天衣無縫の巫女 レイム   作:神降ろし

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もの凄く期間が空いてしまいました。
色々リアルの方が忙しくて書く暇がなく、此処まで空いてしまい申し訳ないです。
なんとか一区切りついたのでまた更新を再開したいと思いますので、宜しくです。
もう前回の書いていた感覚が消えてますが、それでも更新し続けたいと思います。

それでは、ご覧ください。





拾捌の段

 

 

 

 霊夢が叶翔と別れて、数分も経たない間に新白連合の主力である武田、フレイヤ、トールの三人は抵抗すら許されずに完敗した。唯一意識を失わずに済んだ武田は、それでも身体以上に心に深い傷を負ってしまっていた。その後、部屋に戻っていない三人を心配した美羽と兼一は、彼らを探しに外へ出て傷だらけの三人を発見。すぐさま剣星と秋雨等二人に三人の容態を見せたのだった。

 結果はアウト────到底次の試合までに回復出来る傷ではないと診断された。唯一人、武田だけは試合可能なまでに回復したのだが、心の傷はそう簡単には治らない。気丈に振る舞っているが新白連合総督である新島はその虚勢を見抜き、戦力にはならないと判断。厳しい状況ではあるが、それでも手下を失うよりはまだマシだと割り切って明日の試合は新島を含む残る三人で闘うこととなった。

 

 

「皆、酷い怪我だ………!」

 

「足に一撃、腹に二撃、トドメの顎に一撃ってところね」

 

「その上、与えたダメージは表面よりも内に残るように刻まれている。これは相当の使い手が行ったものだろう」

 

 

 狼狽える兼一に、剣星と秋雨は二人のダメージを詳細に語る。唯一、顎への一撃のみを回避したことで武田は意識を保っているが、それを含めても傷の深さは気を失っている二人と変わらない。そんな彼等を見て何も出来なかったことに涙する宇喜田。彼は友人達にこれ程の重傷を負わせた者に対して強い怒りが湧き出ていた。そしてそれは姉貴分であるフレイヤを負傷させられたキサラも同じ。

 

 そんな、怒りと悲しみを同居させる二人を冷めたように見つめていた霊夢は部屋を一人退出する。

 その後ろ姿を長老は悲しそうに見つめるだけ。

 

 

「自業自得と言ってしまえば確かにそれだけじゃが………それではあまりにも寂しいではないか、霊夢よ」 

 

 

 彼女が去った後に、本当ならば霊夢に聞かせるべき言葉を彼女がいない部屋で一人告げる長老。

 ソレは諦めか、抵抗か。どちらにせよ、長老が霊夢に直接その言葉を伝える勇気がなかったのは間違いなかった。

 そして、心休まることなく次の日を迎えた。

 

 

 

 歓声が包む中、悠然とコロシアムへと向かう選手達。

 第一回戦の時とは違う。

 表舞台では経験出来ぬ死線を乗り越えてきた本物の武術家だけが、今ここに残っているのだ。

 初戦で兼一と美羽が対峙しなかったあの三人が弱かったわけではない。寧ろ今大会に於いても確実に上位に位置し、もしかすると最上位にさえ届きうる程の実力者達だった。そんな彼らが敗退したのは、()()()()では届かない者が相手だっただけのこと。

 故にこそ、会場に集う選手達の視線が向けられるのはただ一人。

 緊張感など欠片もなく、幾多の殺気を当てられようとそれに応える気など一切ない。

 唯々自分が感じるまま、趣くがまま、身勝手に生きる少女────博麗霊夢が其処にいた。

 

 

「ペットボトルでもいいから緑茶持ってくればよかったかな」

 

「怖いよぉ……ボクに向けられたものじゃないのに皆の視線が怖いよぉ………」

 

「兼一さん、しっかり!!」

 

「ケンイチ……呑まれた」

 

「やれやれ……まだ試合は始まってないよ」

 

「だらしねぇな、霊夢の奴を見習えよ」

 

「そうね。霊ちゃん程じゃないにしろ、度胸は付けておくべきね」

 

 

