最近彼女達の様子がおかしい   作:ガラン・ドゥ

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 私は東北の人間なので、関西弁に何かおかしいところがあればご指摘ください。

※映画「魔法少女リリカルなのは Reflection」を見てないと分かりにくい描写があったため前書きに設定を書いておきます。

・練習空間
 八神家2階の一室を、守護騎士シャマルによる結界で区切った、魔法訓練用の空間。
 広大な海と空、そして適度な障害物は「空戦魔導師」にとって使いやすいステージとなっている。(設定資料集より引用)


03:夜天の少女の様子がおかしい

 最近体の調子が良い。

 倦怠感は無くなったし、朝もスッキリと起きられる。心の健康度はともかくとして元気で生活に張りがあるのは確かだ。

 なんでこうなったのかというと、理由は2つ。

 

 1つは夏休みになって学校に行かなくても良くなったこと。

 周りから変人として見られることもなくなったし、彼女達の大量のお弁当を、餌付けのように食べさせてもらうこともない。

 あれだけでだいぶ胃が痛くなってたから助かった。

 それでも彼女達の中の誰かしらが毎日僕の家にやってくるか自分達の家に誘ってくる。

 もう僕の両親もとっくに家に帰ってきてるのだから「家に来てもらわなくても平気だよ」とは言ったのだ。

 しかし、全員が上目遣いで目に涙をためて「わたしと一緒にいるの、嫌?」と返してくるために、僕には全く拒否することができないでいた。

 女の子のああいう仕草ってズルいよなあ。

 それで彼女達と家で何をしているのかというと、遊んだり勉強したりするのはまあ当たり前のことだとして、僕が管理局関連等でいない時は母さんに料理を教えてもらっているようだ。

 どうしてそんなことしているのかと、試しになのはに聞いてみると――。

 

「ノア君のお義母様にノア君の家の料理を教えてもらいたいからだよ?」

 

 とだけ返されて後のことは何も教えてくれなかった。それは一体どういう意味なのか……。

 気にはなる、が、これ以上聞いても無駄なんだろうなと、なんとなく経験則が申している。

 彼女達の様子がおかしいのは既にいつものことだ。あとお母様の発音もおかしくなかった?

 ちょっと納得してはいないが、彼女達が母さんに付きっきりの時は僕の自由時間も増えるし、母さんも喜んでいるようだから良しとしよう。

 しかし母さんが呟いていたことが若干気になる。

 

「うちの子の将来も安泰よねえ。よりどりみどりじゃない」

 

 勝手に息子の将来を空想するのは止めていただきたい。僕はまだ自由でいたいので。

 

 元気になった2つ目の理由は魔導師組の3人と週に1回模擬戦をしているからだ。

 フェイトには断ったのだが、あれから彼女は2人にも話したのか、その週の休日には拉致されるようにはやての家の練習空間へと連れて行かれた。

 協力してくれるのは有り難いけどそんな血走った目で見つめてくるのはご遠慮願いたい。

 3人とも普段はお淑やかなのに戦闘好きのきらいがあるからなあ……。

 それで模擬戦の話なんだけど、もっと早めにやっておけば良かったというくらいには順調だ。

 当初からの目的であるダイエットには着実に成功しているし、3人とも戦闘スタイルが違うこともあって、その対処を考えていくことに楽しさは覚えてきている。

 ただ彼女達に全力を出してもらってる訳ではない。

 これは元々僕の魔法が対人向けのものではないことに起因している。非殺傷設定とか関係なく、当たれば確実に相手の人体を傷付けてしまう。

 僕が3人との訓練に参加していなかったのもこのためだ。

 だから模擬戦をやる時はお互いデバイスなしで戦闘を行うことにしていた。

 基礎的な魔法しか使えないのはもどかしい時もあるが、それだけでも体を思いっきり動かせるというのはやはり気持ちがいい。

 こんなことに付き合ってもらって悪い気しかしなかったが、3人とも「これでも魔法の特訓になるから良いの」と返してくれたことが有り難たかった。

 フェイトは「もっと自分を使ってくれても良いんだよ?」と食い気味に距離を縮めてきたが、君はもっと自分を大切にしようね、と言って落ち着かせた。

 

 僕はそれ以外は順調に夏休みを謳歌しており、こんなに心が軽いのは実に3ヶ月ぶりのことである。

 このまま二学期まで何事もなく生活できれば良いなあと思っていたのだが──。

 

「うっ、グスッ、ごめんなあノア君。私のせいでこんな……」

「いや、うん、大丈夫だよ。はやてだって悪気があったわけじゃないんだからさ」

 

