もうすぐコミケですね。皆さんはコミケ、いかれますか?私は行きます初めていったのが高校の時なんですがすでに87くらいだったので100回目には死んでも行く予定でした。それにしてもコミケくらいでしか行かなかった場所が実家のような安心感を覚えるほど行くことになるとは。
彼方の家に泊まった翌日、瑠和たちは近江家から出発し登校した。瑠和は教室についてから普段に比べて妙に静かなことに気づく。
(そういや今日は嵐珠の声を聞いてねぇな)
ふと嵐珠の方を見ると嵐珠は机に突っ伏すようにしていた。そういえば昨日も朝以外やかましく声をかけられることもなかったことを思い出し、普段の嵐珠らしくないと瑠和は少し気にかけて嵐珠の机まで向かう。
「よう」
「瑠和………何か用?」
「普段に比べて妙に静かだと思ってな。いったいどうした?」
「アナタがライブまで返事を待ってほしいって言ったから待ってるの」
嵐珠の表情から読み取れたのは寂しさと落ち込んでいるということだった。
(ああ、なるほど)
瑠和の昨日の態度は嵐珠にとっては拒絶ととられたのだろうと瑠和は考える。嵐珠を拒絶したいわけではない。今はまだ言葉にできないが嵐珠を救いたいという気持ちがあるのは確かで、次のYGとのライブまで嵐珠にはいつものポテンシャルでいてもらわなければならなかった。
「………今日、一緒に昼でも行くか?」
「…本当?」
「ああ」
ご機嫌取りというわけではないが瑠和は嵐珠のポテンシャルを取り戻すために昼食に誘った。狙い通りというか、嵐珠の表情は少しだけ明るくなった。
「じゃあ、昼休みにね!」
「ああ」
―昼休み―
瑠和と嵐珠は約束通り昼食の時間になると一緒に食堂を訪れた。
「普段は何食べるんだ?」
「あんまり決めてないけど嵐珠が好きなものはお肉だからお肉なら何でもいいわ!」
「そうか、じゃあ………お、あの角煮プレートなんてどうだ?」
「好的!それにしましょ!」
二人は角煮プレートを買うために食堂の列に並ぶ。
(…………ていうか角煮プレートってなんだよ)
疑問はさておき、注文したプレートを受け取り瑠和たちは食堂の席に着く。
「いただきます!はんっ………ん~好吃!」
肉を頬張り、嵐珠は幸せそうな笑顔を浮かべる。朝とは打って変わって幸福そうなその顔に瑠和は微笑む。
「……」
ふと、油分で少し潤った嵐珠の唇が瑠和の目に入る。初めて会ったあの日、瑠和は嵐珠から見えていた孤独の色に気を取られキスを拒めなかった。そもそもされたところでなにか特別な感情は抱かなかった。もちろん嵐珠への心配の方が勝っていたというのもある。
いくら心配が勝っていたとはいえ、昨日彼方とキスをしようとしたとき瑠和は鼓動の音がうるさくなるくらい緊張して気分が高揚した。
(…それはつまり、そういうことだよな………少なくとも俺の想いは彼方さんにある…あとは)
「どうしたの瑠和?ぼーっとして」
「ん、いや、何でも」
「ひょっとして嵐珠に見惚れちゃった?いいわよ?好きなだけ見惚れちゃって?」
「ああ、いい景色だ」
いつも通りの嵐珠に戻ったことに瑠和は安堵し、軽いジョークを言いながら食事をすすめる。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
夕方、天王寺家に彼方たちがやってくる前に瑠和は大急ぎで準備を進め、夕食を作る。愛する人が夕食を食べに来るのだ腕によりをかけないわけにはいかない。
「よし………準備完了!」
準備を完了すると同時に璃奈たちが帰って来る。
「ただいま」
「お邪魔しまーす!」
「わぁ~!いい匂い!」
「誰かさんが気合い入れて作ってくれたのかねぇ」
玄関に入るなり漂ってきた香りに各々感想を述べている。
「いらっしゃい。腕によりをかけて作ったからまぁ楽しみにしててくれ」
「おお、いつに増して瑠和先輩が気合入ってますねぇ!」
「もちろん。彼方さんに食べてもらうんだから。気合を入れないわけにはいかないだろ」
「やぁ、なんか照れるぜぃ」
今日は夕食には少し早い時間だったが璃奈のやりたいことをするには時間が必要なので早めの夕食とした。
「「「「いただきます!」」」」
各々が料理を口に入れる瞬間を瑠和は緊張の面持ちで見つめる。特に彼方の反応を伺っていた。
