魔法少女リリカルなのは 魂を受け継ぐ魔神皇帝   作:ユニコーン

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大変お待たせいたしました!

リアルが繁忙期になり職場に13時間缶詰状態…

PC開く時間がありません(´;ω;`)

今回は戦闘描写が入っています!

それでは、どうぞ!


第七話

―――洞窟

 

 

 

 

「いや~、クア姉達危ない所だったね~」

 

「それもこれも、ルーお嬢様のお蔭です」

 

「………」

 

 

 あの後、ユウヤからライドインパルスで逃れた三人は途中でセインとルーテシアと合流し、ルーテシアの転送魔法でアジトへと帰還した面々。

 その内の二人、クアットロとディエチだけはげっそりとし、髪もあっちこっちが飛び跳ねていた。

 余程ユウヤが怖かったのだろうか。

 

 

「で、レリックの方は?」

 

「あそこまで時間を稼いで働いてませんでしたじゃ済まさないわよセインちゃん?」

 

「だ~いじょうぶ! ちゃんとここにあるよ!」

 

 

 クアットロはユウヤに余程参ったのか、睨むようにして矢継ぎ早にセインに言うが、セインはレリックケースを皆に見せる様に持ち上げて言い、近くの台になるところにケースを乗せる。

 

 

「ふっふ~ん、この程度の封印なんてちょちょいのちょい~♪」

 

 

 セインは人差し指を光らせると、ケースのつなぎ目をなぞる。

 すると、なぞられた所に光が残り、セインが指を外すと光が弾けてロックが外れた。

 

 

「ご開帳~~♪……あれ?」

 

 

 しかし、ケースの封印を解いて開けると―――

 

 

「……ない」

 

 

 ―――中は空っぽだった。

 

 

「セイン…」

 

「貴方って子は…私達が死ぬ思いをして時間を稼いだというのに…!」

 

「セイン………ッ」

 

 

 上から順番にユウヤと当たっていたトーレ、クアットロ、ディエチの三人がセインを責めるように視線を向ける。

 ディエチは普段見せる事のないほど感情の篭った顔をセインに向けており、その事を知っているアギトとルーテシアは目を開いていた。

 

 

「あれ、あいつ、あんなキャラだっけ?」

 

 

 アギトの問にルーテシアは小首をかしげて分からないと答えた。

 

 

「そんなんじゃないよ! ほら!」

 

 

<―――ブゥンッ>

 

 

「見なよ! こいつらの何処にもなかったんだから!」

 

 

 セインはプンスカと怒りながらモニターを複数展開して5人に見せた。

 トーレとディエチ、クアットロがモニターをチェックしていく。

 

 

「ふ~ん、確かにないわね~?」

 

「自分のISでレリックだけを落としたとか?」

 

「そんなんじゃないってば!!」

 

「…ん?」

 

 

 セインが何処にもない、自分は悪くないとクアットロとディエチにムキになって言っている時、トーレだけ違う反応をした。

 

 

「このバカ者共がッ、お前達の目は一体どこに付いているんだ…ッ!」

 

「「「えっ?」」」

 

 

 トーレが今だに気付かない三人に喝を入れるが、三人はモニターに目を凝らして見るが、何処にあるのか気付かない。

 

 

「見ろ、ここだ!」

 

「「「あ…」」」

 

 

 トーレが指差したモニター、そこは丁度クアットロとディエチ、セインが二回は見たモニターだった。

 そのモニターに映っている少女、キャロの帽子の中に魔力反応があった。

 普段のクアットロなら見落とすことのない場所だが、今は憔悴と怒りからか、見落としをしていた。

 

 

「やられたわね~…」

 

「今更取りに行こうとしても、もう局内だろうし…」

 

 

 クアットロとディエチはフォワード達の相手をしていなかったのでどのタイミングでレリックを移されたのか分からないが、相手に一本取られたのは確かだ。

 ディエチは声には出していないが顔を強張らせ、悔しそうにしている。

 自分の固有武器をあっさりと破壊されたのもあるのだろう。

 

 

「何よりあそこには恐らく、あの男がいる…認めたくはないが、私が相手で倒せるかどうかわからん…」

 

「トーレ姉…?」

 

 

 トーレは右腕にインパルスブレードを出して見る。

 脳裏に移るのはあの時、ユウヤに攻撃して欠けたインパルスブレード。

 セインはユウヤと会っていないし、見てもいないのでどんな男なのか分からないみたいだが、戦闘機人の中で一番高い戦闘力を持つトーレをここまで言わせる人間(・・)がいるとは思わないからだ。

