ウマ娘で爆発しただけの妄想を書き連ねるとこ   作:彗星メテオ

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タキオンの.1話も考えましたがとりあえず仕上がってたこっちにしました
.1話を書くかは気分です


3:エアグルーヴ

「こっちの整理終わったよ。ほかに手伝うことはある?」

 

「感謝する。もう今日の業務は私の手元のもので終わりだ、先に上がっていいぞ」

 

「そっか、まぁもう遅いし……寮まで送るから、待たせてもらってもいいかな?」

 

「ああ……わかった。すぐに終わらせる」

 

 ドリームトロフィーリーグへの挑戦も終わり、レースはもう引退した。だが卒業まで生徒会の仕事は終わらない。

 それはいいのだが……なぜか私の専属トレーナーだったこの男は、現役の頃と変わらずいつまでも生徒会の業務を手伝ってくれている。私としては、まぁ何年も続けているためそこそこ手際が良いし助かるのだが……。

 

「……貴様、きちんと次のスカウトに向けて準備しているのか?」

 

「へ? あーまぁ~ほどほどに?」

 

「フン……。『女帝のトレーナー』という肩書に胡坐を掻くような真似はするなよ」

 

「ははは……。勿論だよ」

 

 パッとしない表情を浮かべながら『はは……』と視線を外すトレーナー……いや、()トレーナーか……。ペンを持つ手に力が入る。

 これは煮え切らない態度への憤りなのか、それとも……。

 

「ならいい。貴様は優秀なトレーナーだ。その才能を腐らせることの無いようにな」

 

「……ありがとう」

 

 

 ──────

 

 

 残りの書類を片付け、寮へ帰る途中。

 

「おい」

 

「何?」

 

「さっきは業務に集中するため流したが……貴様、さてはスカウトに向けて動いていないだろう」

 

「うっ……」

 

「はぁー……。さっきも言ったが貴様の才能は学園に必要だ。専属と言わず複数人、いやチームを受け持ってもいいぐらいだろう」

 

「いや~それほどでも……」

 

「茶化すなたわけが! 何か理由があるのか? ……もう解消したとはいえ共に歩んできたパートナーだ。私でよければ話なら聞けるぞ」

 

「あ~……」

 

「……話せないのか?」

 

「うぐっ!? ダっダメだ! 話せない……ごめん……」

 

「そうか……」

 

 私にも話せない理由なのか? ……もう今は深く首を突っ込んでいい関係では無くなったとわかっていても、どうしても気になってしまう。

 そんなモヤモヤを抱えたまま、気が付けば寮の前に着いていた。

 

「ん、ではまた明日。夜更かしするなよ」

 

「あ、ああ。また明日……」

 

 寮の玄関をくぐってから、引退してからもずっと『また明日』と言って別れていることを思い出した。もはやトレーナーと担当という関係すら無くなったのに、なんだか不思議なものだ。

 だが、この『また明日』がいつまでも続けばいいなと、思っている自分もいる。なんだろうな、この気持ちは……。

 

 

 ──────

 

 

 エアグルーヴの……あんな悲しそうな上目遣いを見せられて、思わず口を滑らせるところだった……。

 でもダメだ、早くこんな気持ちは断ち切って次へ進まないといけない。いけないんだ……。

 

 

 ──────

 

 

 あれから二か月ほど経ち、心地よい気温から少しづつ暑さを感じるようになってきたころ、新入生たちが多く走っているトレーニング場へ見回りも兼ねて足を運んだ。

 

「む、貴様」

 

「エ、エアグルーヴ。見回りかい?」

 

「ああ。……なぜそんな挙動不審なんだ?」

 

「いや! 何でもないよ!」

 

 と言って双眼鏡を再び覗き始めた。……まぁスカウトに意欲を見せ始めたのは良いことだ。

 そう思いつつ、彼のそばに立ち新入生たちを眺める。簡易の観客席やグラウンドのそばには、新入生たちの下見に来た他のトレーナーも見える。

 私も有望な新入生がいるかと観察していたのだが……。

 