「ん~♪Buono!」
「相変わらずかすみんより料理が上手いのなんか腹立ちますねぇ」
「おいしい」
エマ、かすみ、璃奈からは良い評価だ。肝心の彼方はまだ租借をし、いま飲み込んだところだ。彼方は瑠和の方に視線を向ける。
「うん、あいかわらず結構なお手前で」
表情が崩れながらも彼方は言った。料理のおいしさに表情が崩れたのだ。その幸せそうな顔に瑠和は少しホッとする。なぜだか知らないが来た時から彼方の表情の中にやや不機嫌な色が見えていたのだ。
「お気に召されたようで何よりです」
「じゃー作ってもらってばっかりじゃ申し訳ないし、瑠和君が作ったものだけど」
彼方は料理をフォークで刺し、それを瑠和に差し出した。
「あーん」
「……あ」
瑠和は皆の手前、少し照れくさそうな顔をしたが彼方から差し出された愛情に甘え、それを口で受け取った。
「おいしい?」
「はい…おいしいですし、幸せです」
二人のイチャつきが生み出す極甘な空間に巻き込まれたかすみは小さくため息をつく。
「りな子、料理が甘い気がするんだけど、気のせいかな」
「………多分、気のせいじゃない」
そのまま夕食を終え、入浴を済ませてから璃奈の提案したゲームがスタートした。
「第一問、赤い果物といえば?りんご!」
「いちご!」
「さくらんぼ!」
「パッションフルーツ!」
「いちご…」
五人はそれぞれお題に沿った回答をそれぞれフリップボードに書いて出した。そして、少しの間があってから彼方が口を開く。
「………なに?これ」
「何でまた俺まで」
一番いる理由がわからない瑠和もなんで呼ばれたのかを聞く。
「四人の気持ちを揃えるゲームを考えた」
「俺がいる理由は?」
「これを通して作曲のイメージとかしてもらえたら嬉しい。それに彼方さんと気持ちがそろったらうれしいと思って」
一応瑠和は現在休憩中ではあるものの、YGとのライブの前には復帰する予定だ。
どうやら璃奈なりの気遣いらしい。一問目から同じ答えを出した瑠和は彼方と顔が会い、照れながら参加を続ける。
「次、第二問!虹ヶ咲学園といえば?スクールアイドル同好会!」
「瑠和君と出会った場所!」
「校舎がキレイ!」
「果林ちゃんが迷う!」
「彼方さんと出会った場所」
「このバカップル追い出しちゃダメ!?」
二問続けて答えをそろえた上にほぼ惚気の回答を出した二人に対しかすみが声を荒げる。
「やぁ、相性抜群だからしょうがないねぇ」
「仕方ないな」
「第三問!お台場といえば?」
「「ヴィーナスフォート!」」
「レインボーブリッジ!」
「ジョイポリス!」
「大盛りの牛丼屋さん!」
ゲームとしてはかなり盛り上がるものの、なかなか答えが揃わず夜が更けていく。
十数回繰り返したが結局答えが揃うことはなく、さすがに疲れが出てぐったりとみんなぐったりとしていた。
「三回もお泊りしたのに~。このままならソロでやった方がいい結果出るんじゃないですか?」
まだ時間があるとはいえ、かすみのその意見はごもっともだった。ここまでやって意見や心が揃わないのであればソロで行った方が結果はいいものになるかもしれない。
しかし、それではだめだということを皆理解はしていた。
「だけど、それじゃ嵐珠に伝えられない」
「それはわかってますけど、嵐珠だけじゃなくて私たちやファンの皆さんも楽しめないと」
「………」
それはそうだ。瑠和は何かを頼める立場にいないことを察し、黙るしかなかった。だが、全員何かが引っかかってる感じがあるのも事実だった。
―翌日―
この日は嵐珠に声をかけられる前に瑠和は教室を出た。もしかしたら昨日の件で機嫌を良くし、また来る可能性が考えられたからだ。瑠和はいつも通り校舎裏に向かう。そこにはやはりミア・テイラーがいた。
「よう」
「また来たの?昨日みたいに嵐珠とランチにすればいいのに」
「それはあいつのためにならない。ポテンシャルを取り戻してほしかっただけだ」
「あっそ。まぁ何でもいいけど」
瑠和は座って昼食を取り始める。ミアもその横に座ってハンバーガーを食べ始める。
「そういえば、高咲侑だっけ?同好会にいる」
意外な人物の名前が出てきて瑠和は少し驚く。
「侑がどうかしたか?」
