ぐるぐると魔法陣が回る真っ暗な場所に、私はいた。
あなたのキャラクターは、獣人です!
鏡が現れ、体が勝手に動く。踊る。
なんらかの呪霊か……!? しかし呪力は感じない。
踊り終わると、ボフッと耳と尻尾が生えた。
尻尾がぎょっとするほど大きい。
それに、耳も。とてももふっとしている。
それから、空間の色は黒から白へ。
四角いウィンドウが現れて、そこにステータスやアイテム名が並ぶ。
「ええと、ゲームの呪霊かな?」
答えるように、浮遊感がして、落下した先は石造りの街の中だった。
「見ろよ、獣人だ……!」
「なんてふわふわの尻尾!」
「撫でさせてもらってもいいですか?」
「エロ可愛い……」
「最後の誰かな?」
非術師にしてはやたらと強い相手をボッコボコにして、事情を聞く。
「ここは滅びを目前にした異世界をコピーした世界なんですよ」
「異世界をコピーした世界?」
「そうっす。ここで開発した技術は、その異世界に送られる。そうして、滅びを回避できるだけの作戦や技術を異世界に送り込めた時点でゲームクリアっす。それまで、この夢の世界は滅びを繰り返すっす。あっでも、滅んだり死んだら現実世界に戻れるし、時間も経ってないので安心っすよ」
「へぇ。面倒だな。で、滅ぶ理由は?」
「モンパレっす! モンスターがわあっとダンジョンから出てきて滅ぶっす。モンスターパレード、略してモンパレ!」
「それさえ回避すれば、クリアってわけだね」
「そっす!」
なら、さっさとクリアしてしまおう。
呪霊は……出せるな。出した途端、一気に騒ぎになった。
「わっ な、なんすか、それ!?」
「きもっ!!」
「新しいスキル!?」
「これが見える……みたいだね」
面倒になって、呪霊を引っ込めて腰を抜かした男に問う。
「で、滅びの時はいつなの」
「ひっ 一年後っす! なので一年間は夢の中っすね!」
「は?」
「さっきのモンスターって」
面倒臭くなった私は、走ってその場を離れた。
街の外に行けば、モンスターいるかな?
どんなものか、見てみようじゃないか。
周囲を見ながら、とにかくまっすぐ進む。
昔の西洋風な雰囲気だね。本当にゲームみたい。
城壁の外へ出ると、可愛らしいぽよぽよした半透明なのを、何人かが袋叩きにしていた。
「尻尾がある体で戦うのって面倒そうだし、早めに感覚に慣れないとね」
私も早速スライムに殴りかかる。
何度か攻撃を加えると、スライムは動かなくなった。
その中心にある石をなんとなく引き抜いてみると、消えてしまう。
どこに消えたんだろうと考えると、ウィンドウが開いた。
そこにはアイテム名が並んでいる。
食事のアイテムもいくつか。
「……もしかして、一年間サバイバル? 本当に?」
思わずげんなりしてしまう。とにかく、一年後の情報収集もしなくては。
あれ、もしかして結構忙しい?
慌てて戻って、宿を見つけた時にはすでに周囲は暗くなっていた。
宿代はちょうど三日分。
三日で生計を立てる方法を見つけないとならないということだ。
参ったな。
ちなみに、スライムの核は二束三文だった。
魔物を倒しても、その素材を適切に加工して然るべき場所に売らないとお金にはならないらしい。
宿の食堂でため息を吐いていると、声をかけられた。
「お兄さん、困ってる? 見目の良い獣人には仕事あるよ。大変なのとえっちなのどっちがいい?」
「体は売らないからな。ぶん殴るぞ」
「何、ダンジョンでモンパレって言うだけの仕事だ。モンスターと戦ったりして大変だけどね。後はひたすらモフモフされて動画に撮られるお仕事さ」
「絶対やらない」