銀河帝国召喚   作:秋山大祭り

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 秋山です。ストームトルーパーをメインに投稿したいと思って書きましたが、まとめきれないので、後編に投稿します。


第6話 ゼノスグラム国際空港攻略戦 前編

 ルーンポリス近郊 ゼノスグラム国際空港

 

 世界の首都とも称されるルーンポリスに建設されているだけあって、あらゆる文明圏、国家、都市から人、物資が出入りする、ルーンポリスの玄関口とも言える場所であった。その規模と設備は、5000メートルを超える滑走路に複数のターミナルに、ゲルニカ型旅客機が何十機も入るハンガーを数え切れないほど建設する等他の文明圏と比べれば、まさに規格外の物であった。

 しかし、そのミリシアルの顔とも言えるゼノスグラム空港は今では、無残な様相を呈していた。この世界で最大とも言われる滑走路には、まるで隕石が落ちたクレーターの様に陥没しており、中心部は今尚、溶けたアスファルトが火山の溶岩の様にドロドロに渦巻いていた。スターデストロイヤーのターボレーザーを撃ち込まれた結果である。  

 滑走路を破壊された事でミリシアル軍は天の浮舟を発進させる事が出来なくなり、制空権の確保が困難になりつつあった。

 

 

 

 「土嚢をもっと持ってくるんだっ!これでは足りんぞ!」

 「道を開けろっ!対空砲弾を山積みしてんだ!」

 「車を並べてバリケードにするんだ!何処からだと!?不法駐車してんのが、いくらでもあんだろうがっ!!」

 

 空港のターミナルや駐機場ではミリシアル軍の兵士達がイクシオン20mm対空魔光砲や、アクタイオン25mm対空魔光砲を設置し、ゲートにバリケードを作り帝国軍の侵攻に備えていた。

 

 そんな中、慌ただしくハンガーに軍用魔導車(ジープの様な軍用車)が飛び込んでくる。何事かと驚く整備兵達だったが、降りてきた人物達を見て敬礼をする。彼らは航空兵 全員が士官だったからだ。駆け寄ってくる中尉の階級章を付けた若い士官が遮る。

 

 「敬礼はいい!すぐに飛ばせる機体はあるかっ!?」

 

 「ハッ 中尉殿 2番格納庫に、エルペシオ3にありますが…しかし滑走路が…」

 

 整備兵は言葉を詰まらせる。だが、その中尉は彼に指令書を差し出し、読むよう促す。

 「こ…これは…なるほど…噂には聞いていましたが…」

 

 「滑走路が破壊された場合、高速道路を滑走路の代用にするなんて悪趣味な都市伝説ぐらいにしか思っていなかったが本当の事らしい。」

 

 「分かりました。直ちに、機体を移動させます!」

 

 

 

 「魔術回路起動開始!」「冷却術式展開!」「仰角、方位、良し!」「砲弾、装填完了!」

 

 「砲弾の数は足りているか?B-2ハンガーの守備隊と連絡がつかん…誰か見に行ってくれ。」

 

 駐機場に建てられたテントの中で、クレスト・ハウスマン大尉は地図を見ながら、部下達に言った。ゼノスグラム国際空港での防空任務に駆り出された彼らは、対空魔光砲陣地の設営を行っていた。

 

 「魔信はどうなっている?本部から、まだ届かないのか?」

 

 「それが…いまだに、連絡がつきません…」

 

 「まったく…連絡すら取れんとは…」

 

 魔導通信が使えなくなり、彼らはその対応に追われていた。

一応、軍用の高性能で出力が高い物や、近距離であれば通信できるが距離が離れたり、民間向けの廉価版や小型の携帯魔信では使い物にならなくなっていた。

 

 「せめて、本部との通信手段だけでも確保したい。魔信ケーブルはどうなっている?」

 

 「ケーブルは届いたのですが…」

 

 「どうした?何があった?」

 

 「長さが足りなくて…」

 

