最近彼女達の様子がおかしい   作:ガラン・ドゥ

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red knightさんのリクエストより


11:太陽の少女と無人島デート

 現在の日本は冬真っ盛り。

 氷点下まで下がった気温のおかげで息は白いし、池などは凍ってるし、海鳴市は少ない方とはいえ雪も降っている。

 そろそろ今年も終わりが近付いて来たんだなあ、としみじみ実感させられるところであっただろう。

 ……が、サンサンと照り付ける太陽に、一面に広がる青空。気温は初夏のように暖かく快適で、浜風が海のさわやかな匂いを運んできている。

 そう、僕は今、日本の厳しい冬とは真逆の地に降り立っていた。

 

 ここは日本の南に位置する島々の一つ。場所は伏すが空港から飛行機でおおよそ4時間のところにある国から、船を出して半刻で到着できる場所だ。

 ここにあるのは海水浴を楽しむ為の施設と、その後ろにある複数人は余裕で住めるであろう大きなコテージ。そして目の前に広がるの砂浜である。

 僕達はこの島に完全に貸し切り状態で立っていた。

 なぜならこの島は無人島になっており、関係者以外は立ち入れないようになっているからだ。

 僕がこのような場所にいるのは甚だ疑問である……。

 話は一週間前まで遡る。

 

 

 

 その日は平日であり僕はベッドの中でうずくまっていた。

 

『ノア、早く起きないと遅刻しちゃうわよ』

『うう、寒い……』

 

 人よりも寒さに弱い僕にとって冬というのはなかなかに厳しい季節である。特に朝なんかは二度とベッドから出たくないと思ってしまう程だ。

 だが今日起こしに来た娘――アリサはそんな僕にも容赦はなかった。

 彼女は僕の両頬をムニッと掴んでくる。

 

『ギュー』

ひょっと、ありひゃやめへくれ(ちょっと、アリサやめてくれ)

『いつまでも布団にこもってるからでしょー。あったかいご飯用意したから起きてきてよね』

『ううっ、はーい』

 

 ベッドの温もりが恋しいが、このままだとアリサに何されるか分からないので、渋々床に足を落とす。

 着替えてリビングに向かうとすでに朝食がテーブルの上に準備されており、アリサは着席している。

 

『もう、遅いわよ』

『これでも急いだ方なんだけどね』

 

 軽い会話を交わした後、テーブルに着き朝食を食べ始める。

 

『ノアってホント寒さに弱いわよね』

『そうだねえ……。夏だったらいくら暑くても気にならないんだけど』

『小学校の頃も外スポーツは得意だったものね。体が慣れちゃったんでしょ』

 

 近くで見てきたアリサが言うんだからそうなのかな、と思ってしまう。

 たしかに言われてみると、小学生までは外で遊ぶのが好きだったので、夏の方が活発的ではあったかもしれない。

 今は時空管理局の任務もあって中々そういったこともできなくなったが。

 

『でもその分寒さに本当に耐性が無くてね……。何か対策できないのかなあ』

『魔法とかでどうにかならないの?』

『うーん、たしかに高熱を発するのは得意だけど、それを全身に停滞させるっていうのはかなり難しいかな。温度調節とかも大変だしね』

『ふーん。魔法って言っても何でもできる訳じゃないのね』

 

 それはそうだ。

 何でもできるならこんな苦労していないだろうし。

 

『冬の間だけ南の島とかにでも住んでみたい気分だよ』

『プッ、そんなことができるなら皆そうしてるわよねって……あ』

 

 軽い冗談のつもりで言った言葉に、アリサは何か閃いたような声を出した。

 

『うん、どうしたの?』

『……うーん、でも流石に』

 

 彼女は何か1人でブツブツと囁いている。

 それに対して過去の経験から何だか嫌な予感がしたのだが、朝食を食べて終えたアリサは席を立って真っ直ぐにこちらの目を見据えてきた。

 

『ねえノア。あんたの願い、ちょっとだけなら叶えてあげられるわよ』

『えっ……』

『パパにお願いしないといけないからちょっと時間は掛かるけど、最高のプレゼントになると思うわ』

 