 今現在、僕ははやてに泣き付かれていた。

 

 

 

 今日は毎週のこととなった模擬戦の日で、そのために僕ははやての家にまで来ていた。

 今日もいつも通り準備運動をしてから戦うまでは良かった。

 だがお互い思ったよりも熱が入っていたのか、段々強めの魔法を使うようになってしまい、しばらく拮抗していた勝負も、やがては力負けしてしまった僕が負けてしまうこととなった

 それで崩壊したビルまで吹き飛ばされてしまったんだけど、「あーくそー負けたのかー」とか呑気に思っていたら、ビルの残骸が降ってきて視界が真っ暗になったのが僕の見た最後の光景だった。

 

「ノア君、ノア君起きて」

 

 それからどれだけの時間が経ったのかは知らないが、体をゆさゆさと揺らされる感覚に次第に意識を覚醒させていった。

 気が付いた時には僕ははやての膝の上で、未だに彼女はポロポロと泣いている。

 瓦礫で頭を切ったのか血だらけになっていたけど、はやてが治癒魔法を掛けてくれたおかげで痛みはない。

 若干クラクラしてはいるが。

 いやあバリアジャケットがなければ即死だった。

 

「グスッ、ほんまに良かったわあ。ノア君が起きなかったらって思ったら私……」

「そんなに心配しなくてもいいよ。傷はもう塞がったし問題ないでしょ」

「でも……」

「平気さ。元々は僕の不注意だし、はやてが気にすることじゃないよ」

 

 未だ涙をにじませている彼女に心配を掛けたくなくて、なるべく笑顔を作ってみせた。

 

「許してくれるん?」

「許すも何も僕ははやてを絶対に責めないよ」

「ノア君……」

 

 これではやても納得してくれるだろうと思った。ということで今日の試合はお開きだ。

 

「じゃあ僕そろそろ帰るから──」

「駄目」

 

 そう言ってはやての膝から起き上がろうとしたのだが……ガシリと肩を掴まれて押し戻される。

 

「……え、あの、はやてさん?」

 

 見上げるが彼女の表情は変わらない。

 

「こんな状態で帰らせるなんて酷なことはできへんやろ? 今日は私がお世話してあげるから泊まってってな」

「はい!? いやそんな急にはムリでしょ! はやてにだって予定があるだろうし……」

「今日はノア君が来るから一日の予定空けてるから心配いらへんよ? それに頭怪我した時って急に体調悪くなることもあるんや。それやったら今日一日だけでもここから動かずに私が見といた方が安全やない?」

「いや、それはそうかもだけど、それだったらうちの親に迎えに来てもらうとかも……」

「それなら大丈夫や。ノア君が気を失ってる間にちゃんとお義母様に連絡しておいたから」

「何してるの!?」

 

 はやては携帯電話を見せてきて、そこには僕が事故った時のやり取りがされていて、最後に母さんからの「うちの息子なら丈夫だから問題ないでしょうけど、あとははやてちゃんの好きなようにしてもオッケーよ」というメッセージで締めくくられている。

 ねえ、なんで僕抜きでそんな会話がなされているの? 僕に決定権はないの?

 そして母よ、勝手に自分の息子を売らないでくれ。

 

「ちゅー訳でお世話させてな?」

「うう……。でもなあ」

「そんなに嫌?」

 

 僕が尚も抗議しようと思ったところではやてが被せてきた。その表情はどこか寂しそうだ。

 

「私、今すごく辛いんや。ノア君は運動のためにここに来てたのに、私が張り切り過ぎたせいでこんな事態になってしまってん。どうしても自分が許せないんよ……」

 

 せやからね、とはやては付け加えた。

 

「もしノア君が私にお世話させてくれへんかったら、私、罪悪感で自殺してしまうかもしれへん」

「え……じょ、冗談だよね……?」

 

 真顔で恐ろしいことを言っているはやてに恐る恐る確認してみると、ニコリと笑い返してくるだけで何も答えない。

 しかしその目が決して笑っていないことだけは分かった。

 この状況、僕にできることは1つだけである。

 

「……よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いされました」

 

 僕って弱いなー。いや、あんな顔されたら誰でも同じ選択を取ると思いたい。

 

 

 

 ひとまずバリアジャケットを解いてお互い私服に着替えると、1階のリビングへと降りる。

 時計を見れば現在の時刻が午後3時。

 昼食を取り1時頃から模擬戦を開始したから、訓練時間を引いても最低でも1時間は気絶していたことになる。そう考えると結構恐ろしい。

 1人だったら危なかったかもしれないけど、はやてがいたのでそんな心配は無用だった。

 それで夕食まで時間があるので、それまで何かしてようとの話になった。

 夏休みの課題はもう殆ど終わっているし、勉強という気分でもない。

 ということなのでひとまずテレビでも見て暇を潰そうということに決定した。

 それは良いのだが……。

 