 (まったく…これだ…上も何を考えているんだか…)

 

 通信が傍受されている事を恐れた軍上層部は、通信手段を無線から有線に切り替える事を指示していた。有線式は無線式よりも旧式の枯れた技術であったが、その分信頼性は高く、通信を傍受される心配も無い。また、民間の魔導通信システム自体が一気に使えなくなった事も大きい。情報によれば魔信中継局や送魔塔が爆撃で破壊されたらしく、軍用の魔信も、今の所は無事らしいが予断を許されない事態に追い込まれているらしい。

 

 

 (とは言っても、無線が使えないと言っても、いきなり全ての通信を有線に切り替えるなんて不可能だぞ…)

 

 現に、現場では混乱が起きている。いきなり戦争が始まり、しかも首都への攻撃を許す事態になっているという、今までの常識では考えもしなかった事が連続して起こり、兵士達は精神的にかなり参っていた。

 装備や備品、弾薬といった必要最低限な物資も、まるで足りず、運搬しようにも主要な道路が破壊されており、前線に物資が届かなくなっていた。

 

 「失礼します!ハウスマン大尉は居られますか!!」

 

 「私だ。どうしたんだ?」

 

 「ハッ 司令官閣下より、直ちに出頭せよとのご命令です。お迎えに上がりました!」

 

 クレストは内心、頭を抱えたくなった。ただでさえ、忙しいのに出頭せよだと?大方、物資や兵器の配備状況の報告であろうが本来、魔信が使えれば5分で済む内容なのに、わざわざ司令部まで赴かなくてはならないのは、かなり厳しい問題だった。現場から、指揮を取れる者が、いちいち離れなければならないからだ。

 

 「…分かった。表に魔導車があるのか?」

 

 「ハイ!直ちに、お連れしろとのご命令でしたので!」

 

 早めに済ませてしまおう。そこまで時間は掛からない筈だ。

 

 

 

 

 ターミナル屋上に設置されている取水塔の影に《ソレ》はいた。クレストを乗せた魔導車がテントから離れていくのを

確認すると、その特徴的なセンサーアイを別の場所に向ける。高速道路にエルペシオ3が並べられ、出撃の最終段階に入っていた。

 

 「…!………!……!、…!」

 

 機械的な音声を上げ、センサーアイを拡大し、エルペシオの位置と数を記録していく。

 

 「………!…、……!……!」

 

 偵察し終えたのかスラスターを吹かして浮遊し、マニピュレータアームが地面から離れる。音も無く空中を漂うように飛ぶ姿は、この惑星の住民から見れば、海中を泳ぐクラーケンのようにも見えただろう。無論、《ソレ》は生物では無い。そもそも、この星で作られた物ですら無いのだ。

 

 《ヴァイパー・プローブ・ドロイド》

 それが、このドロイドの名である。リパルサーリフトと強力なセンサーを装備しており、今回の惑星の偵察に先見隊として送られた1機であった。

 プローブドロイドが離れていくのに気づく者は、誰一人もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 ビルの谷間を木々をシェンは自機であるタイ・ボマーで駆け抜ける。ドロイドからの情報では空港には、かなりの数の敵戦力が存在しており、地上部隊にとって脅威になるとの事であった。

 

 「………」

 

 超低空で飛ぶ彼の眼の前、正確には地平線上に目標であるゼノスグラム国際空港が迫ってきた。途端に滑走路脇や、施設のあちこちから、カラフルな弾幕が撃ち出される。弾丸がボマーの、すぐ近くを掠めるが彼は一切、動じない。下手に回避運動をすれば、逆に直撃を受けやすい。

 何よりも、この程度の攻撃等、彼にとってはパーティーのクラッカー程度にしか感じなかった。惑星ミンバンでは、当時所属していた部隊が彼以外全滅し、彼自身も撃墜され、2週間近く荒野を彷徨った。モー星団のパトロール任務の時は海賊の奇襲を受けて、危うくブラックホールに吸い込まれそうになった。今まで、生き残れたのは奇跡に近いだろう。しかし、代償は大きかった。彼の身体の大部分はサイバネティックスで強化されている。幾度も墜落し、死にかけたからだ。