 しかし、合流した際に戦闘タイプであるトーレが息を切らしていたのを思い出した。

 それが本当なのかどうか、まだ自分自身の目でユウヤを見ていないからどんな男なのか分からない。

 セインはトーレにここまで言わせる男、ユウヤに興味を持った。

 

 

「(今度見てこようかなぁ…)」

 

 

 今現在のナンバーズで1番感情が素直なセインは、自分のISでこっそりと見てこようと思っていた。

 その様子を見て考えていることを察知したトーレがセインに拳骨をし、説教を開始した。

 

 

「………」

 

「ルールー…」

 

 

 一方、ルーテシアだけはケースの中に書かれているナンバーを見て落胆していた。

 

 

「(ルールーの母さんを呼び覚ますには、ⅩⅠ番のレリックが必要だ。でも今回は…)」

 

 

 ケースの中にに書かれている番号はⅥだった。

 

 

「…はぁ」

 

「ルールー、次があるって。一緒に頑張ろう!」

 

「アギト…」

 

 

 ルーテシアは自分が求めている番号のレリックではなかったことに落ち込む。

 その様子を見るアギトは、今の自分に出来る事は落ち込むルーテシアを励ますことだけ…そんな非力な自分に苛立ちと悔しさを感じていた。

 

 

「(ちくしょう、せめてアタシにベルカ時代の記憶があれば、ルールーの母さんの治療が出来るかも知れないのにッ!)」

 

 

 しかし、今更嘆いていても記憶は蘇らない…ならば自分の出来る事を精一杯するだけだと、そう決めたアギトは、自分を救ってくれた内の一人のルーテシアの補佐をすることを心に新たに決めた。

 

 

「(でもおっかしいなぁ…アタシ達が撤退してる途中で昔どっかで感じたのがあったんだけどなぁ…気のせいか?)」

 

 

 古代ベルカの融合機であるアギトは、遥か昔に感じ取った何かについて考えていたが、すぐに考えるのをやめた。

 

 

 

 

―――ナカジマ家

 

 

 

 

 ―――チュンチュン

 

 

 

 

「…どうしてこうなった?」

 

 

 ユウヤが呟いた朝一番の疑問の原因、それはユウヤの両腕を抱き枕にし、足まで絡ませているスバルとギンガが幸せそうに一緒に寝ているからだ。

 今に至るまでの状況を順序良く説明していくと、まずユウヤとゲンヤが家に着いてドアホンを鳴らすとドアが勢いよく開き、二人がユウヤに向かってダイブ。

 のけ反った体勢から立て直したユウヤの両腕に二人がくっつく姿はまるで、お預けを食らっていた犬の様でもあった。

 ゲンヤはその光景を苦笑いしながら見てリビングへ三人を呼んで向かうと、テーブルには所狭しと料理が山盛りに並べられていた。

 あまりの量に二人は呆然としたが、食事になるとスバルとギンガがそれぞれの7割を食べたので、残る事は無かった。

 二人の食べっぷりを見ていたユウヤは、仲間の一人が常に食卓を攻め続け、自分達は自分の料理を守っていた事を懐かしく思い出していた。

 料理を食べ終えて次に待っていたのが、風呂だった。

 食器を洗い終えた二人が一緒に入ろうと言って来たのをユウヤは必死で止め、渋々ながらも二人を止める事に成功した。

 その様子をゲンヤはニヤニヤしながら見ており、二人が風呂から上がるまでネタにされた。

 だが二人の攻撃はそれだけでは終わらなかった。

 そう、ユウヤが寝ている間に二人は部屋に侵入して布団にもぐりこんで寝ていたのだ。

 その様がまったく気付かなかったユウヤは起き上がろうとするが、二人がしっかりと逃がさない様にユウヤの両腕に抱きついているので、身動きが取れない。

 

 

「んむぅ……ユウくん…」

 

「ユウくぅん……うへへ…♪」

 

「………」

 

 

 しかしユウヤには、二人を引っぺがす術を持ち合わせては居なかった。

 今この場にクイントが居ればなんとかなった…いや、もしクイントがいたとしてもその状況を面白がって見ているだけで助けたりはしないだろう。

 寧ろデバイスに永久保存されそうだ。

 

 

<――ピピピピッピピピピッ>

 

