銀河帝国召喚   作:秋山大祭り

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第13話 暗黒卿と燃える海②

 ルーンポリス湾 海上

 第零式魔導艦隊旗艦ミスリル級魔導戦艦コールブランド

 コールブランド艦橋内

 

 

 

 

 「上空の超大型飛行物体、上昇を開始っ!!グングン上がっていきます!!!」

 

 第零式魔導艦隊旗艦、ミスリル級魔導戦艦コールブランドの艦橋内で一人の若い士官が双眼鏡で燃えるルーンポリス上空を見ながら興奮を隠しきれない様子でそう叫んだ。

 

 「や…やったぞっ!!」「奴等を撃退したぞ!!」「神聖ミリシアル帝国の力を思いしったか!」

 

 艦内で歓声が沸き起こり、ある者は拍手し、ある者は隣に立つ者と抱き合い、上昇していく上空の超大型飛行物体に向けて野次を飛ばしていた。敵は明らかに恐れをなし、敗走するように見えた。自分達が先程、発射した〘アレ〙のおかげである事は明確であった。その事から見ても先程まで地に落ちていた士気が頂点に上がるのは当然の反応であろう。

 

 

 「……や……やったのか……?」

 

 「……恐らくは……」

 

 クロムウェルは額の汗をハンカチで拭きながら短くバッティスタに答える。バッティスタはまるで倒れ込む様に椅子に座る。文字通り、腰が抜けたらしい。彼もハンカチで顔面の汗の玉を拭くが傍から見てもその手は震えていた。

 

 「……全く……肝を冷やしたぞ……」

 

 

 上手くいくとは思えなかった、無論、彼等とて上手くいくように万全を期したが、矛盾している事だが単刀直入に言ってもこの穴だらけの作戦で敵の超大型飛行物体を撃退出来た事は奇跡に近かったとバッティスタは冷静に考えた。

 

 (……我々の手札が少ないとは言え…まさか、あんな物を実際に使う事になろうとは……)

 

 手元の厚いファイルに手を置く。ファイルの表には対魔帝対策庁と国防省防衛局のラベルが貼られ、更には第三者が無断で読めないように本人認証済みの特殊な魔符処理が施され、極めて厳重に扱われていた。

 

 「ウルティマ0型誘導魔光弾……まさか、この私がそんな物を使う事になろうとは……」

 

  

 

 

 〘試製ウルティマ0型誘導魔光弾〙

 

 かつて、古の魔法帝国ことラヴァーナル帝国が初めて実用化したとされる誘導魔光弾。魔導砲以上の射程と命中率を誇るとされた、この兵器を現在の神聖ミリシアル帝国の技術で何とか再現したのが、この試製ウルティマ0型であった。

 

 「しかし……如何に試作機とは言え、これ程、不安定な代物だとは思わなかったぞ…」

 

 「マニュアルでは超音速で飛行出来ると書いていますが……あれでは亜音速…エルペシオより多少、速い程度でしたな」

 

 「途中、失速して墜落しかけた時は心臓が止まると思ったぞ……」

 

 

 実際の所、このウルティマ0型は恐ろしく不安定で扱い辛い上に問題の多い欠陥兵器だった。搭載されている魔光呪発式エンジンは新型で液体魔石を使用しているが、異常過熱しやすく、誘導システムもバグのせいか終末航路が機能せず、大まかな位置にしか飛べない等、本当に実証実験を行ったのか?とバッティスタやクロムウェルは本気で疑問に思う程の物だった。

 

 「提督、魔力探知レーダー並びに魔信の不具合が直りました。いつでも使用できます。」

 

 「空気中の魔素濃度も基準値以下まで低下しました。」

 

 「そうか…それは良かった。だが、まさか、味方のレーダーや魔信まで使えなくなるとは……」

 

 魔信の通信官の報告に安堵するバッティスタ。ウルティマ0型は誘導魔光弾としての性能以外にも問題を抱えていた。

 

 

 《広域高濃度魔素波散布弾頭》

 対魔帝対策庁が次世代新兵器のテストベッドとして開発したとされる特殊弾頭である。弾頭内に内蔵された光、火、雷系統の高濃度魔素粒子を大気中に拡散・散布する事で、魔導兵器や魔力探知レーダー、魔信といった魔導装置内の術式回路に過負荷を与え、破壊する事が出来るのだ。術式回路を使用する兵器は魔導銃から魔導砲、果ては魔導戦艦や天の浮舟まで機能を停止させる事が出来、また、雷系統の魔素の性質上、科学由来の兵器にも有効という実用化できれば戦争の性質すら変えかねない代物であった。だが……

