鶏が先か、卵が先か   作:楊枝

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誰よその女!!(0巻扉絵を見て)
可愛いわね!!(陥落)



水面下より

 

 

 

 劇場の席に着いて、他の観客の迷惑にならないようにと顔を寄せ合い、二人小声で会話をする。

 

「堀北さんからチャット来た?」

「オレから送った。堀北は20時40分かららしいな」

「本当見事にみんな分かれてるよね」

「ああ。でも、途中櫛田に会ったから聞いてみたんだが、櫛田は堀北と同じみたいだったぞ」

「法則は……今のところ断定はできないか」

「知ってる中ではオレが一番早いから、何かわかったら連絡する」

「うん。待ってる」

 

 現時点では情報が少なすぎる。お互いそれを理解しているから、メールの話はすぐに終わった。

 もう数十分もすれば、演劇が始まる。演目は『オペラ座の怪人』だ。

 

 軽くあらすじを述べるならば、舞台は19世紀中頃のパリ、オペラ座。オペラ座の地下には怪人・ファントムがいて、彼は天才作曲家でありながら醜い顔を隠すため常に仮面を被っている。そんな彼がクリスティーヌというソプラノ歌手の素質を見出し、『音楽の天使』として彼女に日夜レッスンを施す中で、次第に彼女に惹かれていく───。

 ……そうして二人惹かれあって、怪人の醜い顔ですら許容し乗り越え、本物の愛が彼らの間に芽生えたなら言うことなしのハッピーエンドなんだろうが。

 

「ファントムも可哀想だよねぇ」

「ん? ああ、まあ最後は悲惨ではあるよな」

「クリスティーヌが別の男と結ばれて、目の前で本物の愛ってやつを見せつけられて……やっぱり間男は死すべしっていう世界の共通認識を感じる」

「飛躍しすぎだろ。でも、ファントムだって初めて愛に触れられたわけだし、そう可哀想でもないんじゃないか?」

 

 悲惨ではあるが、可哀想ではない。一見矛盾しているようで、筋は通っているのか。

 

 演劇が始まるという合図の音が劇場中に鳴り響く。もともとそう明るくなかった劇場だが、すべての照明が落ちると本当に真っ暗になる。

 数拍置いて、パッと舞台に光が灯った。舞台からの光に照らされ、暗い劇場の中で私たちの肌が淡く浮き上がっている。

 

 自然と意識が集中する。清隆くんも真っ直ぐ舞台を見つめている。

 

 無意識に、私は小さく口を開いていた。

 

 

「かわいそうに」

 

 

 

 

 

 19時20分。清隆くんからの情報も受け取り、勇んで201号室に向かった私だが、集まったDクラスのメンバーを確認して思わず目を点にした。

 

「おや、水元ガールじゃないか。ふっ君も私と同じだったのかい」

「お、おお……まさか高円寺くんも私と同じだったとは……」

「そのようだねえ。日に何度も私と相見えられること、光栄に思いたまえ」

「それはもちろんでございます……」

 

 完全に想定外だ。トリッキーな彼を制御しながら場を支配するなんて、天地がひっくり返っても無理な話であった。

 

 内心で頭を抱える私を置いて、最後のメンバーである高円寺くんも着席したことにより、ようやく試験の説明が始まる。

 ちなみにこの部屋を担当している先生は茶柱先生だ。部屋に来て一度も目が合うことはなかった。あんなにたくさん個人的にも話をしたのに、冷たい先生である。

 

「ではこれより、特別試験の説明を行う」

 

 いつもの淡々とした口調で、簡潔な説明が彼女の口から為されていく。

 朧げだった知識を説明により補完し、今後の展開を頭の中で組み直す。……いや……やっぱり無理か? 無理じゃない? 詰んだな。

 

 私と高円寺くんの他にいる二人の生徒も、大人しく説明を聞いていた。高円寺くんという爆弾がこの場にいることもあって、余計に大人しくしているのもある気がする。

 

