天衣無縫の巫女 レイム   作:神降ろし

7 / 21
更新です。
今回もちょっと展開を急ぎます。
この頃辺りでやっと霊夢が動かせるかな。

後、美羽さんってこの頃の原作だと修行ってどうしてたんでしょうね。
相手が二段程格上か二段程格下しかいなかったから、自身よりも一段上の相手との組手が出来てないんですよね。だから、後半にならないと成長できない。
まあ、相手がいると修行ではなくともで戦いの中で成長する程の出鱈目具合だから調整も難しいんですけどね。


尚、この作品には霊夢とかいう才能も精神性も自身の完全上位互換がいる為隙あらば成長するから原作よりも恵まれてるんですけどね。


一応感想欄で触れている方々がいたので言っておきますが、現在の霊夢の実力の階級は弟子級最高位としていますが、技の練度・気の習得段階・心技体の純粋な力量はその限りではございません。
弟子級最高位というのは、例として出すと、原作で弟子クラス最強状態に一時的に至った兼一がそうです。


一応目安としてそう設定しておりますのでご理解ください。


それではどうぞ。


陸の段

「あ。負け犬の…顔だ」

 

 

 ─── ぐさぁ~ ───

 

 

「あ、ホントだぜ。顔見りゃ分かんぞ!あんまり勝手に負けんなよな!」

 

 

 ─── ドシュ ───

 

 

「兼一、負けたって本当かよーッ!?」

 

 

「負け犬としてペットコーナーに写真を投稿ね」

 

 

 買い物から帰ってきた兼一に対して告げられた師匠達の言葉はあまりにも無情だった。

 何があったかと言われれば、買い物の寄り道として駄菓子屋に行ってみると、其処には今兼一が争っている喧嘩チーム『ラグナレク』のリーダーがいたのだ。しかもリーダーは兼一の幼馴染にして親友であったのだ。最初は昔話に花を咲かせていたのだが、武術の話へと変わった瞬間、彼の雰囲気は一変した。互いの主張が互いにとって相反するものであったため勝負となったのだが………

 

 

「少しは気を使え―――ッ!!負け負け言うな―ッ!!師匠共―ッ!!!」

 

 

 ───ご覧の通り完敗したようだ。今の兼一は正に空元気である。

 

 

「負けたんじゃないやい!十年ぶりに会った奴だったから勝ちを譲ってやっただけだ!!次に会う時が奴の命日だ―――ッ!!」

 

 

「ではそうするために今から修業を始めるかね?」

 

 

「うひッ!!?」

 

 

 とうとう虚勢まで張り始めた兼一に対して目を光らせて修行をするかと提案する秋雨に、兼一の精一杯の空元気が萎んでいった。

 

 

「今の兼一さんに完勝する位なんだから、実力的に“開展(かいてん)”は過ぎてんじゃない?」

 

 

「あら?霊夢さん、この時間帯に来るなんて珍しいですわね。何かあったんですか?」

 

 

 普段ならばもう神社に帰っているか、若しくは用事があって来ないはずの日の霊夢の声が聴こえた美羽は、その声が聴こえた方向に目を向けた。其処には普段の服装ではなく、道着姿の霊夢が正座していた。

 

 

「ん、ちょっとね。急で悪いけど、暫く此処に泊まることにしたのよ。長老には伝えておいたから」

 

 

「はぁ……それはいいのですが、何故道着姿で?」

 

 

「“()()()()”してたからよ」

 

 

「────!!」

 

 

「もう終わったけどね。今は“()()()”の終わり」

 

 

 その言葉を聞いた美羽は驚きを隠せず、目を見開いて固まってしまっていた。それを鋭い眼差しで、しかし直視はせずにすぐさま目を閉じてしまう霊夢。そしてゆっくりと流れる様に立ち上がると美羽に背を向け、そのまま歩いて部屋から出て行ってしまった。

 美羽は自分でも認識できないうちに呼吸を止めていたことに、霊夢が出て行った後に気付いた。その後、大きく深く息を吐き出した。美羽の目には、少しだけ()()()()()()()()があった道着が映っていた。ソレが意味することは即ち────

 

 

「いつ見ても凄まじいものだったよ、霊夢の“アレ”は」

 

 

「秋雨さん………」

 

 

「焦ってはいけないよ、美羽」

 