 

「ムゥ…?」

 

「ん~~…あと五分」

 

「(…いつの間にセットしたんだ?)」

 

 

 ユウヤはいつの間にセットされたのか、寝る前は確かに置かれてなかった目覚まし時計に視線を向けると、ギンガが身じろぎをしながら目を開け、スバルは典型的な呟きをして顔をユウヤの腕に擦りつけてまた眠りにつく。

 

 

「ん~………?」

 

「…おはよう、ギンガ」

 

「………」

 

「…ギンガ?」

 

 

 時計のベルを寝ぼけながらも手探りで止めたギンガは、そのまま目を擦りながらムクリと起き上がる。

 当然視線は自然と下を向いているのでユウヤと目が合うが、目が合うとギンガは目を見開いたまま固まっていた。

 

 

<ガバッ!>

 

 

「ぎ、ギンガ…?」

 

 

 どうしたのかと心配になったユウヤはギンガに触れようとすると、突然ギンガはユウヤに抱きつき頭をユウヤの胸に擦り付ける。

 突然の出来事にユウヤは目を白黒とさせるが、聞こえてきた言葉にユウヤは直ぐに冷静になった。

 

 

「―――夢じゃ…ない…」

 

「ッ?」

 

「ユウ君が…ユウ君がいるよぉ…ッ!」

 

「ギンガ…」

 

 

 その言葉を聞いたユウヤは空いた腕でギンガを抱きしめ、頭を撫でるしか出来なかった。

 その後、ギンガの啜り泣く声に目を覚ましたスバルも同じようにユウヤに抱きついて泣いた。

 

 

 

 

―――機動六課ロビー

 

 

 

 

「暑いわ~」

 

「どうしたんですか、はやてさん?」

 

「めっちゃ暑いわ~。何で冷房効かしてんのにこんなに暑い~ん?」

 

「です~…」

 

「「~♪」」

 

 

 書類仕事から抜け出してロビーに出たはやてとリィンはジト目でユウヤとギンガ、スバルを見ると、わざと冷やかす。

 しかし、当の二人は耳に入っておらず、ユウヤの腕に抱きついてゴロゴロと喉を鳴らしているかのように幸せそうにしている。

 元々ユウヤは局員ではないのだが、レジアスが既に手を回しておりユウヤは民間協力者になり、今日は機動六課に用があって来ていた。

 加えてギンガは、今日付けで機動六課に派遣されることになったので、朝からずっとユウヤと一緒に機動六課にいる。

 午前中はスバル対ギンガでお互いの腕を披露していたが結果はギンガの勝ち。

 その後直ぐにはやてを除く隊長+副隊長陣対フォワード+ギンガの訓練だったが、ユウヤは傍らでその様子を見ていた。

 ユウヤはスバルとギンガが強くなっている事…特にスバルに驚いていた。

 加えて、自分の記憶にある技を隊長+副隊長陣に二人が繰り出していたのにユウヤは表情が若干引き攣っていた。

 

 

「お前ら…」

 

「にゃははは…」

 

 

 その様子を機動六課全員がそれぞれ違う視線で見つめる。

 暑いの意味が分からないエリオは頭を傾けるが、キャロだけは分かっていて顔をほんのりと赤くしていた。

 

 

「は、ははは…」

 

「…シュテンベルグ」

 

「はい?」

 

「シグナム?」

 

 

 シグナムは珍しく険しい表情をしてユウヤに声を掛けた。

 シグナムが険しい表情をしている理由…それは昨日、シグナムがユウヤを見てから今まで思った疑問についてだ。

 自分達魔法が使える者が相手をして苦戦するガジェット…それも新型であるⅢ型を相手に、ユウヤは特に苦もなく破壊したのだ。

 そして夜遅くに観たヘリと砲撃の間に入り込んだ瞬間の映像だが、ハイパースローモーションでやっとユウヤの姿を捕らえたのだ。

 だがここで問題になるのが、ユウヤから魔力を感じられない事だった。

 感じられないという事は魔法が使えないと言っても過言ではない。

 なのに、魔法が使える人間よりも早く…ましてや空中を移動する等不可能だ。

 

 

「お前の力を私は直接見ていない…お前が本当に我々と共に戦えるのか、確かめさせてもらうぞ」

 

「ちょ、シグナム「構いませんよ」ユウヤ!?」

 

「どうやらシグナムさんはそれとは別に、俺の何かを確かめたいみたいですしね」

 