「昨日はんぺんと遊んでたらたまたま彼女に会ったんだけど課題のことで泣きつかれてさ、まったく年下に泣きつくなんて、どうかしてると思わないかい?」
それを言われた時、瑠和はふとかつての果林を思い出した。
「………そういうのは素直っていうんじゃないか?」
「What?」
「自分のプライドとか、そういうの無視して自分ができないことを自覚して才能ある人に助けを求める。行動としては正しいし、何より素直なんだ。誰にでもできることじゃない」
かつて瑠和に部屋の掃除や勉強を任せた時の果林とよく似ていると思った。できないことをできないと踏ん切りをつけ、素直に助けを求めに行く姿勢は誰にでもできるものではない。
「そういうもん?」
「そういうもんだ。それに、天才にはわからないかもしれないが人の考えに触れると、一人じゃ気づかない新しい可能性が生まれる。悪いことじゃないと思う。それにまぁ、侑は一生懸命なだけなんだ。長い目で見てやってくれ」
「………そっか。ま、君がそういうなら」
その時、瑠和は自身の言葉中に嵐珠に伝えるべき言葉があったことに気づく。
「………そうだ、誰かと触れることで新しい可能性が生まれる…これか」
「…?何の話?」
「いや、何でも。ありがとうな!ミア!」
瑠和はミアに礼を言って昼飯も途中だというのに走り去っていってしまった。取り残されたミアは「何だったんだ今の」という顔をしながらハンバーガーを食べた。
「…暑苦しい奴」
瑠和は大急ぎで教室に戻り、作詞用のノートを取り出す。そこに思いつく限りの言葉を書きだす。今思いついた言葉だけじゃない、自分のこれまでの経験も踏まえた歌詞を考え始めた。しかし、少ししてから手が止まる。
(………まだ足りない………それを言葉だけじゃなくもっと具体的に伝える手段がなにか………)
結論は見えている気がした。だがそこに具体性を持たせるのは少し難しかった。
本当はこのまま口出しせずに終わらせる予定だったが何も決まらない空気に危機感を覚え、瑠和は手を貸すことに決めた。
そして夕方、今日はエマの家に行くことになっている。瑠和は作詞と、見えていない具体的な何かを探すのに時間がかかっていたせいで合流が遅れてしまった。
「すまん、遅れた」
「ううん、大丈夫」
エマの部屋ではお茶会が開かれていた。交流を深めるという点ではエマらしい発案だ。瑠和は急いで書いてきた作詞を見せようとしたが、みんなの色が昨日と比べて晴れた色になっているのを感じた。瑠和は作詞したノートを出す手を止める。
「………なんの話してたんだ?」
「ああ、侑ちゃんが今日課題のこととかで悩んでてね、みんな相手のことは良く見えてるけど自分のことは良く見えてないんだねって話をしてたんだ」
「…」
「ちなみにぃ、皆さんからみたかすみんはぁ、どぉんな感じですかぁ~?」
かすみがぶりっ子をしながら自分の印象を皆に尋ねる。さしずめ最近言われていないかわいいを言ってほしいのだろうと思ったが反応は思ったよりも違うものだった。
「本当はすごくみんなのことを考えてくれるよねぇ~」
「へ?」
「わかる」
「ステージ衣装の話をしてた時も自分だけじゃなくて私たちのことも考えてくれてたもんね」
「あぅぅ~~か、彼方先輩だってマイペースに見えてすっごくお世話好きじゃないですかぁ~!」
予想外の方向から褒められたかすみは照れ隠しか彼方の方に振る。
「違うよ~」
「「わかる」」
かすみの意見に璃奈とエマが声をそろえて同意する。そして、そう思った理由を面と向かって言われ彼方は少し照れていた。
そしてそのとき、瑠和は少し驚いていた。スクールアイドルフェスティバルで皆が歌った時は皆が個性を出してたから色が混じることなく綺麗に並び、虹のように見えた。
だが、今は色が混じって新たな色を生み出そうとしていた。
「………」
これ以上やってやるべきことはない。そう思い瑠和は部屋の隅にノートだけおいてそのままこっそり帰ろうとした。
「ちょっと、なにいい感じに消えようとしてるんですか?」
「わぁ、びっくりした」
帰ろうとしていた靴を履きかけたところでかすみに見つかり、捕縛された。そのままずるずると部屋まで運ばれ、彼方の隣に座らされる。
「俺にできることはもうないよ。このままみんなで…」