 信頼する仲間の前でも焼け溶けたヘルメットを外さない事から見ても明らかであろう。

 

 自身に弾幕が迫る中、マルチロックオンシステムを起動する。HUDに表示された対空砲や管制塔を火器管制装置がロックオンしていく。

 

 「死ね。帝国のために。」

 

 刹那、ボマーのウェポンパックから震盪ミサイルが連続して発射された。その数、16発、イクシオン20mm対空魔光砲がミサイルに向けて弾幕を張るが接近するミサイル群に、なんら影響を与える事は出来なかった。

 魔光砲陣地が吹き飛び、イクシオン20mm対空魔光砲が操作していた兵士ごと地上の花火と化した。管制塔が職員諸共、木っ端微塵に爆発し、ハンガーの扉を貫通した一発のミサイルが中で、整備されていた、エルペシオとジグラントに直撃し、整備兵ごと跡形もなく、爆炎を上げた。

 本来なら、妨害電波やジャミング等で放たれたミサイルが、全弾そのまま目標に命中する事はあり得ない。しかし、ミリシアル側にそんな物を用意する事など、できるはずもなくミサイル群は全弾命中したのだった。

 

   

 「なんだっ!?敵襲か!?」

 

 突如、鳴り響く爆音と振動 エルペシオのキャノピーから外を見ると、空港の各所から爆炎が上がっていた。管制塔が松明の様に燃え、ハンガーや倉庫からも黒煙が昇っている。

 一瞬、遅れて爆炎が上がり、駐機場からも黒煙が上がる。黒煙に混じって魔光砲の砲身らしき物が見えた。

 

 「くっ…もう、こんな所まで敵が…!」

 

 機体が地面から離れ、ランディングギアを収納する。一瞬浮遊感を感じながら再び、外を見る。

 

 「仇は取るぞ…」

 

 決意を滲ませ、前を向いた瞬間、彼の肉体は分子レベルにまで分解され、その意思諸共この世から完全に消滅した。残された彼のエルペシオも、真っ二つにへし折れ、地上に叩きつけられ爆発炎上した。上空から、1機のタイ・ストライカーが飛び去る。

 

 「この状況下で離陸するとは勇敢だな。だが、俺達の敵ではない。悪く思うな」

 

 ストライカーのコックピットでグレイは呟く。敵とはいえ離陸直後の機体を撃墜するのは彼自身にも思う事はあった。しかし、ここは戦場であり自分達は兵士である。一瞬の迷いや躊躇が自身や仲間を殺す事になる。

 

 「中尉がやられた!」

 「クソっ!隊長の仇を打て!」

 「奴を殺れっ!撃ち落とすんだ!」

 

 後続の部隊、エルペシオとジグラントの混成部隊がグレイのストライカーを目指して、速度を上げる。隊長を目の前で撃墜された事もあり、彼らは激昂し冷静さを欠いていた。もう少し冷静でいれば結果は変わっていたかもしれない。

 

 「グアッ!!」

 「うぐぅっ!」

 「ガッ…!」

 

 後方から飛んできたレーザーに次々と撃ち落とされるエルペシオとジグラント

 

 「この程度か?」

 

 「後ろに目をつけろとアカデミーで教わらなかったのか?」

 

 後方からソルとヴォンレグが次々と、あっという間にエルペシオとジグラントを撃墜する。彼らは自分達が落とされた事に気づく間もなく全滅した。

 

 「シェン 残弾はどうだ?」

 

 「ミサイルは今ので使い切った。プロトン爆弾が一発だけだな。」

 

 「よし。あの滑走路を頼む。ソル ヴォンレグ 敵の掃討に当たるぞ。」

 

 「了解した。」「了解だ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「基地が…天の浮舟が…」

 

 「お…俺の部下達が…」

 

 クレストは目の前で起きた事に、未だに信じられなかった。クレストは司令部に向かうため、魔導車を降りた後、空港内のターミナルに続く渡り廊下を渡っていた所だった。

 

 丁度、空港の駐機場や滑走路が見渡せる場所に差し掛かかった時に、空襲警報が鳴り響き、何事かと空を見上げと見た事の無い双胴の機体に、味方の対空魔光砲が弾幕を張っていた。

 (1機だけ?偵察機か?)