「ユウ君…」

 

 

 スバルとギンガはユウヤの手を握って、再びユウヤがいなくなるのではと…恐れた瞳をユウヤに向ける。

 シグナムが確かめ、そしてユウヤを…自分の大切な人を追い出そうとする光景が二人の脳裏に写る。

 ユウヤはそんな二人の頭を「大丈夫」と言いながら撫でる。

 

 

「模擬戦場に行くぞ。着いて来い」

 

 

 シグナムの後ろをユウヤは恐れることなく堂々と着いていく。

 スバルとギンガはユウヤの後を追おうとしたが、なのはとフェイトに止められる。

 

 

「シグナムさんは自分で確かめないと気が済まない性格なのは、知ってるでしょ?」

 

「大丈夫、ユウヤは二人が待ちに待った大事な人なんだから。ここはユウヤを信じよう。さあ、私達も行こう」

 

「なのはさん、フェイトさん…」

 

 

 スバルとギンガの今の姿はまるで子供だった。

 それも、大切な人が帰って来ないのではと思っている子供の様に見える…

 なのはとフェイト、はやて、ティアナはまるで昔の自分を見ているみたいだと思った。

 

 

 

 

―――模擬戦場

 

 

 

 

「昨日の姿が、お前のバリアジャケットか?」

 

「バリアジャケット…みたいなものですね」

 

 

 模擬戦場に着いた二人は距離を取り、シグナムはバリアジャケットを展開して戦闘準備を整えていた。

 

 

「【Z】」

 

 

 胸に着けているZの赤いエンブレムにキーワードを呟くと、エンブレブが赤く輝きだし其処からユウヤの身体を包み込む。

 その光に眩しさを感じる面々は、手で光を遮ぎる。

 光が収まると、そこには昨日のあの黒くて強靭な姿になったユウヤがいた。

 その逞しさと強靭さの中に含まれる美しさを損なわない姿に、シグナム以外の面々は溜息を漏らす。

 

 

「ルールはどちらかが気絶するか、降参するかだ。では…始めようか」

 

「いや、その前に…」

 

 

 ルールを告げて戦う気満々でレヴァンティンを構えるシグナムを、ユウヤは構えを取らずに待ったを掛けた。

 

 

「何だ、今更ルールの変更をするのか?」

 

「いや…」

 

 

 ユウヤは模擬戦を見ている六課に視線を向ける。

 

 

「八神さん、シグナムさんのリミッターを解除して下さい」

 

『え?』

 

「そしてシグナムさん、全力で俺に掛かって来て下さい」

 

「なッ!?」

 

『『ええッ!?』』

 

 

 管理局の中でも上位に位置する実力を持つシグナムに向かって手加減無しで掛かって来いと言うユウヤ。

 この発言には全員が驚いた。

 

 

「貴様、随分と余裕だな…?」

 

 

 その発言にシグナムは怒りを募らせる。

 それもそうだろう、自分が明らかに格下だと思われているのだ。

 

 

「そう捉えても仕方ないでしょう…ですが―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――そうしなければ、俺の実力を見せることが出来ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 

<ゴォォォーーーーッ!>

 

 

 

 

 

 

「え…ユウ…君…?」

 

「何…この寒気…?」

 

 

 ユウヤが声を発した後、模擬戦場だけでなく、離れた所から観戦している面々の所の温度まで一気に下がった。

 

 

「主、私の後ろに…」

 

「ザフィーラ?」

 

 

 温度が一気に下がった時、即座にザフィーラが狼姿から人の姿になり、はやて達の前に移動して全員を囲うように障壁を張った。

 

 

「この模擬戦…私の障壁の後ろにいなければ危険です」

 

 

 ザフィーラが障壁を張ってから自分達に来る寒気が落ち着いた気がした。

 それほどユウヤの発する何かに呑まれていたのだろう。

 

 

『主はやて、リミッター解除の許可を…』

 

「シグナム!?」

 

『この男の実力は…リミッターをかけている私では計り知れない…ッ』

 

 

 シグナムもユウヤの発する何かに飲まれるのに抗い、脂汗を流し、ユウヤから視線を外さずにはやてにリミッター解除を要請している。

 実戦ではあるにしても、模擬戦でこんなことはまずありえない。 

 見た感じ、確かに生半可な攻撃は効かない事は感じるが、シグナムはガジェット意外にも建物も切り裂く程の腕の持ち主だ。

 そのシグナムが本気を出させて欲しいと言っているのだ。

 