「……説明は以上だ。何か質問は?」

「ふむ。現時点で明かされた情報では、明確に断言することはできないが……まあ私にかかればこのような試験など、造作もないねぇ」

 

 うーん、詰んだな(2回目)

 

「質問はないな? ないならば全員速やかにこの部屋を去るように」

「わかったよ、ティーチャー。ではアデュー」

 

 英語なのかフランス語なのか、結局どっちなんだろうな……。

 

 嵐のように去っていく高円寺くんの背中を見届けてから、他の生徒に続き部屋を後にする。すぐに携帯の電源をつけ連絡を取ろうとするが、記載されている名前の一覧を見直し、タップするはずだった最初の画面の位置から指先を移動させる。

 チャットを送れば、すぐに既読がついた。彼女もちょうど携帯を見ていたのだろうか。なんにせよ、幸先がいい。

 チャットでの話を終えると、携帯をマナーモードにする。

 

 私は待ち合わせの場所に向けて歩き始めた。

 

 

 

 

§

 

 

 

 

 部屋に戻ってくると、ドアの前にいる人物に目を丸めた。あっちも私に気づき、壁に凭れていた体勢から直って私の方に歩み寄ってくる。

 

「清隆くん」

「葵。携帯見てないだろ」

「え。あー……マナーモードにしてた」

「返事が来ないと心配になるから、マナーモードはやめてくれ」

「むちゃくちゃ言うなこの人……」

 

 清隆くんに見られながらマナーモードを解除する。顔を上げて、それで、と首を傾げた。

 

「もしかして緊急だった?」

「緊急……緊急だ」

「その間は何だ」

「葵から返事がなかったし……」

「私もいつだってすぐに返事ができるわけじゃないんだよ?」

「だって……」

「駄々を捏ねない!」

 

 不満そうに清隆くんが軽く唇を尖らせている。手を繋ぐと、力を込めて握り直された。

 

「ここは位置情報がうまく作動しない……」

「知らん知らん、ちょっとくらい我慢しなさい」

 

 清隆くんがこの調子だと、動きにくくて困る。これからはこの辺りも改善、もしくは何か解決策を見つけておかなければならないかもしれない……が、その手段はもう手に入れたも同然か。あとは使い方次第だな。

 どちらにせよ、清隆くんが一番厄介説があるということだ。

 

 清隆くんが私を見ながら、口を開く。

 

「それで、葵は何してたんだ?」

「散歩」

「誤魔化す努力くらいはしてくれ」

 

 今私たちがいる場所は4階、女子の客室の階だ。こんなところでずっと二人でたむろしていて、変な噂を立てられては困る。女の子は噂好きなのだ。それは恋愛が絡めば余計に言えることでもある。清隆くんもなぜ堂々と女子の階に来れるのか。

 

 清隆くんの手を引いて、手っ取り早く大勢の人がいる1階のラウンジに向かう。まずは人に紛れる必要がある。

 その途中、連絡に気づけなかった言い訳もしておく。

 

「前々から考えてはいたんだけど、人が足りなくて実行できなくて……でも、そうやって尻込みしてたらいつまで経っても前に進めないから。だから私、ついに一歩踏み出すことにしたんだ……! もちろん清隆くんなら私のこと、応援、してくれるよね……?」

「オレは今演劇でも見てるのか?」

 

 清隆くんの両手を取り、胸の前できゅっと握り込む。上目遣いに彼を見上げ数秒、冷め切った目が一向に変わってくれないので、これ以上ふざけるのをやめる。

 

 仕方ないので手を離し、真面目に答えた。

 

「ちょっと今後のことを考えると、こっちに引き入れておきたい人材がいるんだよ。その人に会ってたんだ」

「誰だ?」

「教えてあげたいのはやまやまなんだけど、私と清隆くんが繋がってる風に取られたら不味いんだよね。たぶん割とすぐバレると思うし、その時の清隆くんの新鮮な反応も求めてるから、まだ知らないままでいてくれると助かるかな」

