魔法少女リリカルなのは 魂を受け継ぐ魔神皇帝   作:ユニコーン

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それでは、どうぞ!


第一話

 

「(二人とも、無事に出れたかなぁ…)」

 

 

 二人を助ける為に自分の身を犠牲にした少年、ユウヤ・シュテンベルグは瓦礫と共に落ちながらそんな事を思っていた。

 何故だろう、自分が死ぬというのに恐怖を感じない。

 むしろ、達成感を感じる。

 

 

「(ははは、クイントおばさん…約束は…守った…よ…?)」

 

 

 ユウヤは朦朧とする意識の中、天国にいるであろう自分の育ての親に心の中で呟いた。

 クイントと二人でいる時、ユウヤは必ずと言っていいほどクイントに『男の子なんだから、女の子の二人を守りなさい』と言われていた。

 頭の中でまたクイントに呟かれた様な気がしたユウヤは、懐かしく思いながらゆっくりと意識を落としていった。

 直後、彼の胸の中心部が赤く光りだし、その光は徐々に広がって彼を守るように包み込んだ。

 そして彼を包み込んだ後に、人一人が入れるぐらい小さな空間の裂け目が彼の落下地点に現れ、彼は裂け目に飲み込まれた。

 それはまるで、お前を死なせるわけにはいかないというように…

 

 

 

 

 

 

 

 あの時、どうして私は間に合わなかったのだろう。

 

 あの時、どうして私は直ぐに気付かなかったのだろう。

 

 あの時、どうして私達は勇気を出して動こうとしなかったのだろう。

 

 それぞれの悔恨は、少女達を強くするバネとなった。

 

 そして、あれから四年、少女たちは育ち、それぞれの道を歩み始めた…

 

 

 

 

 

 

―-―管理局地上本部 陸上警備隊第108部隊執務室―――

 

 

 

 

「それじゃあお父さん、行ってくるね」

 

「ああ、気をつけてな」

 

 

 淡い紫色の髪を伸ばし、管理局地上服を身に纏った女子。

 幼い頃の姿をそのまま成長させた【ギンガ・ナカジマ】

 ギンガは上司であり、父である【ゲンヤ・ナカジマ】に言って第108部隊の執務室を静かに後にした。

 

 

「…あれからもう、四年が経つのか」

 

「そうですね…あの事件から、よくあの二人は立ち直れましたね」

 

 

 俺の呟きに副官の陸士がシミジミと答えた。

 

 

「ああ…二回も自分達の柱を失ったのになぁ…これもレジアスのおかげだな…」

 

 

 あの航空火災の時、俺が現場で指揮を執っていた時にあの嬢ちゃん二人が無事に家族を連れて来てくれて安心したが、ユウ坊がいないのに気付いた。

 ギンガ達を俺達に置いて行った後、嬢ちゃん達は何人か飛べる局員を率いてあの火の海の中に急いで戻って行った。

 ギンガとスバルは泣きながら俺に言った…あいつが二人を助ける為に瓦礫の下敷きになって、落ちていったことをな。

 ある程度火が収まり、他の陸士も全力で捜索に当たったが、ユウ坊は見つからなかった。

 見つかったのは瓦礫の下にあったユウ坊の血溜まり(・・・・)だけだった。

 もし下敷きになれば、まだ火が届いていない地下であれば身体の一部が瓦礫や地面に付着しているはずなのにそれが全くなかった。

 調査の途中で地上本部から火災の最中、つまりユウ坊が落下していった時にそこで次元震が発生したと報告があった。

 もしかしたら、ユウ坊は次元震に巻き込まれて違う世界に行ったのかも知れない。

 そうなれば、まだ生きている可能性もある。

 そう判断した俺は、海の知り合いにユウ坊の捜査協力を申し出たが、レジアスが一足先に依頼をしていたのだ。

 あの海を嫌っているレジアスが、自ら海に捜査依頼を申請したというのにはたまげたぜ。

 

 

「あの時、もし彼が死亡扱いになっていたら、二人は本当に心が壊れていたかもしれませんね。それに、ギンガ陸曹が入局してしばらくして一波乱ありましたし…」

 

「…あぁ、そんなこともあったなぁ。お前もあの時止めに入ったからなぁ」

 

 

 あれからギンガが入局して間もない頃に、不逞(ふてい)な局員達がギンガにしつこく言い寄ってきた。

 容姿はクイントにそっくりだから美人なのは当然だ。

 その度にギンガは自分には大切な人が居て、その人を待っていると言い続け切り抜けていた。

 だがある日、スバルが研修生として入局し、一緒にいるところにまた馬鹿な局員達がギンガに言い寄っていった。

 そしてあろうことは、スバルにまで手を出そうとしていた。

 それでもギンガは突っ張り、最後には上司に訴えると言ってスバルと共に背を向けてその局員達の上司のところに向かった。

 しかし、断り続けられていたのに痺れを切らして、その局員はギンガとスバル共通の禁句を言ってしまった。

 

 

《生死不明の男を待って枯れちまう前に遊んでやるっつってんだよ!》

 

 

