天衣無縫の巫女 レイム   作:神降ろし

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更新です。


今回の話は霊夢の武道関係者(オリキャラ)が出てきますので、そういうのが大丈夫な方はご覧ください。
兼一の世界って武術関係者とかかなり多いですよね、モブキャラとして出ても。
特に日本系統の武道・武術家が。
流派が複数あるのも関係してるのでしょうか。

それにしたって作中で出てる超人級三人の内二人が日本武術って………いや、インドネシアとは言え邪神様もアジア系民族でしょうし………東洋系武術が強いって事なのでしょうか。
作中で出てる西洋武術で達人級って割と少ない気がする。


後、今回は闇の襲撃編の導入としてかなり字数が多めです。
今作の兼一君は本編の二倍の修行を積んでいるため、これくらいはできると想定していますので、ご了承ください。


ではどうぞ。





拾の段

「ったく………最近ホント過保護になってきたわよねぇ…秋雨さんたち。神社を長期間放っておくから休業用の看板立てに戻るだけって言っても一人にはできないとか言うし。そんな無節操な連中だったら梁山泊にいても安心できないっての」

 

 

 梁山泊を離れ、神社へと戻った後─────()()()()()()()()()()()()()()()()()を足蹴にする霊夢はそう不満を吐き捨てた。全員が全員、意識を手放しており、けれどどこにも傷跡らしきものは見られない。それはそうだろう。何せ全員───霊夢が一撃で投げ落としたのだから。 

 

 

「あ、いたいたッ!!無事ですかい、()()()()()!!」

 

 

 階段を駆け上がる数十人単位の足音が聴こえてくる。すわ増援かとも思ったが、聞き覚えのある声がしたことで霊夢はキョトンとした目で彼等を見つめた。

 

 

「あら、“道門(どうもん)”の人たちじゃない。もうこっちは片がついてるわ」

 

 

「ハァ、ハァ………すいやせん、お嬢。まさかこっちが本命とは」

 

 

「それは別にいいのよ。それより、そっちの方は大丈夫なわけ?」

 

 

「へい、全員無事ですぜ。“翁”もぴんぴんしてるし、何ならお嬢の所まで一番に駆けつけたかったって言ってるぐらいで」

 

 

「無茶しないよう言っといてくれる?私としては常連客のお爺さんが倒れる方が心配よ」

 

 

 霊夢へと親し気に話しかけたのは、どう見ても堅気には見えない屈強な男たちだった。彼等はここいらでは有名な“夢想合気道門会”という道場兼活動団体である。よく極道の者と間違われたりもするが、彼らが行っている活動は主にボランティア活動や警察への情報提供、お祭りがあれば神社付近で屋台を催すという健全なものばかりだ。裏取引だの密売だのは一切やっていない。その証明として、彼等道門は武器などを一切所持しておらず、暴力沙汰になれば無手で相手を無傷のまま鎮圧するようにしているのだ。その際に使用されるのは主に“合気道”と、どこかで見覚えのある武道である。

 

 それもそのはず。なにせ霊夢は、彼等の師である“翁”と呼ばれる人物に気に入られて合気道の基礎的立ち回りと理念を教わったのだから。

 

 

「ハハハ、ちゃんと言っておきます………それにしても、相変わらずの手並みですなぁ。この人数を無傷且つ一人で無力化するなんざ、可能なのは翁ぐらいなんじゃねえですかい?」

 

 

「なっさけないわねぇ……そこは自分も出来るようになるって付け加えときなさいよ」

 

 

「ハハハ……精進しまーす」

 

 

 霊夢が翁に気に入られており、この博麗()神社当代の巫女でもあるためか、門下である彼等も霊夢のことを“博麗のお嬢”と呼び慕っているのである。霊夢の実力的にも、性格的にも。

 

 

「それで、私の方が本命って事らしいけど、裏側関連かしら」

 

 

「そうだろうっつうのが翁の見解です。俺ら道門が博麗と繋がってるって情報を頼りにこっちへ仕掛けてきて、そんでこの神社の場所の情報を入手した途端に数人立ち去ったのを確認してます」

 

 

「やっぱり………でもそれにしては、()()()よね」

 

 

「様子見……ですかい?」

 

 

「かもね……なんにしても、暫く神社を空けておくのは確定だなぁ」

 

 

「となると、ウチに来るんですかい?」

 

 

「いいえ、それじゃ間違いなく死人が出るわ」

 

 

