糞爆弾とはハリーポッターシリーズにおける魔法界の悪戯グッズで、爆弾のように爆発し茶色い固形物を四方に撒き散らしながら悪臭を放つ愉快なおもちゃだ。
モンハンでいう肥やし玉の強力なバージョンと言う方がわかりやすいかもしれない。
そんな物体を至近距離で投げつけるというクソ餓鬼に赤毛の男は苦笑しながら棒を下ろした。
だがそれはただの棒ではない、魔法族にとっての最大の武器、杖だ。
杖というものはいわば、銃に当たる武器だ。
そんなものを子供に向けたり、手当たり次第通行人に撃つのだから、魔法族がマグルをどう思っているかなどたかが知れる。
目の前の男がマグルを好意的に思っているとしても。
「ハッピーハロウィン……えっと、糞爆弾は勘弁してくれ、おじさん仕事中なんだ」
お手上げだと言わんばかりに銃を向けられた一般市民如く両手を挙げ降参のポーズをとる男。
だが少し待ってほしい、糞爆弾と聞いて普通の人間なら子供が考えた言葉だとか、そういう空想のものだろうと思うはずだ。
なんせ今日はハロウィンで、悪戯されたくなければお菓子をよこせと堂々と見ず知らずの大人にちょっかいをかけられる日なのだから。
ところが、赤毛の男はリンネの目論み通り糞爆弾を何か知っているように一瞬嫌な顔をした。
リンネは慎重に言葉を選びつつ、畳み掛ける。
「ええ、知っていますよ。だってさっきマグルに忘却術を浴びせまくってましたよね」
ハリーポッターの世界では魔法使いは魔法を使えない人間をマグルと呼ぶ。
魔法使いを魔法族といい、マグルを寄せ付けない認識阻害のような魔法や空間を広げる魔法、転移の魔法なんかを使って隠れて暮らしているのだ。
忘却術というのも魔法族がマグルから隠れて暮らすのに必要なもので、忘却術をかける仕事なんかをするのは、魔法族の行政機関である魔法省の役人だけだ。
「あなたのお友達が」
マグルや、忘却術と言った魔法使いがいかにも使いそうな言葉を意図に入れてリンネが話すのはこの世界に本当に魔法使いがいるのかを疑り深く探っているからだ。
"あなたのお友達が"という皮肉も忘れずに。
「はは、見ていたのかい。その歳でオブリビエイトが忘却術だなんて知っているなんて相当な」
相当な。
"相当なハリーポッターファンだね。"
そうであるならばリンネ・ウェインライトとなった彼がとるべきは普通に生きることだ。
ただハリーポッターを原作者のJ・K・ローリング女史が小説を発表したのは1997年のことなので1985年現在に"ハリーポッターファンだね"などと言われる可能性は限りなく低い。
それにハリーポッターの十八番は忘却術ではないし、ハリーポッター=忘却術とは全く結びつかないことは、原作を読んだり映画を見たり、した諸兄には理解できるだろう。
ロックバートやロンならまだしも。
だが、明確にあり得ないと否定出来ないのには理由がある。
限りなく低いのであってゼロではないのは、日本で生きた"誰か"がイギリスに住むリンネ・ウェインライトの人格として宿った前例があるように、何が起こっているかわからない世界であるという警戒心からだ。
リンネにとって、ありえないことがあり得てしまっている状態では全てを疑う必要があるということだ。
何故今ここで警戒する必要があるのか。
それには明確な理由がある。
ハリーポッターシリーズには原作小説の他に、ハリーポッターが人気であるがために公式の様々な二次商用作品があるのはご存知だろうか。
映画しかりゲームしかり、カードゲームしかり。
それに加えてポッターモアという原作者が裏話や設定を公開しているサイトさえある。
さらに加えれば設定について記した本や、物語で登場した書籍でさえ現実世界で販売され、ユニバーサルスタジオにはハリーポッターのアトラクションもあり、本場イギリスにはポッターランドまである。
どこまでを原作とするかは人によるだろうが、かつてハリーポッターの2次創作を書いていた彼が、今やリンネ・ウェインライトという子供になった彼が、一般の読者よりは様々な設定を覚え知っていたというのは嘘ではない。
幾度となくハリーポッターwikiに目を通し、キャラ被りを避けオリキャラを書いたりして来た彼は、魔法薬の素材から杖の木と心の組み合わせによる杖の性格、それから原作に全く関係のないキャラクターの経歴まで、克明に記憶していた。
大学に行って覚えたのがハリーポッターの知識なのだから、色々無駄にしていたことは否めない。
仮に目の前の赤毛は魔法族だとした場合、先程述べたように忘却術をかける仕事をするのは魔法省の役人で、マグルのスーツなんかを着て赤毛の髪を持つのはウィーズリー家の誰かだ。
(ウィーズリー家の長男ビル・ウィーズリーがホグワーツに入学したのは1982年だ、そして赤毛の一族で役人で外に出る仕事をしているのは……おそらく)
おそらく、とは言いつつも目の前の赤毛の男が"ハリーポッターシリーズ"の主人公、ハリー・ポッターの親友ロン・ウィーズリーの父、アーサー・ウィーズリーであろうということは確信していた。
だが、拭いきれない不安もある。
先程、アーサー(仮)が話しかけたジェーマスという男の存在だ。
映画にも小説にも他の公式設定にさえジェーマスという男はいなかった。
似た名前で言えば、ハリーポッターの父が"ジェームズ"というがジェー"ムズ"とジェー"マス"ではまるで別物だ。加えてシェーマスでもない。紛らわしいことにシェーマス・フェネガンという人物もいるのだが、目の前のジェーマスはくすんだ金髪に緑の眼と特徴的なのはデブなことだ。ついでに言うと身長はかなり小さい。
リンネ・ウェインライトとしては、目の前の赤毛の男、アーサーと思わしき人物に、「忘却術を知っているなんて相当に物知りだね」だとか「勉強したんだね」と言うような答えを望んでいた。
5歳の子供の頭の中を凄まじいスピードで思考が流れ代わり、何分にも感じたコンマ1秒は動き出す。
アンケートの結果次第で内容が変わります。【分岐 序-1】ホグワーツ入学前から不穏な動きをするオリ主の行動をダンブルドアが察知するかどうか、ダンブルドアの行動次第でルートが分岐します
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オリ主を妨害する(決別ルート)
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オリ主を怪しみ監視対象に(??ルート)
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オリ主を知るが放置(??ルート)
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そもそもオリ主を知らない(??ルート)
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「ほれ、アバダケダブラじゃ」(??ルート