天衣無縫の巫女 レイム   作:神降ろし

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ちょっと短いです。
後、今回の話は梁山泊の主要キャラとメインヒロインである美羽と霊夢の関係についてぼんやり書いています。


やっぱり霊夢には追いかける人が一人はいないとな~って思うのですが、だからといってたの東方キャラを出すのはなんか違うと思いました。
それしちゃうと東方クロスオーバーでいいですし。

あくまでも、博麗霊夢を描きながらケンイチの世界で物語りたいので、他の東方キャラはなしの方向で行きます。


ので、ご了承ください。


それではどうぞ。





壱の段

 幼い頃の(わたくし)から見た彼女の第一印象は───『敵わない』というものでした。

 あれは、おじいさまと世直しの旅から帰ってきた頃のことでした。

 途中で『ちょっと寄るところがある』と言い、その目的地へと向かい、神社の石段にしてはかなり多いものを上り、上り切った後に、赤く立派な鳥居を抜けたその先───古いながらも神秘的な神社………()()()()()()()()()()()()()同世代の少女───博麗霊夢さんはそこにいました。

 此方を覗くその澄み切ったガラス玉のような瞳が、私には恐ろしく思えてなりませんでした。

 

 

 ………けれどそれ以上に、どうしようもなく────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとごろしぃぃぃぃいいいいいい~!!!!?」

 

 

「随分と元気ね。あんだけ声張り上げられるんだから」

 

 

「おっと、火が弱くなっている。うちわうちわっと………」

 

 

 そう思い出したように霊夢から離れた秋雨は、境内に置いてあるうちわを取ると火元まで行き、しゃがんでぱたぱたと煽り、火を更に燃え上がらせた。

 

 

「ぎぃやぁぁぁぁああああああああ!!!!!」

 

 

 それにつられて秋雨が先ほど言っていた内弟子であろう少年の腹筋背筋の速度が速まった。表情の強張りもより増した。

 

 

「これは火加減が難しくてね、常に側で扇がないと火力が弱くなってしまう」

 

 

「あら、じゃあ今来たのは不味かったかしら?」

 

 

「いや、君が来て中断したおかげで兼一君の()()が分かったよ。声が大きいということは、それだけ息を吐き出すということだからね。つまりは余力があるということ───よってもっと腹に力を入れられるッ!!

 

 

 そう目を光らせながら秋雨は扇ぐ力を増していった。兼一という名なのだろう少年が声なき声を上げながら、まな板に載せられ、尻尾を掴まれた活きのいい魚のように荒ぶっていた。

 『おたすけ~』と言いたげな死力を尽くしている兼一を置いておき、霊夢は梁山泊にいる一人一人に目を通し、どう見ても隠しきれてない巨体に目が留まった。

 

 

「アパパパパ………」

 

 

「あの人はまだ会ったことないわね………」

 

 

「ん?………ああ、まだアパチャイの奴には会ってなかったな、霊夢は」

 

 

「アパチャイさんっていうのね、あの人」

 

 強面で頬から鼻にかけて横断する一文字の傷がある男───逆鬼(さかき) 至緒(しお)が、隅っこで隠れて此方を窺っている巨漢を紹介した。

 

 

「彼奴の名はアパチャイ・ホパチャイ。まあ……悪い奴じゃあねぇから、宜しくしてやってくれ」

 

 

「ふぅん?……」

 

 

 霊夢は逆鬼の何か含んだ物言いに目を細め、その紹介された男───アパチャイを両目で視界に収めると、アパチャイもまた霊夢の視線に合わせて見合った。

 十秒ほど、無言で視界を合わせた二人は、そのまま距離を詰めると、霊夢が手を差し出し、アパチャイもまたそれに応じた。

 

 

「初めまして、博麗霊夢よ。今後ともよろしく」

 

 

「アパチャイだよ!コンゴト~モヨロシクだよ!!」

 

 

 微笑む霊夢に対し、満面の笑みで答えるアパチャイ。ソレを見守っていた周囲は安堵の溜息をついた。それに目ざとく気づいていた霊夢だったが、あえてそこには触れなかった。安堵している様子から、何か問題があったのだろうが………もう解決しているのだから詮索する必要もないだろうというのが四割。後詮索するのが面倒くさいというのが六割。───というのが霊夢の頭を占める考えだった。

 

 

「それにしても…本当に珍しいね、霊ちゃんが来るなんて」

 

 

「別に、暇だったのと……後は大量にあった菓子類やらのお裾分けよ」

 

 

 さり気なく霊夢のお尻を触ろうと背後から近寄ってきた助平な男───() 剣星(けんせい)の手から半身をずらして回避する霊夢。ついでにその手首を軽く触れたまま、自身の手首を返して───

 

 

「お~っと危ないね」

 

 

 ()()()()()前に剣星が自身の重心を右前脚に集中して踏みとどまった…………が───

 

 

「おッ───?」

 

 

 更に霊夢自身の左足が踏みとどまっている右足の膝裏に蹴りを入れ、再び重心を崩したと同時に霊夢から見て前方に投げ飛ばした。

 

 

「なッ───」

 

 

 それを海老ぞりしながらその眼にとらえた兼一は驚愕し両目を見開いた。

 

 

「(馬師父が投げられたッ!?)」

 

 

