天衣無縫の巫女 レイム   作:神降ろし

5 / 21
更新です。

今回は短いです。

後、今回はしぐれどんの武器作り用の鉄ってどこから仕入れているの?という疑問に対する独自設定があります。

正直製鉄の知識ないけど、ケンイチ世界の職人であり達人ならこれ位できるかなって。







肆の段

 ─── 梁山泊 ───

 

 

 それはスポーツ化した現代武術に溶け込めない豪傑や、武術を極めてしまった者達が集う場所。

 前回霊夢が来てからまた暫く経ったある日。漸く時が来てしまった………。

 

 

「兼一君はそろそろ“本格的な技”の修行に入ってもいいと思うんだが………どうだろうか?」

 

 

 『ツァラトゥストラはかく語りき』という題名の本を読み進めながらそう告げるのは哲学する柔術家───岬越寺 秋雨

 

 

「そうね、かなりきつい修業だけどそろそろかね」

 

 

 秋雨のように真面目な本を読んでいるのかと思えば、別の意味で良い子なら絶対見ない本を読みながら秋雨の言葉に肯定の意を示すあらゆる中国拳法の達人───馬 剣星

 

 

「おいおい、兼一は身体に恵まれてるわけでもねーただのガキだ!あんまり急いで技の修行に入ると…死ぬぜ」

 

 

 左の親指のみで身体を支えながら腕立て伏せならぬ指立て伏せを行いながら、剣星とは逆に否定の意を見せる喧嘩100段にして空手家───逆鬼 至緒

 

 

「ゆっくりゆっくり教えれば、アパチャイ、兼一なら生き延びると思うよ!」

 

 

 そこへ兼一ならば生き延びるという信頼を寄せ───しかして、最もその信頼を自ら砕くのが裏ムエタイ界の死神───アパチャイ・ホパチャイであった。

 その証拠に師匠達の中でも(比較的)加減を心得ている逆鬼から「おめーが言うな!!」とお叱りを受けて、アパチャイはシュンとなった。

 

 

「ま、いいんじゃない?私は関係ないけど…見た感じ、壊れはしないと思うわよ───はい、私の勝ち」

 

 

「クッ…また負けてしまいましたわ………」

 

 

 互いに向かい合い、その間に置いてあるトランプの置き方からしてスピードだろうか………よそ見をしながらでも勝負事には勝つと言わずとも示すのは未だ通り名無しの“無名”───博麗 霊夢である。

 反射神経と判断力を鍛えるのに最適と言われて始めた遊びに霊夢を誘い、そこでもまた負けて割とショックを受けた様子の風を斬る羽───風林寺 美羽

 「見てから動くんじゃ遅いわよ」と厳しいことを言う霊夢に、「ぷく~……」とぐうの音の代わりに頬を膨らませ、じとーっとした目線を向ける悔し気な美羽。

 

 

「取り合えず、本人にも聞いてみたら?現在“休憩中”の兼一さんに」

 

 

 もう一回と迫って来そうな美羽から離れるために立ち上がった霊夢は、兼一がいる場所に指を差しながら本人の解答を待つ。

 

 

「あのう……これって休憩中と言えるんでしょうかね………」

 

 

「45……46……47……48……止まる…な」

 

 

 最後に、話題に挙がっていた本人であり、現在休憩用の腕立て伏せを行っている史上最強の弟子───白浜 兼一

 その上に乗って兼一の腕立て伏せの回数をカウントしているのは剣と兵器の申し子───香坂 しぐれ

 

 

「っていうか、そういう生きるだの死ぬだの物騒なこと言わないでくれます!!?」

 

 

「いや~君的にはどうかなーと思ってね。さらに本格的な技の修行だが……どうする?きつ~いけど始める?」

 

 

「………どれくらいきついですか?」

 

 

「前回霊夢が来た時に呼吸と脱力を覚えた方がいいよと言ったのは覚えているかね」

 

 

「はい、覚えてます。……騙されたことも覚えてます」

 

 

「まあまあ……それでざっくり言うと───その2つを習得しないと蘇生させる回数が増えます

 

 

「………もう少し待ってもらっていいです?」

 

 

「待つってどれくらい?明日?」

 

 

『………始めたくてうずうずしてたんだなぁ~』

 

 

 秋雨を除く、今ここにいる全員が兼一を哀れに思ったのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの会話からまた数日が経ち、何があったのか兼一は前回とはまるで違う目つきで秋雨へと技の修行を頼んだ。秋雨はその兼一の様子からもう問題ないなと判断し、快くその申し出を引き受けた。

 そして始まるや否や、今までの修行が本当に此方を配慮していたのだなと納得させられるような怒涛の技の数々に兼一は全身から冷や汗が噴き出した。

 比較的マシだったのが逆鬼の技だった辺り、教えたくてうずうずしていたのは秋雨だけではなかったのだなと、何時ものように暇つぶしに来ていた霊夢は思うのだった。

 正直、逆鬼が弟子に対して一番過保護だと傍から見て感じた霊夢。だが、それを口にしたところであの男は認めやしないだろう。

 次は剣星の技か───と思われたが、兼一が参ってしまい、それ以降に教えようとしていたしぐれはいじけていた。それを不憫に思ったのか、霊夢は───

 

 

「あ、しぐれ。前に頼んでいた(やじり)の作り方、今日でもいい?」

 

 

「ピー――……ンッ!」

 

 

 ───と、霊夢が告げれば水を得た魚のように勢いよく何度も首を縦に振って霊夢の腕を掴み引っ張り始めた。

 

 

「早く……やろう」

 

 

「じゃ、そういうことで」

 

 

 一瞬で二人が姿を消してしまったのを見た兼一は「忍者か…?」と固まり、秋雨は何時もより柔らかな笑みを浮かべていた。その他の師匠達もどこか微笑まし気だ。

 

