海底軍艦南進す~Atoragon 2013~   作:わいえす!

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1963年に公開された東宝映画『海底軍艦』が元の作品です。
世界観は拙作『怪獣の方舟~The Earth of Monster~』と同一ですが、同じキャラクターは登場しないと思われるので悪しからず…


プロローグ~1963~

かつて、ムー帝国と呼ばれた国があった。

太平洋にて絶大な力を誇ったその国は、自らの大陸と共に海底に沈んだかに思えた。

しかし、僅かに生き残ったムー帝国人は再び人類の頂点へ返り咲く為に地上へと侵攻を開始した。

時に1963年。

当初、ムー帝国の高度な技術力は地上のそれを上回り、各地に多大な被害を与えた。

しかし、人類が反撃に転じ始めると元の国力で劣るムー帝国は各地で敗退を始め、南海で旧日本軍人達が建造した轟天号が投入されるとその差は歴然とした物になった。

 

ムー帝国は最期の時を迎えようとしていた。

 

太平洋上

「本艦はこれよりムー帝国を離脱する。後進一杯」

潜水艦らしい窓一つ無い発令所の中で艦長の神宮寺大佐の命令一下、轟天号は()()()()()()()()()から離れ始める。

水深数千メートルの海底に存在し、マンダと言う巨大な守護怪獣のいるムー帝国の本拠地へ直接攻撃を仕掛けるのは不可能と言えた。しかし、神宮寺大佐率いる轟天建武隊によって建造された轟天号は深海の水圧に耐え、迫り来るマンダを撃退し、遂にその本拠地へたどり着いたのである。

艦首に付いたドリル型衝角で岩盤と隔壁を貫き内部へ侵入した轟天号の次の任務は陸戦隊による破壊工作と、工員や人質として囚われていた地上の人間の救出であった。

ムー帝国に侵入する以上の困難が予測された任務は思わぬ、そして嬉しい誤算が発生した。人質達が独自に行動しムー帝国の女王を逆に人質として脱出を図っていたのである。彼等と無事に合流した陸戦隊は女王からの情報を元にムー帝国の心臓部とも言える発電所に爆薬を仕掛け、轟天号は脱出をしたのである。

 

「右舷からうなり声のような物を聴知。例の怪獣と思われる。」

「…マンダじゃ!マンダが貴様らに罰を与えに来たのじゃ!」

ソナーを担任する水測員からの報告に女王が叫ぶ。多くの乗員が詰める轟天号の中で唯一のムー帝国人である彼女の叫びはヒステリックに、そして寂しく響くだけであった。

「ならば、奴に我々を罰せられるか試されようではありませんか。」

「……!無敵じゃ!我がムー帝国も!我らのマンダも!」

神宮寺の挑発とも取れる言葉に女王は青筋を立てて反論する。彼はそれには答えず、合戦準備と命令を出した。

轟天号は回頭を行い、艦首をマンダに向けようとする。しかし、マンダはそれよりも速く轟天号の背後に回り込むと艦に絡みついて押し潰そうとする。その衝撃で艦内の座っていない者や咄嗟に何かを掴めなかった人間は皆飛ばされた。ムー帝国が如何に偉大かを説法していた女王も同様で、バランスを崩すと発令所の壁に後頭部をぶつけて失神してしまった。

「耐圧電流、攻撃始め。」

巻き付かれた衝撃の中、神宮寺は反撃の指示を下す。すると艦の外壁に電流が走り、体を密着させていたマンダにもその電流が襲いかかる。怪獣故か、マンダが感電死することこそ無かったが、電流から逃れるために轟天号から大きく離れざるを得なくなった。

耐圧電流――轟天号建武隊は南方で発見されたとある金属が特殊な電磁波を発してる事を発見、その金属の性質を利用し轟天号の建材と推進力にしようとした。結果として電磁推進だけでの航行や飛行は出来なかったが、強力な電流を流すことである種の兵器としても利用できた。最初から建造に関わっていた神宮寺と轟天建武隊だったからこそ閃いた策であった。

「マンダ、本艦前方に確認。」

「冷線砲、攻撃始め。」

マンダが離れた隙を逃す轟天号ではなかった。マンダが艦首方面に躍り出るや、絶対零度で対象を凍り付かせる冷線砲を射撃態勢に移らせる。マンダは先程の搦め手が通用しないと見たのか一直線に向かってくる。しかし、それがマンダの運命を分けた。

「射撃用意よし。」

「冷線砲、撃てっ!」

ドリル型衝角の先端にある冷線砲から絶対零度の光線が放たれマンダに直撃する。頭から直撃を受けたマンダは最初こそ身動きをしていたが、やがて凍り付いたのかその動きを完全に止めて沈み始める。それとは反対に轟天号は海面へ急速浮上を始める。本来であれば衝角でも魚雷でもとどめを刺すべきであったかもしれないが、発電所に仕掛けた時限爆弾がタイムリミットに迫っていたのだ。

轟天号が海面へ到着した直後、ムー帝国は爆発に吞まれた。海面に上がった巨大な水柱を乗員が見守る中、一人海へ飛び込む姿があった。ムー帝国の女王である。爆発の衝撃で目が覚めた彼女はその水柱を見て何が起こったのかを察したのであろう。波間へと消えていく彼女を嘲笑う者も、止める者も居なかった。かつての祖国が失われ今も分裂している轟天号建武隊にとって、それは決して他人事ではなかったのである。

国を失った女王の胸中は如何なるものか、その答えは彼女と共に海の底へ沈んでいったのである。

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