履きなれない靴で足の小指がえらいことになりながらも必死に西へ東へ南へ。虹ヶ咲の島に行ったが最後、特に買うものもなかったはずなのに鞄はパンパン。
そして、彼方さんの本を買った影響がちょっと内容に出てるかも…?キャラ崩壊、してなきゃいいんですが。
今回はあんまり話が進む感じではないです。少しグダグダした感じになっていくかもしれませんが今は力を溜めている時期だとお考えくだされば……よしなに。
「そう、わかったわ」
嵐珠も一度ライブをしたことがある有明ガーデンの水のテラス。そこのカフェで瑠和は嵐珠の申し出を受けることを伝えた。嵐珠は普段のようにはしゃぐことなく静かにそれを受け入れた。
「スクールアイドルを目指すのはいいのだけれど、私の彼氏になってくれるのかしら?」
「……それなんだが、嵐珠は短期留学でここにいるだけなんだろ?なんで俺を欲しがる?すぐ疎遠になるのは目に見えている気がするが」
「もし、あなたが嵐珠のモノになってくれるなら…………アタシは日本に来るわ」
「………」
「アタシはね、学生時代の甘酸っぱい思い出作りにあなたが欲しいわけじゃないの。まだまだ続く鐘嵐珠という人生を、この先あなたと一緒に歩むためにあなたが欲しいの」
嵐珠の目は本気だ。言い方は遠回しだが、要するに最終的には結婚を視野に入れたお付き合いということだ。瑠和は重症だと思いながらも少し考える。
「そうか………まぁお前のステージに目を奪われたことは事実だ。すぐには決められないが考えてはおくよ」
「それじゃ困るわ!アタシ中途半端って見ていてイライラするの」
「まだ知り合って一ヶ月と経ってない相手を結婚も視野に入れて付き合えっていう方が無理があるだろ」
「………一目惚れってしたことない?」
「あ?」
「アタシはあなたを見た時……一目惚れした。ここに来たのはスクールアイドルをやりたいからっていうのももちろんあるけど、実際あなたを見た時やっぱり嵐珠はこの人が好きだってわかったの」
瑠和はそれは違うと思っていた。嵐珠が欲しいのは瑠和ではなく瑠和の眼であることをなんとなく察していた。
「……事情は分かったけど、やっぱり嵐珠っていう人間がわからないと何とも言えない。だからしばらく一緒にいさせてくれ。次のフェスまでには答えを出す」
「………………わかったわ。じゃあ、しばらく嵐珠のおうちに泊まりなさいよ!うん、それがいいわ!」
「…ああ、わかった」
おせっかいと言われようとこの子に本当に大切なものに気づかせる。瑠和はそう決心していた。そして何より絶対に彼方の基に戻る決意をしていた瑠和は多少のことは拒むことはしなかった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「お疲れ様でーす!」
「かすみちゃん」
「……ん?」
いつも通り部室に来たかすみだったが、部室内に漂う異様な空気を感じて立ち止まる。部室を見回してみると、異様な空気の発生源は部室のソファからであることに気づく。ソファにはあからさまに元気のない彼方が横になり、エマの膝枕を涙で濡らしていた。
「りな子なにあれ?」
「彼氏が戻ってくるって約束したはいいけどやっぱり寂しい彼女の図」
かすみの質問に璃奈が冷静に解説する。
「まぁ……そんなことになるだろうとは思ってたけどねぇ」
「璃奈ちゃん………」
「…?」
彼方が手招きをする。璃奈は何だろうと思いながらも彼方に接近する。彼方はエマの膝枕から起き上がり、自分の隣に座るように促す。璃奈が隣に座ると彼方は璃奈を膝にのせて抱きかかえる。
「ひょっとして瑠和先輩の代わり?」
「うん………ちょっと小さいけど近い香り…」
璃奈は璃奈ちゃんボードを取り出して白紙のページに新たな表情と、普段とは違う髪型を書いて顔の前に持ってきた。
「………璃奈ちゃんボード「お兄ちゃん」」
「それでいいんですか?」
シュールな光景が部室内に広がる。
(………お兄ちゃんが嵐珠さんの家に行くこと、黙っておこう)
―嵐珠宅―
「お邪魔します」
「欢迎!瑠和!」
瑠和は嵐珠の家まで荷物を持ってきた。しばらく瑠和はこの部屋で暮らすこととなっている。
「さて、さっそくスクールアイドルの練習と行きたいところだけどもう夕方だし本格的な練習は明日からにしてきょうは夕飯にしましょ!」
「そうか」
「嵐珠あなたのために料理作ってみたの!食べてみて!」
