銀河帝国召喚   作:秋山大祭り

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防空戦 第3話

 神聖ミリシアル帝国 首都ルーンポリス

 

 「落ち着いてください!道を走らないで!」「なんなんだよ…あれはなんなんだよ!」「どけっ!道をあけろっ!」「おいっ!横入りするな!」「逃げろっ!逃げるんだよ!」「逃げろったて、どこに逃げりゃいいんだっ!」

 

 ルーンポリス上空に突然現れた謎の超巨大飛行物体にルーンポリスの住民達は完全にパニックに陥っていた。我先に逃げ出そうとする者達、魔導車に強引に乗り込もうとする者、この混乱に乗じて略奪を始める者、ありとあらゆる混乱が街を覆い尽くしていた。

 

 「落ち着いて!落ち着いて移動してください!クソっ!誰も聞いていないぞっ!」

 「西地区13ブロックで火災発生!誰かすぐに向かえる奴はいるか?!」

 「無理だ!この混雑では移動すらできない!セクター45号を向かわせてくれ!」

 「中央大通りで路面列車とバスが正面衝突する事故が発生!死傷者多数ありとの事です!すぐに応援を!」

 

 「人手が足らん…一体どうすれば…」

 

 ルーンポリス市警に勤務するルイス・ブロンズ巡査部長は目の前に広がる混乱ぶりに頭を悩ませた。突如として上空に現れた謎の飛行物体によって現在ルーンポリスは大パニックに陥っていた。混乱を鎮めるために各地に彼等のように警察官が派遣されたがうまくはいかなかった。理由は彼等の予想以上に市民のパニックが酷かったからだ。誰も警察官の静止を聞かず、それぞれが1mmでも上空の飛行物体から逃れようとメチャクチャに走り回り、そこら中で事故が頻発しているのだ。         

 なんとか郊外の安全な場所に誘導しようとするもののブロンズ巡査部長を含め8人足らずの人数に対して殺到する市民の数は数百人から数千人はおり、対処できないのである。

 

 何か良い方法が無いかと考えるブロンズ巡査部長。突然、頭上から爆音が通り過ぎていく。

 

 「あ…あれは…」

 

 巡査がその方角に目を向けると爆音で気を逸らされたのか先程まで殺気立っていた市民達もその方角に目を向ける者が現れ始めた。

 

 「あれは…エルペシオ3!我が国が開発した最強の天の浮舟だ!」

 「知っているぞ…たしか他の国のワイバーンはおろか、ムーの開発したマリンとかいう飛行機械よりも速いらしいと…」 

 「そうだっ!無敵のミリシアル軍が負けるはずがない!きっと、あいつらを追い払ってくれるはずだ!」

 

 ブロンズ巡査部長は群衆が上空を飛ぶエルペシオ3に釘付けになっているのを見て、一緒にいた警官達に指示をだす。

 

 「今だ!ガリウム巡査は13ブロックに向かえ!消防隊が来るまでかまわん!ヒーソ巡査長は部下を3人連れて大通りに応援に行くんだ!テルル巡査は本部に無線をかけ続けろ!一人でも応援が欲しい。他はここで避難誘導だ!」

 『了解です!!!』

 

 指示を出し一息つける。上空の超巨大飛行物体が何なのかは分からない。しかし自分達は市民の安全を守る警察官。ここで逃げ出すわけにはいけない。自分達にやれる事はやるだけだ。上を見上げ呟いた。

 「頼むぞ…エルペシオ3…」 

 

 

 

 

 

 ルーンポリス上空

 

 「おいおい…これは本当に現実なのか…」

 「誰か教えてくれ…俺たちは悪い夢でもみているんじやないか?」

 「隊長殿…あれは一体何なんですか?」

 「……」

 

 部下からの質問にゴール・ドグマ中佐は答えることができなかった。彼等は神聖ミリシアル帝国陸軍第1師団首都防衛隊第13戦術航空団所属ベータ中隊所属するパイロット達である。彼等にとっても目の前の光景は信じられないものであった。

 

 「魔帝だ…魔帝がついに蘇ったんだ!俺たちはもうオシマイだっ!」

 

 隊員の一人、ベータ4がそう叫ぶ。彼は信心深い面がありよく機体に乗る前に神々への祈りを捧げていた。

 

 「うるせぇっ!魔帝なんざとうに滅んだんだっ!くだらんおとぎ話なんかで喚くんじゃねぇ!!」

 

 ベータ7が叫ぶ。粗暴で豪快な性格の彼らしい発言であったが、その言葉には僅かながら震えも混じっていた。彼も内心恐怖を感じていたのだろう。

 