「瑠和先輩も一緒の方が楽しいですよ!瑠和先輩はみんなから見てどうですかぁ?」
どうせまじめだとか思いやりが深いだとか言われるくらいだろうと瑠和は高を括る。しかし、その予想は隣にいた彼方に裏切られる。
「意外と甘えんぼさんだよね」
「!?」
「彼方さん家で彼方さんのお母さんに撫でられてましたし」
「まんざらでもなさそうだったもんね~」
「合宿中ずっと彼方さんと一緒に寝てる」
「ぁ…ぁ…ぁ…ぁぁ」
瑠和は口をあんぐり開けて顔を真っ赤にする。自分では結構しっかり者のイメージを持たれていると思っていたので余計に恥ずかしかったのだ。真っ赤になって動けない瑠和を彼方は抱きしめて撫でる。瑠和は赤くなった顔を隠すためにそれに甘んじた。
「よしよし」
「自分のやりたいことを発表する合宿だったのに、最後は皆から自分のことを教えてもらう合宿になっちゃったね」
「でも、なにか見えた気がするよ」
「ソロのときは自分のやりたい自分だけど…」
「一緒になると、新しい自分を見つけることができる」
瑠和と同じ結論に皆がたどり着いた。瑠和は彼方の胸に顔をうずめながら部屋の隅に置いたノートを取ってそれを見せた。
「………ん」
「これは?」
「みんなバラバラで違うからこそ、一人では気づかない新しい可能性に気づく………それを歌詞として使えないかまとめた………よかったら使ってくれ」
四人は中心に瑠和の書いた歌詞ノートを広げる。
「ああ!いいじゃないですか!」
「うん、私もいいと思う」
「ですけど、これだけじゃ何か足りないと思うんだ。もっと、みんなだけじゃない。ファンのみんなも巻き込む形にしたい………」
「なかなか難しい注文ですねぇ」
「けど、実現できればきっと伝えられる。誰かと一緒にいることの楽しさを」
しばらくみんなで頭を捻るがなかなかいい案は出てこない。
「みんなで手をつなぐ?ステージを下りて…」
「それもいいとは思いますが………ん?手…………そうだ!」
エマが出した手をつなぐという案から瑠和は一つ閃いた。その案にみんな賛成し、大体の方向性が決まった。時間がないのでそのまま作詞、作曲、衣装案まで一気に進めていった。
作業は遅くまで続く。そんな中で瑠和は軽い夜食を作って差し入れる。
「ありがと~」
「いいえ、手伝えることあったらいつでも言ってくださいね」
瑠和も本調子を取り戻してきた。そして自分も夜食を食べようとしたとき、かすみが口を開く。
「そういえば瑠和先輩の手料理を最初に食べたのって果林先輩が初めてなんですよね」
「え、なんでそれ知って…」
唐突に爆弾発言を投下する。刹那、瑠和は彼方の方から何やらヤバい気配がするのを感じた。瑠和は冷汗を額から流しながら恐る恐る彼方の方を向くと、彼方は笑顔だった。
「あ、あの………」
「瑠和君、どういうこと?」
「………」
瑠和は観念し少し前に果林の手伝いをしていた話をした。こんなことがなければ絶対に話さなかったであろう内容だ。一応付き合う前の話ということだったので浮気だとかそういう見られ方はしなかった。
「ふーん………事情は分かったけど、彼方ちゃんちょっと妬いちゃうなぁ。彼方ちゃんまだキスもしてないのに………」
「いや、添い寝も大概だと思いますよ?」
「………」
瑠和は小さく微笑み彼方の肩を掴み、おでこを合わせた。
「全部終わったらずっと彼方さんの隣にいます。まだ彼方さんとできてないこと、たくさんしましょう」
「………うん」
―合同ライブ当日―
特殊な会場で行われることになったYGとの合同ライブの客席に嵐珠は足を運んだ。そして、観客の中に瑠和を見つける。
「来たわよ。どれほどのものが見られるか、楽しみにしてるわね」
「………鐘嵐珠。彼方さんが出る曲のとき、ちょっと頼みがあるんだけどいいかな?」
「………?」
会場全体が暗くなり、彼方、かすみ、璃奈、エマの四人のユニットがステージに現れる。
「みんな~!」
「初めまして!」
「私たち!」
「「「「QU4RTZです!!!」」」」
曲が始まる。ステージから放たれた四人の調律された歌声が会場全体に響き、観客を包み込んでいく。
「alright!大丈夫さ…たまには頼ったってOK!♪」
「風が肌をすり抜け、心地いいrhythm聞こえたよ♪」
