朝、目覚ましの音と共に起床して軽くシャワーを浴びる。朝食を取って身だしなみを整え、今日の予定と練習メニューを確認した後に家を出た。これがこの男、後川現直(うしろかわ ありな)の毎日のルーティンだ。
「行ってきます」
「あ、現直、ゴミ出しお願いできる?」
「うん、いいよ義母さん」
今日いつもと違うことといえば義理の母からゴミ出しを頼まれたことと、登校中、彼がマネージャーをしている部活のメンバーから連絡があったことだ。
「もしもし」
『あ、後川さんいま大丈夫ですか?』
「ええ。大丈夫ですよ遥さん。どうしました?」
現直は素早くメモ帳を取り出して質問に答えられるように、もしくはなにかメモすることがあればメモを取る準備を始めた。
『実は今日の部活を休みたくて…』
「ほう、真面目な遥さんらしくない。差し支えなければ事情をお聞かせ願えますか?」
『実は今日、お姉ちゃんの学校の同好会に見学へ行きたくて』
「遥さんのお姉さんの通う学校に?確か遥さんのお姉さんの学校って…」
『虹ヶ咲学園です』
「…」
現直は自身のメモ帳の最初のページに挟まれている写真を見た。
「わかりました。皆さんには私から連絡しておきます。虹ヶ咲の方の許可は?」
『あ、はい。これから、お姉ちゃんに』
「そうですか………遥さん、少しお願いがあるのですがよろしいですか?」
『はい?』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「彼方さんの妹って想像つかないけどどんな子なんでしょうね」
「とっても楽しみだね!」
瑠和とエマは彼方の妹、遥が同好会の見学にやってくることを聞いて二人で歓迎のためのお菓子を作っていた。きゅうな話だったのでクッキー程度しか用意できないが、それでも何もないよりはマシだ。
「あの………エマさん」
「?」
準備中の瑠和の手が止まる。
「…………誰にも言わないでほしいんですが、相談をしてもいいですか?」
「…うん。いいよ。私でいいなら」
瑠和は少し神妙な顔つきになって聞いてみたがエマは笑顔で相談に乗ってくれると言った。エマの優しさなら断らないだろうという瑠和の人の悪さが少し出たが、誰かに話さずにはいられなかった。それにエマは何を相談されるか大体わかっていた。
「実は………この間…………その、果林さんに……なんていえばいいのか…告白…まがいなことをされまして」
「……告白…まがい?」
果林は告白したとしか言ってなかったので告白まがいとはどういうことか尋ねてみた。
「………好きな人はいるかって聞かれまして……その後いないって答えたら…果林さんはじゃあ自分にもチャンスがあるのかって…」
「…そうだったんだ」
「俺、なんて答えたらいいのかわからなくて、その時は何も言えなくて……果林さんは忘れてくれって言ってましたけど…どうしたらいいか…」
思ったよりややこしいことになっているとエマは感じた。果林も瑠和も、どうすればいいかわからず八方塞がりな状態に陥っている。エマは恋愛のプロでも何でもないし自分自身恋愛を経験したことがないので的確なアドバイスなどできるわけはないが親友のために何もしないという選択肢もなかった。
「…瑠和君はどう思ってるの?果林ちゃんのこと」
「…………わかりません。嫌いではないですし、友人として、スクールアイドルとして、先輩としてなら好意は持ってます。ただそれは、同好会のみんなに持ってる感情とほとんど同じで…」
要するに友達程度の好感度しかないってことだ。
「あのね、瑠和君。私は………果林ちゃんと親友なの…だから、できたら果林ちゃんの恋人になってほしいなって思ってるの」
「…」
「ただ親友だから果林ちゃんに味方してるわけじゃなくてね?果林ちゃんが本当の果林ちゃんでいられる場所は限られてるから」
エマは果林に少し前の瑠和との関係を聞かされていた。だから果林の本当の姿を見られていることも知っていた。
