天衣無縫の巫女 レイム 作:神降ろし
今回は霊夢の特性というか、この世界風に落とし込んだ東方世界の霊夢の技が一つ出てきます。
技名は出しませんけど、東方作品をプレイ済みの方ならなんとなくわかると思います。
東方原作を知らなくても、兼一世界で弟子級範囲なら割と反則級の技なのでどれだけヤバいかは理解できると思います。
それではどうぞ
打倒、梁山泊を宣言した殺人拳の武闘集団“闇”とその弟子集団“YOMI”が、いよいよ本格的に日本へと侵攻開始した。
その彼等の目的で判明しているのは、二つ。
一つは、梁山泊の“史上最強の弟子”である白浜兼一の打倒による最強の称号の獲得。
もう一つは、“今代の博麗”である博麗霊夢の勧誘、或いは強制的な誘拐。
どちらにせよ、梁山泊にとって深刻な問題であることは間違いない。特に霊夢に関しては、奪われれば間違いなく梁山泊にとっての敗北が確定する。
だからこそ、長老を筆頭とした梁山泊の達人たちも、今まで後回しにしてきた
「あーー?今更修行ー?んなの嫌に決まってるでしょ」
この通り───博麗霊夢は大の修行嫌いなのである。
誤解が無いよう言っておくが、霊夢はやるときはちゃんとやる。だが、それはそれとしてやらなくても良いことは梃子でも動かずやらないという、兼一の真逆を行く性格をしていた。それでいざと言う時に何が為せるのかと言われれば、大抵のことを為せるのだから手が付けられない。才能があり過ぎるあまり、初見であったとしても直感で見事正解を引き当て、そのまま物事の根幹を掴み取ってしまい、徐々に上達するという段階さえ飛び越えて完了という結末に至ってしまうのだ。
「第一さ、“上方修正”はもう済んでるっての。これ以上は過剰よ」
「しかしだね………」
「第二に、秋雨さんの
「ぐッ………」
霊夢の物言いに、まず秋雨が轟沈。霊夢の言う通り、彼女が梁山泊へ来るようになる以前から、暇潰し用と称して秋雨が基礎鍛錬用の道具を渡していたのだが、霊夢はそのまま本当に
「やれやれ、此処はおいちゃんの出番ね」
「剣星さんのもいらないでしょ。硬功夫だっけ?それ以外教わることなさそうだけど………それにその技法は私よりも美羽に必要でしょうに」
「ぬ………」
秋雨の次に前に出てきた剣星が霊夢に授けようとしていた技も、霊夢の相変わらず凄まじい精度の勘によって言われる前に看破された挙句、しかもそれを一番必要としているのは美羽の方だと言われる始末。実際、霊夢の功夫は剣星をして見事と言える程にまでに積み上げられている。修行と言えるようなことは殆どしていないにもかかわらずコレなのだから、本当に凄まじいと言う他ない。何より霊夢に授けられるものが硬功夫しかないという指摘が見事に当たっている。さらに言うならば、霊夢以上に美羽に必要という指摘も当たっていた。
「至緒さんやらアパチャイさんもって言うのはやめてよね。空手には興味ないし、ムエタイに関してはそもそも性格上私と合わないだろうし」
「うッ………」
「アパァ………」
逆鬼とアパチャイに関しては、口に出す前に霊夢の裏表のない率直な言葉によって傷ついていた。
最早、残るは長老としぐれの二人のみ。しかし、霊夢の中ではこの二人の内、長老は既に論外扱いされていた。理由は霊夢に対して授けるものがあったとしても、それを授ける為の場所も時間も限られるためだ。
更に言うならば、霊夢と長老が修行をするとして、その形式が全て組手一択なのも論外扱いされる理由の一つである。この二人が暴れると梁山泊そのものがもたないのだ。そしてそれは秋雨たちも同じ。よって霊夢に施せる何かがあるとするならば、それこそ基礎鍛錬に限られてしまうのである。
───そんな会話を背景に、兼一は投げられ地蔵RXを二つ背負いながらのスクワットを千回課せられていた。