 「じゃあ…目の前のあれは何なんだよっ!!」

 「俺が知るかっ!」

 「なんだとっ!」

 

 「ベータ4!ベータ7!やめろ!喧嘩なんぞしてる場合かっ!落ち着けっ。」

 

 「フンッ」

 「ケッ!」

 

 ゴールは二人の仲裁に入る。喧嘩は収まったものの雰囲気は最悪だ。しかも他の隊員にも伝播したらしく険悪な空気に包まれる。その時通信が入る。

 

 「ルーンポリスコントロールからベータリーダーへ。聞けえるか。」

 

 「こちらベータリーダー。聞けえるぞ。どうぞ」

 

 「内務省より、ただ今より国家非常事態宣言が発令。ならびに国防省からデフコンがイエロー6に引き上げられた。」

 

 「なんてこった…」

 

 通信は防衛隊本部からのものであったが事態はかなり深刻なものになりつつあると彼は理解した。デフコンイエロー6は魔帝もしくは魔帝以上の外敵との戦闘が始まった事を意味するからだ。

 

 「そちらにアルファ中隊が合流する。急合わせだが上空の飛行物体に対して艦爆を行う。位置は…」

 

 飛行物体から緑色の光線が放たれるのと通信が途絶えるのはほとんど同時であった。瞬間、光線の先にあったビルが一瞬で瓦解し地表からキノコ雲が立ちのぼった。国防総省のビルのあった場所だ。

 

 「奴ら…ついに始めやがったかっ!」

 

 「クソっ!下にはまだ市民がいるんだぞっ!」

 

 だが隊員達の憤りを無視するが如く次々と光線が打ち込まれる。ゴールの心の中にも憎しみの炎が宿る。

 

 「全機っ!このまま…」

 

 だが通信は遮られる。

 『落ち着け。死に急ぐんじゃねえぞ。』

 

 声の主、それはアルファ中隊であった。

 

 「だ…だがしかし!」

 

 『落ち着きなって。第一にオタク等の機体じゃ無理だ。だが俺らの機体ならできる。そら、11時の方向だ。』

 

 その方角に目を向けると、そこにはジグラント3の編隊が飛行していた。確かに、純粋な制空戦闘機として開発されたエルペシオよりも戦闘爆撃機としての面が強いジグラント3が適任だろう。

 

 『安心しろ。敵は必ず俺たちが取ってやる。その代わり、援護は頼むぜ?何しろ俺たちは胸にバカでかいブツをぶら下げたお姫様だからよ!ナイト様!』

 『ギャハハハ!!アンタみたいなヒゲダルマのお姫様がどこにいるんだよ!隊長!』

 『おいおい…こんな状況でそんな冗談言えんのはアンタぐらいだぜ。隊長。』

 『ハハハ!聞いたかよ?歴史の教科書に載るぜ?お姫様中隊ここに見参てな!』

 『うるせぇぞ!テメェ等!査問にかけっぞ!』

 

 アルファ中隊のコントのような会話にベータ中隊からも笑いが起こる。不謹慎かもしれないがそれでも先程の険悪な雰囲気よりもマシだ。もしかしたらベータ中隊の気をほぐす為にわざとアルファ中隊は明るく振る舞っているのかもしれない。

 

 (まったく、俺もまだまだだな…)

 

 

 

 「全機聞いてほしい。」

 

 無線が静まる。

 

 「かつてこの地は光翼人が支配していた。当時、光翼人以外の種族は害虫のように這いずり回り光翼人から隠れるか、奴らの奴隷として飼われるかどちらかしかなかった。」

 

 「だが、我々の先祖、ミリシアルの民は決して屈しはしなかった。どれだけ踏み躙られようと抵抗を続けた。住処を焼かれ、大勢の命が失われても戦い抜いた。いつか必ず訪れる自由と解放の日のために断固たる意思を示した。そしてそれは間違いではなかった。我々がここにいるのが、その証拠だ。」

 

 「圧制者は必ず打ち倒される。それは歴史が証明している。現に文明を極めた光翼人達でさえも神の怒りを買い光の剣士達に敗れ時空の狭間に逃げ込んだとされる。当然の帰結だ。暴虐と搾取によって積み上げられた力など自由を求める者の意思に比べれば価値などないからだ。」

 

 「我々は決して屈しはしない!先祖達が自由のために戦い続けたように!未来を生きる子供達の希望のために!先祖から自由を与えられた以上、次の世代へと受け繋ぐ義務が我々にはあるのだ!」