 そう言い放つとこちらの返事を聞く前にアリサはどこかへ連絡を取り始めた。

 そしたらあれよあれよと何もかも準備が決まっていき、気が付いた時には既に無人島の浜辺へとやってきていたのだった。

 

「僕はどうしてここに……」

 

 拉致られるように移動してきたのでただ呆然としている。

 

「何よー、ノアが南の島に行きたいっていったんじゃない」

 

 そう言って隣に立つアリサは今日本が冬とは思えないくらいの薄着で、ボートから下ろした荷物をチェックしている。

 

「いや本当に来れるなんて思わないじゃん!? 大体ここって何のための島なの……?」

「ふっふーん。ここはねーパパの会社で新しく行う事業の為に今開発してる最中の場所なの」

「えっじゃあこの島まるごと買い取ったってこと?」

「そうよ。東南アジアに新しいレジャー施設を作りたいからって周辺の国とも連絡を取り合ってるみたい」

 

 得意げに話すアリサは説明を続けた。

 端的に言うと、この無人島のありのままの自然を残しつつ、それを体験できるツアーが行えるように建物を建てたり道を舗装したりしていくとのことだった。

 今は開発の初期段階であり、泳ぐ場所と泊まる場所を手初めに建てたようだ。

 その話をデビットさんから聞いたアリサが、僕と共にその一端を体験できないかお願いしたらしい。

 ……いやバニングス社すごいな。

 世界を股にかける大企業なのは既に知っていたが、まさか島を簡単に買い取ってしまうくらいの資金力がお有りとは。

 デビットさんを敵にするということは、国を相手するのと同義なのでは……?

 

「まー流石に冬の間まるまる使わせてもらうっていうのは無理だったけど、休日2日だけノアと過ごしたいって言ったらすぐにオッケーくれたわよ」

「いや2日過ごせるだけでも十分でしょ……。こんな機会滅多にないよ」

 

 やることの規模がでかすぎて色んな感情が芽生えてくるが、とりあえずデビットさんへの借りがどんどん大きくなってるということだけは分かった。

 

「そうよね。それじゃあ早く行動しましょ。時間がもったいないじゃない」

「ちょっ待って引っ張らないで!?」

 

 大量の荷物を背負った僕の手を取って、アリサはコテージへと走っていく。

 

 入り口をくぐれば、和と洋が折り重なった絶妙なバランスが保たれている空間が待っていた。

 木造でできた内部は伝統的な日本建築を思わせる作りでありながら、きらびやかさを取り入れる為に洋風な雰囲気も醸し出している。

 僕はしばらく辺りを見回していたけれど、満足したと思ったのかアリサは階段を指差した。

 

「ここは休む人のための空間だからね。泊まる部屋は2階にあるのよ」

「へえ、なるほどね」

 

 まあどんな宿泊施設でもそれは同じか。

 2階へ上がると廊下が続いており、アリサは一番手前のドアを開けた。

 

「ここが今回のあたし達の部屋よ」

 

 内装は広すぎるということもなく、ベッドが2つと丸いテーブルが窓の付近に設置されているというシンプルな構成だった。

 特に良い点はツインベッドだということ。これが大きなダブルベッドだったらどうしようかと……。

 

「あっ、寝る時は1つのベッドだけ使いましょ。せっかく2人きりなんだもの」

「……ですよね~」

 

 いやあ、何となく察してはいたけど、それでも淡い期待を持っていたのだ。

 その期待が無残に砕かれながらも、二人分の荷物を床に置いて生活用品を取り出していく。

 

「相変わらず物が少ないわね~」

「そりゃあ、男の荷物なんて着替えとタオルと歯磨きセットくらいなものだよ。今回は水着も持ってきたけど。アリサは随分と多いね」

「女にも色々と準備することがあるのよ。……色々とね」

 

 その言葉に何か悪寒がするのだが気の所為だろうか。

 チラリと中を見ればボトルとか料理に使う物まで入ってる。

 アリサが直接料理をするということだろうか。そういうことだと信じたい。

 

「それよりも、これからどうしたい? コテージでゆっくりしても良いけど」

「うーん、せっかく海に来たんだからやっぱり泳ぐ方が良いかな」

「じゃあ水着もっていきましょ」

 

