フューチ提督物語   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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伍長 ゴッドバレー事件 後編

 地獄様な光景の中私は戦場で狙撃するためにズルズルと体を這いつくばって移動していた

 

 死体は海賊、海兵問わずゴロゴロと転がっており私は使えそうな武器を拾いながら戦場の端へ移動する

 

 ホテルの瓦礫の山まで移動し、拾った単眼境で戦場を見渡す

 

 私も頭から血を流しているがまだ軽傷な方だ

 

 もう何回受けたかわからない覇王色の覇気を感じながら遠くをボーッと見てると瓦礫の下から声が聞こえてきた

 

「助け……て……助けて」

 

「今助ける!!」

 

 瓦礫を退けると天竜人の少女が出てきた

 

「わぁぁぁぁぁん!」

 

「今治療するから我慢してね!」

 

 私は包帯を取り出し少女の傷ついた腕を止血し、治療する

 

「よし、止血は出来たし逃げるよ!」

 

 私は少女を背負って再び船まで走る

 

「もうすぐだからね頑張ってね」

 

 私は前を見ながら背中の少女に語り続ける

 

 地震や津波銃弾を変え潜り何とか船に着く

 

「すみません! 天竜人のお子さんがまだ居て!」

 

「海兵さんその子は乗せれない」

 

「なんでですか!」

 

「海兵さんその子はもう死んでるよ」

 

「え!?」

 

 私は少女を見ると後頭部に弾丸を受けたのか脳ミソが頭からこぼれ出ていた

 

「あ、あぁ……そんなぁ」

 

「もう船を出す。海兵さんこれ以上ここへは留まれないからそう他の海兵に伝えてくれ」

 

「わかり……ました……」

 

 私は救えなかった女の子を海に投げた

 

 埋葬する時間もないので海葬しかできない

 

 救えるハズだった命を失った衝撃は強く私に多大なストレスを与えた

 

 しかしそんな事を考えられる余裕が無い

 

 戦場に戻る更に増える死体

 

 浮く瓦礫

 

 収まらない地震

 

 ゴッドバレーの半分が既に津波や地震ガープ中将とロックスの激突の衝撃波で失われ

 

 私は身を隠すので精一杯だった

 

「グララララ」

 

「ひぃ!?」

 

 出会いたくない時にそういう人と出会うものだ

 

 私の目の前に白ひげことエドワード・ニューゲートがやって来た

 

 瓦礫の隙間から私は白ひげが通りすぎるのを待つ

 

 しかし私を殺すというのならタバティエール銃が火を吹くだろう

 

「グララララっ名もない海兵よ、バレバレだ出てこい」

 

 バレてる!? 

 

 ガジャン

 

「はぁはぁはぁ!!」

 

「グララララ、覇気が駄々漏れだ惜しいな」

 

「覇気!? 私が使えるわけ無いでしょ!」

 

「グラ! グララララ!! 覇王色の覇気を駄々漏れにしながら本人が自覚無しとは惜しい! 惜しいな」

 

「殺す気か! 死ぬ前に3発は当てられる! この距離なら!」

 

「グララララやってみるか女海兵! 銃なんて俺の体にゃ傷すらつけられねーぞ」

 

 ガチャン

 

「私はまだ死ねない!! 死ねないのだぁぁぁぁ!!」

 

 パン

 

「ぐぅ!?」

 

「傷つくじゃないか!!」

 

「グララララ!! 驚いたかすり傷をつけられる銃か! 改造してるな! 面白い女! 俺の家族になれ!」

 

「なるわけ無いでしょぉぉぉ!!」

 

 パン

 

「1発目はサービスだ2発目はねぇ」

 

 巨大な薙刀が近づいてくる

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 私は涙で顔面がグチャグチャになりながらサーベルを振るった

 

 一瞬

 

 ほんの一瞬だけ拮抗した

 

 私が覇気を使えている証拠であり、私はそれを見ることが出来た

 

 しかし供給品のサーベルが最上大業物の薙刀に敵うわけ無く白ひげの振動する攻撃にサーベルは粉々になり、薙刀は私に直撃した

 

 全身がバラバラになるような感覚

 

 薙刀は直接触れたわけではない

 

 しかし白いモヤみたいなのに私の体が触れた瞬間に私は吹き飛ばされた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼヒューゼヒュー」

 

 肋骨が数本折れた呼吸が苦しい

 

 まだ生きている

 

 白ひげのあの一撃は手加減をしていた

 

 白ひげは何を考えて手加減をしたかわからないが結果として私は生き残ることができた

 

 私は痛みで意識が飛びそうな感覚を無理やり現実に戻し、周囲を見渡す

 

 戦闘はまだ続いている

 

 違うところはロックスとガープ中将の他に誰かが戦っている

 

「あれは……ロジャーか!」

 

 単眼境で島の中央を見れば今まさに伝説の戦いが起こっていた

 

「これが……ゴッドバレー事件……」

 

 ロックスとガープ中将、ロジャーの最終決戦

 

 ロジャー海賊団がロックス海賊団と激突している

 

 私はそれを見ていることしかできない

 

 14歳の私にはもうこれ以上戦う手段が残っていなかった

 

 銃は紛失し、サーベルは粉々になった

 

 ナイフももうない

 

 鹵獲品で戦うにももう戦う気力もない

 

 ただこの戦いの結末を眺めることしか……今の私には許されていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かが火をつけたのか島が燃える