 断言した霊夢に、道門の彼等の頬を冷や汗が伝った。それほどまでにヤバイ連中だったのだと改めて認識したためだ。

 霊夢は神社の賽銭箱の下にある床をずらし、そこに置いてあった看板を手に取って地面に突き刺した。そして既に荷造りしておいた荷物を背負うと、堂々と鳥居の真ん中を歩いて階段を降りていく。

 

 

「んじゃ、私が留守の間……時々でいいから神社の様子見といてくれる?」

 

 

「へい、それは構わねぇですけど……どこに行くんで?」

 

 

 霊夢は振り返り、先程までの面倒そうな雰囲気を一変させ、楽し気な笑みを浮かべて答えるのだった。

 

 

「奇人変人のたまり場───よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃───梁山泊では“闇”の弟子集団“YOMI”の無手組の一人にして、一影九拳であるアレクサンドル・ガイダルの一番弟子───ボリス・イワノフが部隊を率いて道場破りに来ていた。

 しかし、正門から突入した直後───発動した罠によって一名脱落。その後、そんなものは序の口だと言わんばかりに梁山泊の奇人変人達人の三重揃った連中によって一人、また一人と脱落していき、とうとうボリス自身も達人である逆鬼に見つかってしまい、窮地に追いやられていた。

 

 

「ク───ッ!!(なんだ此処はッ……右を見ても左を見ても特A級の達人級しかいないではないかッ!!?)」

 

 

「まずいよ、(きみ)

 

 

 秋雨がボリスの部隊の一人を軽々と持ち上げながら、眉間に(しわ)を寄せて告げる。

 

 

「道場破りにしても手順はちゃんと踏んでくれないと」

 

 

「そうよ、一人相手するのに一万円よ!!」

 

 

「まあ、負けた後の怪我の治療代もいただくね」

 

 

「ふっふっ…ふ」

 

 

 目を光らせながらフフフと不気味に笑う梁山泊の達人一同。その異様な気の奔流にボリスは呑まれかけるが、自身に課せられた命令を思い出し、気合いで踏みとどまる。

 

 

「自分はYOMIのボリス・イワノフ!!闇の命により、この道場を制圧に来たのだ!!道場破りなどではない!!」

 

 

「何!?闇だと!!」

 

 

「ほう、YOMIね………ここが活人拳を極める達人たちの集う場所───梁山泊と知った上でかね?」 

 

 

「───!!?」

 

 

 秋雨の返しにボリスは戦慄する。道理で各地の道場とは違い、文字通り別格な強者たちがいるはずだ。此処こそが……闇の宿敵にして、自分たちYOMIが倒さねばならない“史上最強の弟子”がいる魔境。そして、YOMIのリーダーが用心しろと告げた“今代の博麗”がいる場所。

 

 

「だが、それでも任務は遂行される!!来い!梁山泊!!!」

 

 

 ボリスは構え、全力で練り上げた気を発動した。それでも絶望的な状況に変わりはない。目下敵対するのは特A級の達人が五名。どれほど死力を尽くしても弟子級の枠組みを出ない己では手も足も出ずに瞬殺されて終わりだろう。それでも命令は絶対である。無謀であることは理解している。だとしても、命惜しさに己を曲げる選択肢などボリスの中にはないのだ。

 

 

「ほう……中々の静の気だ。やはり質がいい(我等が弟子とは違って)」

 

 

「ふ…むむ、出来る…な(兼一とは違って)」

 

 

「俺の気当たりにもピンピンしてたからな。ホント敵ながら天晴れだぜ(兼一の奴とは違って)」

 

 

「この子らもしっかり鍛えられてるね。おいちゃんに向かってきた時も全力だったね(兼ちゃんと違って)」

 

 

「アパパパパパ………」

 

 

 ボリスの静の気を見て、己の弟子と比較し、「やっぱ出来が違うなぁ~」としみじみ思う師匠達。彼等の言葉の裏の本音を兼一本人が聞けば、きっと本気で泣いてしまうだろう。

 そんな物思いに耽っている師匠たちと戦闘態勢に入ったボリスを縁側で見ていた美羽は、よく知る人物の気を正門付近から感じた。それが意味するのはつまり、その人物が弟子級の自分でも感じ取れる程強大な気の持ち主であるということ。間違っても兼一ではありえない。

 

 

「戻ったわよ」

 

 

「も、戻りましたぁ~………」

 

 

「あら、霊夢さん。それに兼一さんまで。お帰りなさいですわ」

 

 