「オレのか?」

「オレの新鮮な反応が大事なんだよ」

「………わかった」

 

 不機嫌そうな返事に、ごめんねと謝っておく。それでも譲れないものは譲れないのだ。伏線はいくら張っておいても悪いものではない。

 

 とにかく、と結論をまとめて言う。

 

「清隆くんじゃないけど、私も出し惜しみする気はなくなったってことかな」

「オレはそんなこと一言も言った覚えがないんだが……」

「大丈夫大丈夫。清隆くんは安心して私に身を任せなさい」

「葵に自覚はないかもしれないが、結構抜けてるぞ」

「清隆くんには言われたくない。この全自動タラシ機が。後で収拾つかなくなって困るのは清隆くんなんだからね」

「突然の悪口やめろ。あとオレはタラシじゃない。もしかして自己紹介してるのか?」

 

 ポンポン打てば響くような応酬をしているうちに、ラウンジについている。

 

 夜の8時前だとはいえ、ラウンジにはちらほらと結構な数の生徒がいる。そこに紛れ、軽食を提供するカウンターからお互い好きな飲み物を頼むと、カップを受け取り空いたテーブルに向かう。

 席につくと、さっそく私は報告できていない自身のグループの話をする。

 

「聞いてよ清隆くん、私のいる猿グループなんだけどさ、高円寺くんがいたんだよ」

「終わってないか?」

「たぶん初日には何らかの方法で終わる」

「詰んでるな」

「本当に自由でいいよね〜」

「毎回言ってるな、それ」

 

 呆れたような目で見られても、本心なのだから仕方ない。

 

 いろいろ結末が見えている猿グループの話は横に置いておいて、少し行儀は悪いがテーブルに肘をつき、ニヤニヤしながら清隆くんを見た。

 

「兎っていうお可愛いグループに所属している清隆さんは今一体どういうお気持ちで?」

「葵の可愛い基準が気になるところだが……まあ、今はまだ未知数だな。話し合いは明日からだし」

「清隆くんが兎っていうのが可愛いんだよ! 清隆くんが兎だよ、兎。兎耳……兎清隆くん……」

「何回も言うな。全然関係ない事柄なのに、連呼されるせいで微妙に恥ずかしくなってきた……あとどさくさで兎耳って聞こえたんだが冗談だよな?」

「………」

「なんで黙った」

 

 よくない? 兎耳。私動物の中で兎が一番好きな気がする。ふわふわで小さくて可愛いと思う。兎触り放題があるならば、ぜひ行ってみたいところだ。

 話がズレてケモ耳の良さについて熱く語っていたところで、清隆くんからは「葵と博士は絶妙な箇所で嗜好が重なってそうだな……」とどこか遠い目をしながら言われた。それは私も以前から思っていたことだ。機会があれば博士とは語り合ってみたい。

 

 時刻はいつのまにか20時40分に差し掛かろうとしている。ラウンジに取り付けられた時計を確認し、軽く息をついた。

 

「今頃堀北さんたちも説明受けてる頃かな」

「辰なんていう大層な名前をしたグループだ。Dクラスからは今のところ堀北、櫛田、平田……メンバー選出に何かしらの作為は感じるが、どうなんだろうな」

「他クラスのメンバーは堀北さんたちが帰ってきてから聞くしかないだろうね」

「そうだな。堀北とは明日どこかで落ち合うようにした方がいいかもしれない」

「その必要はないよ。私が今日明日で彼女とは部屋の中で話をしておく。ちゃんと後で話したことは教えるよ。清隆くんも試験内容が気になるのはわかるけど、すぐに動くのは止した方がいい。堀北さんは今一番注目を集めている生徒だ。彼女の動向が他クラスから逐一見張られている可能性だってある」