朝香果林が人前で見せる朝香果林は誰かが望む朝香果林の姿だ。瑠和が見破った本当の朝香果林の姿を見せられるのなんてせいぜい家族とエマ、そして瑠和くらいのものだ。その中の一人である瑠和も最近は果林だけのそばにいられるわけじゃない。
だから恋人としてそばにいて上げられれば果林にとって最高の幸せなのではないかと思ったのだ。
果林が瑠和を好きになったのも、それが理由の一つだった。
「…………俺もそうできたらって思ってます。だけど…………それが最善だと思ってるし、俺にとっても悪い話じゃないっていうのも理解できてるのにその判断に踏み切れないのが、気持ち悪くて、心が………なんか、もやもやするっていうか…」
「そっか…………すぐに応えは出さなくてもいいと思うよ?無理に自分に嘘つくと苦しいだけだから。ゆっくり果林ちゃんのことを見て、自分の気持ちに向き合ってみよう?」
「………ありがとうございます」
ー校門前ー
「じゃーん!遥ちゃんでーす!」
虹ヶ咲学園の校門前には近江彼方の妹、近江遥がいた。彼女は虹ヶ咲学園の生徒ではないが今日、姉の活動を見たいと彼方に頼んで見学に来ていた。そして、その遥の隣にはもう一人立っていた。
「すごいすごーい!あの東雲学院で注目度ナンバーワンの近江遥ちゃんに会えるなんて!ときめいちゃう~!」
スクールアイドル好きの侑ははしゃいでいた。なんせ都内でも有名なスクールアイドル部に期待新人現るとまでいわれた近江遥なのだから。
「はじめまして近江遥です。それでこっちが」
「はじめまして。東雲学院スクールアイドル部のマネージャーをさせていただいています。後川現直です。よろしく」
そう、この後川現直という男、近江遥の通う東雲学院スクールアイドル部のマネージャーだったのだ。シュッとしたスタイルで背は高く声は優しい。スマイル一つでご近所のマダムなら軽く悩殺できるであろうイケメンだ。
「この度は何の関係もないのに私の見学も許可していただきありがとうございます」
「いや、同じマネージャーとして他校の練習を見ておきたいって気持ちはわかるよ。同じマネージャー同士仲よくしよう」
瑠和は握手を求めた。現直は快くそれを受け、握手をした。
「はい」
(妙な感じだな。この笑顔…笑顔は嘘くさいが敵意は感じない………それ自体は珍しくないが、ここまで好意的じゃない笑顔も珍しい)
瑠和からの第一印象は良くなかった。
「私からも、急なお願いだったのにありがとうございます」
「いえ、お越しいただいて光栄です」
「可愛いうえに礼儀正しいなんて…天使!」
「でっしょ~?なんかね~?最近の彼方ちゃんがと~っても楽しそうだから同好会に興味津々なんだって~」
彼方は妹に溺愛している様子を見せている。部員の意外な一面が見えたことに瑠和は驚きと喜びを感じていた。
それから二人は同好会部室へと案内される。
道中、何人もの生徒に振り向かれた。
「やっぱり他校の制服は注目されますね…」
「それもあるし、こんな美男美女の他校生徒がいれば誰でも振り返るよ」
侑は笑いながら言った。
「そんな、遥さんはともかく自分なんかが…」
「あ、またそんな謙遜してますね。いっつも告白されるくらい女子に人気なくせに」
「そんな………言いすぎですよ」
どうやら他は認めるが自は認めないタイプのイケメンらしい。
「そうなんだ~でも遥ちゃんは渡せないぞ~?」
「はは、手厳しい」
全員が同好会部室に到着する。同好会メンバーは二人を暖かく迎え入れてくれた。
そして、
「はじめまして~♪あなたのかわいいはここにいる♪スペシャルスクールアイドルかすみんこと中須かすみです♪今日はかすみんに会いに来てくれてありがと~♪」
かすみが挨拶を終えると、そこには現直が苦笑いで佇んでいるだけだった。
「みなさんいっちゃいましたよ…?」
