉に対して貪欲で食べる事に非常に執着心があるということ。正直、狂気にすら感じるぐらいだ。

 

 少女は何度も噛みつくように大和に襲い掛かる。

 

 まるで、自分の牙と咬合力が武器だと言わんばかりに、草食動物に噛みつこうとするライオンなどの肉食動物のように。

 

 このまま回避してても埒が明かない。

 

 少女が大和の首に噛みつこうとした瞬間だった。

 

 大和は紙一重で噛みつきに回避すると、カウンターの形で少女の腹部に向かって右拳を放った。

 

 無論、食べることにしか頭が無かった少女は大和の右ストレートをまともに受けてしまう。

 

「……ヴゥ!」

 

 少女は怯む。

 

 しかし怪力自慢の大和の右ストレートをまともに受けても少女は吐血はしなかった。

 

 それも無理はない。大和は限界までまるで赤子を相手するかのように手加減していたのだ。

 

 それは何故か?単純な話である。

 

 妖怪とはいえ、幼い少女なのだ。大和は女子供に暴力を振るうことは嫌いな故、できることなら暴力や戦闘は避けたかった。

 

 だが、妖怪少女の狂気に満ちた人間の肉の食への執着心が怖かった。話し合えるような状況じゃない。

 

 だから今の放った右ストレートは戦闘意欲を無くすための牽制、できる限り必要最低限のダメージで終わらせようとしたのだ。

 

 しかし、その優しさと満身して心眼を使わなかったことご仇となる。

 

 怯んだと思った少女は大和の右手を掴む。

 

 そして、容赦なく大和の右腕に噛みついた。

 

「ちっ!」

 

 大和の右腕に激痛が走る。

 

 ブチブチと音を立てて少女に右腕の肉を噛みちぎられると綺麗な鮮血が吹き出した。

 

 咄嗟に大和は少女を振り払った。

 

「畜生……油断した。」

 

 肉を食い千切られた。しかも傷が深いどころの話ではない。腕の肉の一分を完全に持っていかれた。

 

 少女は口から血を垂らしながらモグモグと美味しそうに大和の肉を頬張る。まるで最高の御馳走を口にしたかのように。

 

「……美味しい。人間の旨味とそれとはまた別の独特な味、癖になるのだー」

 

「食レポしてんじゃねぇよ」

 

 しかし無理もない大和の身体は高密度の筋肉で覆われており贅肉や脂肪が一切ない。牛肉で著すならA5ランクの高級和牛のようなものだった。

 

 少女にとって大和は最高の御馳走だった。

 

 だが、食べたのは一切れの肉、少女が満足するわけではなかった。

 

「もっと食べたい。」

 

 少女は物足りない上、まだ大和の肉の味を堪能したいという。恐らく肉の一片も残さず食い尽くすつもりだ。

 

「馬鹿かよ。もう喰われてたまるか。」

 

「いいじゃん。減るもんじゃないのに」

 

「減るんだよ」

 

 喰われるということは死を意味する。生物界では当たり前のこと。

 

 少女はまた懲りずに大和に襲い掛かる。

 

 そして噛み付くような体勢で何度も何度も大和を襲った。

 

 埒が明かない。避けても避けても切りがない。それに最低限ダメージを与える攻撃をしても油断すれば噛みつかれる。

 

 こんな面倒でやりづらい戦闘は初めてだ。

 

「あやや〜大和さんダメージ負いましたね。もしかして大したことなかったりして」

 

 カチンッ!

 

 射命丸の言葉の大和が切れた。

 

 少女が襲い掛かろうとした瞬間、大和は空中から姿を消した。

 

 射命丸も少女も辺りを見渡すがどこにも大和の姿は見当たらない。どこへ行ったのか?

 

 すると、突然のことだった。少女は後ろから地面に向かって殴られそのまま森の中の地面に叩きつけられた。

 

 背後にいたのは消えた大和だった。

 

 今のは瞬歩と天駆を重ねた技だった。

 

 少女は森の中で目を回して満身創痍になる。

 

「やられたのかー」

 

 完全に戦闘不能の状態だった。

 

 もう少女が襲いかかってこないと思った大和はゆっくりと加減して天駆を使い森の中へと降りる。

 

「さてと。」

 

 大和は風呂敷から笹の葉で包んだ物を取り出す。おにぎりだった。

 

「起きろー」

 

 少女は起き上がる。やっぱり妖怪だからか回復能力が異常に高い。

 

 大和は笹の葉を開いて包んであるおにぎりを少女に渡そうとした。

 

「食えよ。腹減ってるんだろ?」

 

 少女は頭に?マークをつけながら、差し出されたおにぎりを手にする。

 

 おにぎりを渡すと大和は座って自分もおにぎりを手に持って食べる。

 

 少女もそれを真似ておにぎりを頬張ると嬉しそうに美味しそうに食べる。

 

 なんだ。人肉以外にも食べんじゃないか。

 

「美味いか?」

 

「美味しのだー」

 

 あまりにも美味しかったのか、少女は米粒一つ残さず食べた。

 

「ほらよ。」

 

 全部でおにぎりは3つ、最後の一つを少女に分け与えた。

 

 少女は喜んでおにぎりを手に取り食べる。

 

「そういえば名前聞いてなかったな。俺は大和、お嬢ちゃん名前は?」

 

「ルーミア」

 

「ルーミアか。おにぎり美味しかったか?」

 

「うん!」

 

「それは良かった。それじゃあ俺行くとこあるから。またな」

 

 大和は立ち上がると、ルーミアを置いて天駆で空を飛ぶ。

 

 そして空で待機していた射命丸に対して話しかけた。

 

「行こうか」

 

「はい。行く先はこちらです」

 

 二人は空を駆け抜け、紅霧異変を起こした主犯格の元へと行こうとする。

 

 少し邪魔者が入ってダメージも入ったが問題無い。このまま異変解決のために移動する。

 

 恐らくまた敵が現れる可能生があるが、それも試練と思って乗り切ろう。その程度で挫けては戦士にはなれない。

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