 

 「戦おう!祖国のために!自由のために!名誉のために!我らの行く先に幸運の女神が微笑まん事を!光の剣士の加護があらん事を!」

 

 『神聖ミリシアル帝国万歳!!!皇帝陛下万歳!!!祖国ミリシアルよ永遠なれ!!!』

 

 

 

 演説を終え一息入れるゴール。無線に呼び出しがかかる。

 

 『なかなか良い演説だったぜ。やるじゃねえか。』

 

 「昔、本で見た内容を思い出しただけだ。大した事は言っていない。」

 

 『人前であれだけ言えれば充分さ。おかげで俺まで滾ってきたぜ!』

 

 ゴール自身、自分がこうもスラスラと言ってのけた事に内心驚いていた。だがそれとは別の事で頭がいっぱいになっていた。

 (なんなんだ…この嫌な気配は?)

 

 まるで氷でできたナイフで背中を撫でられるような感覚

 

 (誰かが見ている?一体いつからだ?)

 

 彼がその感覚、正確には殺気だと気づいたのは偶然であった動物的本能というか濃厚な敵意の視線に気づいたのはゴールだけだった。不意にその殺気が強くなった瞬間、彼は無線に怒号を上げた。

 

 「全機っ!散開せよ!太陽の中だっ!!!」

 

 言い終わると同時に思い切り操縦桿を倒し、機体をバンクさせる。しかし、一瞬遅かった。彼が先程までいた場所を緑色の光線が貫き真後ろを飛んでいたエルペシオの1機に直撃する。緑色の光線はコックピットもろともパイロットを蒸発させ木端微塵に爆発した。

 

 「クソっタレっ!ベータ4がやられたっ!」

 『アルファ7!アルファ8!』

 

 爆発四散するエルペシオ3とジグラント3。ゴールは自らの認識の甘さを後悔した。敵は首都への空爆を実行できるだけの力を持っているのだ。ならば、飛行機械のような迎撃の手段も持っていてもおかしくは無い。

 自分達が出来る事を相手はできない。自分達が考えた事を相手は思いつきもしないだろうという、固定観念、先入観、ある種の傲慢さが3人のパイロットを殺したも同然だからだ。

 

 「野郎っ!ぶっ殺してやる!」

 「ベータ7!落ち着け!」

 

 (うかつだった…俺がもっと周りを警戒していれば…)

 

 ゴールは歯噛みし飛び去っていく敵機を睨みつける。

 

 (だが、一体何なんだ?あの機体は…本当に飛行機械なのか?)

 

 敵機は4機、恐らくは小隊、分隊クラスなのだろう。垂直の板の様な翼に、ボール状の胴体とまるで航空力学を無視したような設計だ。ギラリと朝日にあてられた機体が銀色に反射する。反転し再度、攻撃を仕掛けてくるようだ。

 

 「アルファ隊!被害は?任務は続けられそうか?」

 

 『クソ…2機やられた…だが、任務は続けられる。むしろ、あのデカブツに一発ブチこまなきゃ気が済まねぇ!』

 

 「我々は迎撃のために編隊を外れる。大丈夫そうか?」

 

 『構わん!仲間達の仇を討ってくれよ!』

 

 アルファ中隊の編隊から外れるゴール

 

 「3小隊ごとに波状攻撃を仕掛ける!一気にケリをつけるぞ!ベータ7!お前が先陣を切れ!」

 

 「了解しましたっ!オラァ!ベータ8!ベータ9俺についてこい!」

 「所詮はだまし討しか使えない奴等だ!俺たちの敵じゃありません!」

 「歴史に名を残してやろうぜ!兄弟!」

 

 ゴールは敵編隊を見る。まだ距離はあり高度も自分達が高い。これは、かなり有利な位置だ。もともとエルペシオ3は一撃離脱戦法を得意としており戦闘機どうしの格闘戦は苦手なのだ。相手よりも高い位置を飛んでいる今が反撃のチャンスなのだ。

 ゴールは自分達の編隊を前衛、中衛、後衛の3つに分けた。これは、まず前衛が敵編隊をバラけさせた後に中衛が、間髪入れずに敵に打撃を与え、そして後衛が殲滅するという二段構え、いや三段構えの戦法だった。敵は4機、対してこちらは11機であり、エルペシオ3の得意な一撃離脱戦法が使える上に数でも3倍の差がある。隊員達の士気も高い。

 

 (負けるはずが無い…)

 

 「卑怯者の野蛮人がっ!20mmをブチこんでやるっ!」

 