 瞬間───引戸(ひきど)付近で三人の声を聞き取った剣星がまずいと思うも、時すでに遅し。彼が止める間もなく、外にいる人物によって勢い良く引戸が開かれてしまった。

 

 

「今道場破りの方々がいらしてますわ」

 

 

「あっそう。方々って事は結構な収入になりそうね」

 

 

「もぅ~霊夢さん、ちょっと言い方が酷いですよ(事実ですけど)……師匠方──ッ!!弟子一号・白浜兼一、只今戻りましたぁーーッ!!」

 

 

「弟子だとッ!?」

 

 

 まず初めに敷居を越えてきたのは兼一。続く形で美羽と霊夢も室内に入ろうとした瞬間─────

 

 

「最強の弟子──ッ!!!」

 

 

 ボリスは瞬時に狙いを兼一に絞り、前傾姿勢で突進してきた。いきなりのことで兼一は咄嗟に反応することが出来なかったが、後ろにいた美羽と霊夢が兼一の肩に手を置いて一瞬で引き倒したことで、紙一重でボリスの強襲を回避する。

 しかしボリスはそれに動じることなく、体勢を崩した兼一へ向けて右腕で突きを放った。その攻撃を外させようと美羽も側面からボリスへと突きを放つが、それに対してもボリスは冷静に対処する。彼は瞬時に己の空いていた左腕をガードに回して美羽の突きを受け止めた後、兼一に向けて突き出していた右手を美羽の手首へ回し、その身体を引き寄せる。そして左手で美羽の服の襟を掴むと、ガラ空きの鳩尾に向けて右膝蹴りを容赦なく放つ───

 

 

「邪魔よ」

 

 

 ───が、霊夢の足払いによって軸足としていたボリスの左足が蹴り払われた。そのせいで美羽に向けて繰り出した膝蹴りは上手く力が乗らず、体重を支えていた左足が崩れたことでボリスの身体が左側へと倒れていく。そして駄目押しと言わんばかりに───

 

 

「美羽さんに手を出すなぁッ!!!!」

 

 

 美羽を掴んでいたボリスの手を払い、本気の右前足蹴りを兼一は放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガッ!?───ッくぅぅぅう!!!」

 

 

 体勢が崩れたところへと不意打ち気味に放たれた兼一の右前足蹴りによって、ボリスは大きく吹き飛んだ。畳に叩きつけられそうになるも即座に受け身を取って衝撃を逃がした後、すぐさま後転をしてボリスは立ち上がる。だが兼一から喰らったダメージは依然として残っており、ボリスは蹴りを喰らった右腹部を押さえながら肩で息をしている状態だった。

 

 

「くぅ………ッ(何が起こったッ!?自分は確かに金髪の女の攻撃を読み切り、攻勢に転じたはず……ッ!!)」

 

 

 顔を上げたボリスの目に映った人物は二人。

 一人は男にしては小柄な、けれど実戦的に鍛え上げられた肉体を節々から覗かせた、己が今まで体感したことのない異様な気配を感じさせる男。

 もう一人は男よりもさらに異質。何一つ気を練った様子がない自然体の状態のまま、ボリス以上の強大な気を発している黒髪の女。どちらが上かと問われれば、間違いなく女の方だと誰もが断言するだろう。そして何よりも、女の方は明らかにボリスよりも格上だった。

 だがしかし、先程腹部を貫かんばかりの衝撃を放ったのは男の方であるとボリスは直感した。

 

 

「貴様、何者だ!!!」

 

 

 殺気とも闘気とも取れない怒気を放ちながら、兼一が叫ぶ。

 

 

「自分はボリス・イワノフ。闇の弟子集団YOMIが一人………そして、“一影九拳”アレクサンドルの一番弟子だ!!」

 

 

 困惑しながらも兼一の叫びに応じるボリス。ここでようやく、兼一と霊夢は目の前の存在が敵であることを理解する。

 

 

「美羽さん!!大丈夫ですか!?」

 

 

「はい!不覚を取りましたが、大丈夫ですわ!!」

 

 

「反射的対処に頼ってるからそうなるのよ。また脱力を忘れてたわね……アンタ」 

 

 

「きゅ…急なことで頭になかったのですわ!!」

 

 

 呆れ気味に半目を寄越す霊夢に、失敗を認めながらもムキになって腕をぶんぶん振りながら反論する美羽。兼一は眼前の敵に油断なく備えながらも、元気な美羽の姿を見て怪我がなくて良かったと心から安心した。が、それはそれとして───兼一は自分が激怒していることを感じていた。そして、その怒りが今にもはち切れんばかりに膨らみ続けていることも。