 ある程度荷物を出し終えると、僕達はまたコテージの外に出た。目の前には着替えやシャワーを浴びる為の施設がある。

 一応男女別になっており、男用の更衣室に入ってから水着に着替える。

 1人だと一々他人の目線を気にしなくて済むのが有り難い。

 手早く水着姿になると、僕は外へと出た。

 アリサの方はまだ時間が掛かっているようで、しばらく待っていたところで太陽に反射してきらめく金髪がひょっこりと姿を現した。

 

「じゃじゃーん。どうかしら」

「いや、とっても似合ってると思うよ」

 

 アリサの水着は意外とシンプルなもので、白いビキニタイプの水着で腰の部分には花柄のフリルがついている。

 それが逆に彼女のスタイルの良さを強調していて、正直目のやり場に困る。

 彼女の体をマジマジと見つめないように心がけていたら、何か勘違いされてしまったようだ。

 

「何よ、ちょっと微妙な反応じゃない? せっかく水着新調してきたのに~」

 

 頬をプクッと膨らませるアリサに慌てて弁明する。

 

「いや! 違うんだよ。アリサがあんまり綺麗、でさ……その」

 

 恥ずかしくなって目を逸らすと、横目にアリサが一瞬ポカンとしてから悪い笑みを浮かべたのが見えた。

 突然腕に抱きついてきた為に僕は反応できずに固まってしまう。

 

「ア、アリサ……!?」

「つまり~ノアはあたしの体に見惚れちゃったってことよね?」

「い、いや、その……はい」

「うふふ、ありがと。ノアの水着も似合ってるわよ」

「そ、そうかな……?」

 

 無難な黒を選んだだけなので、そんなに褒められる要素も無いと思うのだが。

 しかし彼女はより腕を絡めてくる。柔らかい感触が直に触れて頭がクラっと来そうになるが、なんとか理性を保つことに成功した。

 

「そうよ。ノアはやっぱりシンプルなものが似合ってるわ。それに……」

 

 アリサの手がスススッと僕の腹に伸びてくる。

 

「魔導師なんてやってると体が鍛えられるのね。あんたの体久しぶりに見たけどとってもカッコいいわよ」

「ちょ、アリサ」

 

 僕の体をまさぐる彼女の手が段々熱を帯びてきていて、思わず左手で彼女の手首を掴んだ。

 

「なんか危ない気持ちになりそうだから辞めようね!」

「え~、あたしは構わないんだけどなあ。どうせここじゃ2人っきりなんだし、開放感に身を任せても良くない?」

「良くない。一応まだ昼間なんだしそういう爛れたことするのはまだ早いでしょ」

「真面目よねえ」

「それよりも海で遊ぼうよ。せっかく水着に着替えたんだからさ」

「うーん、たしかにもったいないかもね」

 

 アリサの了承も得たので彼女の手を振りほどいて一緒に海へと向かう。

 水に浸かってみれば、いい感じに太陽の熱で温まっているのか冷たいというよりも、気持ちいいという感想が出てきた。

 

 ――これは快適だ。

 

 波も非常に穏やかで足を取られる心配もない。いくらでも浸かっていたい気持ちになってくる。

 肩まで体を沈めていたところ、突然水が頭上から降ってきた。

 

「わぷっ!?」

 

 慌てて周辺を見渡せばアリサがケラケラと笑っている。

 

「隙だらけよ!」

「やったな~」

 

 すぐに浅瀬まで引いて彼女に水を掛け返す。ひたすら水の掛け合いになって、僕の目から見たアリサは水の反射でキラキラと輝いていて、思わず手を止めてしまうほど綺麗であった。

 それだけでも今日ここに来て良かったと思える。

 

 

 