「貴様。さっきから集中できていないな?」

 

「えっ!? そ、そんなことないよ。うん」

 

「私の目は騙せんぞ……」

 

 はぁ……ダメだなこれは。

 

「来い! たわけが!」

 

「わっちょっ!? エアグルーヴ!?」

 

 

 ──────

 

 

 ついに我慢できなくなり、何度も足を運んだトレーナー室に引きずり込んだ。

 そして奴を椅子に座らせ、その前に仁王立ちする。

 

「……私の言いたいことはわかるな」

 

「はい……」

 

「どうして貴様ともあろう男がスカウトに尻込みしているのか、今度こそ理由を聞かせてもらおう」

 

「それは……」

 

 彼の口から二の句は出ない。

 

「貴様はこの女帝をここまで導いた立派なトレーナーだ。声を掛ければ大半の生徒は貴様との契約に喜んで判を押すだろう」

 

「…………」

 

「……貴様がスカウトに乗り出せないのには、私にも責任の一端があるのではないか?」

 

「そんなことはない!」

 

 うつむき縮こまっていた奴が急に立ち上がり声を張り上げ、私の目を見る。

 

「うぁ……ごっごめん! 急に大声出して……」

 

「いや……構わん。だが……」

 

 そんな反応を見せられては……ますます……。

 

「やはり、私のせいなのだな?」

 

「やっ……。う……」

 

「私の成績は『うまく行き過ぎた』とでも? 私は女帝として当然の結果を残しただけだ。だが、それは私だけでは成しえなかった事。貴様の働きあってこそだということは誰の目から見ても明らかだろう? 大丈夫だ。実力はこの女帝がいくらでも認めてやろう。だから──」

 

「違うんだ」

 

 なぜだかわからないが言葉が止まらなかった。女帝に縛られているのであろうこの男に、苛立ちと申し訳なさとが噴き出してしまったようだった。そんな私の言葉は、彼に遮られた。

 

「……というと?」

 

 いつになく真剣な目で、私を見つめる彼。そして彼の口から出た言葉は──

 

 

 

「好きだ。エアグルーヴ」

 

「…………は?」

 

 思わぬ言葉に情けない声が漏れてしまった。私の学園生活で過去一番間抜けな顔をしていただろう。

 

「君のことが好きだったんだ。でも、勿論押し込めなきゃいけない気持ちだと思って……ずっと隠してた。でもやっぱり隠し切れなくて、毎日のように君の手伝いをしたりして……」

 

「……」

 

「スカウトすることに迷いがあったのも、ほかのウマ娘を受け持ったら本当に君から離れることになってしまう気がして……。それが嫌で」

 

「まてまて待て! つ、つまり引退しても手伝ってくれていたのも? ずっと悩ましい顔でスカウトについて考えていたのも?」

 

「君が好きな気持ちと折り合いをつけられなかったからだ。……失望、したよね」

 

「いっいや! 待て! 失望などしていない! していないが……!」

 

 私の事が好き……好き、だと!? このたわけは何を言って……。

 

 だが、

 

「むぅ…なんだ、その。わ、悪い気はしない……」

 

「!!」

 

 ……違うな

 

「……いや、私も貴様のことが好き……なのだろう。二人でいる時間は、トレーナーと担当という関係が変わっても、ずっと続けばいいと思っていた」

 

「エアグルーヴ……」

 

「新しい子をスカウトしても、私がここを卒業しても……。貴様と……あなたと一緒に居たい。そう思う」

 

「エアグルーヴ!」

 

「のわっ!?」

 

 私の答えがよほど嬉しかったのか、涙を流しながら抱き着いてきた。まったく……このたわけが。

 

「……卒業まで、待っているからな──」

 

 

 ──────

 

 

「久しいな、エアグルーヴ」

 

「会長……あっ、いえ」

 

「ルドルフでいい。もう会長と副会長という間柄ではないのだ。肩肘を張る必要もないだろう」

 