「ちょっと~!置いてかないでくださいよ~!」
現直とかすみが合流し、いつも通りの練習が始まる。学校の外周を走りこむ練習中、彼方はいつも以上に気合を入れてダッシュしていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!遥ちゃーん!」
さらに道中見学している遥に手を振るという余裕まで見せつける。
「お姉ちゃんがあんなに速く走るなんて…」
「………普段の…家での彼方さんは…どんな感じなんですか?」
瑠和はふと気になったことを訪ねてみる。
「え?そうですね…ざっくり言えばおっとりした感じ…ですかね………たまにシャキっとすることはありますが、あんなお姉ちゃんは初めて見ます」
「…なんだか浮かない顔だね」
瑠和は遥の表情に違和感を覚えた。
「え?そ、そんなことないですよ!大丈夫です!」
「…なら、いいけど」
それからさらに柔軟等の練習に移行する。ダンスや発声練習ならかなりのレベルの彼方だがこれは苦手分野だ。しかし妹がいるせいかいつも以上に気合を入れてやっている。そして以前からだが彼方は相変わらずこの練習を苦手としていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
必死に気合を入れるが体はほとんど曲がってない。以前同じく身体が堅かった璃奈もそれなりに曲がるようになったのにも関わらずだ。
「もはや才能だな」
「そうですね………そういえば何か…忘れてるような」
瑠和と話していたせつ菜が何かに気づく。あたりを見回すとそこには現直の姿がない。
「現直さん!?」
「ん!?」
瑠和もそのことに気づく。
「どうかしたんですか?」
「遥ちゃん!君のとこのマネージャーは!?」
「……あれ!?現直さん!?」
遥もすっかり忘れていたらしい。
「とにかく探してくる!上原!高咲!手分けして探そう!みんなはお茶会の準備頼む!」
一応他校の生徒が来ることに関して許可は取ってあるが理由を知らない教師に見つかると面倒だ。瑠和は慌てて探しに行った。
「わ、わたしも探します!」
遥も探しに行こうとしたがそれを瑠和が手で制止する。いざというとき連絡手段を持っていないことと、同じ他校の人間がうろつくのは避けたいところだった。
「遥ちゃんは大丈夫!部室で待ってて!」
「そうそう。さぁ、お姉ちゃんと部室に行こう~」
「すいません………ご迷惑おかけします!」
三人は校内へ分かれて探しに行った。
ー教室棟ー
侑は部室棟へ、瑠和はさっき走っていた学校外周へ向かい、歩夢は念のため教室などがある教室棟へ向かった。ここには練習関連で来ていないが迷い込んでいる可能性はゼロではない。
しばらく走っていると廊下の窓からどこかを眺めている現直の姿が見えた。
「現直さん!」
「…………上原…歩夢さん」
「探しましたよ………どうしてこんなところに?」
「すいません、校舎に戻る途中ではぐれてしまって。今も皆さんが見えないかと上から見ていたところです」
現直は頭の後ろに手を回し、笑顔を浮かべる。
「ともかく見つかってよかったです。戻りましょう」
「ご迷惑をおかけしました」
二人は教室棟から部室棟に向かって歩き始めた。
「歩夢さんの動画、以前拝見しました。いや、こうして実際に見てみると実にお美しい」
「あはは、ありがとうございます。なんだか照れくさいですけど…」
「上原さんは昔からここに住んでいるんですか?」
「え?まぁ、はい……」
「…………いい街ですよね。ここは。特に、東雲水辺公園。あそこはいい」
現直は立ち止まって公園の方を見た。
「………現直さん…?」
その時、歩夢のスマホに電話がかかってくる。侑からの電話だった。歩夢は現直から少し離れて電話に出る。
「侑ちゃん!現直さん見つかったよ!」