 霊夢はマイペースにもお茶を欲し、兼一は自分に向けられていない殺気に怯え、美羽はそんな兼一を慰めていた。

 その後ろで師匠等は、兼一の覚悟を決めた時以外のメンタルの弱さに呆れ返っていた。

 そんな、梁山泊ではいつもの事として片付けられる様子を尻目に、DオブD二日目の開始を告げるディエゴの声が響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DオブD二日目、第一回戦は一影九拳の一人、ディエゴ・カーロの弟子にしてYOMIの一人レイチェル・スタンレイと、同じくYOMI所属にしてその弟、イーサン・スタンレイが舞台へと上がった。対する相手は今大会に参加した中国三大武術チームと流派を別つ、二つ目の中国武術チームの二人の男女である。

 

 ディエゴは自身の弟子が出るためか、リングも彼女に相応しいモノへと変更する。それに噛みつくのはやはりと言うべきか、未だ常識を捨てきれていない兼一。明らかな贔屓だと声高に叫ぶも、ディエゴは口笛を吹いて誤魔化した。

 納得がいかない兼一を余所に始まる第一回戦。先制したのは中国武術チームの片割れだった。激しい乱打に成す術なく攻撃を受け続けるレイチェル。

 YOMIの先兵たる彼女の実力とはこの程度なのだろうか────そう思ったのもつかの間、レイチェルはあれだけの攻撃を受けながら全くダメージを負っていなかった。

 

 周囲が驚くままに、今度はレイチェルの攻撃が始まる。

 その技は激しく・大きく・派手な、見る者を魅了する技だった。

 その武の名を、ルチャ・リブレ。

 メキシカンプロレスの代表とも言える派手なスポーツ武術である。その武術は見た目通りかなり大きな予備動作を必要とする技が多く、それに比例するように攻撃のインパクトも大きい。その上、ルチャの技とは掛ける側よりも、掛けられる側の方にこそ相応の実力が求められる危険な武術なのだ。

 よって、ルチャの受け身の取り方を知らないレイチェルの対戦相手はもろに大ぶりな一撃を食らってしまう。加えて、このリングは正しくプロレスリング。加えられた衝撃が跳ね返るようになっているのだ。言うなれば、受け身の取れない状態で食らった攻撃の二倍のダメージが襲い来るようなものだ。

 

 結果は当然レイチェルの完勝。倒れ伏した相手を足蹴にしながらポーズを取り、観客にアピールをしていた。

 相方がやられたことで激昂した男は、怒りのまま背後からレイチェルへ向けて拳を突き出した。しかし、その拳が届くことはない。何故なら、届く前に彼────イーサンの拳が男を叩きのめしていたのだから。

 

 倒れた男の顔へ容赦なくその丸太のように太い腕を振り絞って鉄のような拳打を放つイーサン。

 止まることのない乱打。相手が気絶していようがしていまいが関係ない。絶命するまで叩き潰さんとするイーサンの様子に観客は恐れ慄く。

 観客の間に漂う空気を察知したレイチェルはハッとなってイーサンを止めにかかる。だがイーサンは止まらない。仕方なしと、レイチェルはイーサンの頭を思いっきり蹴り飛ばした。

 漸くレイチェルの顔を見たイーサンは、鬼のような姉の形相に悲鳴を上げて蹲った。

 イーサンは止まったものの、レイチェルにとって肝心要の観客の反応は白けていた。それに納得がいかないレイチェルはこの空気を変えんがため、丁度視界に入った霊夢と兼一────感情の比重は霊夢の方が重かったが、彼女と目が合うと思わず顔を背けてしまったため、仕方なく兼一のみに視線を向け、彼をイケニエにすることを決行。

 丁度個人的な恨みも持っていたため、事実にちょっと出まかせを混ぜて兼一を『口撃』するレイチェル。その余りにもあんまりな『口撃』によって心にダメージを負ってしまった兼一は彼女に背を向けてコロシアムから逃走する。泣きながら逃げていく兼一をほんのちょっとだけ哀れに思う霊夢なのであった。

 

 

 第一試合が終わり、休む間もなく行われた第二試合。

 対戦するのは古代パンクラチオンチームとブラジリアン柔術チーム。

 この対戦は先ほどの試合のような派手なパフォーマンスはなく、徹底したチーム戦術で相手を打ちのめした古代パンクラチオンチームが勝利を収めた。

 いつの間にか戻ってきていた兼一は、特出した派手さはないものの、あくまでも二対一で相手を潰しにかかる彼等に何か鬼気迫るようなものを感じていた。

 しかし、その兼一の感想に彼らを気にする余裕はないと美羽は切り捨てた。当然だろう。なにせ、次の試合は今度こそ自分達の出番なのだから。

 

 霊夢は美羽のように準備運動もせず、兼一のように狼狽えることもしない。ただし、いつもとは明らかに雰囲気が違っていた。それも仕方のないことなのかもしれない。なにせ彼らの対戦相手はどう見ても年齢詐称をした、“我流X”を名乗るあの長老が相手なのだから。

 

 

「我流~~~~~…………────X(エッッックス)!!!!!