 その後は2人で泳いだり、借りてきたバナナボートに乗ったり、波打ち際で砂遊びに没頭したりと海でできる遊びを目一杯楽しんでいた。

 時間はあっという間に過ぎていき、気が付いた時には空はすっかりオレンジ色になっていて、日も傾きかけていた。

 僕達はコテージに帰る前に少し休憩しようと砂浜に座っている。

 隣には水着のままのアリサが座っていて、時折風が吹けば彼女の金髪やが揺れているのが見える。

 本当に大満足できるくらい遊んだ。

 またいつかこうして彼女と遊ぶ機会があれば良いと思いながら僕はアリサに話しかける。

 するとアリサがこちらを向いて微笑んでくれた。

 何だかアリサとの距離がまた一歩近付いたように感じる。

 何を話すわけでもないけれど、僕達の心はとても満たされていた。

 しばらくそうしていたが、体が冷えてはいけないので真っ暗になる前に退却することにする。

 更衣室付きの施設でシャワーを浴びていつもの服装に戻ると、2人でコテージへと戻った。

 夕食はバーベキューなようで、アリサは肉や野菜などの食材と一緒に飲み物まで準備してくれていた。

 

「僕は何手伝えばいい?」

「そうねえ、火起こししてもらえる?」

「分かった」

 

 そう言いつつグリルに炭と木材を並べてチャッ○マンで火を着けようと思ったところ……。

 

「あっ、ちょっと待って」

「うん? どうしたの?」

 

 アリサがこちらに手を広げて「待て」の姿勢を取る。僕は犬ではないんだけど。

 

「やってもらいたいことあるのよねえ」

「やってもらいたいこと?」

「そうそう。えっとね――」

 

 彼女は身振り手振りで説明してくる。

 ああ、なるほど。大体言いたいことは分かった。

 

「――それじゃあ行くよ」

「ええ!」

 

 僕は右手の親指と中指をくっつけて手の甲をグリルに向けると、それから手首を返して指を鳴らした。

 すると小さな炎が生まれて真っ直ぐ炭と木材に飛んでいき、ボワッと火が上がる。

 

「きゃあ、本当に出来るのね!」

「まあ、これくらいならね……」

 

 アリサのやってほしいこととは、つまるところ指パッチンで火を起こしてほしいということだった。

 絶対に某錬金術の漫画に影響されてのことだろう。

 

「すごいわねえ。なのは達の戦闘訓練は見てるけど、日常的な魔法使うのは見たことなかったし」

「本当はこういう場所で魔法使うのは禁止されてるんだからね? クロノには内緒で頼むよ」

 

 釘を刺しておくと、アリサは「分かってるわよ」と言いながら、すぐに食材を焼く準備に取り掛かる。

 

「ちょっとノアが魔法使えるところ見ておきたかったの」

「え、何で?」

 

 しかし彼女は人差し指を唇に当てるとニコリと笑った。

 

「ん~、内緒」

「なんだよそれ……」

「まあ良いじゃない。さっどんどん焼くわよ~」

 

 呆れたような僕の言葉を意に介さず、彼女は肉や野菜を網の上に載せていく。

 アリサの様子が若干気になったが、パチパチと食材が焼ける音にお腹が鳴ってそれどころではなくなった。

 先にアリサが用意していた飲み物を手に持つとお互いのコップを鳴らして乾杯を取った。

 一口飲むと炭酸がまず僕の口の中を直撃してきたが、その後から柑橘系のフレッシュさや爽快感が舌を通り過ぎていった。

 

「これ美味しいね。なんて飲み物なの?」

「企業秘密よ。他にもあるから飲んでみると良いわ」

 

 アリサの言う通り他のジュースも試してみると、どれもスルスルと飲めてしまうものだから、つい何杯もいってしまいそうになるが、炭酸で腹が膨れるのはマズイので何とか我慢する。

 アリサの「出来たわよー」という声に反応して、早速肉に手を付ける。

 箸で口に持っていくと、肉汁がジュワリと広がっていった。

 

「……美味い!」

「ふふっ、それは良かったわ」

 

 アリサの方を見ると、彼女も自分の取り皿にある肉を食べていた。

 やはり外での食事というのは美味しく感じる。これならどんどんお腹に入りそうだ。

 ボトルに入ったジュースもどんどん開けていく。アルコールでも入ってるんじゃないかと言うくらい飲みやすかった。

 

「この串焼きも食べてみると良いよ」

 

 焼く係を交代して今度は僕がアリサに串を差し出すと、彼女はそれにかぶりついた。

 

「うん、美味しいわねえ。それじゃあはい、ノアも」

 