「あの、はやて? もうちょっと離れてくれると助かるんだけど……」

「嫌。ノア君、何かあると逃げようとするやろ。やからしっかり繋いでおかな」

 

 はやてに腕に引っ付かれて全く身動きできそうになかった。

 広いソファだというのに2人とも隅っこにピッタリくっついていて非常に居心地が悪い。

 はやてってこういうとこあるよなあと内心考える。何か心配事があると必ず自分の目の届くところにものを置いておくのだ。

 それは人でも変わらないらしい。

 しかし不味い。この状況は非常に不味い。

 彼女の方からめっちゃ良い香りがしてくるし、色々と柔らかい部分が僕の体に密着している。

 ようするに理性が崖際で落っこちそうになっていた。

 

「でもはやてだってこれじゃ動けないでしょ? この状態が窮屈じゃないかな……」

「そんなことあらへんよ。ノア君の匂いは好きやし、こんなこと中々できへんからなあ」

 

 そう言うと彼女は僕の首筋付近でスーッと匂いを嗅ぐ仕草をした。その動作にビクリと震える。

 本当にヤバい。早く何とかしないと……。

 

「い、いやあ、僕なんて全くいい匂いしないでしょ……そうだ! 汗を掻いちゃってあんまり気持ちよくないからシャワー貸してもらえないかな? はやても体洗いたいでしょ」

「むっ、そうやった……。ノア君が怪我したから気が動転してたわ。折角やしお風呂も張ろっか」

 

 はやての言葉に僕は内心ホッと息を吐く。これで何とか彼女も離れてくれて……。

 

「そしたらノア君も一緒に入ろ? 2人一緒なら時間の節約にもなるやろし」

 

 おおっとぉ?

 

「それは絶対無理だからね!?」

「え、なんでや? 昔は一緒に入ってくれたやん」

「それははやての足が悪かった頃の話だよ! 今はお互い成長もしたんだしあんまり異性の体見るのは良くないと思うんだ」

「私は気にならんけどなあ」

「僕が気にするの!」

 

 ぜえぜえと肩で息をしながらはやてを引き剥がす。 このままでは埒が明かないし、はやてから離れる絶好のチャンスを逃す訳にはいかなかった。

 風呂の水を溜めようとリビングを出ようとした時、はやてがボソッと口にした言葉を僕は聞き逃さなかった。

 

「うーん、もうちょっと正論で攻めなあかんなあ」

 

 え、本気で2人で入ろうとしたの? これ以上僕の理性を削って何がしたいの?

 

 

 

 とりあえず無事に風呂で汗は流せた。

 どっちが先に入るかということで若干揉めたが、「ノア君は客人だから」という主張を崩さないはやてに、僕はレディファーストだからということで先に入らせた。

 僕が入ってる時に乱入されるのを防ぐ為でもあるんだけどね。

 はやてを信用していないわけじゃないが、最近のはやて達の行動を見るに、防備を固めておくのに越したことはない。

 それで、何の妨害もなく気持ちよく風呂から上がったわけなのだが、何故か僕の服がなかった。

 

「はやてー、僕の服はー?」

 

 洗面所からはやてに聞いてみると、すぐに返事が返ってくる。

 

「ノア君が入ってる時に洗濯しといたでー」

「……はい?」

 

 僕が固まっていると、はやてが顔を出してきた。

 いや、こっちはバスタオル巻いてるだけなんだから、そんなに近寄って来ないでください。

 

「それじゃあ僕は何を着れば良いの……?」

「心配せんでも大丈夫や。ちゃんと着替え用意しておいたから」

 

 そう言うはやての手には寝間着が握られている。母親が持ってきてくれたのか、と一瞬考えたが、どうも僕が見たことのないものであった。

 

「これどうしたの?」

「ノア君が家に急に泊まることあるかなーって思って買っといたものなんや。皆の分もあるんやで」

「へえ、何だかごめんね、ありがとう」

 

 これで僕の分だけ用意されていたら若干怖いなと思ってしまったが、そういうことではないらしい。

 とりあえず着るものがあって安心した。僕の許可なく勝手に洗濯するのはどうかと思ったが。

 着てみたらサイズはピッタリ。偶然か? 偶然だと思いたい。

 