「……だとしたら、堀北が明日真っ先に会おうとした相手は疑われる、か。そうだな、葵からまた後で堀北と話したことを教えてくれ。オレもなんだかんだ焦っていたみたいだ」

「うん。清隆くんには私がいるんだ。存分に利用すればいい。だから大人しく待てしててね」

「兎扱いも嫌だが犬扱いも良いとは言ってない」

 

 視線をカップに落とし、頭を回す。すでに潰した手とこれから弄する手。私の望む結末においても、この三日間は重要なものとなるだろう。

 とは言っても、打てる手はもうほとんど打ったといっていい。あとは帰ってから慎重に事を進めていくだけだ。効率よく動かなければいけない。

 

 清隆くんはこれから兎グループにかかりきりになる。そのため、私が一人で動ける時間は確実にあるはずだ。修正のために動く場合があることを考慮したとしても、時間が足りないということはない。むしろ補って余りあるだろう。この点に関しては安心していいと言える。

 

「清隆くん、試験頑張ってね」

「高円寺がいるからといって諦めるの早すぎないか?」

「じゃあ清隆くんは高円寺くんを制御できる?」

「………」

「そういうことだ」

 

 実際猿グループに関しては何もするつもりがないから、全くの嘘ではない。嘘をつくときは、ほんの少し真実を含ませる。世界共通の騙り方法だ。

 

 私から言わせれば、私のこの言動は『刷り込み』に近いとは思っているけれど。

 

「堀北さんが帰ってくるのに合わせて私も帰るよ」

「そうだな。葵ならどうとでもするんだろうが、なるべくなら同室の奴らがいないうちに話しておいた方がいい」

「タイミングはうまく見つけるから任せて。アフターフォローまでバッチリだ」

 

 ……と、そろそろちょうどいい時間か。

 

 席から立ち上がる。飲み終えていた私と清隆くんの分のカップを重ね、返却口まで返しに行く。清隆くんは私の後をついて来ている。

 

「じゃあまた明日、清隆くん」

「ああ。おやすみ、葵」

「うん。おやすみ」

 

 三階の階段上り口で手を振って別れた。清隆くんの背中を見送り、私も自室に向けて歩き出す。

 

 ……あれ?

 

 四階の廊下、ちょうどよく見えた二人の背中に目を丸めた。すぐに明るく声をかける。

 

「おかえり、櫛田さんに堀北さん」

「あ! うん、ただいま水元さん〜」

「………」

 

 堀北さんを追いかけていた華奢な背中が、私の声かけでパッと振り返る。もちろんその人物とは櫛田さんだ。なお堀北さんは一切視線を寄越さずさっさと廊下を進んで行った。安定している。

 

 櫛田さんが先々歩いて行く堀北さんを見やって、残念そうな声をこぼす。

 

「せっかく同じグループになれたのに……」

「あんまり会話できてない?」

「うん。今後のこととか、いろいろお話したかったんだけど……」

 

 視線を下げて悲しそうな顔をしている櫛田さんに、なんだか私まで悲しくなってきた。

 

「櫛田さんには私がついているからね……」

「もしかして励ましてくれてるの? ふふ、ありがとね、水元さん」

 

 悲しい雰囲気は残したまま、しかし明るい顔で嬉しそうに笑ってみせる櫛田さんに胸がギュンッとなる。櫛田さん、健気すぎる。いやわかってる、ちゃんとわかってるんだけど私が対櫛田さんによわよわすぎるせいで簡単に騙されそうになる……!

