「ゲームの自分から怒られてしまったね」
「ゲーム内の記憶がないから、どうしようもないよな」
エルフ、人間、黒狐の獣人が3人仲良く並んでの言葉である。コスプレ済み。
勇者っぽいコスプレをした人間は、モフッと獣人の尻尾を抱いた。
エルフと人間で順番制である。本日は勇者のばん。
そしてそれを受け入れる獣人。喉とか鳴らしたりする。仲良きことは良きことかな。
しかし、ゲームの住人のアイテムは私有財産だから手を出すなと口をすっぱくして言われてしまった。携帯の動画内で。無理だって、上からの命令だもの。特にポーションは収集しろと言われた。
なんでも、世界を救わない事にはゲームは終わらないらしい。
ゲームの中の3人は早く終わらせるべく頑張っているが、リアルの3人及び上層部はゲームの世界に大変興味があり、まだプレイしてていいんじゃないの、という感じ。
ゲーム内とリアルの齟齬がひどい。記憶がないからね。仕方ないね。
時間の流れもわりかし違うらしく、一晩で動画がいっぱい出る。
傑の割と際どい動画が多いのはどういうことかと問い詰めたい今日この頃。
傑はお色気系アイドルでも狙っているのだろうか。聞いたら殴られた。ひどい。
でもあれだな。
俺らだけ楽しんでいるのはずるいよな。不公平だよな。俺ってば後輩思いー!!
尚、直哉は危機を感じて学校に泊まり込んでいるらしい。
全ては狐獣人の尻尾が魅惑のもふもふなのがいけないのである。早く尻尾モフらせて、役目でしょ。
「どういうことですか……」
半分切れている七海である。灰原は楽しそうに動画を見ている。
「ねぇ七海、僕らは何だと思う? エルフもいいけど、獣人もいいよね!」
「なんで参加前提なんですか? しませんよ! 先輩でさえ手に負えない案件なんて!」
「まあまあ。七海と灰原がいると、本当に助かるよ。お願い」
「っ しかし……」
翌日、竜人と狼人の動画への出演に、東京校は盛り上がった。
七海が竜人は意外だったけど、似合うじゃーん!
早速鱗を磨かないとな。ブラッシングもするから安心しろよ。全て俺に任せろ、七海、灰原! 後、傑も!
獣人に尽くすことを覚えた悟は、2時間後、爽やかな勤労の汗を流した。
お坊ちゃんだった悟の成長である。
その背後には天国を見せられた3人がいる。エルフでよかったと硝子は安堵に胸を撫で下ろした。
鱗を歯ブラシで磨くのは鬼畜の所業だと思います。
そんなわけで、後輩も交えて、ゲーム内の自分を説得したりして、ちまちまとポーション集めが始まった。
灰原と七海の知らないところで、2人に対する暗殺計画は消えた。ポーション持ってくる人が消えちゃうからね。よかったね。
そして夏油は任務中、幼女2人を保護した。
傷ついた幼女にどうしていいかわからず、そっと尻尾を差し出す夏油。
幼女にぎゅっと尻尾を握られて恍惚とする絵面やばい。
らめぇもふっちゃらめぇ! そんなこんなで村人への殺意は有耶無耶になり、這々の体で呪専に戻る夏油。
え、もふもふしてないと眠れない? そんなぁ。
そんなふうに、呑気に日常を送る日々は、唐突に終わりを告げた。
不思議なゲームは、卒業する頃何が何だかわからない間にそっと携帯から消えていたのだ。
おそらくクリアしたのであろう。
後に残るのは、変身できる異能と少しばかりのアイテムばかりである。
記憶もどんないのかよ。
学生時代の、ちょっと不思議な思い出。
でもそれは、リアルの話。
ゲーム内では、それなりに大変だったのだ。
訂正。
とっても大変だったのだ。
これはそんなゲームのお話である。
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