 その後、僕達はゲームでもしながら時間を潰していた。2時間ほど経ったところではやてが夕食の準備だと言って立ち上がる。

 僕が何か手伝えることはないかと聞いたら、「ええのええの。今日はノア君は何もせんでも、ただ待ってるだけで良いんや」と言われたので素直に待っていることにする。

 更に数十分待っていると、キッチンから美味しそうな匂いが漂ってくる。

 試しに近付いてみるとビーフシチューのようだった。

 様々な具材がグツグツと煮込まれて綺麗な夕焼け色をしており、それがまた食欲を唆られる。

 もう時期完成しそうだったので、せめて皿くらいは出しておいた。

 その上にはやてが手際よく鍋の中身を盛っていく。

 それらをテーブルまで運ぶと「いただきます」と2人で挨拶して食べ始めた。

 スプーンで一杯口に運ぶと、ドロリとした温かいスープが中いっぱいに広がり、完熟トマトの酸味、夏野菜の爽やかな風味が体に程よく染み込んでくる。

 これなら何杯でもいけるだろう。

 実際おかわりを何度かしてしまった。

 食べ終わると僕が食器洗いを買って出た。はやては別に良いと言ってくれたのだが、何もしないのでは流石に申し訳なくなる。

 

 はやての手料理にすっかり満足してソファに乗っかかり、さあこれから就寝時間まで何をしていようか、というところなのだったが……妙に眠たい。

 いつもならこの時間はまだ目が冴えているというのに、瞼が重くなっていく。

 一体どうしたことだろうか。

 そんな僕を不審に思ったはやてがどうしたのかと聞いてくるから、率直に答えると「きっと疲れたんやろ」と返ってきた。

 疲れるようなことをしただろうか。今日やったことと言えばはやてとの模擬戦くらいである。それもわずか1時間足らずしかやれず、その後はずっと休んでいたようなものだ。

 それに最近すこぶる調子が良かったのにここで急に具合が悪くなることってあるのだろうか? 事実体の調子は悪いのだが。

 

「もうお布団に入ったら?」

 

 というはやての有り難い言葉を頂いたので、申し訳ないが早めに就寝させてもらうことにしよう。

 いつも泊まりにきた時に使わせてもらっている部屋に入ると、そこにはすでに布団が用意されていた。彼女の配慮だろう。

 他の4人にしてもそうだが、はやては気配りもできるし優しい性格をしている。

 それをちょっと忘れて今日は何かあるんじゃないかと警戒してしまったが、なんだか恥ずかしくなってしまう。

 今の今まで何もなかったし、今日泊まるように言ったのは、僕が怪我をしていただけなのだろう。

 僕は心の中でもう一度はやてに感謝しながら眠りについた。

 

       ・

 

       ・

 

       ・

 

「ノア君、起きてる?」

 

 彼が使っている部屋の前で、彼に話しかけてみる。ついでドアをコンコンと叩くが返事はない。

 それを確認してから私は扉を開ける。

 そこには掛けタオルは羽織って眠る彼の姿。それは正に無防備といった有様で、私の胸が高鳴る。

 いけないいけないと自分を抑えて、彼の布団へと迫っていく。

 彼の枕元に立つと、彼が万が一でも起きないようにゆっくりとしゃがむ。

 そして彼に顔を近づけると――おでこに口づけをした。

 

「んっ……」

 

 彼の熱が口を通して私に伝わってくる。

 それだけのことなのに、もう心臓が爆発しそうだ。これが彼の唇だったらどうなってしまうのだろう。

 私はきっとあまりの幸せさに倒れてしまうだろう。将来の花嫁がそんなことでどうするのかという感じだが。

 ……と、危ない危ない。また思考が暴走していた。

 とりあえずここまでにしておこう。今日は彼への贖罪のために寝床を丁寧に用意したのだ。決してこんな夜這いめいたことをするためではない。

 我慢できなくてつい彼の食事にお薬を入れてしまったが。

 でもこれでおしまいだ。自分もさっさと寝て明日とびっきりの朝食を用意しなければいけない。

 彼のお義母様に習った料理をここで活かさない手はない。

 そうして彼のおでこから口を離した瞬間、毛先が私の鼻に触れた。

 その瞬間鼻孔に広がる彼の匂いに、私はまた動けなくなる。

 私は彼が好きだ。彼の匂いが好きだ。

 それを嗅げば彼が今正にここにいるんだということを実感できるから。

 最初の出会いの時も私は彼の匂いに惹かれていたんだ。

 