 ベータ7は敵編隊を睨みつける。敵はだまし討ち同然の奇襲で攻撃してきた以上、性能では劣るはずだ。何よりも世界の守護者であるミリシアル軍が負けるはずが無いと彼は信じていた。だが…

 

 「ん?妙だぞ…」

 

 グングンと敵編隊は距離を詰めてくる。エルペシオと同性能もしくは、それ以下の速度ならここまで早く距離を詰められるわけが無い。

 

 「ベータ7 どうした?」

 

 「いえ…間もなく接敵します。発射用意…」

 

 そう言い終わる前に敵編隊から光線が放たれた。真正面から直撃を受けたベータ7の機体は爆散し、ベータ8の機体にも光線が襲いかかる。

 

 「うっうわぁーーー!!」

 

 パニックを起こしたのか、射線から逃れようと無防備の腹を晒したのが彼の間違いであった。胴体に直撃した光線は機体もろとも彼を原子に帰し、テーパー翼内のインテグラルタンクを貫いた内蔵されていた液体状の魔石に引火し、刹那爆散する。

 

 「バ…バカなっ!隊長!コイツらの武装、我々の魔光砲よりも射程が長いです!」

 

 ベータ9も打ち返すが有効射程距離はおろか弾丸自体が届かない為、全て徒労に終わった。逆に集中砲火を受け僚機同様スクラップに成り果てた。

 

 「い…いかん!陣形を解除!各機、散開せよ!」

 

 ゴールは生き残った中衛と後衛に散開を命じる。敵機の方が射程と威力で優っている以上、敵の射線から一刻も早く外れる必要がある。

 

 「グワッ!」

 「主翼がっ!うわぁーーー!!」

 

 中衛の小隊は散開したが遅れた2機が餌食となり撃墜される。ゴールら後衛も銃撃を受けるが、かろうじて敵編隊を撒くことに成功する。だがここでも、ゴールらは衝撃を受ける。

 

 「は…速い!速すぎる!」

 「隊長っ!コイツら、異常です!マッハで飛んでいます!」

 「あり得ないっ!あんな速度で飛べば、機体自体が持たない!バラバラになるはずだ!」

 「奴らの技術力は我々よりも優れているのか?!」

 

 それは国力、技術力、軍事力全ての分野でトップクラスだった神聖ミリシアル帝国人にとって認められない事、いや、認めて良いことではなかった。自分達の信じてきたミリシアルの優位性とはなんだったのか。

 

 「クソっ!後ろを取られた!振り切れない!」

 

 「当たれっ!当たれよっ!」

 

 「コイツら…撃っては逃げてを繰り返しやがって!」

 

 各機が入り乱れるドッグファイトになるが、ここでもミリシアル側が不利であった。数では6機に撃ち減らされ、更にエルペシオ3の苦手とする格闘戦に持ち込まれた事もあり連携を取れなくされた。

 

 「ベータ5!ベータ11!」

 

 「自分はここまでのようです…隊長、どうかご武運を…」

 

 「ベータ2!」

 

 次々と墜ちていく僚機にゴールは、何も出来ない自分自身に怒りを覚える。

 

 (なんとか…なんとか一矢報いるチャンスさえあればっ!)

 

 だが、怒りで周りが見えなかった事もあったのだろう。後方に鋭い殺気を感じた。いつの間にか彼の機体に敵機が狙いをさだめていた。

 

 「しまった!や…やられる…!」

 

 彼は自身の死を直感した。敵の攻撃は一瞬でエルペシオ3を貫いたのだ。自分も只では済まないことは知っていた。

 

 (?)

 

 しかし、敵の攻撃は来なかった。振り返って、キャノピーの後ろを見ると、そこには撤退していく敵編隊が見えた。他の僚機も僅かだが生き残っている。

 

 「一体…どう言うことなのだ…」

 

 すでにゴール達のベータ中隊は3機だけであり、対して敵部隊は無傷そのものであり、このまま攻撃を続けていけば全滅に追い込むのには簡単なはずだ。ここで撤退するのはとても不可解であった。

 しかし、彼らはその理由をすぐに知ることになる。

 

 「隊長!9時の方向から!」

 

 「何っ!敵か!」

 

 「違います!あれは…」

 

 『待たせたな!ベータ中隊の諸君!』

 

 『遅れてしまい、申し訳ない。発進に手間取ってな。』

 

 『我らトルキア王国騎竜隊もいるぞ!』

 