ここの歌詞は瑠和の心情を描いた部分が大きかったたまには頼ったっていい。それが嵐珠にもできれば孤独ではなくなる可能性がある。
「こんなに広いセカイで僕らが出会えた奇跡♪」
「Be Yourself それぞれの形が気付かせてくれた♪」
バラバラだからこそ気づくことがある。だが自分じゃ気づかないことを気づくためには誰かといっしょでないといけないのだ。
そして、このタイミングで瑠和は嵐珠の肩を叩き、両手を出す仕草をみせた。そして次の歌詞の瞬間瑠和は大きく手を上空に上げて手拍子を始めた。
「…?」
「光閉ざそうとも色づいてく!一人じゃ見えなかったパノラマ!まるでPrism!!Let's enjoy our life together!!♪」
手拍子をしながら会場全体を一体化させる。それがみんなで編み出した一体化の方法だった。瑠和の行動を見て嵐珠も少しだけ手拍子を取る。
「カラダJU☆Shake it!Shake it!Shake it!音に合わせて!カラフルMake it!Make it!Make it!思うがまま!眩しいくらい声と声が輝くハーモニー!何度でもShake it!Shake it!Shake it!The world is amazing!!Let's Make it!Make it!Make it!自由に!playing!みんなで楽しもう☆もうワクワクが止まらないMy Heartbea…♪」
「ブラボー!!」
歌詞の一部と手拍子のアイデアは考えたが、ダンスや曲などにはほぼ触れなかったため、瑠和は途中からステージに夢中になっていた。瑠和は一通りステージに歓声を投げたあと、嵐珠の方を振りかえる。
「どうだった」
「……アタシにはできないステージだった。それだけは、認めるわ」
嵐珠はそれだけ言って帰っていってしまった。
「…嵐珠」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ライブ成功おめでとう~!」
ライブを終え、同好会とYGは虹ヶ咲の同好会部室に集まり打ち上げをやっていた。しばらくわいわいとやっていたところに瑠和が現れた。
「ライブ成功、おめでとうございます」
「瑠和君」
「…彼方さん。大切な話があります。少し、来てくれませんか」
「…」
彼方は瑠和に誘われ、海の見える展望デッキまで来た。
「お話ってなぁに?」
「……嵐珠は、孤独と共に生きる覚悟を決めてます。他人と一緒にやることを自分にはできないことだって割り切って」
「………」
「俺は………嵐珠のところに行きます」
その眼は決して彼方を捨てるという選択をした目ではなかった。この先彼方と幸せに歩むために必要なことをやる。そのための決意だった。それは彼方にも伝わっていた。
「うん、わかった」
「………すいません」
「…………っ!」
彼方は瑠和に飛びつき、そのまま一気に唇を重ねた。瑠和は突然の出来事に驚き、目を見開いたがすぐに彼方を抱きしめ彼方を離れさせなかった。
悠久とも思えた一瞬が終わり、二人は顔を離す。少しの間息を荒げながら互いに見つめあう。しかし、彼方は少し不満げだった。
「彼方ちゃんは上に行くよ」
「え?」
彼方は瑠和のシャツを少しずらし、首元に口を付けて軽くかみつきながら強く、強く吸い付いた。彼方の歯が皮の薄い部分に食い込み、若干の痛みを伴ったが瑠和は歯を食いしばって耐える。
少しして彼方は瑠和の首元から口を離した。瑠和の首元にはちょうどシャツで隠れる部分に赤い痣、いわゆるキスマークがついた。ただのキスは既に瑠和と嵐珠がしている。しかも先日明かされた手料理は果林が最初に食べていたという事実、瑠和の初めてが周りの人物に奪われ彼方は少しフラストレーションが溜まっていたのだ。
「唾………つけたからちゃんと戻ってこないとだめだからね?」
「……………もちろんです」
瑠和は笑顔で答えてから彼方の髪を持ち上げ、うなじにキスマークを付ける。
「彼方さんも、忘れないでくださいね」
「もちろんだよ」
再び同じ場所に戻ると誓い合い、とりあえずその日だけは、二人は海風に吹かれながら過ごした。
続く
せつ菜!菜々!お誕生日おめでとう!!
逢田さんもおめでとうございます!サンシャインでの推しは梨子ちゃんです