海底軍艦南進す~Atoragon 2013~   作:わいえす!

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ご無沙汰しました…
キャラメイン回となります


2013/07/19 Part2

20:15 神奈川県横須賀市 コンビニエンスストア

 

 

「女の子?」

「そうですよ。女の子。俺と同い年くらいの」

天野義三の問いに、監視対象者(サブジェクト)の神宮寺八広が答える。

夕方の時間帯でコンビニが最も忙しくなるのは帰宅と夕飯の時間、つまりは17時から19時の間でありそれを過ぎれば仕事にもだいぶ余裕が出来る。なので、こうして新しく入荷された商品を棚に入れながら雑談も出来る訳だが、それとは別に天野には気になる点があった。

「その子、赤い髪だったんだっけ?」

「そうなんですよ。こう…燃えるような赤って感じの」

アメリカの人なんですかね、と言う八広の声に相槌を打ちつつ、天野は彼の言葉を反芻する。

米海軍も展開している横須賀に近いという地理を考えると、赤い髪をした人間がいてもおかしくはない。しかし、その“赤い”髪をした人間が“神宮寺”に接触をしようとした、そこが問題なのだ。かつてのムー帝国女王は赤い髪をしていたという。それを踏まえればその血筋の人間がムー帝国を滅ぼした神宮寺家の人間に復讐を考えるのは不自然な話ではない。しかし、何故今になって…

そこで天野は一旦考えを振り払う。この“仕事”は考えすぎてはいけない。特に自らの判断で任務の成否が変わる状況ならなおさら…

「神宮寺君、気をつけなよ。」

思考しながら棚の商品を並べ終えた天野は立ち上がると彼に向かってニンマリと笑う。

「な、何でです?」

「ヤバい女に目を付けられるなって事。」

困惑半分苦笑半分と言った八広の肩を軽く小突く。そんな訳ないじゃないっすかと笑いながら言う八広の声を背に、天野はコンビニのチーフマネージャーとしての顔から“仕事”の顔へと変わる。嫌な仕事をやらされる物だ、と自嘲しつつ今夜はどう監視をするかの計画を立て始めるのであった。

 

 

 

22:15 神奈川県横須賀市

 

「天野さん…?何でここに…」

赤い髪をした少女の下敷きになりながら八広が言葉を何とか紡ぐ。天野は何も答えず、少女にPDWを向けながら自身の膝を曲げてしゃがみ、その体の各部に触れる。上半身から下半身を順に触れた後、危険物の所持なしと呟いた天野に八広は頭の中がカッとなるのを感じた。

「天野さん…!」

「静かに。君は命を狙われてる。」

思わず上半身を上げて声を荒げた八広を天野が抑える。普段の愛想が良い彼とは思えない程、淡々と話す今の天野には感情を感じられず、八広は怒りの勢いを削がれると同時に天野の言葉が反芻される。

「命が狙われてる…?」

「この少女と同じ事を考えてる奴がいる。」

「そんな…」

天野の言葉に、八広はここまでの出来事を思い出す。赤い髪をした少女、その冷たい瞳、怨嗟のこもった叫び声、手に持ったコンバットナイフ…それと同じ事をしてくる人間がまだいる…?

思考が回る毎に八広の体がガタガタと震え始める。その様子を見た天野が、少女の両手を結束バンドで拘束した後に八広の頬を軽く叩く。えっと顔を上げた八広の目に天野の顔が大写しになる。

「君を殺させはしない。それが俺の任務だ。」

八広の目を見て天野が口を開く。相変わらずの無表情であったが、その目にははっきりと強い意志が感じ取れた。

「任務って…何なんです…?」

八広はそう言いながら、未だに少女の下敷きになってた脚を引き抜く。

「その話は後で。ここから移動して仲間と合流する。とりあえずその子をそこまで連れてって欲しい。」

八広が目を離した隙に背を向けていた天野が答える。八広は連れて行けと言われた少女を見やる。先程銃弾を受けてから一切反応のない彼女だが、肩が薄く上下しており生きていることは間違いなかった。しかし

「でも、コイツは俺を殺そうと…」

「このままここに置いていても、彼女はまた君を殺しに来る。それならここで身柄を拘束すれば良い。」

「なるほど…」

天野の言葉に八広は得心する。本来であれば、八広はここで彼女を殺す事を提案すべきであっただろう。しかし、一般人である八広にそんな考えが自然に浮かぶ訳がなかった。とにかく、少女を起こそうとした八広であったが別の問題に気付く。

「…ってコイツ頭から出血してるじゃん…!」

「なんで今気付いたんだ…」

「顔合わせたくなかったんですよ!」

「…はぁ…頭のどこだ?」

「おでこのとこです。」

「傷の深さは?」

「…多分浅いです。」

「ガーゼで止血させろ。俺のジャケットに入ってる。」

「ジャケットのどこに…て言うかこれ防弾チョッキじゃ…」

依然として背中を向けたままの天野と、漫才のようなやりとりをしながら、八広は何とかガーゼを取り出して少女の額へ押さえつける。何とかこれで出血は治まるだろう。そう思った矢先、八広はふと疑問に思う。

「この子、どうやって連れて行こう…」

「お姫様抱っこだな。」

冗談なのか本気なのか、淡々と答えた天野の声に八広は殴りたくなる気持ちを抑えた。

 

 

 

22:30 神奈川県横須賀市

 

外灯もない道路を一台の軽バンが走る。木々の合間を縫うように抜ける車内に4人の人影があった。

少女を取り押さえてから10分後、八広達は迎えだと言う軽バンに乗り込んでいた。長距離を走らされた挙げ句、4、50キロはあるであろう少女を何とか車まで運ぶ羽目になり息も絶え絶えと言った八広だったが、ようやく落ち着くことが出来た。隣でシートベルトを着けられた少女は未だに昏々と眠っている様子だった。このまま眠ってりゃいいのに、と思いながらスポーツドリンクのペットボトルを開ける。

「…これから、どこへ行くんです?」

ドライバーが買ってきていたらしいそれに一口つけて、八広が尋ねる。明らかにこのまま家に帰っておしまい、と言う感じではない。

「横須賀。」

「横須賀って……」

八広の問いに、天野は短く答える。そのぶっきらぼうな言い回しに少しばかり反感を覚える八広であったが、心当たりがないわけではなかった。天野が持っていたPDW――個人防御火器はその弾薬の特殊性から軍隊、よくて警察が採用する物である。そんなものを使ってる人間が行く横須賀と言えば…

「横須賀基地?」

八広が予想を口にするが、天野は何も答えない。当たっているのか外れているのか、八広がそれを図りかねていると、ドライバーが口を挟む。

「まぁだいたいそんなところっすよ。まぁ、この人何かに集中してると色々雑になるんで堪忍してやって下さい。」

20代前半だろうか、まだ幼さを感じさせる声でドライバーが笑いながら返答する。当て馬にされた格好の天野がジトッとした目を彼に向ける。その時だった。

何かが落ちてくる音、大きな爆発音が彼らの耳に届く。慌てて周囲を見渡した天野が驚きの声を上げる。

「“ピクシー”だ…!」

ブレーキ、と天野が叫んだ直後、フロントガラスの向こう側に白い影が写ったかと思うと激しい衝撃と爆音が彼らを襲い、その意識を奪った。




書きながら気付きましたが、横須賀の辺りはどこにでも民家の類があって人がいない空間が限りなく少ないんですよね…
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