 そこにはエルペシオ3〜2、ジグラント3〜2にムー国のマリン、そしてワイバーンの大部隊が迫っていた。

 

 『我々はデルタ中隊だ。カン・ブリッドからスクランブル発進で急遽応援に来たが…あんな物を見る事になるとはおもわなかったぞ。』

 

 『ムー国陸軍第23航空旅団ラ・ファール大佐だ。超巨大飛行戦艦にマッハ1で飛行する戦闘機など正直、今でも信じられん…だが、この世界にとって脅威である事は変わらん。我らムー国軍も全力で戦うぞ!』

 

 『奴らがどれ程の力を持っていようと、そんな事は関係ない!危機の友邦を救わずしてなんの為の騎士かっ!彼奴らに我らの意地を見せてくれよう!』

 

 続々と集まる戦闘機やワイバーン達にゴールは感激していた。自分達は決して孤独ではない。半ば折れかかっていた心が満たされていくのを感じた。

 

 「す…すごい…エルペシオとジグラントだけで100機近くはいますよ!」

 

 「ジグラントは爆装しているようだ。最新型のエルペシオ3もいる。ワイバーンやマリンも含めれば300機はいるな…これだけの味方がいれば、もはや恐れるもの等無い!」

 

 もはや2機に減った自身の中隊 だが、決して無駄な犠牲では無かった。自分達の努力は報われたのだとゴールは思った。

 

 (お前たちの事は決して忘れん…どうか安らかに眠ってくれ。)

 

 先に逝った戦友達への祈りを捧げ、ゴールは部下に指示を出す。

 

 「ベータ2!ベータ12!俺の後ろに付け!まだ戦いは終わっていないぞ!」

 「了解!」「了解しました!」

 

 「このまま敵艦に…」

 

 ゴールが指示を出している最中に突如、無線の呼び出し音が鳴り響く。

 

 「こちら、ベータリーダーだ。一体な…」『こちらアルファリーダー!!!聞こえるかっ!!』

 

 無線の相手は、先程別れたベータ中隊だった。

 

 「アルファ中隊か?喜んでくれ。今から応援に向かう。ありったけの味方もいるぞ。」『それどころじゃねえっ!緊急事態だっ!』

 

 

 

 彼らは知らなかった。今までの戦闘も犠牲もまだ、序盤にすら至っていないという事も。

 

 

 

 『さっきの1つ目共がウジャウジャと敵艦から出てきやがったっ!!推定されるだけで100!いや200はいるかも知れんっ!気をつけ……』

 

 ブツリと無線が切れる。ベータ12が無線に割り込む。

 

 「た…隊長!9時の方向です!敵艦の方角から何かが…」

 

 

 彼らの地獄はまだ、始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 デヴァステイター艦橋

 

 「第2次攻撃隊、発進準備完了です。いつでも出撃できます。」

 「第3次攻撃隊、ボマーへの換装が遅れています。プロトン爆弾の積み込み完了は後10分かかります。」

 「ダメだ。後5分で終わらせよ。」

 

 士官や艦橋要員が慌ただしく出撃の準備をする中、ベイダーは艦橋からルーンポリスの街並みを見下ろしていた。あちこちから黒煙が立ち昇り、その黒煙を撃ち抜くようにカラフルな弾幕が放たれる。ミリシアル軍の対空砲火だ。無論、射程外に浮遊しているため砲弾がスター・デストロイヤーに当たることは無い。僚艦のヴィクトリー級リベンジャーが放ったターボレーザーがビルごと対空陣地を吹き飛ばす。ビルが根本から崩れ、一瞬、黒煙が灰色の雲に変わった。

 

 「ベイダー卿 我が方の第1次攻撃隊が敵部隊と接敵しました。後続もいつでも発進できます。ご指示を。」

 

 ベイダーはホロテーブルの前に立ち指示を出す。

 

 「第2次攻撃隊は第1次攻撃隊を援護しつつ、敵対空砲火を撃滅せよ。第3次攻撃隊は敵地上戦力、ならびに重要施設を殲滅せよ。制空権を確保した後、陸戦隊を降下上陸させ、一気に制圧する。異論は無いな?」

 

 「ありません閣下。」

 

 「よろしい。私のタイを用意せよ。直接指揮をとる。艦隊の指揮は任せるぞ。大佐。」

 

 「ハッ 了解いたしました。」

 

 

 

 双方の思惑が入れ乱れる中、戦いは新たな局面を迎えつつあった。

  

 

 

 




 ようやく、戦闘回を書けました。自分としてはかなりの難産です。
 感想よろしくお願いします。

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