天衣無縫の巫女 レイム 作:神降ろし
今回はDオブD編の導入として書いたため、文字数が少なくなってしまいましたのでご了承ください。
後、今回霊夢のセリフはございませんのでそれもご了承ください。
なんかこの人本当にやるときとやらないときの差が激しくて………どうでもいい、或いは面倒臭いと思っている時は大分口数減りそうだなという勝手なイメージがあります。
それではどうぞ。
結局のところ─────秋雨たちは、霊夢の今の実力の
当の美羽は、霊夢からそんな評価を得たことに対して悔し気にしながらも、何処か嬉しそうであったように兼一の目には映った。
それから暫し日数が過ぎるも、梁山泊一同の生活が変化するということはなかった。…………いや、一時梁山泊に最大の危機が訪れたことはあったが。
それは──────────梁山泊の財政破綻によるものであった。
何故そうなってしまったのかと問われれば、理由は主に二つある。もっとも、大まかに言えば一つしかないのだから、その原因など最早分かりきったことだろう。
ズバリ─────収入がすっかり無くなってしまったのだ。
不定期にある収入はともかく、今まで定期収入源として大きな役割を担っていた接骨院は、梁山泊のすぐ裏手に近代設備の整った大病院が出来て以来、患者をそちら側にごっそりと奪われてしまった。
結果─────収入もなく出費ばかりが嵩んでいき、自然と財政が破綻したわけである。
そこで美羽は仕方なく、新島が立案した子供武道体験入門なる企画を承諾した。
そうして行われた子供武道体験入門で、梁山泊は思わぬ弱点を暴き立てられることとなった。
それは─────梁山泊の面々が子供とのコミュニケーションが貧弱であるということである。
誰も彼もが、身勝手に動く感性の子供に振り回され、彼らと上手く接することが出来ないでいた。
秋雨は自身のリズムとスタンスに巻き込むことでしか子供たちを先導することが出来ず、しぐれはしぐれで自身が幼少期使っていた本物の苦無を子供に持たせる始末。中でも酷いのが逆鬼であり、顔が怖いという理由でそもそもの子供受けが悪かったため、碌に近寄ることすら出来なかったのである。………因みに剣星は、横浜の中華街まで出稼ぎに行っており難を逃れていた。
だが、その対応力マイナスな面子を補ってなお、お釣りがくるほど子供たちとの交流に長けた者が梁山泊には存在していた。
一人は、アパチャイ・ホパチャイ。普段から公園などで子供たちと交流をしていた経験がここで生きたのか、和気藹々としていた。
二人目は、意外にも博麗霊夢。なんと子供たちの扱いをアパチャイ以上に心得ていたのだ。今は休業しているが、神社で巫女をしていた頃にも今と同じように子供たちと接することがあったのだろう。
それに加えて美羽と兼一の二人も、頼りない師匠たちよりよほど子供の接し方は心得ていたため、何とか最後までフォローすることが出来た。
そうしてどうにかこうにか子供たちの体験入門を終えることができ、後日感謝の手紙と共に様々な物を送ってもらったことで、梁山泊の財政は何とか首の皮一枚繋がったのである。
他に何があったかと言われれば、兼一が地下格闘場へ師匠二人と共に初体験しに
そんなこんなで、兼一以外はいつもとそれほど変わりない日常を過ごしていた。
では、今の彼らが何をしているかと問われれば───────
「まあ本当にぃ!?南の島へのご招待ですの!?」
───────旅行の準備に取り掛かっていた。
美羽が目をキラキラと輝かせながら、長老を見つめて詳細を語るよう急かす。長老はそんな美羽を微笑まし気に見ながらも、その質問にはきちんと答えていた。
「ほっほっほっ。そうじゃ、おぬし等も含む全員分の招待状が入っとる」
「ここんところ、かなり切り詰めていたからな。思う存分豪遊しようぜ」
旅支度をしながらそう告げる逆鬼も、心なしか普段よりも雰囲気が柔らかい。
兼一は、普段より柔らかな雰囲気を出す師匠たちをよそに、一人面倒くさそうな顔で寝転がっている霊夢を疑問に思うも、それはそれとして楽しみだという気持ちもあった。だが、一体誰がいつそんな懸賞に応募したのだろうかと再度疑問に思う。
「へー……ホテルも全部タダなんですか、凄いですね。で、誰が応募して当たったんです?そんな凄い懸賞」
「ほっほっ。誰も出しとらんよ、そんなもん」
「招待状が届いたのさ」
誰も応募していないと否定する長老の言葉に付け加えるようにして答える逆鬼。招待状という響きに、兼一の第六感は警鐘を鳴らした。それも微妙に悪い方向のものだと告げるものが。根拠となる存在が今、己の側にいるというのに兼一は気づくことができない。だが、その悪い予感は不安を乗せて波のように兼一の心に広がっていく。それを感じながら、兼一はさらに問うた。