 

「そうね、美羽は美羽、霊ちゃんは霊ちゃんね」

 

 

「馬さん……」

 

 

 声をかけた二人だけではなく、逆鬼やしぐれ、アパチャイも美羽へ微笑んでいた。美羽は彼等の優し気な顔に、いつの間にか入れていた全身の力を抜いて、安心したように微笑み返した。

 だが、美羽の武人としての本能は間違いなく刺激されていた。霊夢が告げた()()()()が済んだという言葉は、それだけ彼女を緊張させるに足るものだったのだから。

 

 

 

 ───尚、兼一はその話題に触れる以前に梁山泊の師匠全員から自身が完敗したという事実を突きつけられて、毎度のことながら落ち込んだ時の解消法である「の」の字を畳に書いており、まったく話を聞いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が明けて朝を迎え、そしていつもの修行の時間となったのだが、兼一の心は荒れに荒れており、修行の方も完全にやけくそ気味で全く身に入っていなかった。

 霊夢は遊びに来ていた兼一の妹──ほのかとオセロや囲碁、将棋で戯れていた。尚、勝敗は七勝一敗と、最後のオセロによる一戦以外霊夢が勝ち越している。

 そんな不貞腐れている兼一に、珍しく自分から声をかけた長老は、梁山泊の達人一同が驚きに固まる一言を言い放った。

 

 

 ───ワシ直々の修行を受けてみないか

 

 

 戦慄している達人たちを余所に、兼一は今の己のままでは足りないとその申し出に頷いたのだった。

 ひそひそと心配をしている秋雨たちを見ながら、霊夢はまったく別の方向───兼一の()()()の乱れをじっと見つめていた。

 

 

 そうこうしている内に、旅の準備を終えた兼一と長老の旅立ちを見送るため、霊夢を除く全員が正門に立ち合っていた。

 長老は一週間後の夜に戻ると告げたが、美羽は兼一の方を心配そうに見つめていた。そんな美羽の不安を安らげようと、腕を振り上げて元気いっぱいだと言葉と共にアピールする兼一。

 それでも、梁山泊の面々は緊張した面持ちで二人を見ていた。

 

 

「果たして兼一君は耐えられるのだろうか………」

 

 

「おいちゃんがいないから死んだら蘇生できないね……」

 

 

「そんなにやべぇとこでやるってのか………?」

 

 

「後ろからこっそりついていくってのはどうよ」

 

 

「それでも絶対ばれ……る」

 

 

「聴こえておるぞ、おぬしら」

 

 

 こそこそと話していた秋雨たちの会話の内容を驚異の聴力で聞き取り、気を込めた言葉で牽制する長老。

 それに対して彼らは瞬時に兼一には気づかれない速度で散会し、傍から見れば見事な擬態をした笑みで手を振り、兼一たちの出発を見送る体勢をとっていた。

 まったく、と言葉にせずに呆れた長老は、準備が出来たので早々と梁山泊から足早に遠ざかっていく。

 

 

「あ、長老待ってください!じゃあ弟子一号、行って参ります!!師匠っ!美羽さんっ!!あ、それと霊夢さんにもよろしく言っておいてください!!」

 

 

 そして───二人は強くなる修行のため旅立ったのであった。

 

 

 

 一方、ただ一人道場で正座をしていた霊夢は、二人が出立したのを感じ取ると、閉ざしていた刀剣のような鋭い瞳をゆっくりと開け、道場に戻ってきた彼らの内のただ一人に向けて、“剣による全力の振り下ろしによって生じた斬撃”に等しい絶大な気をぶつけた。

 

 

「さて、こっちも始めましょうか───美羽」

 

 

 霊夢に気当たりを向けられた人間───美羽はそれを受け止めた瞬間、反射的に真横へと飛び退き、自身の体内武術レベルを一瞬で上限いっぱいにまで引き上げ、その気を放った張本人───博麗霊夢へと体を向け、全身から闘気を迸らせた。

 

 

「やれやれ……早速か」

 

 

 秋雨の言葉は呆れの意を含んでいたが、それとは別に声色は楽し気だ。言葉にはしなかったが、梁山泊の残った全員が今の秋雨と同じ気持ちだろう。

 霊夢は昨日の()()()が起きた時点で、こうすることを決めており、そして長老を除く全員に了承をとっていた。霊夢が何をしようとしているのか───それは美羽を除く全員が把握している。