 もはや溜まっていた鬱憤の関が崩壊してしまった。

 直後、ギンガとスバルは我を失った様にその局員達を大衆の目の前で原形が辛うじて残るぐらい怒涛の勢いでボコボコにした。

 運良く二人のデバイスはメンテナンスに出していたが、もしデバイスがあったらセットアップしていただろう…抑えに掛かった者達までも巻き込んでしまい、収拾が着かなくなった所にたまたま通りかかったレジアスが駆けつけ、その場を収めた。

 本来ならば、ギンガとスバル、局員達は厳罰処分を受けなければならなかったが、周りにいた他の局員達がギンガ達二人を弁護し、レジアスが二人だけ厳重注意と局員達は懲戒ということで片を付けたのだ。

 そして、地上内部がこれほど荒れているの事に激怒したレジアスは、自ら率先して管理局員として有るまじき者達を処分することに取り掛かった。

 そのお陰で今の地上本部は、かなり綺麗になり、業務も今までよりスムーズに進むようになったみたいだ。

 

 ゲンヤは当時の出来事を思い出しながら、自分の仕事机の上に飾ってある写真を手に取って見る。

 その写真には、満面な笑顔でクイントに抱き着いてこっちを向いているギンガとスバル、その二人を優しく包み込むように抱きしめて微笑んでいるクイント…そして、その直ぐ後ろで三人を見守るように微笑んでいる少年、ユウヤが写っていた。

 

 

「ユウ坊…お前さんは、まだ生きているんだろう? 何時まであの二人を待たせるつもりなんだ…もう四年も経っちまったぞ。あいつらは…今は元気に見せてはいるが、夜な夜な部屋でお前を思い出して泣いているんだぞ…早く帰ってこいよ…」

 

 

 ゲンヤの呟きを聞いた陸士は、執務室の窓から空港のある方向の空を悲しげに見上げていた。

 

 

 

 

―――臨海空港の見える丘―――

 

 

 

「ギン姉ー! 久しぶりー♪」

 

「スバル~♪」

 

 

 姉妹の再開の挨拶もそこそこに、私達はあの事件がだった臨海空港をよく見下ろせる丘の上に来た。

 行方のわからないユウ君に、自分達の思いを伝える事ができるのは…ここにしかないと思うから。

 

 

「あれから…もう四年が経つわね」

 

「うん…今回は色々と忙しくて、四月に来るのは間に合わなかったけど、自分の覚悟を忘れないためには、毎年来ないとね」

 

 

 今日までの間に、二人には色々な出来事があった。

 スバルは、もう自分のような悲しみを誰にもさせたくないと思って陸士訓練校に入り、そこでルームメイトである【ティアナ・ランスター】と知り合い、パートナーになった。

 そして、Bランク試験を二人で臨んだ際、後を省みない危険な行動をして不合格となったけども終了後に、スバルの命の恩人であり、憧れの【高町 なのは】に声を掛けられて、特別に再試験を受けさせてもらった後に一緒の部署に来ないかと誘われて入った。

 そこで新しい仲間と出会って、初任務を無事に終了させたりと、本当に色々とあった…

 しかし、これだけ沢山の出来事があったのに、スバルの胸にポッカリと開いた穴は満たされる事はなかった。

 ギンガもまた、陸曹にまで昇進して色々な事件に関わっていった。

 昇進していくに当たり、過激な事件を担当する様になっていった。

 性犯罪、人身売買、殺人、違法実験…上げれば同じ人間なのかと思ってしまう様な事件ばかりだ。

 その最中、何度も命を落としかけることはあった。

 その状況を切り抜けていく度にギンガはユウヤを思い出していた。

 自分達が危ない場面に直面した時、真っ先に駆けつけてくれた自分達の大切な人。

 ユウヤがもし、同じ地上で管理局に入り、同じ事件を担当していたらどう思うだろう…

 

 

「…私達が小さい頃、虐めに合ってる時にも直ぐに駆けつけて助けてくれた時、ユウ君に聞いたんだ。『どうして私達を助けてくれるの?』って…そしたらユウ君は『俺の大切な宝物を守る為に決まってるでしょ?』って、当たり前なことをな何で今更聞くのって顔をしながら言ってたよね。」

 

「そうね…父さんと母さん以外では、ユウ君しか話す相手が居なかったし、それに私達が普通の人間じゃないって知っても『だから何?』な顔をしていたものね」

 

「うん…ユウ君、今頃何処で何をしているんだろう?」

 

 

 

 

 

 

 ユウ君…会いたいよ、ユウ君…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――とある管理外世界―――――――

 

 

 

 

 

 

「…そろそろ、行くか」

 

「行くのか?」

 

 

 ここ、とある管理外世界ではある少年が旅立とうとしていた。

 

 

「ああ、奴等がミッドチルダに現れると分かった以上、俺の…第二の故郷をあの予言の通りにさせるわけにはいかないから」

 

「そうか…気を付けるのじゃぞ、血は繋がっていなくとも、お前はワシの可愛い孫じゃ」

 

「…ありがとう、じいちゃん。じゃぁ、行って来るよ――――――――――」

 

 

 

 

 

――――――俺の、大切な宝物を守る為に

 

 

 

 

 

 




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