「……はい。ありがとうございます、ルドルフ」

 

 ~~~~

 

「それにしてもエアグルーヴ、君は卒業式のジンクスが増えたのを知っているか?」

 

「……まさかとは思いますが」

 

「そのまさかだよ」

 

「……はぁー」

 

 ルドルフから教えられたジンクスとは、『卒業式の後校内でプロポーズしたトレーナーと卒業生は末永く結ばれる』といったものだ。そしてもちろんその発祥は……。

 

「それにしても、君たちの場合は凄かったな。人でごった返す三女神像前での突然のプロポーズ」

 

「やめてください……。冷静になってから非常に恥ずかしい思いをしたのですから……」

 

「そうか? そのまま彼にエスコートされて、いつの間にやら停まっていたリムジンで去っていく様子は非常に様になっていたぞ」

 

「うっ……。まぁ、彼が頑張って諸々準備してくれていたのは嬉しかったですが……」

 

「ふふっ。そんな君たちに憧れるカップルが多くいるというだけの事さ」

 

「恐縮です……?」

 

「それに、『女帝』とそのトレーナーがきちんと段階を踏んで交際してくれたおかげで新人トレーナーの離職率が下がったようだぞ?」

 

「聞きたくないような気もしますが……それはどうしてです?」

 

「常々私たちウマ娘は、こと恋愛事となると掛かりがちな生き物だ。『皇帝』たる私とて例外ではない」

 

「はぁ……」

 

「だが生徒会副会長かつ『女帝』エアグルーヴが、『学生時代から清い交際をしていた元専属トレーナーと卒業と同時に結婚』なんていう憧れも憧れのシチュエーションで卒業してしまったからな」

 

「なる……ほど……?というより交際していた事実を漏らした覚えはないのですが」

 

「…私の目から見てもなかなかイチャイチャしていたぞ?」

 

頭を抱えるしかない。

 

「まぁ、冷静に考えれば当然の話だ。生徒と教師でもある間柄で義理を通すなら、卒業までしっかり待つべきだろう。お互いにな」

 

「そうですね……」

 

「それを君たちが身をもって示してくれたのだ。それを見て、頭では分かっていたウマ娘たちも、ようやく気持ちにもブレーキをかけてくれるようになったということさ」

 

「喜んでいいのでしょうか……」

 

「複雑だろうが、君たちが示した道のおかげで不幸になる人もウマ娘も減ったと思えば、素直に喜んでもいいのではないかな?」

 

「……それよりも、今の話から察するにトレーナーの離職の原因がウマ娘側ばかりにあるような気がするのですが」

 

「……そこはまぁ、うん。ご愛嬌というやつだ」

 

「はぁ……」

 

 

 ──────

 

 

「ただいま」

 

「おかえり!」

 

「なんだ貴様、まだ起きていたのか? 遅くなると言っただろう」

 

「やっぱりエアグルーヴと一緒に寝たくて……とか言ったら怒る?」

 

「ふっ……たわけが。怒るわけがないだろう? 待っていてくれて嬉しいぞ」

 

 ~~~~

 

「貴様の過剰にロマンチックなプロポーズのおかげで、学園のジンクスになってしまったようだぞ」

 

「本当? まぁ、女帝サマに喜んでもらうにはあれぐらいしないとって思ったからさ」

 

「このたわけ! 滅茶苦茶恥ずかしかったぞ?」

 

「ごめんごめん……。でも、あれくらいしても足りないくらい嬉しかったんだ。エアグルーヴと一緒に居られることが」

 

「……ああ。私もだ。こうして寝食を共にし生きてゆけることが、何よりも嬉しい」

 

「エアグルーヴ……」

 

「んっ……。ふふっ。…おやすみ、あなた」

 

「うん、おやすみ。エアグルーヴ…」

 

 

 軽くキスをしてそのまま眠りにつく。こんな幸せな日々が、いつまでも続くことを願いながら。

 

 


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