天衣無縫の巫女 レイム   作:神降ろし

8 / 21
更新です。


次回でラグナレク編も終われると思います。
その次は漸くという程でもないですけれど、霊夢を本格的に動かせるようになります。
戦闘描写も頑張んないといけませんね………苦手なんですけれども。
まあ、其処も挑戦する意味でケンイチの二次を書いてますから、頑張ります。


それではどうぞ。

あと、今回も短いかもです。








漆の段

 ─────受け止められる

 

 

 此方が放つ、本気の片手突き。もしこれを美羽と同じ弟子級である兼一が身構えたところで、瞬時に放たれた六発の拳の内の三発を見れれば上出来と言うところの速度を誇る突き。それを、あまりにも自然体で、あまりにも容易く、まるで此方が態と力を抜いていたのかと錯覚してしまう程、綺麗に受け止めてしまう彼女。

 

 

 ─────投げられる

 

 

 全力でないにしても、間違いなく本気で放った突きは彼女の掌にある。つまり、自身の腕は完全に伸び切ってしまっている。

 いつものことだからこそ解る。こうして隙を晒してしまっている己に対して、容赦をかけらも見せてくれない彼女ならば、如何様にでもすることが出来ると。

 ならばここから己は挽回する手立てがあるのか?いいや、ない。

 此方が彼方に勝っている点など、攻撃に転用出来る技の豊富さのみ。それ以外の基本性能が余りにも違い過ぎる。もう片方の腕が空いていることなど何の気休めにもなりやしない。

 

 よってここから、己が為すべきことはただ一つ。()()()()が来るのか見極めること。

 巴か、小手か、上手か、将又刈り技か。いずれにせよ、彼方の投げが来ることには変わりない。そして最早それが回避不可能であるのは解っている。

 ならば、その技に対して身構えるのではく、全身を脱力させ全てを委ねるのが正解だ。その正解にたどり着くまでにも、それを行動に移せるようになるまでにも、一体どれ程投げ飛ばされた事か。

 

 

 ─────今回()片手投げか

 

 

 最早極まり過ぎて大概雑に放たれる片手投げ一つとっても、()()()()()()()()()()()()というだけで一撃で戦闘不能に落とす決め技になりえる。

 だからこそ、彼女がいつも言っている全身の脱力がいかに有効かがよく分かる。技への対処法ばかり学んできた己では、永遠に攻略出来なかったであろうから───()()()()()()

 

 彼女の放つ投げは、本当にただの投げでしかない。そこに高度な術理はないし、虚実もへったくれもない。───故に対処法は存在しない。

 投げられる段階に入った時点で、こちらにはもう抵抗のしようがなくなってしまう。下手に力を入れてしまえば、それさえ利用されて叩き潰されるのだ。

 

 だから、彼女の投げに対する対処法は、対処しないこと。全身から力を抜いて素直に投げられること。それこそが()()()である。

 

 

「受け身、巧くなったわね」

 

 

 そして彼女──霊夢さんの言葉を聞きながら、(わたくし)は笑顔で今日も投げられたのでした。

 

 

 

 

 

 

「ウフ、ウフフフ……」

 

 

「何笑ってんのよ。気持ち悪い」

 

 

「今なら何言われてもいいですわ~」

 

 

 美羽は自身が投げられ、霊夢の手が離れた瞬間から全身の脱力を解き、身体が畳に当たる寸前で右手を叩きつけ、その反動を利用して跳び上がったのだ。

 漸く初見殺しにして一撃必殺の投げを潜り抜けた美羽の心は有頂天一歩手前である。それもこれまで行ってきた組手の中で完璧に近い全身の脱力が出来たことが嬉しい。そして何よりあの霊夢が自身の受け身を褒めたことが一番嬉しくてたまらない。

 

 

「秋雨さんに特訓を頼んだ甲斐がありましたわ」

 

 

「まったく………それで、脱力の感覚はつかめたの?」

 