 そう言ってアリサは自分の持っていた串を僕の口元まで持ってくる。

 いつもだったら関節キスだと気にしてしまって躊躇するのだが、この時はとても気分が良くて、反射的に串に付いた肉を食べてしまった。

 しかし噛めば噛むほど広がる旨味には抗えず、結局アリサからの「あーん」を受け入れてしまう。

 

 それからも2人でワイワイと騒ぎながら食事を取る。

 いよいよ食材も無くなってきて、夕食も終盤に入ったところ、ふとアリサが言葉を漏らした。

 

「ねえノア」

「うん?」

 

 肉を掴んでいた手を止める。

 

「ノアもなのは達と一緒に中学卒業したらミッドチルダに出るの?」

「……うーん、どうだろうね。まだ決めてないや」

 

 なのは達はすでに自分の進路を決めているようだが、僕は未だ悩んでいた。

 

「実際のところ、将来のことなんて分からないし、やっぱり魔導師として働くなんてこともあるのかなあ」

「そうよね。そしたらあたしとすずかには中々会えなくなるのよね」

「それは……」

 

 確かに地球は管理外世界な訳で、アリサとすずかがミッドチルダに行くには中々手間が掛かる。

 アースラに転送して、それから航行してくるというのも可能だが、それでも毎日会えるという訳じゃない。

 

「そうなった時は、僕も努力するけどやっぱり難しいことなんだよね」

 

 地球か管理局か。

 どっちを選ぶにしろ5人全員これからも一緒という訳には行かないのだ。

 それはこれから絶対に考えなければいけないことである。

 

「もしもミッドチルダに行くことになったらって思うと、あたしきっと寂しくなると思うの。だからこうやって旅行かなんかして、一緒にいた思い出も作りたいなって思ったのよ」

「それでこの島に……」

 

 なるほどだから彼女は急ピッチで旅行の計画を立てていたのか。

 その言葉になんだか納得してしまった。

 僕としてはアリサのことを忘れるなんてありえないのだが、彼女にしてみれば不安なところだろう。

 

「今日は満足してくれた?」

「うんそれはもう」

「でもね、もうノアの為にもう1つやりたいことがあるの」

「うん」

「ノアがあたしの体の良さを知れば、一生こっちにいてくれるんじゃないかなって」

「……うん?」

 

 急にアリサが僕の手を取って立ち上がる。

 僕はしっかりと地に足を付けていると思ったのだが、立ち上がった瞬間平衡感覚を失ったようによろけてしまった。

 

「え、あれ……?」

 

 倒れそうになるのをアリサがだきとめてくれた。しかし、彼女の顔がボヤケて焦点が定まらない。

 何をしたの!? と声に出したつもりだったが、自分でも呂律が回っていないことが分かってしまうほど、声が籠もってしまう。

 

「ようやく効いてきたのね。ノアってお酒強いんだ。これはしっかり勉強しておかないと」

 

 お酒という単語が出てきたが、それが意味するところがどういうことなのか考える前にアリサに引きずられていく。

 コテージの中に入って階段を上がる。

 アリサが僕の肩を支えているが、とても重労働なのだろう。

 汗だくになっているのが目に見えるのでアリサに声を掛ける。

 

「いや、ありさ。だいじょうぶ?」

「ふーっ、平気よ。これからもっと疲れることするんだから」

「…………」

 

 その言葉で何となく察しが付くあたり、僕と彼女達の関係も深まってきたのだなあ、とか悲しいことを考えていた。

 彼女は僕をベッドに放り投げると、自分は一端部屋を出ていった。

 

「バーベキューの片付けしてくるわ。それが終わったら朝まで楽しみましょ」

 

 部屋を離れる間際にこちらへウィンクした後、彼女の姿が見えなくなった。

 逃げようにもここは絶海孤島であり、明日の昼間に来る船以外では帰ることができない。

 そしてそもそも体が脱力してしまって禄に動くこともできなかった。

 しかし今回のことで1つ決心したことがある。

 

 ――アリサが持ってくる飲み物には注意しよう、と。




 今回は最後だけちょびっとヤンデレ要素を戻してみました。6話以降が日常系だったものでね。
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