「招待状?」
「懸賞に応募したわけでもないのに………い、一体誰から招待状が?」
「ん?“闇”からじゃ」
兼一の悪い予感は、当たってしまったようである─────。
一つのことを学び、極めようとする者達が一定以上集まれば、誰が一番なのかを知りたくなるのは人間の性である。
それは本能と言い換えてもいい。ソレは何も人間だけに限ったことではないのだから。
だが、だからと言って何も考えずにその本能に従うわけにもいかない。故に、人は本能の言うままに従いながらも知恵ある存在として考えた。ルールを定め、それに従って勝敗を決める手法。武術のみならずスポーツや果ては料理に至るまで、いつの時代にも権力者たちの手で広く大きく行われてきたもの───それこそが大会である。
表の世界で最も有名な大会と言えば、やはりオリンピックが一番に挙げられるだろう。
そして、表の世界のスポーツ選手が自分達の腕を他者と競い合わせたいという願望があるように、裏の世界を生きる武術家にも同じ願望がある。
また当然、表の大会がメディアに大々的に放送されるのに対し、裏の大会は往々にして血生臭く、表沙汰にならないものになりがちだ。
参加者は賞金首や殺人犯が当然のようにいるし、観客は殺人、女、薬などの腐臭を纏った悪党たち。では、彼等の中で頂点に君臨した者に与えられるのは栄光か、それとも単なる実力の証明か。
先にも述べた通り、表があれば裏があるものだ。当然、武術の世界─────特にスポーツ程度の武道に満足出来ない者たちの世界においても、やはり表と裏がある。
それは別の言い方も出来る。そう───活人拳と殺人拳だ。活人拳の代表格が梁山泊と呼ばれ、殺人拳の代表格が“闇”と呼ばれるように。
─────“闇”の世界で最も有名な『大会』に、“DオブD”というものがある。
正しくは、“Desperate fight of Disciple”─────略して、“DオブD”。
『弟子の死闘』という名の通り、二十歳未満の弟子級たちのために開催される武術大会だ。
裏社会では伝統ある大会で、実戦武術家たちの登竜門として扱われている。ここで優勝した武術家の中には今は達人として名を轟かせている者も数多い。尤も、本当の意味での達人─────“達人級”ではない者も多いのだが…………。
「今回のDオブDには、YOMIの連中も参加するってんだ。んで招待状には、うちの弟子と今代の博麗を参加させるようにって書いてあったぜ」
「つまり、“闇”の目的である“史上最強の弟子”の称号を懸けた勝負を正々堂々リングでやろうという訳ね。そしてあわよくば、もう一つの目的である霊ちゃんの確保も………と言ったところだろうね」
「ボクたち全員を招集した上で二兎を得ようとするとは……いい度胸……だ」
しぐれがそう告げたのを皮切りに、師匠たち全員の目が爛々と光る。兼一は、そんな彼等が恐ろしいやら頼もしいやらで口元を引きつらせていた。
「…………………………」
そんな様を見ながらも、霊夢だけはじーっと長老の方へと視線を向けていた。霊夢は長老から発せられる奇っ怪な気を感じ取って怪しんでいたのである。しかし、
霊夢はそんな避けられない何かを起こそうとしている長老に対し、諦めにも似た覚悟を決めたのだった。
兼一と美羽が学校へ行き、霊夢が自分に宛てがわれた部屋に戻った後、未だ縁側にたむろしている師匠たちは先程までの穏やかな雰囲気を霧散させて話し合っていた。
「しかし兼一の手前、ああは言ったがよぉ………ちっと危なすぎねぇか?」
「ほっほっ。逆鬼君は優しいからのう」
「茶化すな!!そんなんじゃねえっての………ったく」
趣味の鳥獣戯画を眺めながら逆鬼を茶化す長老に、逆鬼は誤魔化されることなく言い逃れは許さないと眼光を鋭くさせる。それは逆鬼だけではなく、秋雨たちも同様だ。そんな彼らの様子に仕方なさげに長老はため息を一つ吐くと、顔を彼らの方へと向けて告げる。
「考えあっての事じゃよ。彼、兼ちゃんは今ドンドン強くなっとるが、最大の弱点は…………勝負度胸がないことじゃ!!」
「そっちもそうだが、俺が言いてぇのは兼一の事だけじゃねえよ」
「無論、分かっておる。霊夢の方もわしが何とかする準備はしておる。それに良い機会というのは兼ちゃんだけでなく、霊夢や美羽にも言えるんじゃよ」
「今回のDオブDは、実力的にも今の兼一君ならば丁度いい者ばかりではあるが………流石に組み手を再開した美羽や今の霊夢に通用する弟子級は殆どいないのでは?」
「ほっほっほ!!わしに秘策アリじゃ」
秋雨たちの疑問や心配をよそに、長老はニィと口元を釣り上げて意味深に笑うのだった。
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