 

「ちょっと待って、リミッター解除するのに上の許可…あれ、降りとる?」

 

 

 

 機動六課には隊長陣がオーバーS、副隊長でS-とAAA+と戦力が集中し過ぎている故に隊長、副隊長陣はランクを下げる制限が課せられ、よほどのことがない限りはリミッターの解除は出来ない。

 しかしはやてがシグナムの要請を聞いて上に許可を得ようとすると、既に許可するという連絡が届いていた。

 その事に疑問を持ったはやてだが、ここまでの威圧感を放つユウヤの力を見たいと思ったのでこの模擬戦でのみリミッター解除を許可し、シグナムは身に纏う魔力を倍近くになった。

 

 

<―――ピィーーーーッ!!>

 

 

「はぁぁッ!」

 

 

 開戦のブザーが鳴り響き、先に動いたシグナムは持ち前の速さを生かし、抜刀の構えをしてユウヤに急接近する。

 ユウヤは構えもせずただシグナムが突っ込んでくるのをその場で動かず見ていた。

 しかし―――

 

 

「(ッ!?)」

 

 

<ドンッ!>

 

 

「ぐあッ!?」

 

『『えッ!?』』

 

 

 攻撃を仕掛けたシグナムが、身体を仰け反らせて宙に吹き飛んだ。

 攻撃をしたであろうユウヤをモニター越しで見ると、右腕を突き出すように立っていた。

 

 

『何時の間に!?』

 

「『剃』」

 

 

<シュンッ!>

 

 

『『!?』』

 

 

<ドンッ!>

 

 

「がはっ!?」

 

 

 ユウヤがその場からラジオが途切れた音がした様に消えたと思いきや、シグナムが吹き飛ぶ先に既に移動をして待ち構えていた。

 そして再びシグナムを更に宙へと吹き飛ばし、ユウヤは空中に浮く状態になる。

 

 

「『月歩』」

 

 

<ボンッボンッボンッ!>

 

 

「『獣厳』」

 

 

<ドゴンッ!>

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

 吹き飛ぶシグナムに空中を跳んで追いついたユウヤはシグナムの背中に正拳突きを食らわせ、シグナムは地面へと落下していくが、途中で体勢を整えて地面スレスレの所で浮かび上がる。

 

 

「『嵐脚』」

 

 

<シャーーンッ!>

 

 

「!?」

 

 

 自分に向かってユウヤが右足で何かを蹴り飛ばす様に振るう。

 空中でブレる何かが見え、それが身の危険と瞬時に悟ったシグナムはその場を直ぐに離れた。

 

 

「(何ッ!?)」

 

 

 自分がいたところを見ると、アスファルトの地面に深々と斬撃痕が残っていた。

 

 

「(蹴りで斬撃を…ッ、あの男は一体何なんだ!?)」

 

 

 シグナムは険しい顔をして上空でケンケンしながら自分を見下ろすユウヤを見る。

 ユウヤは油断することなくシグナムを見下ろしていた。

 

 

 

 

―――観戦場

 

 

 

 

「すごい…」

 

「あのシグナムを相手に…全く引けをとらない…」

 

 

 場面は観戦組へと変わり、ユウヤはシグナムを宙に吹き飛ばした後に空中を蹴るようにして上空へと真っ直ぐに移動し、シグナムを攻撃する。

 シグナムはユウヤの猛攻に成す術もなくやられている。

 

 

「いや…シグナムを相手に余力を残している」

 

「何だって!?」

 

 

 あれだけの動きをしてザフィーラはまだユウヤは余力を残していると判断した。

 

 

「そして何より…あの動きは実戦慣れ(・・・・)をしている動きだ」

 

「実戦…ですか?」

 

「見ろ」

 

 

 ザフィーラに言われて全員が激しい戦闘を繰り広げるシグナム達に視線を向ける。

 

 

『紫電一閃!』

 

 

 シグナムが必殺の居合いを右斜め上から左斜め下に放つが、ユウヤは左斜めに右半身を入れるようにして攻撃を避け、その勢いを活かして身体を反転させてシグナムの腹に左エルボーを放つ。

 エルボーを喰らったシグナムは、身体をくの字に折られてその場で静止される。

 すかさずユウヤは後ろ回し蹴りをシグナムの背中に食らわせ、シグナムは身体が仰け反らせて吹き飛ぶ。

 