「とんでもない会話をしてるよ……この人たち」
「よそ見は駄目………だ」
「あ、兼一君はそれ終わったら次組手ね」
「くうおおおおおおおおお───ッ!!!!」
白浜兼一、高校一年生。
ある日、スキー林間学校に美羽たちと共にやってきた最中、吹雪の山中で自らを“王”と名乗るYOMIの刺客───ラデン・ティダード・ジェイハンに遭遇する。
史上最強の弟子討伐の権利を最初に与えられたジェイハンは、兼一が林間学校でスキー場へやってくる事を知り、スキー場一帯を丸ごと貸し切る事で、兼一を待ち伏せしていたのである。
侍女であるシャームに迷子の少女を演じさせ、兼一を学友たちから引き離したジェイハンは、彼らを匿うふりをして自らの居城へ兼一たちを誘い込んだのだった。
しかし、兼一たちを歓迎する踊り子たちの中に、生きた『プンチャック・シラット』の動きを見た美羽はすぐさま逃亡を決意する。
窓から脱出した兼一たちをジェイハンはスノーモービルで追跡し、不慣れな雪の中でも兼一を苦戦させる程の実力と容赦のなさを見せつけた。
されど夫婦手を用いた兼一に逆転されたジェイハンは手下を用いるなどの卑怯な戦法を取り、兼一は深手を負ってしまう。だが、そんな中ででも信念を持って立ち向かった結果、紙一重で勝利を掴み取ることが出来た兼一。しかし兼一にはその余韻に浸る暇さえ与えられず、戦いを見物していた名も顔も解らないジェイハンの師により、無様な戦いの代償として雪崩を引き起こされてしまった。
死を覚悟したジェイハンは、兼一を谷本 夏の運転するスノーモービルに投げ入れて助けたが、彼自身は雪崩に呑み込まれて消息を絶ったのだった。
そして、重傷を負いながらも見事生還することが出来た兼一は、今──────
「うぅおおおおおおおおおおおああああああ───ッ!!?」
「ク………ッ!!」
「お、兼一さんも受け身が取れるようになってきたわね。感心感心♪」
美羽と共に霊夢に投げ飛ばされまくっていた。
霊夢が呟いた通り、兼一も初回に比べれば随分と受け身が取れるようになっていた。尤も、美羽が一回転で衝撃を殺し切っているのに比べれば、兼一は十を超えるほど転がってようやく殺し切る程度の差があるのだが。
なぜこうなったかと問われれば、霊夢の修行のやり方を秋雨たちが妥協した結果と言える。どうあっても霊夢に動いてほしい達人たちは、自身の弟子である兼一と美羽をぶつけることである程度の
その結果がこれである。そもそも霊夢と実力が離れすぎている兼一はともかく、ある程度霊夢の投げに対処出来るようになった美羽でさえ、彼女の“制空圏”を崩すきっかけすら掴めずにいた。
「シィ───ッ!!!」
投げ飛ばされた美羽が、膝を突いた状態から立ち上がると同時に放った左腕の突きは、前傾姿勢による体重が加算され、速さ以上に重さを籠めた一撃として霊夢へと迫る。
しかし霊夢はそれを前にしても何ら力むことなく、ただ掌を向けるだけで迎え撃つ。美羽の拳が霊夢の掌に吸い込まれるようにして衝突する寸前、美羽は自身の突き出した拳を霊夢の掌に触れる直前で強引に引き戻した。そして霊夢がそれに気を取られた隙に、軸足としている左足に重心を乗せて踏み込み、引き戻した拳の勢いを右足へと移し、そのまま右足を振り抜いた。
「甘いっての」
されどだ…………美羽が拳を受け止められる寸前で引き戻し、その勢いをそのまま利用して放った本命の右足蹴りでさえ、霊夢にとっては見てから対処出来てしまうものでしかない。こちらへ迫る蹴りへの対処など、空いている左腕一つで十分。手の裏で美羽の蹴りを受け止め、その後に起きる衝撃を流れるように右腕から右掌へと移動させ、丁度大振りの攻撃を出したことで硬直していた美羽の胸元へ、掌底として返した。