そう言ってテーブルに置かれたのは嵐珠のお嬢様な雰囲気とはかけ離れた見た目の料理だった。妙に濃い味付けの香りがする上に雑に切られた食材にまとわりついた油が料理の輝きを物理的にを増している。
箸で試しにニンジンを持ち上げてみるとろくに皮も剥いていない。
「いただきます」
意を決して一口食べてみる。口の中に油と、塩と、ほのかに感じる味覇の風味が口いっぱいに広がる。味付けとしては悪いものではないが味が濃すぎるし何より油でギットギトだ。正直これをいきなり出されたら嫌がらせに思われてもおかしくない。
「初めて料理してみたのだけれど……どうかしら?」
嵐珠の表情を見る。不安の色と期待の色が見えた。
「うまいよ」
「本当!?よかったぁ!」
安心の色に変わるのが分かった。嵐珠のステージと普段の学校生活を見ているが、彼女の表情の色がこんな風にわかりやすく見えることはほぼない。少なくとも不安や安心のような心情変化の色が見られることは少ない。
それは彼女にとって気を許せる相手というのが日常の中にいないことと同義だった。
「じゃあ、私もいただきます」
嵐珠も自分で作った料理を口へ運び、一口目でさっそく顔を青くするのが分かった。自分でもまずいことはわかったのだろう。
「………瑠和、これ本当においしかった?」
「ああ」
「…そう」
本当はうまいなんて感じてはいないが、今まで人の顔色を見て育ってきた瑠和はポーカーフェイスも見破られにくい嘘のつき方もお手の物だ。
(嵐珠はまだ大切なことに気づいていない。だから、身をもって知ってもらえばいい。俺が君のところにいることはどういうことか)
そしてその日の夜、瑠和に用意された寝床へ行く。そこは見るからに高級そうなベッドで、最初から瑠和と一緒に暮らすのを想定されていたかのような寝室だった。
(本来だったらもっと早く俺を抱き込む予定だったのかな)
そう思いながら瑠和はベッドに入った。これまで経験したことがないくらいふかふかのベッドで瑠和は自然と眠りへ誘われていく。ベッドに入ってから10分もたたないうちに瑠和は眠ってしまった。
「………ん」
瑠和が眠ってからどれくらいの時間が経っただろう。慣れない環境だからだろうか、瑠和は自然と目を覚ます。
「あ……………」
横から声がした。瞳だけを動かすと視界の端にピンク色の髪の毛が見えた。嵐珠だ。瑠和が眠っている間にいつのまにやら添い寝をしていたらしい。
「嵐珠?」
瑠和が目を覚ましたことに気づくと嵐珠はすぐにベッドから飛び降り、弁解する。
「对不起!寝心地がどうか聞きに来ただけなんだけど、気持よく眠っていたからつい………すぐ戻るわね!」
「…待てよ」
そのまま部屋を去ろうとしたが瑠和は嵐珠を止める。
「一緒に寝よう。一人は心細いしな」
「………瑠和」
嵐珠はその場で少し考えて遠慮気味にベッドの端の方に横になった。その顔は恥ずかしそうな、うれしそうな、そんな色が見えた。
―翌日―
瑠和と嵐珠が登校し、瑠和が自分の席に着くと教室の扉から璃奈が覗いているのが見えた。
(………璃奈?)
瑠和と目が合ったことに気づくと璃奈はちょいちょいと手招きをした。瑠和はちらりと嵐珠の方を見て、彼女の興味が瑠和以外にあることを確認すると気づかれない様に外へ出た。
「どうした、璃奈」
「お兄ちゃん、今からそこの廊下をまっすぐ、できれば壁寄りで歩いて行って」
「え………おう」
瑠和が言われた通りまっすぐ廊下を歩いていくと会談へつながる曲がり角のところで腕を引っ張られる。急に視界に移る景色が変わったことに慌てている間に階段裏の廊下の壁に押し付けられる。そして、気づけば目の前に彼方の顔があった
「彼方さん」
「………き、昨日から嵐珠ちゃんのお家に泊まってるって本当?」
「……………はい」
「彼方ちゃんは君に会いたい気持ちを璃奈ちゃんを抱きしめることで我慢しているというのに~」
今朝、彼方は瑠和に会いたい気持ちを抑えきれずに瑠和の家まで迎えに行ったものの、家から出てきたのは璃奈だけだった。璃奈に問い詰めた結果璃奈が白状したらしい。
彼方の顔からは嫉妬の色が見えた。気持ちはわからなくもない。むすっとした表情で彼方は少し考えてから瑠和のワイシャツのボタンを外し、この間キスマークを付けた場所を捲る。服をまくられた瞬間、瑠和は彼方の手首をつかんで逆に彼方を壁に押し付けた。
「ひゃっ…」
「会えなくて、色々不満が溜まってるの………彼方さんだけだと思いますか?」
「え…んぅ!?」