 

「シグナムの死角ギリギリから常に攻撃を仕掛けている。死角からの攻撃は経験を詰めば自ずと習得出来るが…死角ギリギリから常に攻撃するのは、生半可な経験で培われるものではない…」

 

「ユウ君…」

 

「…」

 

「(また…強い人が入って来た)」

 

「(私だけ…弱い…!)」

 

 

 

 

―――演習場

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、」

 

 

 シグナムはユウヤに全く歯が立たないことを悔しく思っている。

 自分達はヴォルケンリッターであり、数多くの戦場を経験しているにも関わらず、ユウヤに全く歯が立たない。

 シグナムはユウヤに何よりも警戒している事がある…

 

 

「(この男からは、血の匂いがする…)」

 

 

 かつて自分達ヴォルケンリッターが闇の書の守護者であった時と同じぐらいの血の匂いがユウヤから感じたシグナム。

 自分の主であるはやてに危害を加える相手は直ぐに排除するつもりでいるし、しっぽを出せば直ぐに叩き斬るつもりでいる。

 これは他の三人も同じ考えだが、しかしどうだ?

 近接戦闘に特化している自分がリミッターを解除して掛かっているのに、攻撃は(ことごと)く避けては受け止められ、自分の死角から常に攻撃されている。

 

 

「終わりにしましょうか」

 

「くッ!」

 

 

 ユウヤはそう言うと両拳を胸の前で打ちつけて両腕を腰にゆっくりと、力強く持っていく。

 次に両手の付け根を合わせて睡蓮の華を思わせる様に指を固定し、右腰に引く。

 シグナムはその技は危険と身体が悟り、ユウヤが動き出す前にケリを着ける為にユウヤに向かって全力で飛び込む。

 

 

「させんッ!」

 

「―――ッ!」

 

 

<―――ォォォッ>

 

 

「―――十指銃ッ!」

 

「ッ!?」

 

 

<ドォォンッ!!>

 

 

「がぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 睡蓮の華を右腰から前に突き出す様に出された両手はシグナムの腹部に放たれ、シグナムはユウヤに吹き飛ばされて廃墟に突っ込み、意識は刈られた。

 

 

『うそ…シグナムさんが…』

 

『負けた…リミッター解除をされた副隊長が…』

 

 

 ふう、とユウヤは息を吐き、模擬戦終了のブザーが鳴り模擬戦はユウヤの勝ちとなった。

 

 

 

 

―――機動六課ロビー

 

 

 

 

「すごいね、ユウヤ君」

 

「その力は、何処で身につけたの?」

 

 

 シグナムの意識が回復して少し時間がたった機動六課のロビーで、ユウヤはなのは達にあの強さについて質問をされていた。

 それもその筈、ユウヤがいなくなった期間は4年間。

 その4年間でどんなに修行をしたとしてもシグナムレベルの相手をあそこまで圧倒できる筈がない。

 特にエリオはユウヤに憧れを抱き、目をキラキラとさせて聞いていた。

 ユウヤはそんなエリオを頭を撫でながら全員に言った。

 

 

「この力は、俺が一番世話になった世界でです」

 

「世界?」

 

「あの後…俺は瓦礫に潰されず、虚数空間に落ちました」

 

「何!?」

 

「虚数空間やて!?」

 

 

 虚数空間は魔法も一切発動できない其処の見えない重力の空間。

 そんなところに落ちて生還したとなれば、誰だって驚くだろう。

 

 

「まあ、偶然にも虚数空間に更にあった切れ目に落ちた俺は、ある世界に着きました。その世界の人に治療を施して貰ったんですけど…直ぐにまた、違う世界に落ちてしまいました」

 

「…」

 

「その世界でも、俺はまた救われました」

 

 

 

 ―――例えお前がどんな奴だろうが、お前は! 俺達の仲間だ!!