 

 そう訝しんだ矢先、突如その機体から白煙が吹き出した。

 

 「呆気ないな。まぁ我々の対空魔光砲の敵ではないか。」

 

 白煙が吹き出したのを魔光砲弾が直撃したのだろうと、クレストは思った。毎分350発の高レートを誇るミリシアル製対空魔光砲にかかれば、どんな敵が来ようとも迎撃できると確信を持っていたからだ。

 しかし、彼の予想に反して、その双胴の機体の白煙はすぐに霧散し、代わりに光の鏃の様な物体が自分達に向けて飛んできたのだ。

 

 「なっ…なんだあれはっ!?」

 

 光の鏃はまるで自ら、意志があるように魔光砲の弾幕を抜けると、ある物は管制塔に、ある物は魔光砲陣地にと、まるで吸い込まれる様に、次々と目標を破壊していった。

 

 「バ…バカな!誘導魔光弾だと…!」

 

 「誘導魔光弾?それはなんですか?!」

 

 「軍で研究中の新兵器だ…噂ではかつて、魔帝が開発した物らしい…」

 

 「ま…魔帝が!」

 

 「そうだ…だが要求される技術レベルが高すぎて、未だに実用化出来ていないらしい…それを実戦で投入してくるとは…」

 

 クレストは驚愕する。世界の最先端を行く神聖ミリシアル帝国でも実用化されていない兵器である誘導魔光弾を間近で見せつけられたのだ。クレストは酷い悪夢を見ている様な気分になった。だが、彼らミリシアル兵の悪夢は終わらない。

 敵の飛行機械は離陸したエルペシオを鎧袖一触の如く蹴散らすと、地上に残っていた魔光砲陣地やバリケード、ハンガーや駐機場にあった、天の浮舟を次々と攻撃し始めた。

 魔光砲陣地に機銃掃射をかけ、駐機場に停車していた魔導車や旅客機型ゲルニカに爆弾らしき物を落とし、スクラップに変えていった。重火器を失ったミリシアル兵の多くは空港のターミナルや残骸に隠れるが、中には果敢にも小銃や拳銃で反撃する者もいたが、高速で飛び回る飛行機械相手には蟷螂の斧に過ぎなかった。

 

 

 

 「対空砲は粗方潰したな。」

 

 「レーダーに敵影は無し。我々に出来る事は、もう無いな。」

 

 「スターデストロイヤーに戻るぞ。燃料がもう無い。」

 

 「エネルギーやミサイルも積まんとな。」

 

 スターデストロイヤーに帰還する途中、揚陸部隊とすれ違いになる。センチネル級強襲上陸艇やゼータ級、ラムダ級シャトルて構成された大部隊だ。

 

 「掃除は終わった。後は頼む。」

 

 『タイタン中隊へ 感謝する。後の事は我々に、任せてくれ。』

 

 

 

 

 

 薄暗いキャビンの中、白銀の装甲服に身を包んだ兵士達はそれぞれの想いを抱きながら、ハッチが開くのを待っていた。闘志を滾らせる者。隣に立つ仲間に、共に生き残ろうと声を掛ける者、神への祈り(フォース)を捧げる者。

 ハッチが開いた瞬間、自分達は死んでいるかもしれない。各々が自由に使える時間はもはや無い。ただ、勝利する為に。生き残る為に。

 

 

 

 『諸君!朝だ!戦争の時間だ!皇帝陛下の為に敵を殺せ!』

 

 

 

 

 

 


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