 私がまだ車椅子で生活していた時のこと。

 私は買い出しに行かなきゃと外に出ていた。行きは良かったのだけど、帰りが問題だった。

 その日は結構な品数を買い帰路に着いてたのだが、膝の上に乗っけていた買い物袋が少し落ちそうになっていた。

 それに気を取られていた私は、車椅子が段々と歩道の斜めに走っていることに気付かず、やがて端にあった溝にガタンと後輪をハメてしまったのだった。

 買い物袋が無事だったのは幸いだったけれど、代わりにタイヤがうんともすんとも言わなくなってしまい、私は途方にくれてしまっていた。

 本当は誰かに助けを求めたかった。でも誰も私のことは気にもとめず立ち去っていくばかりで、そんな中声を上げるのが怖くなってしまう。

 完全に身がすくんでしまって涙が出そうだった私の前に1つの影ができた。

 

『大丈夫?』

『え……?』

 

 それが彼だった。

 誰も見向きしない中で、彼だけが、私を見つけてくれたのだ。

 

『ああ、段差にタイヤがハマっちゃったんだね』

 

 そういうと彼は私の前でしゃがみ込んでタイヤを持ち上げてくれた。

 私と車椅子の重量が合わさってすごい重たかっただろう。

 それでも彼はなんともないような顔で私を歩道に戻してくれた。やせ我慢でも何でも私にはそれが格好良く見えたのである。

 その時彼の髪が私の頬を掠めて、すっごく甘い匂いが通り過ぎていったのだった。

 そんなに香る筈のないものだったので、もしかしたら私の気の所為であったのかもしれないけど、私の彼に対する印象を強めるのには十分であった。

 その後、彼は私の家までちゃんと連れていってくれた。

 彼はそこで別れるつもりのようだったけれど、久しぶりに病院の先生以外と会話ができたのだ。

 この機会を逃せばまた独りぼっちになってしまうという想いから、私は彼を呼び止めてしまう。

 流石に嫌な顔されるのかな、と内心ビクビクしていたが、彼は笑顔で私のお願いを承諾してくれた。

 本当に嬉しかった。それが生まれてはじめてできた友達でもあったのだから、尚更興奮がとまらなかった。

 

 それからも彼は私の家に来てくれていた。お互いの本の話で盛り上がったり、1人で生活していることを延々褒められたり。

 なんともむずかゆい気持ちではあったけれど、決して嫌いではなかった。

 ずっと1人で生きてきたから気付かなかったけど、私は思ったよりも愛情に飢えていたらしい。それくらい彼との時間はあっという間に過ぎていった。

 でも、会いに来てくれたということは当然帰る時もやってくる。

 私はこの時間が何よりも嫌いだった。

 「まだ帰ってほしくない」とか「どうしてこの時間が永遠じゃないんだろう」とか、ずっとそんなことばかり考えていた。

 そうして次第にこう思うようになった。「彼と私が家族になれば、こんな寂しい気持ちを味わわなくてすむのかな」と。

 それは守護騎士達と出会った時も、彼の後からすずかちゃん達と出会った時も、そして今この時もその想いは変わらない。

 もっともっともっともっともっと、もっと彼と一緒にいたい。

 今までお世話になった分、彼にそれまでの恩返しをしたい。

 だから私は努力している。

 力は付けた。お洒落も覚えた。権力を手にできるよう今から下準備もしている。

 これだけやっても彼の理想にはまだ遠いのだろう。彼は未だに私達に遠慮しているように思えるからだ。

 だから私はもっと頑張る。

 なのはちゃん達の想いも同じだった。

 1人では彼を繋ぎ止められないのかもしれないけど、私達の側には5人もいるのだ。

 必ずや彼の心を射止めることができると確信している。

 ずっと傍にいてもらうよう──

 

「離さへんよ、ノア君」




 これから資格の勉強のために更新が遅くなってしまいます。それでも何とか更新を早めるようには頑張りますが、2週間に1回の更新とかになるやもしれません
 皆様には大変ご不便をおかけしますm(_ _)m


※アンケートの差が僅かしかないのでどうしようか迷ったのですが、あとがきに少しだけ残す形にします。

□主人公のデバイス
 巨大な手の形をしたアームドデバイス。手首に位置する場所から自分の右手をはめ込む形で使用する。
 右掌から高周波の魔力を、短いサイクルで連続で対象物に直接照射することによって装甲や防御を貫通し、内部から爆発させることができる。
 対大型兵器などには非常に有効な能力であるが、対人戦では過剰な破壊力から使用は極力控えるように言われている。
 ……よく分からない人は紅蓮弐式をイメージすると大体そんな感じです。

主人公に設定付けは必要ですか?

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