 

「あ、はいですわ。ですが感覚をより強くつかみたいので、もう一戦お願いします」

 

 

「あっそう………私はソレでもいいんだけどさ」

 

 

 呆れ顔で美羽を見つめる霊夢に、キョトンと首をかしげる美羽。霊夢は無言で縁側の方を指差し、美羽へ其方を向くように促す。美羽は疑問に思いながらも指を差された方へと顔を向け───日が傾いているのが分かった。

 

 

「あ゛ッ゛!!」

 

 

「夢中になるのはいいけど、今日は買い溜めする日じゃなかった?」

 

 

 そう、今日は梁山泊一番弟子である兼一と長老が修行に出てから丁度一週間経った日。

 梁山泊では一週間に一度買い溜めをすると決まっているのである。

 そして、今日は荷物持ちである兼一はいない。よって、兼一以外の梁山泊にいる者に荷物持ちを頼まなくてはいけないのである。おまけに、仕入れ先は何の記念なのか超特売日───いつもよりも出費が少なくて済む日なのである。

 そのことを思い出した美羽はすぐに道着から普段着に早着替えし、即座に梁山泊の師匠達を招集しに離れへ向かった。

 

 

「そんなに嬉しかったのね………アイツ」

 

 

 それを見ていた霊夢は、そんなにも自身との組手に夢中になっていた美羽に呆れ半分、感心半分で見送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 買い出しの帰り道、アパチャイ、しぐれはおまけとして美羽に許可を貰い買ったソフトクリームをなめていた。逆鬼はそんなものよりも酒が好きであるし、秋雨も遠慮したようだ。尚、今回の買い出しに美羽が連れ出したのは剣星を除く全員である。剣星は残念ながら接骨院で仕事があるため、そちらの方に残った。それで、霊夢の方はと言うと、一週間も神社を空けていたから一旦戻って整理してくると、買い物途中で別れてしまった。………荷物持ちから逃れる為のうまい言い訳だ。

 

 

「しかし、兼一の奴がいねーと買い物がめんどくせーな」

 

 

「いなくなって初めてわかる弟子の便利さ」

 

 

「でも、こんだけ買い込んでおけば当分、大丈夫よ!」

 

 

「まあね」

 

 

「あれ、美羽の奴は?」

 

 

 会話に入ってこないことから美羽が近くにいないことに気付いた逆鬼は、きょろきょろと辺りを見回し、そして後方で立ち止まり、しゃがみこんでいる美羽を発見した。

 

 

「おーい、美羽!置いてくぞ」

 

 

「新しい子が来てますわ~♡あ~~~んもう♡攫って逃げたいですわ!」

 

 

 逆鬼の声が全く届いておらず、美羽は子猫に夢中になっていた。

 美羽は大の猫好きである。猫のことになれば思わず我を忘れてしまう程の猫好きである。そしてこうなってしまえば最低でも一時間はこのまま自分の世界に閉じこもるのである。

 

 

「チッ、先帰るぞ!!」

 

 

 逆鬼も舌打ちはしているものの、それは面倒臭いと言うよりもしょうがないなという諦めからきているモノであった。

 だが、美羽はそれに気付かず猫に夢中のまま。猫が歩いていく先を自身も追っていけば───

 

 

「牛乳ッ!?」

 

 

「キサラちゃんッ!?」

 

 

 ここ一週間、猫がいるところの先々で出会う猫友───南條キサラと目が合ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆──────────────◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、私が神社に戻っている間に不良共がやってきて、んでそっちの連中が命を張ってこの様と」

 

 

「初対面ですっごいドストレートに言うじゃない………」

 

 

「喧嘩に命張るのは流石にアホでしょ。それに素人の拳で人は死なないわよ」

 

 