 

 ガッシと櫛田さんの手を取り、真摯に見つめた。

 

「櫛田さん……二人で頑張ろうね……!」

「あ、アレのことだね? もちろんだよ、私も頑張るね!」

「ひとまず船上から帰ってからだけど、また集まって話そう」

「うん! 連絡待ってるね」

 

 癒しとしてもう少し話したかったのだが、どうやら櫛田さん、これから一つの部屋に集まって女子会なるものをするらしい。聞くところによれば、私と同室の子たちも集まるようだ。

 

 櫛田さんが首を傾げて、私を見る。

 

「そうだ、水元さんもどうかな? みんな歓迎してくれるよ」

「うーん……ありがたいけど、私は遠慮しておこうかな。堀北さん部屋で一人じゃ寂しがるだろうし」

「水元さんよくそういうこと言ってるけど、堀北さんが聞いたらはっ倒されそうだよね……」

「大丈夫大丈夫」

 

 適当な返事を返せば、櫛田さんが若干乾いた感じではあるが笑ってくれる。

 

 時間を聞けば、消灯時間ギリギリまで女子会をするようだ。

 ならば櫛田さんも女子会の準備で忙しいだろうと、今度こそ別れようとして、ふと服の袖をくんっと掴まれたことで立ち止まった。目を丸めて振り返る。

 

「櫛田さん?」

「水元さんは……もしも、だけど」

「? うん」

 

 恥じらいの浮かぶ赤い顔が私を上目遣いに見ている。

 

 

「もし、私と堀北さん、どちらかを選ばなきゃいけないとしたら……水元さんは、どっちを選ぶのかな」

 

 

 突然何を聞くかと思えば。

 きょとんとしながら、至極平然と答えた。

 

「櫛田さんだよ」

「……本当に、水元さんは迷わず私を選んでくれるよね……」

「櫛田さん全肯定マンだから致し方ない」

 

 自信満々にそう言いながら胸を張る私に、櫛田さんは一拍置いておかしそうに笑った。

 

「……うん。ありがとね、水元さん」

 

 袖を掴んでいた手が呆気ないほどパッと離れる。櫛田さんは可愛らしく顔の横で手を振り、「またね!」と言って駆け足で去って行く。

 髪に隠れていたがチラと見えた赤く染まった耳を思い返しながら、は〜〜本当に可愛いな〜〜と思いながら私も自室に帰る。

 

 自室にたどり着き、ドアを開けて中に入る。人の姿は見えない。だが、シャワーの音は聞こえているから、誰かいるのだろう。同室の女子二人は女子会に行っていることは既にわかっているので、消去法で堀北さんしかいない。

 私も堀北さんが出ればすぐにシャワーを浴びようと、手早く着替えの準備をする。消灯時間までまだまだ時間はあるし、スッキリしてから話をしたい。

 

 しばらく待つこと、堀北さんがシャワールームから出てくる。体が温まっているのだろう、彼女の頬は淡くピンク色に染まっていた。そして流れるように、私を見て顔を歪めるまでがセットだった。

 

「ひどいな、普通人の顔見てそんな表情する?」

「不可抗力ってやつね」

「余計理由がひどくなった……」

 

 脱力する。堀北さんは私の横を素通りし、自身のリュックに下着の入った袋を片付けている。

 私もさっさとシャワーを浴びようと座っていた自分のベッドから立ち上がる。袋を片付けていた音が止んで、後ろから堀北さんが声をかけてくる。

 

「水元さん。あなたのグループはどうだったかについて、話を聞きたいのだけれど」

「あ、それなんだけど先にシャワー浴びてきてもいい? 海風を長時間浴びてたからさ、なんとなくスッキリしたくて」

「ええ。構わないわ」

 

 見れば、堀北さんの手には本がある。私が入浴している間、本を読んでいるのだろう。

 それならあまり急いで出る必要はないかと、気を楽にしてシャワールームに向かった。

 

 

 

 シャワールームから出ると、すぐに話し合いが始まった。否、話し合いというよりただの一方的な情報開示ともいえる。

 私は知っている限りのグループについてつらつらと情報を並べて述べ、堀北さんはそれを聞いている。自分のグループはもちろんのこと、知っている限りなので清隆くんと佐倉さんのところのグループの話もした。

 