 

 

 

「(得体の知れない俺を戸惑いなく仲間と呼んで貰えたことが…どれだけ嬉しかったことか…)」

 

 

 思い浮かぶのは、その世界で受け取った仲間という深く、そして暖かい想い。

 そして、数々の冒険と仲間の思い出。

 あの時、見ず知らずの自分を一切疑うことなく、暴走して迷惑をかけたにも関わらず仲間として受け入れてくれた大切な仲間が、脳裏に浮かび上がる。

 

 

「それはそうとユウヤ君」

 

「?」

 

「君が昨日、ヘリと砲撃の間に割り込んだ時の映像を見たんやけど…あの動きは、今回君が使ってたあの動きと同じなん?」

 

「ええ、『剃』といいます。瞬時に10回以上地面を蹴れる様になれば使える様になります」

 

「なるほど…ならば空中を移動していたあの空中を蹴る動作。あれは『剃』の応用か」

 

「ええ、『月歩』といいます。『剃』の応用で『剃』が使えるようになれば、『月歩』も使える様になります」

 

 

 ザフィーラがユウヤの技の一つ『剃』の仕組みを理解し、直ぐに『月歩』が『剃』の応用と理解した。

 ユウヤは直ぐに技を見抜いたザフィーラに感嘆の気持ちを抱いた。

 

 

「…なぁ、ユウヤ君?」

 

「?」

 

「今の君は民間協力者として登録されとるけど…元の世界に帰ってきて早々な話なんやけど…」

 

 

 はやては気まずそうに、しかし背に腹は括れないとばかりに頷いてユウヤに言った。

 

 

「うちらの仲間になってくれへんか?」

 

「構いませんよ」

 

 

 

 

 

 ―――え?

 

 

 

 

 

『『『(えぇぇぇぇーーーーーーーーー!?)』』』

 

『『(さらっとーーー!?)』』

 

『『(入ったぁぁーーー!?)』』

 

 

 はやてが言い難そうに言ったのに対してユウヤはあっさりとOKを出した事に、周りは吃驚した。

 言ったはやてもその場で硬直して髪が数本跳ねて顔を引き攣らせている。

 

 

「そ、そない簡単に入るか普通? 自分で言うんもなんやけど、ちょっとは考えようや…」

 

「それに機動六課にいた方が、動く範囲が広がりますからね」

 

「広がる?」

 

 

 ユウヤのセリフにシャマルが反応した。

 

 

「知っての通り、俺は今民間協力者ですが…登録は地上でしているので動けるのは地上のみです。ですが機動六課にいれば、空の管轄であっても自由に動く事が出来る」

 

「なら…」

 

「それに、俺は既に機動六課に派遣されることになっています」

 

『『え!?』』

 

 

 民間協力者であるユウヤが何故機動六課に派遣されるのかが分からない面々。

 

 

「昨日、レジアスおじさんから連絡が有りまして。俺は今回の事件が片付くまで機動六課に派遣すると命令が来ました」

 

 

 事実、昨日ユウヤが寝る前にナカジマ家にレジアスから、ユウヤは民間協力者で機動六課に派遣するという連絡が届いたのだ。

 レジアスが空を…特に機動六課を快く思っていない事を知っている面々は逆に驚いていた。

 もしやユウヤをスパイとして送った…はやてはそう思った。

 もしそうだとしたら、今回のリミッター解除も頷ける。

 しかしゲンヤの息子同然であるユウヤをレジアスがスパイとして送るとは考えれない…

 寧ろ、ユウヤ程の実力があるなら地上からわざわざ敵対する空に派遣はしない。

 だが気になることがある…ユウヤの『広がる』という言葉だ。

 ユウヤほどの力を持つ者が追う事件は思い…もしかしたら、ユウヤの追っている何かが自分達が追っている事件と関わっているのではと考える。

 

 

 

「「やったぁーーー!」」

 

「ととと、二人とも…」

 

 

 そんな考えをするはやてとは反対に喜びの余りユウヤに跳びつく二人を、ユウヤは苦笑いしながら受け入れる。

 その様子をエリオは羨ましそうにしており、キャロは横目でフェイトをじぃーっと見ていた。

 その視線を目を合わせずともバルディッシュの念話で聞いたフェイトは内心小躍りしており、二人っきりになった時にうんと抱きしめると決めていた。

 

 

「恐らく八神さんの所に連絡がまだ来ていないならもう直ぐ来るかと思いますが…」

 

 

 セリフの途中で一旦二人を離してはやての前にユウヤは移動し、身だしなみを軽く整える。

 はやては自分の思考から戻る。

 いずれにしても、自分達の力が上がるのは嬉しいことだ。

 

 

「これから、宜しくお願いします」

 

「…ああ、よろしくな。ユウヤ君みたいに強い子が入ってくれたら心強いわ」

 

 

 ユウヤははやてに右腕を差し出し、はやても右腕を出して握手をする。

 

 

「歓迎するで。ようこそ、機動六課へ」

 

 

 

 




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