そして侑との電話に夢中になっている歩夢の背後に現直は近寄り、背後から歩夢の首元に手を伸ばした。そのことにまだ歩夢は気づく気配がない。しかし、その手を掴んで止めた者がいた。瑠和だった。
「………」
「………」
瑠和はたまたま現直と歩夢が歩いているのを外から発見し、大急ぎでこっちまで来て今の出来事に出会ってしまった。そして、反射的に現直の手を止めた。瑠和は「いったい何をしている」と眼で訴える。現直は驚くでも慌てるでもなく無表情だった。
「うん、うん、じゃあ部室でね………わ!瑠和君!」
いつの間にか背後に瑠和がいたことに歩夢は驚く。
「おう。たまたま外から見えたもんでな」
「侑ちゃんにも伝えたよ。行こう!」
「ああ」
歩夢は部室に向かって歩いていく。歩夢がある程度離れたタイミングで瑠和は現直に向き直る。
「何しようとしてた」
「いえ、何も?」
現直は笑顔を浮かべるが瑠和には作り笑いなことはすぐわかった。さらに追及しようとしたがいつの間にか自分一人で歩いていたことに気づいた歩夢が二人に呼びかける。
「どうしたの~?二人とも~!」
「ああ、すまない」
「すぐ行きます」
瑠和は現直への追及を一旦やめて部室に向かった。なにをしようとしていたのかは知らないがさすがに人目のあるところで何かすることはないだろうと思ったのだ。
「改めて!虹ヶ咲スクールアイドル同好会へようこそ!」
部室に戻るとそこには色とりどりのお菓子が用意されていた。急遽来ることが決まったので大したものは用意できなかったとエマは言うがクオリティだけなら十分すぎる出来のものだった。
皆で楽しく談笑していると、突然彼方が机に突っ伏して動かなくなった。
「…お姉ちゃん?」
「大丈夫ですよ。枕はちゃんとありますから」
そういってしずくが彼方の頭と机の間に彼方がいつも使ってるクッション慣れた手つきでを挟み込む。それをみた遥は急に立ち上がる。
「あの!お姉ちゃんはよく寝ちゃうんですか?」
彼方は家でそんな姿を見せることは少ないのか遥は驚いた様子で訪ねた。
「はい。私の知る限り、彼方さんは寝るのが大好きだと思いますよ?」
「特に膝枕で寝るのが好きだよね」
「膝枕ぁ!?」
「そうそう、愛さんもしてあげたよ?」
「お姉ちゃん、皆さんに膝枕をしてもらうほど頻繁に寝ているんですね…」
「…」
妹がこんな反応を示したことに瑠和は少し驚く。家での交流が少ないとは思えないし、犬猿の仲というわけでもない。彼方が家に帰ってから夜寝るまでの間に、昼寝をしないというのは彼方の昼寝のペースから見て考えにくいと思ったからだ。
(家の中じゃ見栄を張ってる………って考えでいいのかな。もしくは俺みたいに家事でもしてて昼寝のタイミングがないか…)
なんにせよ大した事情はないだろうと思い、追及はしなかった。
(それに、今はそれより気になることがある………)
瑠和はちらりと現直を見た。現直は何事もなかったかのように紅茶を飲んでいるが今回ここに来たのも別に目的があったのではないかと睨む。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
しばらくして自然と彼方は目を覚ます。
「そんなこんなでるなりんが同好会に入ったんだ。りなりーのライブのあとのるなりんってばもう涙で顔ぐっしゃぐしゃで…」
「そうだったんですね!素敵な兄妹愛だと思います!」
「頼むからその辺にしてくれ…」
彼方が顔をあげると遥と愛が笑いながら話している姿が目に入る。その隣では瑠和が璃奈からボードを借りて顔を隠していた。瑠和的に照れ臭い話題だったのだ。
「…あれ?」
「目、覚めた?」
「…はっ!くぅ~遥ちゃんにお姉ちゃんの恥ずかしい姿をみられてしまったぁ~!」
彼方は枕で顔を隠す。この部屋にいる兄と姉がにたような格好をしているシュールな状況だった。
「恥ずかしくなんかないよお姉ちゃん。疲れて当然だよ?いっぱい無理してるんだから」