 堀北さんは私の話を聞きながら、顎に手を当てて真剣な様子で何かを考えている。

 

「そう……少なくとも、辰グループは明らかに誰かによる意図的な作為を感じるわね」

「えー? だれだれ? そんなにすごいグループだったの?」

「……水元さんに話すのはなぜか抵抗を感じるわね」

「なんで!?」

 

 粘っていれば、しぶしぶながら辰グループのメンバーについて話してくれた。ミッション達成である。だが、まだパーフェクトには及ばない。

 

 話を進める。

 

「いやぁ、絶対入りたくないグループNo. 1だな。よかった、こっちは平和で……平和で?」

「一人で言って一人で疑問を感じないでくれないかしら?」

「高円寺くん……」

「知らないわよ」

 

 辛辣に跳ね除けられる。ガックシと肩を落とした。

 めげずに顔を上げ、堀北さんに尋ねる。

 

「堀北さん、明日はどういう予定?」

「突然ね。何かしら?」

「いいから!」

「……読書してるわ」

「じゃあ、どこか出掛けたりはしない?」

「そうね。進んで出掛ける予定はないわ」

「なら、提案なんだけど」

 

 メモ用紙を取り出し、さらさらとシャーペンを滑らせて文字を書いていく。書き終われば、堀北さんにその紙を渡した。

 堀北さんは怪訝そうにしながらも紙を受け取る。それからそこに書いてある文字を見下ろし、形のいい眉がひそめられた。

 

「……これは何かしら?」

「おすすめ食事処朝昼晩コース」

「おすすめ食事処朝昼晩コース」

 

 演技がかった仕草で拳を握る。それから熱く語り出す。

 

「私、結構いろいろ食べて回ったんだよ……そして僭越ながら、ベスト10をつけさせていただいた!」

「はぁ……」

「それが紙に書いてある通りだ! 堀北さんにもぜひ堪能してもらいたい」

「お店の回し者でもあるまいし、その熱の入り様は何なの?」

 

 思いっきり冷めた目で見られるも、私の情熱はその程度じゃへこたれない。身振り手振りで熱弁する。

 

「堀北さん、決まったところでしか食事取ってないでしょ? せっかくこんな豪華客船なのに、勿体ないよ! 堀北さん好みの人の通りがあまり多くない、隠れた名店っぽいのを頑張ってセレクトしたんだよ。それにどうせ堀北さん暇なん」

「何?」

「すみません。いやでも本当、この感動を分かち合いたくてですね……」

 

 睥睨してくる冷たすぎる眼差しに、徐々に言葉が尻すぼみになっていく。私はただ……堀北さんにも豊かな食生活をと思って……。

 

 萎びた某黄色い鼠系モンスターのごとくしょんぼりしていれば、しばらく経って聞かせるがためだけのあからさまなため息を吐かれる。

 

「……どうせ食事を取りに外に出るのは変わらないのだから、気分転換にでも行ってみるわ」

「堀北さん……!」

「感想はあまり期待しないことね」

「全然いいよ! 私もお店選びには自信があるんだ」

 

 よし。これでパーフェクトだ。

 

 ニコニコと邪気なく笑う私を見て、堀北さんは額に手を当てていた。

 

 

 

 

 

 

 




アイエエエ!?ゼロカン!?ゼロカンナンデ!?(ガバ発生)

というわけでスピンオフだと思っていた0巻が後々かなり重要視されそうな気配を察知したので、構想を練り直すことにします。ただこの小説の最終回を変更する予定は今後とも無いので、そこまでに至る過程を多少しっちゃかめっちゃか変えるイメージだと思っていただければ大丈夫です。0巻の内容如何によっては更新済の話にばんばん修正入れるかもしれません。つまり入れない可能性もあるってことだな(淡い希望)

にしてもあの女の子可愛いですね。何あの守りたい笑顔?可愛くない?キレそう(可愛さと重大なガバ発生のダブルパンチ)
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