 

 

 「結果的に成功しただけの話だ……こんな危険な代物、二度と使わん…」

 

 

 魔素散布兵器自体は魔帝が既に実用化していた兵器であったが、誘導魔光弾と同様に現在のミリシアルの技術水準で完璧に再現するのは不可能だったのだ。性能は魔帝製のオリジナルとは比べ物にならない程低く、魔素の効果範囲は狭い上に、大気中に魔素が分散するのが想定よりも早い上に、魔素をばら撒くという性質上、味方の魔信や魔導兵器にも影響を与えてしまうのだ。これは魔帝製の魔素散布装置が純粋に魔力回転方式で広範囲に散布しているのに対して、ミリシアル製のコピーでは爆薬の爆発力で魔素をまき散らすという、強引なやり方で再現しようとしたからだ。

 

 「距離が離れていたのがせめてもの幸いでしたな。」

 

 「全くだ!ここまで不安定だとは思わんかった…」

 

 

 扱いづらいだけなら、まだマシな部類だった。だが、不安定で、いつ暴走するか分からない兵器等、誰も使いたくはないだろう。だが、それ以上に兵器として致命的な欠陥があった。それはコストの悪さである。このウルティマ0型を一基作るのにミスリル級一隻と同じ費用が掛かるのだ。

 元々、ウルティマ0型は実際に使う予定は無く、このコールブランドに配備されたのも、あくまで運用方法の確立を目的としたものであって、今回の航行を終えた後は対魔帝対策庁に返却され解体処分される予定であり、まさか実戦に投入されるとは誰も予想しなかったのだ。

 これらの要素からも分かるように、ウルティマ0型の使用は、あくまでも偶然が重なった末の発射であり、銀河帝国側にとってみれば極めてイレギュラーな存在だった。ベイダーの警戒は杞憂でしかなかったのだ。

 

 クロムウェルはバッティスタに向き直り、目を伏せながら謝罪する。

 

 「…閣下……申し訳ありませんでした…」

 

 「君が謝る事では無い。クロムウェル君」

 

 「しかし……進言したのは自分です」

 

 ウルティマ0型は欠陥品といっても、これまでの神聖ミリシアル帝国の魔導技術の結晶である事は間違いない。今回の無断使用を上層部、特に対魔帝対策庁は烈火の如く激怒し、責任の追及を行うだろう。そうなればバッティスタは間違いなく何らかの責任を取らざるをえない。少なくとも彼の軍人としてのキャリアは閉ざされるであろう。クロムウェルは敬愛する上官の行末に責任を感じていた。自身があんな進言をしなければ良かったのではないか?と…

 バッティスタは席から立ち、クロムウェルの肩に手を置く。いつもの厳格な表情を崩し、優しげな笑みを浮かべながら話し始めた。

 

 「君があの時、進言してくれなければ私は躊躇し、あれを使う事などできなかっただろう…目の前で街が焼かれたというのに……私は何もできなかった……」

 

 

 クロムウェルはバッティスタの目に一瞬、暗い物が見えた。圧倒的とも言える敵の強大さ。これまでの常識の通じない敵の攻撃に対して自分達は余りにも無力だった。

 

 

 「君は軍人として、当然の判断を行ったに過ぎない。」

 

 「で…ですが!」

 

 「対策庁の頭でっかち共が何を言おうとも、君が気にする必要は無い。何よりも私が許さん。」

 

 

 バッティスタは力強く言いきる。彼は自身の進退を賭けても部下達を守るつもりだった。

 

 

 

 「結果的に見れば君は大勢の市民の命を救ったのだ。寧ろその事を誇りたまえ」

 

 「閣下……ありがとうございます……」

 

 

 バッティスタの言葉に熱い物が心の中に込み上げたクロムウェルは感謝する。

 

 「クロムウェル君。まだ戦闘は終わっていない、いや、まだ、これからだ。どうか、ついて来てくれるか?」

 

 「ハッ!」

 

 

 バッティスタは椅子から立ち上がり、幕僚から渡された魔信のマイクを手にし二度、咳払いをし声を整える。コールブランド艦橋内の全ての視線が自身に集中している事を確認すると、再度、深呼吸してマイクのスイッチを入れた。

 

 