 

 

 某仮面ラ〇ダーの登場シーンのようなポーズを取る我流Xに、兼一は冷や汗を、美羽は拳を握り締め、霊夢は全身から力を抜く。

 どうあがいても弟子級の枠組みに収まらない相手を前に、彼等三人は覚悟半分諦め半分の面持ちで歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リングに上がった四人。彼ら三人の中で一番背が高い霊夢ですら見上げる程の巨躯を持つ我流Xは、その両手を大きく広げ三人を覆い隠さんばかりに威嚇していた。それこそ兼一がかつて一度死を覚悟した、熊と再度向かい合った時のように。いや、熊の方がまだマシだと体を震わせる。

 なにせ相手は無敵超人────兼一も美羽も彼に修行をつけられたからこそ、ここまでの強さを手に入れることができた。………何度も死の淵を覗きながら。

 そんな出鱈目な彼が、果たして弟子に情けをかけてくれるだろうか。いや、あり得ない。身内だからこそ、彼は情け容赦なく仕留めにかかるだろう。

 

 そう、()()()()()────────────────

 

 

「ぶろろろろろろろろろろろろ────ッ!!!!!!!」

 

 

  

 ────────拳の風圧だけで、兼一、美羽、霊夢の三名を容易く吹き飛ばした。

 

 

「クゥゥゥ───ッ!!!?」

 

「ウワァァァアアアアアアアア───ッ!!!!」

 

「チ……ッ!!」

 

 

 その対応はまさに三者三様。美羽は堪えようとするも体勢を崩し、兼一はそもそも構えることさえ許されず、霊夢は敢えて拳によって起こった風に身を委ねる。

 当然、最も早く体勢を立て直したのは霊夢であり、くるくると回転しながら木の枝に着地する。そして、すぐに二撃目に備えんと我流Xを睨む。残る二人は受け身を取る事さえ許されず、それでも何とか場外ギリギリで踏みとどまっていた。

 

 

「あれは────ッ!!!」

 

 

 何かに気付いたのか秋雨は思わず声を上げる。それに追随する形で剣星もまた我流Xの意図を見抜く。残るアパチャイ、しぐれ、逆鬼は口を大きく開いて唖然としていた。すぐに正気に戻りはしたものの、正気とは思えない我流Xの暴挙に何かを察している二人へ吼える逆鬼。それに答えたのは秋雨だった。

 

 

「あれは、(0)(.)(0)(0)(0)(2)(パーセント)組手だ」

 

 

 (0)(.)(0)(0)(0)(2)(パーセント)組手。

 それは────その昔、美羽がまだ幼い頃、武術の上達の節目に毎度行われた組手の事である。

 古来より、血の繋がった者が肉親に武術を伝えるというのは想像以上に難しい。それ故に、伝承するために師は姿を変え、或いは実戦の中でその技を伝えていた。そして、無敵超人・風林寺隼人の伝授方法こそがコレ────(0)(.)(0)(0)(0)(2)(パーセント)組手なのである。

 その名の通り、己の実力を完璧なまでにジャスト0.0002%に抑えた上で、一切の情を捨てて闘う非情の組手。目は閉じ、攻撃は大振りにし、心拍を抑え、機動力も亀並に鈍くはするが、それでもその攻撃は一切の情がない本気の拳だ。

 

 

「だが、それはあくまでも美羽に向けてのもの。美羽以外の要素を含んだ状態では更にその倍率は上がっている筈だ」

 

「特に、霊ちゃんがいるというのがまずいね」

 

「ああ、あの子はもうすでに弟子の枠組みを破っている。故に長老がどれ程その上限を上げるか………」

 

「お、おい………まずいなんてもんじゃねぇだろそれ!!」

 

「ヤバ……イ」

 

「アパパァ………」

 

 