 

 

「YOMIだと……ボクのいない間に梁山泊に上がり込んで………無事だったとは言え、ボクの一番……大切な人を……ッ!!」

 

 

 兼一は閉眼し、溢れんばかりの怒りを以て全身に力を籠め、大きく息を吐くことでそれを放出する。全身の脱力を行い、再び大きく、けれど徐々に呼吸を開始した。そして───開眼。

 

 

「YOMIというのは悲しい人たちですね……武術をただの暴力としてしか使えないなんて」

 

 

「(怒りを力として転換し全身を緊張させ、呼吸によって余分な力を放出すると同時に全身の脱力も怠らず、見事に“静の気”を練り上げた!?これはちょっとびっくり)」

 

 

 そう、秋雨が感じた通り───今の兼一は見事に“静の気”の発動に成功していた。それも、先程ボリスが梁山泊一同に決死の覚悟で練って見せた“静の気”と何ら遜色ない程の気を。

 一方、ボリスは困惑していた。先程まで怒髪天を突いていた兼一にあった僅かばかりの殺気さえ、今は欠片も感じ取ることが出来ないでいたからだ。

 

 

「(今まで戦ってきたどのファイターよりも異質!これだけの気を練り上げて尚、殺気を感じ取ることが出来ん!!)」

 

 

 だが、いずれにせよボリスのやるべきことは変わらない。これほどの特A級の達人等に囲まれては、どの(みち)己の命はないとボリスは認識していた。ならば任務達成は不可能でも、せめて最強の弟子である兼一と刺し違える覚悟を決める。

 

 ボリスは兼一の不意を打つため、突進に見せかけて両手を地面につき、側転の動きで撹乱させて相手の懐に飛び込んだ。

 

 

「(取ったッ!!)」

 

 

 ボリスは自身の背中が兼一の背中にピタリと張り付いたのを感じ取り、空いている両腕のどちらかを取ろうと自身の腕を伸ばす──────

 

 

「双纒手ッ!!」

 

 

 ─────が、兼一はボリスの動きを冷静に見ていた。張り付かれた瞬間に両手を自身の真横へ持っていき、それと同時に右足と共に体の重心を後ろへ。そしてほんの一瞬であるが、重心を移動したことでボリスと自身の間に生まれた空間に両手をねじ込み、自身の重心を右足から左足へ流し、足から送り出された力を背中の筋肉で増幅させ、技を放ったのだ。

 

 

「ぐぅああああああ!!!」

 

 

 対して、技を喰らってしまったボリスは悲惨だった。なにせ自身の攻めを利用される形で放たれた双纒手の威力たるや、自身の内臓さえ揺さぶる絶大な威力だったのだから。

 だが、再び吹き飛ぶもボリスは踏みとどまった。明らかに形勢が不利になったにも関わらず、鋼の意志で再び立ち上がる。

 

 

「おのれ……ッ!!(焦るなッ…焦るなボリスッ!戦場では焦った者から死んでいく。どれほどの危機的場面であろうとも、諦めず敵の分析を続ければ必ず勝機はあるのだから!!)」

 

 

 ボリスはフラフラとしながらも、先程よりも研ぎ澄ました静の気を練り上げる。そして漸く己が焦っていたことを自覚する。そんな己を戒めるように、ボリスは「いついかなる時も冷静に」という師の教えを思い出し、遅ればせながら相手の分析から始め直した。

 何気ない仕草、手足の動き、重心の配置……それらを観察し、分析することで敵の実力や格闘スタイルに至るまで理解する。そうして丸裸にした敵の情報を基に戦うことこそが、ボリス・イワノフの真骨頂なのだから。

 

 

「(!!!?………何だコイツ!?)」

 

 

 だがしかし、分析の結果が相手の全てだとは限らない。ボリスは二度目の困惑を露わにしていた。

 ボリスが兼一を観察し分析した結果、わかったことは「只の凡人」だというその一点のみ。それも本来ならば相対した時点で三回は殺せていると確信出来る程の才能の無さ。

 だと言うのに、先の一撃を放ったのは間違いなく目の前の小動物のような男だと言うのだから理解に苦しむ。頭がどうかしてしまったのではないかとさえ思ってしまう己がいた。

 

 

「消えろ、不思議動物!!」

 

 