 では何故、美羽に知らせていなかったのかと言われれば、それはただ単に霊夢の気分的なものでしかない。

 何となくという、ただそれだけの理由で霊夢は美羽にこれから始めることを伝えなかったのだ。

 

 では───どういうつもりで先程の気当たりを美羽へ放ったのか。

 

 

「あっちが修行してるんだから、こっちも進めておいた方がいいでしょ」

 

 

「それにしたって、霊夢さんの方から修業をしようと言い出すなんて………おじいさまと言い、何かあるんですの?」

 

 

「あるっちゃあるわね………でも、()()アンタには教えない」

 

 

 警戒心をむき出しにしている美羽に対し、霊夢の纏う雰囲気はどこまでも静かであり穏やかだ。先程の抜き身の刀のような気を放った張本人とは思えない程に。

 霊夢が口にした「今のアンタには教えない」という言葉───美羽には心当たりがあった。それも、指摘されれば否定できないし、自身もどうにかしようと悩んでいた問題が。

 前回霊夢が来た時から、なにやら自分のことをじっと見つめてくる目が気になっていたのだ。その視線の意味は「問い」。

 

 ──“そのまま”でいいの?という美羽の武人としての矜持に触れる問いかけだ。

 

 兼一が内弟子になってから今に至るまで、美羽が行ってきた修行の質は落としていない。けれどそれで、()()()()()()()で彼女に追いつけるのかと言うと、否と断言する。

 だが、それでもこれ以上修行に時間を当てるわけにも、修行の質を向上することも出来ないでいた。

 簡潔に言うと美羽は現在伸び悩んでいた。そして霊夢はそれを見抜いていた。

 もしかしたら、霊夢が梁山泊を訪れるようになったのは、()()()()()()()を知っていたが故なのかもしれない。毎日欠かさず博麗神社へ挑みに行っていたのに、兼一が梁山泊に来てからというもの全く行かなくなってしまったからかもしれないと、美羽は思った。勿論、それが自惚れであると美羽は理解している。

 彼女の性格からして此方が理由になることはあり得ない。いついかなる時も、彼女の行動理由は彼女自身。それが博麗霊夢という少女なのだと知っているから。

 だから、霊夢の方から修業の相手を申し出たことも、やはり彼女がやらねばならないと何らかの理由で思ったが故───

 

 

「分かってるようだから言わないけど……どうする?やる?やめる?」

 

 

「やりますわ」

 

 

 霊夢の煽るような言葉に美羽は即座に了承の意を返し、自身も道着へと着替えて霊夢のいる領域に上がる。

 兼一が来るまでは何時も挑みに行っていた神社の巫女。挑む度に、自身の成長と、それ以上の進化を重ねていく彼女との埋められぬ差を埋めようと足掻いた日々。

 衰えていたとは思っていない。けれど成長したとも思えない今の己。

 だからこそ、兼一が修行に出たことに美羽は感情の面では心配を、武人としての性では感謝をしていた。

 そして幸運は続き、美羽の目標としている人物が、あちらの方から手合わせを申し出てくれた。

 

 

「何本勝負ですの?」

 

 

「私が飽きるまで」

 

 

 相変わらずの物言いだ。普段と変わらず、自身のしたいことをしたいようにやる。義務として行うべきことは最低限の力で。自身のやりたいと思うことであっても余力を残した上で。

 いつ何時であったとしても、全力を振るわない霊夢の事が、武人としての美羽は嫌いだった。そしてそんな彼女の全力を引き出せない自分自身も嫌いだった。

 まだ、其処に行けるとは思えない。寧ろ昨日の霊夢の発言からすると力量の差は更に広がってさえいる。

 

 故に───休憩はおしまい。此処からまた“昇る”のだ。空にまで手が届くほどの霊峰を。

 

 

「いきます───ッ!!!」

 

 

「小手試し……といきましょうか」 

 

 

 美羽が挑み、霊夢が受ける。

 兼一が自身の幼馴染にして親友にもう一度挑むための修行を始めたように、美羽もまた初めて出会った時から手を伸ばすと決めた幼馴染にして目標への挑戦を再開した。

 

 

 

 

 

   




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