 「諸君!勇猛果敢なる貴官らの活躍の結果、見事、敵の撃退に成功した。このたびの勝利はかつて暴虐無道なる悪魔、ラヴァーナル帝国に正義の鉄槌を下し、この世界に真の平和をもたらした栄えある我が祖国の意志を明確に体現したものであり、諸君らこそが真に護国の戦士である!必ずや諸君らの奮闘に報いる事をここに誓う!今後も貴官らの無私の忠誠に期待する」

 

 バッティスタは兵士達に労いの言葉を語り、一度、深呼吸し再度、話し始める。

 

 「しかし!未だ戦闘は終わっていない!ルーンポリス市内にて同胞達が熾烈な防衛戦を強いられている!故にこれより我々は臨時であるが陸戦隊を結成しこれを援護する!!偉大なる皇帝陛下の御寝所を踏み荒らした蛮族に、二度とこのような愚かな真似をさせんように徹底的な懲罰を加えるのだ!全艦直ちにルーンポリス港へ、全速前進せよっ!!」

 

 「「ハッ!!」」

 

 

 彼の演説に応える様に各艦艇の魔信から歓声が湧き上がる。士気は充分あり、当初はバラバラだった他艦隊との連携も今では上手く、連携出来ている。だが、それと反比例するかのようにバッティスタの表情から精気が失われ酷く疲れたように椅子に深く腰掛ける。

 

 「ふぅ……」

 

 深くため息をつくと、改めて周りを見回す。クロムウェルは既に陸戦隊の編成を行いながら各艦隊の調整を行っていた。それは的確、かつ正確に行われ一切の無駄が無いものであった。思わず自嘲の笑みを浮かべるバッティスタ。自身には出来ない判断の速さと行動力に彼は内心、舌を巻いた。かつて、自分がクロムウェルと同じ立場だった時に、これだけの事が出来ただろうか?

 

 (所詮、私などその程度の器でしか無かったという事か……)

 

 

 彼は所謂、古いタイプの軍人であり今回の戦闘で、より自身の限界に気が付いてしまっていた。恐らく、この戦争でミリシアル、いや、世界はガラリと変わってしまうだろう。欠陥兵器とは言え誘導魔光弾の実用化に成功した事がその証明であろう。時代は猫の目の様に変わっていくが、変わりゆくその世界に自分の様な古い人間の場所は無いであろう。

 

 「これも…時代か……」

 

 バッティスタの独白は喧騒に静かに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん……?あれ?」

 

 最初に異変に気付いたのは戦艦コールブランドの魔力探知レーダーの担当官だとされる。彼は自身に充てがわれたレーダーの操作盤のスイッチを切り替えたりしていたが、どうにも上手くいかなかったのか、一度、再起動してディスプレイに表示された数字の羅列を見て再度、困惑気味の様子を見せた。

 

 「どうしたんだ?」

 

 「レーダーがおかしいんだ。見てくれ、あり得ない数値を出している。故障したかもしれない…」

 

 「これは……確かに故障だな。こんな数値、見た事が無い。」

 

 隣に座る同僚が声を掛け、故障したかもしれないと言う。その同僚もディスプレイを覗き見るが同様の意見を出す。コールブランドは敵機からの空襲で損傷しその上、ウルティマ0型の魔素散布弾でレーダーと魔信が先程まで使えなかったのだ。故障していてもおかしくはない。そんな中通信が入る。

 

 

 「ムー艦隊から通達、『貴国製の魔力探知レーダーにて異常な魔力体の接近を感知した。そちらでは確認出来るか?』との事です」

 

 「首都防衛艦隊所属セタンタより異常な魔力を持つ飛翔体の接近を確認したと報告が…」

 

 

 「「なっ……!?!!?」」

 

 

 操作官の兵士、二人は衝撃を受ける。コールブランドだけでなく他の艦艇でも同じ魔力を感知したのだ。これは偶然でも機器の故障でも無いのだと。

 

 「一体何事だ。何を狼狽しておる?」

 

 「報告が必要なら早急にせよ」

 

 ここで彼等の上官たるバッティスタとクロムウェルが割って入る。

 

 「失礼致しました!それが……レーダーが……」

 

 「レーダーが使える様になったのなら良いではないか。何が問題なのだ?」

 

 「そ……それが異常なのです……」

 

 「何が異常なのだ?」

 

 「……これを見てください。先程、補足した魔力体なのですが…」

 

 バッティスタは要領を得ない操作官達に苛立った様子を見せる。意を決した操作官はプリントされた用紙を差し出し説明する

 

 「速度1200キロ、小型機、位置はルーンポリス上空か…」

 

 「速度から予測するに、先程襲撃してきた小型飛行物体のようですな…」

 

 「だが、レーダーでは奴等を捉える事が出来なかった筈だ。何故、この機体だけが?」

 

 

 疑問を浮かべるバッティスタとクロムウェル。今までの敵機は魔力探知レーダーでは捕捉できず、第零式魔導艦隊を含む多くの艦隊が大被害を被っていた。何故、この一機だけがレーダーに写ったのか?