「無理してるって、なにを?」
遥の言葉に彼方は疑問を感じた。そして同時に瑠和も遥の言葉の詳細を気にした。
「やっぱり…お姉ちゃん同好会が再開してからあんまり寝てないでしょ?」
「…うん。つい、楽しくて」
「……私、お姉ちゃんが忙しすぎて倒れちゃうんじゃないかって心配で…。それで今日、見学に来たの」
「そうだったの?」
「でも、今日のお姉ちゃんは疲れなんて感じさせないくらい元気で楽しそうで…すごく嬉しかった。いつも私を優先してくれたお姉ちゃんがやっとやりたいことに出会えたんだって…」
「遥ちゃん…」
「いまのお姉ちゃんには同好会がとても大事な場所だって、よくわかったの。だから私、決めたよ」
「………なにを?」
「私、スクールアイドルやめる」
「……ん?」
彼方は一瞬遥の言っている言葉の意味を理解しきれず反応が遅れた。
「「えっ…えぇぇぇぇぇ!?」」
なぜか彼方と同じくらい侑が驚く。侑はスクールアイドルそのものに興味津々であり期待の新人が唐突な引退宣言したことに驚いたのだろう。
「や…や………やめ……ど…え……」
「どうして!」
気が動転しているのか彼方はうまく言葉を発せられずしどろもどろになっている。そんな彼方の代わりに侑が理由を聞いた。
「このままじゃ………お姉ちゃんが身体壊しちゃうから…」
「彼方ちゃんが寝ちゃったせいで遥ちゃんのこと心配させちゃったの?大丈夫だよ~」
「全然大丈夫じゃないよ!このままじゃお姉ちゃんが体壊してしまうから…お姉ちゃんはお母さんが忙しいからってお家のこと全部して!家計を助けたいからってアルバイト掛け持ちして!奨学金もらってるからって勉強も頑張って…その上スクールアイドルもなんて…誰だって倒れちゃうよ!」
大丈夫だとは言うものの理屈的には遥の方が正しい。彼方は反論できずにいた。そしてそんな二人をみて瑠和は練習の時に感じた遥の表情の違和感の理由が分かった。
大切な姉のために自分の大切なものや気持ちをを捨てる決意を固めた表情。そんなところだったのだろう。
(そういうことか……)
「もういいの。私のことより、お姉ちゃんにはやりたいことを全力でやってほしいの。現直さんそういうことでお願いします」
静かに話を聞いていた現直に対して遥が頭を下げる。
「………本当にそれでいいのかい」
「はい」
「だ、ダメェ!そんな…遥ちゃんは夢をあきらめちゃダメ!」
彼方は遥に掴みかかりながら必死に止めようとした。
「お姉ちゃんが苦労してるのわかってて夢を追うことなんて……できないよ!」
「そんなの、気にしなくていいんだよ~。だって遥ちゃんは大切な妹なんだもん」
「どうして………妹だったら…気にしちゃいけないの?」
「心配させちゃってごめんね?彼方ちゃん、もっと頑張るから」
「お姉ちゃんの!分からず屋!!」
遥はそう言い残し、同好会部室を出て行った。
「わたし、ちょっと見てくる!」
「僕が行きます…………これは、東雲学院の問題ですから」
すぐに侑が追いかけようとしたがそれを現直が制止させる。確かに現直のいう通りで、侑はその足を止める。
「…………取り合ず今日は解散にするか。こんな空気の中じゃやりにくいだろ。色々と」
二人がいなくなったタイミングで瑠和が提案した。
「………そう………だね…ごめんね?みんな」
最初に同意したのは彼方だった。こんな気まずい空気にしてしまったことに彼方は謝罪する。だが、周りは気にしないでと言ったし、みんな彼方を気に掛ける。
「じゃあ今日は解散ってことで。お先失礼」
瑠和は鞄を持ってさっさと出て行ってしまった。はたから見れば心無いように見えるがそれが無意味な行動ではないことは同好会の誰もが分かっていた。
「やれやれ、相変わらずるなりんは影で動くのが好きだねぇ」
「璃奈ちゃんのときもそうだったけど、恩を着せてるって思われるのが嫌いなタイプね」
「瑠和君…」
続く