 今日日内弟子となった兼一だが、それでもこの梁山泊にいる全員がとんでもない程の達人だというのは心身ともに理解している(理解させられた)。だからこそ、そのとんでもない達人の一人である剣星を、ああも簡単そうに投げ飛ばした霊夢と呼ばれた少女の実力に驚きが隠せない。

 

 

「やれやれ……今のは良かったけど危ないね、霊ちゃん」

 

 

「…チッ!そのまま頭から行けばよかったのに」

 

 

「酷いね……」

 

 

 投げられた剣星は頭から落ちる前に左手を地面について受け身を取っていた。受け身を取られた霊夢は舌打ち一つ上げるが、そこまで不快でもなさそうであった。どうせ受け身を取るのだからいいだろうと言いたげに。それにやれやれと首を振りながら体勢を元に戻した剣星は、霊夢の腕が鈍っていないことに感心したようだ。

 

 

「ふむ、相変わらず見事な投げじゃ」

 

 

 其処へ突如聞こえてきた威厳ある声の方向に目を向けると、其処には金髪で長髪な霊夢の良く知る人物───風林寺(ふうりんじ) 隼人(はやと)が顎に手を当て感心した様子で此方を見ていた。

 

 

「試されるのは別に構わないけど………一言言ってくれる?暇つぶしには来たけど、面倒は嫌よ」

 

 

「ホッホッホ、それは失敬。じゃが武術家の〝(さが)〟と言うもんじゃよ、若き才能のある者へのちょっかいは」

 

 

 どうだか………と訝し気に眉を寄せる霊夢に達人たちはにっこりと笑みを深めるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その様を遠目から見ていた兼一はいつの間にか(しゃちほこ)のように反ったままその光景を見ていたが、いつの間にやら火力が増し過ぎていた火の熱さに悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

「あっっっっつうぅぅぅぅぅううううううううううぃッ!!!!!!?」

 

 

「あ、火加減間違えた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───その後、霊夢は持ってきた菓子折りを長老の孫である風林寺 美羽(みう)に渡すと、どうせ暇だからと縁側で行われる兼一の修行を鑑賞することにした。

 秋雨に今回は何をやるのか聞くと、今日は初日だからわりと軽めだよと言って、にっこりとアルカイックスマイル(仏のような笑み)を浮かべていた。

 

 その内容は簡単に言うとこうだ。

 

 

 ・恐怖を克服させるために両膝と両腕に林檎を出来る限り乗せ、それを刀を持った梁山泊の中で最も若い達人であり武器の担い手───香坂(こうさか) しぐれが林檎だけ斬る

 

 ・逆鬼が兼一の両足を持って駆け回り、兼一は自身の両手のみ地面に着けて走る

 

 ・アパチャイと自由に組み手する

 

 

 霊夢はその内容を見た時、最後のだけ死ぬんじゃない?と今日一番の勘が冴え渡るのが分かった。

 

 

 修行を見届けた後、丁度いい時間になったため、霊夢はそろそろ帰ろうかと縁側から立ち上がった。すると───

 

 

「あ、レイムさん。もう帰られるのですか?」

 

 

「ん、そうね。神社をずっと空けとくわけにもいかないし、美羽の方から秋雨さんとかに言っといてくれる?」

 

 

「はい、わかりましたわ」

 

 

「じゃ」

 

 

 霊夢の願いに一つ返事で了承した美羽に頷くと、霊夢は道場門の方へと歩いていく。

 

 

「霊夢さん」

 

 

 その背中に、美羽の声が通った。霊夢は背を向けたまま立ち止まり、美羽の言葉の続きを待った。───空気が鋭さを帯びるのが分かったから。

 ほんの数秒でしかないのに、数分に引き伸ばされてしまったかのような静けさが辺りを包む。それを作り出しているのは二人の少女。

 片や自然体のまま、いつ何時何処からでも対処が出来ると無意識ながらも確信している赤いリボンが特徴的な黒髪の少女。

 片や身体を微かに震わせながら、自身の胸の内から湧き出る気を押さえつける様に力ませる金色の髪の少女。

 二人には、否───金色の髪の少女には少なくない因縁があった。

 

 

「また、いらして下さいね」

 

 

 彼女は追う者だ。未だ届かないと自認しながら、それでもと『星』に手を伸ばす少女だ。

 言葉にするのは本音。言葉に乗せるのは宣言。

 

 

 

 

─── 何度だって挑みます ───

 

 

 

「気が向いたらね」

 

 

 対して黒髪の少女が返すのは簡素な言葉。だが、それに籠められたものはどこまでも傲岸不遜な魔王のようなもの。

 自身に向けた言葉の裏なんぞ、考えなくとも伝わっている。故に───

 

 

 

 

─── 何時でも来なさいな ───

 

 

 

 そうして霊夢は梁山泊を去った。どこか、いつもよりも嬉しそうにしながら───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神秘ある世でなくとも、その身が〝博麗霊夢〟であるならば、必ず相対する者は無数に、それこそ星の数ほど現れる。

 誰もが彼女という星に魅せられて、引き寄せられて、手を伸ばすのだ。

 しかしながら、彼女という星に手を伸ばし、()()()()()()()()()は、何時何処であろうと───〝金色の髪をした普通の少女〟なのだ。

 

 

 

 




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