 訳の分からない小動物を一刻も早く目の前から消すため、ボリスは容赦なく兼一の顔面目掛けて膝蹴りを放つ。しかし、兼一はまたもや冷静にそれを躱し、逆に足を取ってボリスを投げ倒した。

 

 

「グ───ッ(おかしい、何故私が倒れている!?)」

 

 

 瞬時に立ち上がり、またも攻めるボリス。蹴りも、突きも、投げも、極めも……間違いなく殺したと確信した端から反撃を喰らってしまう。

 相手からの攻めは大したことはない。急所を狙わない攻撃など怖くも何ともないからだ。だが、此方が攻めに転ずれば、一転───全ての技が悉く打ち破られる。

 ボリスは理解できなかった。目の前にいる男の、目の奥から感じ取れる光が。

 これまで彼が戦ってきた実力者は皆、どこか目に暗い闇を宿している者ばかりだった。だと言うのに、その闇を一切見せないどころか、むしろ真逆の光さえ放つ兼一のことがボリスには理解できなかった。

 

 

「へへ……兼一の奴、押してるぞ」

 

 

「攻めは下手糞だが、敵の攻撃に対する反撃はうまく決まっている。このままいけば、まず勝てるだろう」

 

 

「いつの間にやら、呼吸の方も身につけさせちゃって……」

 

 

「兼一さん、ここまで立派になって……」

 

 

「出来の悪い弟がようやく巧く出来た姉の…心境」

 

 

「はい、アパチャイだよ。うん、お前の子供は預かったよ」

 

 

 観戦する師匠達+美羽と霊夢の二名が、これまでの修行の全てをついに結実させた兼一を感心したように眺めていたところ、アパチャイは一人、敵の無線を手に取って誰かと通信していた。

 

 

「おーい、ボリス・イワノフ~~~!!電話だよ!!リーダーとか言う人からの!!!」

 

 

「!!!」

 

 

 アパチャイのその言葉を聞いて固まってしまうボリス。目の前の敵との交戦を止めて通信に出るべきかどうか。兼一は迷いに迷っているボリスを見るに見かねて「どうぞ」と通信の許可を出した。そして───

 

 

「なにぃ~~~撤退だと!!?」

 

 

 ボリスに撤退の命令が下された。それに反論するボリスだったが、リーダーの命令は絶対なのか、最終的には歯を食いしばりながらも命令に従うことを決めた。

 闘気を鎮め敵対の意志を収めるもボリスは兼一を睨み、彼に向かって懐から小さな円盤のような物を投げ飛ばす。兼一はそれをつかみ取り、疑問に思いながらもボリスを睨み返した。

 

 

「まだ名を聞いていなかったな、最強の弟子……」

 

 

「白浜……ボクの名前は白浜兼一だ!!」

 

 

「そうか……最強の弟子、兼一よ………それはYOMI流の決闘状だ!!貴様を殺してそのエンブレムを取り戻す!!」

 

 

 ボリスは指を差しながら、兼一へ向けてそう宣言する。そして今度はその指を霊夢の方に向けて、こう続けた。

 

 

「そして、今代の博麗であろう少女よ!!これより“闇”は、貴女を勧誘しに何度でも訪れるだろう!いついかなる時でもだ!!」

 

 

「はぁ?そっちの幹部的な奴に行かないって言ったはずだけど?」

 

 

「拒否しようとしても無駄だぞ。一度目の勧誘を拒絶した時点で、貴女の意思とは関係なく連れて行こうとする者も現れるのだからな!!」

 

 

『!!!』

 

 

 ボリスの発言に霊夢は大いに面倒そうにし、兼一と美羽の二人は驚愕を、梁山泊の師匠達はついに来てしまったかという諦めと、これから巻き起こるであろう修羅場への覚悟を決めた。

 その言葉を最後に、ボリスたちは梁山泊から立ち去った。兼一はそれを追いかけようとするも、秋雨に止められる。

 

 

「何故止めるんです!!」

 

 

「始まってしまったからだよ」

 

 

「!!!」

 

 

 秋雨の言葉に兼一はようやく察する。

 

 

「闇と梁山泊との……いや、殺人拳と活人拳の全面戦争がね!!」

 

 

 そう───始まってしまったのだ、霊夢の予感の通りに。これからが面倒だなと、霊夢は一人緊張感とは無縁の様子で壁にもたれかかっていた。

 そんな霊夢を普段とは違う鋭い視線で、見極めるような目を向ける長老。そんな視線を向けられていると分かった上で、彼女は普段通りのままであった。

 

 

  




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