 

 死んだ人々を燃料として、瓦礫と共に業火となる

 

「何人がいきているのだ? 頂上戦争がピークでは無かった……これこそが伝説の一戦だ」

 

 人数は未来の頂上戦争の方が凄いだろう

 

 しかし戦っている者の質が違いすぎる

 

 伝説は夜まで続いた

 

 この凄惨な光景を私は目に焼き付ける

 

 後日必ず世界政府がこの事件を揉み消すだろう

 

 その時にこの事実は必ず海軍の糧となる

 

 私は歴史に消される存在にはなりたくない

 

 今はただそれが生きる意味であった

 

 

 

 

 

 

 

 終わりは唐突に訪れる

 

 ガープ中将とロジャーの渾身の一撃がロックスの体に叩き込まれた

 

 あれだけ燃え盛っていた炎はその衝撃で消え失せ、島は威力に耐えきれずに崩壊した

 

 私は吹き飛ばされそうになるのをなんとか耐え、最後の光景を目の当たりにした

 

 ロックスが何かを呟く

 

 ガープ中将とロジャーは倒れたロックスの言葉を静かに聞く

 

「船長がやられた! 撤退だ!!」

 

「ハッ~ハハママママ野郎共船長が負けた以上この島に用はねぇ帰るぞ」

 

 残されたロックスはまだ何か喋っている

 

 恐らく世界の真実の一部だろう

 

 ただわかるのは1つの時代の終わり

 

 海の覇者であったロックス海賊団の崩壊の始まりである

 

 覇者が不在となった世界で起こるのは次なる覇者を求めての闘争である

 

 私はその結末を知っている

 

 だからあえて言う

 

「次の時代はロジャーだ。海賊王になるまでのロジャーこそが世界の中心となる」

 

「そして私にはわからないがDの意志、世界政府が隠す何かを私は別次元との交信で知る可能性がある」

 

「とにかく生きなければ……私は生きなければならない。覇王色の覇気? 知ったこっちゃないわよ! 私は私のやりたいことをするだけ……今はまだ何がやりたいか決まってないけど必ず見つけてこの時代を生き抜いてやるんだから!!」

 

 私はそう決意した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロックス海賊団が壊滅したことは直ぐに世間へと触れ渡った

 

 ある者は歓喜し、ある者は泣き、ある者は次の時代を考え、ある者はその対応に追われた

 

「フューチ伍長を軍曹とする」

 

 ゴッドバレー事件

 

 海軍の軍艦5隻沈没2隻大破、海軍の死者750名、民間人の死者260名、海賊の死者57名

 

 ゴッドバレー島は消滅

 

 海軍史に残る大事件だが世界政府が揉み消しにかかる

 

 この事件に関わり生き残ってなおかつ海軍の任務を続けられる者は皆昇進した

 

「バグ少将……月歩出来るようになりました。不完全ですが覇気にも目覚めました……あなたが生きていれば私は曹長になっていたでしょう……私はあなたの遺体を結局見つけられませんでした。可愛がって貰ったのに申し訳ございません」

 

「墓参りか……」

 

「ブレッド大佐」

 

「ゴッドバレーでは散々だった様だな」

 

「白ひげと戦いました……戦いにもなってないですね。遭遇したが正しいと思います」

 

「どっこいしょ……バグ少将は俺の元上官だ。教育隊時代の班長だったお方だ……とにかく優しい方だった」

 

「……私も少しの間でしたが優しく色々教えてくださいました」

 

「……フューチ軍曹、次の航海から砲撃班の班長をやれ」

 

「……まだ私に班長の荷は重すぎます。それにまだ他に階級の高い方が沢山いるじゃないですか」

 

「ゴッドバレーで天竜人を助けた様だな……あの戦場の中を人を抱えて生存できるのは才能だ。俺はその才能を最大限伸ばすつもりだ」

 

「しかし、天竜人の少女を助けられるハズだったのに死なせてしまった。私は……私は無力だった」

 

「誰だって少年少女の時は無力だ……フューチ軍曹は何歳だ! まだ14だろ! これからなのだ貴様は」

 

「ブレッド大佐……」

 

「我が艦の砲の改造を許可する。貴様はこれから全力で指揮を学べ……生きるって才能は将校になれる才能なのだ」

 

「はい!!」

 

「うむ! よろしい!! いつまでも泣くな! 前を向け! そして偉くなれ」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁバグ班長。俺は良い艦長だろうか? 部下を沢山死なせた。ゴッドバレーに俺が居たら真っ先に死んでただろう……聞いたところ将校で生き残ったのガープ中将しかいなんだってよ」

 

「なぁ、バグ班長……俺はあんたを尊敬してたんだぜ! あんたを追い越したくて無茶ばっかりして……あんたは優しすぎるんだぜまったく……良い部下も沢山居てよ……レグレー大佐、ホークリン大佐、マッキンジャー大佐、サバマ中佐……ゴッドバレーで良い部下も殆ど死んじまってよぉ……同班で生き残ってるのが一番真っ先に死ぬって言われてた俺だけじゃねぇか……」

 

「なんでだよ!! なんで皆俺を置いて先にいっちまうんだ!!」

 

「バカヤロー!! バカ……ヤロー……」

 

「……あんたが最後に気にかけていたフューチ軍曹は俺が必ず大成させてみせる。あの世で彼女を見守っていてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は原作開始36年前

 

 フューチが14歳の時であった

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