 「大袈裟ね……」と呆れ混じりに溜息を吐きながらも包帯を巻いていく霊夢。その裏表のない正論に武田も宇喜多もたじろいでしまう。

 霊夢が誰でどういった人物なのかを美羽から聞いていた武田だったが、あまりにもその言葉がグサグサと突き刺さるモノだから参ってしまう。

 そんな時、丁度向こうからガシャンという音が聴こえてきた。霊夢はうんざりしたように向かいを見て、暴れるロングヘアーの男の方へと足を進めた。

 霊夢が神社へ戻っていた間、美羽たちはラグナレクの構成員たちに襲われていたのだそうで、それで見事勝利して退けられたのは女性陣だけだったのである。霊夢はそれを梁山泊に戻ってきた時に聞き、こうして処置を手伝わされていることを面倒に思うのだった。

 

 

「ラララララ~私は行かねばならないのです!!お放しなさい!!」

 

 

「そんなに行きたいなら行かせてやるわよ。夢の世界にね」

 

 

「ラララ、その心魂を震わせるような音色の貴女は───」

 

 

 ロングヘアーの男、ジークフリートこと本名、九弦院 響は背後から聞こえてきた妙に耳に馴染む声の方へと振り向き、突如腹部を襲う鋭い衝撃によって意識を手放した。視界がブラックアウトする寸前、彼の瞳に映ったのは面倒臭そうな顔をしていた美しい少女であった。

 

 

「よし、これで大人しくなったわね」

 

 

「おいおい……痛みを与えていないのは分かるが、患者に対して荒すぎるよ、霊夢」

 

 

「この方が手っ取り早いでしょ」

 

 

 武田は霊夢のあまりにも鋭い突きと怪我人に対する容赦のなさに固まってしまった。振り返った霊夢の表情が無であったこともその恐怖を加速させる。よって、彼は処置を大人しく受けようと誓った。

 

 

「で、どうするの?一応兼一さんの知り合いっぽいけど」

 

 

 ジークフリートを大人しくさせた後、ベッドの上に放り投げて包帯を巻いていく霊夢は、秋雨たちに問う。一体これからどうするのかと。

 

 

「そりゃあ、行くさ……ッ」

 

 

 それに答えたのは秋雨たちではなく、美羽の方で処置されたボロボロのキサラだった。これまたあの中華娘とは別方面で猫っぽいなと胸の内で思う霊夢は、キサラの方を見ながら無言で続きを促す。

 

 

「今、ラグナレクって連中と最終決戦中なんだ。まだ逃げている仲間もいる………あたしたちが駆け付けないとッ」

 

 

「医師としては許可できないね」

 

 

「立っているのもやっとの状態ね。それで一体何するね?」

  

 

「戦えないのならば………応援、するまでッ!!!」

 

 

 突如───暗闇に沈んでいたジークフリートが意識を覚醒させて飛び上がった。霊夢は確実に意識を奪った筈の男が、たった数分で目覚めたことに少なからず驚いていた。

 

 

「フレーフレー、し・ん・ぱ・く!!!」

 

 

「かなり痛い筈ね」

 

 

「無茶をする………だが、アパチャイ君」

 

 

「アパ」

 

 

 秋雨がアパチャイに頼むと、アパチャイはジークフリートが横になっているベッドを彼ごと持ち上げる。

 

 

「絶対安静のまま、応援をすると言うならば全然構わんよ」

 

 

「おいおい……」

 

 

 目を光らせながらニィと口元をつり上げて不気味な笑みを浮かべる、楽しそうな秋雨と梁山泊の男共に、美羽も霊夢も本日何度目かもわからない呆れを見せた。

 と言っても、霊夢もまた見物するつもりではあったのだから人のことを言える立場ではないのだが。

 なにせ霊夢の直感が、その決戦によって自身の今後の全てが変わってしまうと告げていたのだから。そして美羽も、兼一も。間違いなくこの先の未来で、世界を巻き込むほどの動乱が起こると───未だ一つも外れたことのない霊夢の直感が断言していたのだ。

 

 

 

 

 




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