 彼等の視線の先、正しく死戦となるであろうリングの上で霊夢はその構えを解いてしまっていた。

 闘気も抑え、両手もぶらんと何も力を入れていない状態で視線だけを我流Xに向けていた。それに対して我流Xは、のしのしとまるで怪獣映画のように霊夢へ一歩一歩近づいていく。

 それでも霊夢は構えない。ただ彼女もまたゆっくりと我流Xへと歩を進めた。

 いよいよ互いにぶつかり合う────────かに思われたが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「え」

 

「な……ッ」

 

 

 それを見ていた兼一と美羽はどうして二人はすれ違っただけで攻撃しなかったのか────そんなことを考える間もなく、我流Xが二人へ向かって拳を突き出した。

 

 

「ぶろろろろろろろろろろろろ────ッ!!!!!!!」

 

「うわッ!!!?」

 

「まさかッ!!」

 

 

 放たれるは風の拳。先のような暴風とは言わないまでも、疾風の如き速さで迫りくる衝撃に兼一と美羽はその場から飛びのいた。起こった衝撃が二人の髪を揺らす。休む間もなく放たれ続ける拳の連打。それはまるで兼一と美羽を引き離すかのように放たれていたが、当然そんな意図を掴む余裕のない二人は風の拳を避けることにのみ専念する。そして、腕の可動域限界である真横についた美羽は我流Xの懐へと勢いよく飛び込んだ。

 

 

──── 飆移風切り羽 ────

 

 

 美羽は両手を地面につけ逆立ちした状態から身体を捻じり、そのまま足を振り下ろす。しかし我流Xの拳の圧によって技を当てることはおろか、またもや宙へと飛ばされてしまった。

 

 

「美羽さんッ!!!」

 

 

 美羽に遅れる形で駆け出す兼一。その視線は宙を舞う美羽へと注がれるも、一瞬にして意識を我流Xへ全神経を集中させ、無意識に制空圏を形成した。次いで起こる衝撃。

 

 

「グゥワァ……ッ!!!」

 

 

 辛うじて我流Xが放った拳を弾き飛ばされるように躱す兼一は、そのままゴロゴロと転がりながら衝撃を体から逃す。霊夢に散々投げられて身につけた受け身の取り方が役に立った。

 その間に宙に飛ばされた美羽も空中でぐるりと一回転すると、まるで重力を感じさせない体捌きで地面へ降り立つ。

 

 

「コォォォォォ…………」

 

 

 まるでロボか超人のような呼吸音を響かせながら、我流Xはリングの中央を陣取る。

 その我流Xの右方向には美羽。左方向には兼一。そして後方には霊夢。陣形的には彼を取り囲む形にはなっているものの、一ヶ所だけ機能していない場所があるため、陣形として十全に機能しているとは言い難い。

 それは後方にいる霊夢だ。彼女はまるで闘う気概を見せておらず、正座したまま両目まで閉じて沈黙してしまっていたのだ。

 

 

「どうしちゃったんだろ、霊夢さん」

 

「………そういうことですの」

 

 

 困惑する兼一に対し、美羽は霊夢の意図を理解した。

 

 

「この修行────(0)(.)(0)(0)(0)(2)(パーセント)組手は、あくまでも兼一さんと私だけのもの!!そういうことですのね………!!!」

 

 

 そう、この修行はあくまでも美羽と兼一の為の修行。一足早く弟子の枠組みから抜けた霊夢が行うにはあまりにも()()()()。つまるところ、霊夢は開始直後の一撃で我流Xの拳に乗せられた意図を察したのだ。

 

 

 

お主は後じゃ

  

 

 そう告げる長老の意志を、霊夢はくみ取ることにした。

 どうせ先か後かの話。ならば()()の入らない後で相手をする方が楽でいいと霊夢は判断した。

 よって兼一も美羽も、この修行に於いて霊夢を頼ることは許されないし、何より霊夢本人がそれを許さない。

 

 

「さて、始めようかの」

 

 

 例え0.0002%と言えど、その拳に容赦はなく。これを超えられなければ実の孫娘であろうと殺すという決死の修行。

 兼一達にとって最も高く、最も死に近く、されど絶対に越えなくてはならない試練が立ち塞がったのだった────────。

 

 

 

 







久しぶり過ぎてちょっと文章スタイルが変わっているかもしれませんが、それでもなんとか続けますので、これからもよろしくお願いします。
感想や評価・お気に入り登録等してくれると嬉しいです。
それではまた次回お会いしましょう。
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