 

 

 「それが……この機体、《アンノウン》なのですが、測定された魔力が異常なのです……」

 

 「魔力が異常?どういう意味だ?」

 

 「……これがエルペシオ3の魔力です。そして、これが計測されたアンノウンの数値です……」

 

 操作官は二人に数字の羅列された用紙を見せる。怪訝な表情で受け取るバッティスタだったが、それを見た瞬間、バッティスタとクロムウェルは衝撃を受ける。

 

 

 「なんだこの数値は!?ミスリル級以上の魔力だと!?」

 

 「魔導艦隊、一個艦隊分の魔力だと!?そんな物が……!」

 

 

 新たに計測されたアンノウン、それの放つ魔力量は常軌を逸していた。明らかに小型機、いや、生物が出せる魔力ではない。

 

 「て……敵の機体はこれだけの魔力を持っているのか!?」

 

 「しかし、それでは妙です!最初に空襲を仕掛けて来た時には魔力は一切、感知されませんでした!ま……まさか!?」

 

 クロムウェルはそこまで言ってハッと気付いた。バッティスタも同じ事を考えたのか、彼が何を言おうとしたのかを瞬時に理解する。彼は重い口を開く。

 

 「まさか……敵は光翼人か?」

 

 一瞬、その場の空気が摂氏零度以下にまで落ちた様な感覚を全員が感じた。かつて、全世界を恐怖で支配した光翼人の存在。それは今も尚、彼等にとって恐怖の象徴として刻み込まれているのだ。

 

 「確か…光翼人は自らの魔力だけで天の浮舟を動かせたと…」

 

 「そんな奴等を相手に…どうやって戦えば……」

 

 「恐れるでないっ!!!」

 

 「「!!」」

 

 「敵が何者かは分からん…だが、敵が何者であれ、我々に出来る事は唯一つのみ!祖国神聖ミリシアル帝国の為に全力を尽くすのだ!!」

 

 「「ハッ!!」」

 

 バッティスタの激を受け、持ち場に戻る兵士達。目の前の任務に集中した方が蔓延しつつある内側の恐怖をある程度だが、ごまかす事が出来るからだ。バッティスタは艦橋の窓の外を睨み付けた。

 

 「…化け物め……貴様は何者なんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「感づかれたか?」

 

 自機であるタイ・アドバンスドx-1の中でベイダーは呟いた。殺気とも言うべき気か、彼のフォースが他者の濃厚な視線が自身に向けられたのを感じ取った。

 

 (この星にフォース・センシティブは居らんと思っていたが……いや…違うな)

 

 ベイダーはこの感覚がフォースに由来する物ではないと否定する。

 

 (少なくとも敵にジェダイはいない。ならば魔法とやらか?)

 

 この惑星には魔法と呼ばれるエネルギーが存在する。恐らくはベイダーが感じた様に、この魔法とやらでベイダーのフォースを向こう側も捉える事が出来るのではないか?とベイダーは考えた。

 

 「面白い……分離主義者を相手取るよりも楽しめそうだ」

 

 

 ベイダーはマスクの中で不敵な笑みを浮かべた。彼が向かう先、第零式魔導艦隊に到達までさして時間はかからないだろう。

 

 

 

 

 

 




 《ウルティマ0型誘導魔光弾》

 前話で出てきたミサイルのような兵器。原作で出ていたウルティマ1型の前級という設定。欠陥品な上に恐ろしくコストが悪い。

 《広域高濃度魔素波散布弾頭》

 魔帝製EMP兵器のような物。尚、ミリシアル側は勘違いしているが魔帝時代の使用用途は奴隷の捕獲用非殺傷兵器でそもそもミサイルに積む代物ではない。
 EMP兵器を作ろうとしたら劣化版ミノフスキー粒子みたいな兵器になった。

 
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