 

「じゃあ、手始めにこれ等の型を千回───やってみようか?」

 

 

「いや~ん」

 

 

 両手を頭に当てて目を点にしながら力なき叫びを上げる兼一。

 自身で選んだ道であるが故に、逃げ道など当然ないのである。今回は自覚出来てよかったね。By秋雨

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話は変わるが、何故先程霊夢が鏃の作り方をしぐれに教わろうとするのか。それは沈んでいたしぐれが哀れだったのも少しはあるが、本命としては霊夢の仕事に関係するものであるからだ。

 鏃とは───矢尻とも言い、矢の先端部分のことを指す。つまり、矢を放った時に突き刺さる部分のことを言う。

 鏃の素材は石であったり、金属であったり、勿論鉄であったりと種類は豊富である。

 霊夢が今回しぐれに教わろうとしているのは鉄の鏃である。

 何故、それが必要になったかと問われれば、霊夢の職業柄必要になるものであるというのが理解しやすいだろう。

 

 霊夢は神社の巫女である。その神社の名を博麗神社。

 だが、他にその神社で働いている者はおらず、全て霊夢一人で管理しているのである。

 つまり、良く初詣などで買うお守り、風車、熊手などと言った小道具や神社に来たからには必ず引くという者もいる御神籤など、何から何まで全部霊夢の手作りなのである。

 よって社務所などは当然ない。

 ではどうやって売っているのかと言われれば注文式である。博麗神社の前神主曰く、注文されてから作るのが本物であって、前もって作ってあるものでは有難味がないらしいのだ。

 霊夢はそれに従い、注文を受けてからこれまで作っていた。

 だが、ある日気付いたのである。

 

 

 ───そういえば、破魔矢を作ったことってなかったな、と。

 

 

 破魔矢とは、正月の縁起物や神具として神社・寺院で授与される矢である。

 破魔弓と呼ばれる弓とセットにすることもある。

 このほか、家屋を新築した際の上棟式に呪いとして鬼門に向けて棟の上に弓矢を立てる。新生児の初節句に親戚や知人から破魔矢・破魔弓を贈る習慣もある。

 正月に行われていた弓の技を試す「射礼(じゃらい)」という行事に使われた弓矢に由来するとされている。

 元々「ハマ」は競技に用いられる的のことを指す。これを射る矢を「はま矢(浜矢)」、弓を「はま弓(浜弓)」と呼んだ。

 「はま」が「破魔」に通じるとして、正月に男児のいる家に弓矢を組み合わせた玩具を贈る風習が生まれ、後に一年の好運を射止める縁起物として初詣で授与されるようになったのである。

 日本では古来、呪術をかける事は少ないが、呪術に対する破邪の慣習は多くある。

 一般に破魔矢の先が鋭く尖っていないのは、目標とする人や物自体ではなく邪魔が発する邪気・邪意・邪道・邪心等の妖気を破り浄化する用を為せばよいので、鋭利な刃物である必要が無い為である。

 一般には破魔矢のみがよく流通しているが、正式には、破魔弓で射て初めて邪魔を破り浄化する効力を発揮する。

 一般人が破魔矢を持つ意味は、破魔弓は神や神主や破邪の能力を有する者が持って方向と力と気を定めて構え、破魔矢の所有者は破りたい魔に対する矢を提示する形で射られる、との仕組から来る。

 

 

 これが一般的に伝わっている破魔矢であり、霊夢はその矢の大事な部分である鏃を自身の手で作れるようになろうと思ったのだった。

 今まで依頼されたことがなかったから、存在を忘れていたが、重要な道具であることには変わりない。だから、霊夢はそれも作ってみようと思ったのである。

 そうなると、どうせ作るならば古い仕来りに乗り、本格的な矢として機能するような破魔矢を作ろうと、いつもの面倒臭がりが影も形も見せずやる気が霊夢を突き動かした。

 そうしてしぐれに作り方の伝授を頼んだという話に繋がるわけである。

 

 

「鏃の大きさ…は、どの位……だ」

 

 

「それは一通り作れるようになってから決めるわ。買い手に合わせて作るのが博麗だし」

 

 

「分かっ……た、では…素材集めから……始める」

 

 

「了解よ」

 

 

 

 

 

 

 此処より先の事は語れない。そんな方法で鉄の製造から始めている二人のことを想像で補完してほしい。

 敢えて一言で言うとしたら───鍛冶職人を舐めてはいけない、ということか。

 

 尚後日、兼一が二人で何をやっていたのかを聞き出した結果───兼一の顎が外れてしまう程の狂気的所業だったと、彼は語っている。

 

 

「どっから武器を作る鉄を集めているのかと思ったら……そんな方法だったなんて………()()()()()って、もう何でもありだな、達人」

 

 

 ───と現実逃避をしながら語った兼一は何を聞かされたのだろうか。

 そして、それについていける霊夢はやはりあちら側(非常識側)の人間なのだなと改めて実感する白浜兼一なのだった。

 だが、霊夢がそれを聞けばこう返しただろう。

 

 

「あんな非常識連中と一緒にしないでくれる?ってか、美羽がいないとまともに生活できないアレ等よりはマシでしょ」

 

 

 ──と、確かにと思う部分もあるが、正直五十歩百歩である。

 だって、兼一にとってはどちらにしても掛けられる技が生死を分けるのに変わりないのだから。

 

 

 

 

 

 




因みに漫画本編にある風林寺島に霊夢さんは行ってません。
その時は巫女としての仕事をしており、海水浴に行っていたことなんて全然知りません。もし知ったら自分だけ誘わなかった梁山泊に対して暫くお土産無しにしていたでしょう。


誤字脱字チェック・感想・評価・お気に入り登録等よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。