「ガハ───ッ!!」
今度という今度こそ、受け身は取れない。美羽はそのまま吹き飛ばされ、壁に激突する──────
「美羽さんッ!!」
───よりも前に、兼一が抱き留めることで阻止された。兼一も美羽が喰らった衝撃を肌で感じて身震いする。あと少し力む力の程度とタイミングを外していれば、自身も巻き込まれていただろうからだ。
「無事ですか、美羽さん!!」
「大丈夫、ですわ。兼一さん、ありがとうございます」
幸い、美羽は霊夢の掌底が来る直前に聞こえた呟きを拾っていたため、脱力することに注力できていた。そのお陰でダメージはそれほど酷くない。だが、それでも兼一の目には、美羽の精神的なダメージはかなりのもののように映った。そんな心配をよそに、美羽は兼一の支えを跳ね除け、またもや構えをとって霊夢を睨む。一方、霊夢は飄々とした態度で美羽たちを見ていた。
「とうとう出ましたわね……“返し技”」
「そりゃね。脱力を習得してるんだから、“投げ”以外も問題ないでしょ」
「これからは色々出していくわよ」と笑みを浮かべながらも、構えという構えを取らない霊夢。それでも彼女の放つ気の強大さと制空圏の強固さが緩まることはない。
兼一もようやく霊夢の制空圏を見えるようになったのだが、見えたからと言って何一つ好転などするはずもない。寧ろ、霊夢の制空圏のあまりの異常さに身の毛がよだつ程だった。なにせ霊夢を覆う制空圏は、
通常、制空圏は
「呑まれないで、兼一さん」
「う、美羽さん。……そう言われても、二重に張り巡らされる制空圏なんて反則でしょう!!?」
「私からすれば、なんで制空圏を一つしか張れないかの方がわかんないわ。二つあった方が安心感が違うでしょ?」
「イヤ、そうですけどッ!!やるやらない以前に出来ませんって!!」
「諦めてくださいまし、兼一さん。霊夢さんと我々では観えている視点が違うらしいので………」
「美羽さんッ!?」
諦めたような不貞腐れたような顔をしながら、そう告げる美羽の姿に兼一は困惑する。こんな、どうしようもないと言うような雰囲気を出す美羽など今まで一度も見たことがない。
「んじゃ、まだまだ続けるわよ。秋雨さんたちも満足してないみたいだし」
そう言って縁側にいる師匠たちを半目で睨む霊夢に、彼らはにこやかな顔で手を振っていた。兼一もその様を見て、まだ終わらないのだなと諦め、潔く霊夢へ挑む覚悟を決めることにした。しかし溜息は吐く。
「はぁーーーッ……ボク、女の子に手を上げられないのに………」
「丁度いいじゃない、受け身の練習に」
「岬越寺師匠には褒められましたけどね………黒帯級だって」
「黒帯で足りるの?」
「足りましぇん………」
師匠たちでさえ、ぐうの音しか出させなかった霊夢の言葉は兼一にも猛威を振るっていた。次々と出る兼一の言い訳を聞いて、霊夢は容赦なくその逃げ道を潰していく。───元より逃げ道などないが。
諦めもつき、弱音も吐き、言い訳を吐いて、ようやく覚悟を決めた兼一は、霊夢に言われた通りに受け身を重点的に取ることにした。それを見て、ここまで行っても情けないなと霊夢は思った。
「じゃ、今度はこっちから─────攻めるとしましょうか」
ゆっくりと近付いてくる霊夢の全身から溢れ出す気の奔流に、冷や汗を流す二人だった。
ということで、二重に張り巡らされた制空圏とかいうどうやったら突破できるのという反則技でした。
制空圏って両手しか使ってないんですよね、基本的に。
だから両手両足も使ったらもう鉄壁じゃねとう頭の悪い発想で二重制空圏とかいうのだしてみました。
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