彼方が困惑している隙に瑠和は彼方を一気に抱き寄せ、唇を奪う。彼方の姿勢を後ろに崩して抱きしめることで彼方は瑠和を押し戻すこともできない。
少しの間、ソフトキスをしていたが瑠和は抱きしめる力を強くして彼方の口の中に舌を侵入させる。
「!?」
彼方が驚くが抱きしめる力が強く離れることも姿勢を変えることも許されない。驚きと緊張で呼吸が乱れるが整える余裕もなく、しばらくしてから彼方が解放されたがそのまま力なく地面にへたり込んでしまった。
「はぁ……はぁ……」
「俺だって、嵐珠にファーストキス持ってかれたの悔しかったんです」
「………」
それくらい彼方に対する愛情が強いという表現だろうかと彼方はぼーっとする頭で考える。
「瑠和~?」
曲がり角の向こう側にある瑠和の教室から嵐珠の声がきこえた。
「孤城のお姫様がお呼びなんで俺はそろそろ…」
瑠和が立ち去ろうとしたとき彼方は瑠和に飛びつき、瑠和は体制を崩して後ろに倒れる。彼方はその上に乗っかり、さっき服を捲った場所に口を付けて思いっきり噛みついた。
「痛っ!!」
思いもよらない痛みに叫び出しそうになったが瑠和はなんとか口を塞いで声を抑える。
「瑠和?…………おかしいわねぇ、こっちから瑠和の声が聞こえたと思ったんだけど……」
嵐珠が一瞬こちらを確認しに来たが階段の裏にいたため、気づかれはしなかった。しばらく瑠和の首もとに彼方の歯が食い込む感覚があったが、少しすると彼方が離れた。
「彼方さん…?」
離れてもしばらく彼方は俯いていたが、ゆっくり顔をあげた。
「彼方ちゃんを本気にさせたんだから、覚悟しておくんだぜぃ?」
彼方の表情から見えた色は嫉妬でも愛情でもないものだった。見たことのない色だったが、少なくとも怒りではない様に思えた。そう思えたはずなのだが、瑠和は自然とその色にやや怯えていた。
「………はい」
―放課後―
放課後は嵐珠の部屋でひたすらレッスンを重ねる。嵐珠の指導はかなりきついものだったがそのレッスンがあったからあの嵐珠のパフォーマンスがあるのだろうと理解させられる。しかしそんなハードなレッスンで瑠和は弱音を吐かなかった。
「好工作!今日はここまでにしましょう!かなり良かったわ。流石は嵐珠が見込んだだけのことはあるわね」
「はっ…そりゃ……はっ…どーも………」
瑠和は息絶え絶えになりながらも返事をした。そのままシャワーを浴びに行き、脱衣所で服を脱ぎ捨てて浴室に入る。鏡に映る自身の身体を見て、首元についた歯形を撫でる。
「早く帰らないと……」
シャワーから戻ると、嵐珠も交代でシャワールームへと行く。嵐珠がシャワーを浴び終わってから夕食となった。居間に並べられたのはまたもや不器用に切られた野菜や肉等が入ったスープとパスタ。
期待せずに一口食べてみると、昨日より大分改善されているのがわかった。
「…おいしいかしら?」
「ああ。うまいよ」
恐らく嵐珠も不味いと感じ色々改良したのだろう。しかし、改良されてようがなにされていようが瑠和の返答は変わらない。変えるつもりもない。練習に全力でくらいついていくのも同じで、すべては嵐珠に大切なことを伝えるための努力だ。
夕食を終えた瑠和は寝室へと向かい、ベッドに倒れこむ。普段あまり動いていないので急なトレーニングは流石に疲れたのだ。そのまま眠りへと誘われそうなとき、瑠和のスマホに電話がかかる。
「…?」
電話をかけてきたのは果林だった。いったいどうしたのだろうと電話に出る。
「はい、もしもし」
『もしもし?悪いわねこんな夜更けに』
「いいえ。どうしました?ひょっとして迷子ですか?」
『あら憎たらしい。そんな口叩けるなら問題はないみたいね』
「俺の行動チェックですか?」
『それもあるんだけど………ちょっと、相談したくて』
果林が瑠和に相談するなんて珍しいと感じた。彼女のプライドの高さや瑠和自身がよく相談する側だったせいもあるだろう。
「どうしました?」
『この間、愛の昔の知り合いに会ってきたんだけど…』
果林は愛の昔の知り合いである美里という人物に会ってきたらしい。だが果林から見てその美里という人物は何か無理をしているように見え、尚且つ愛もそれに気づいてどうすればいいか悩んでいる様子だったという。
「…そんなことが」
自分がいない間にいろいろあったらしいと瑠和は思った。
『あなたは、どうしたほうがいいと思う?』
「………らしくないですね。果林さんならそういうの人と相談する前にズバッと言いそうなのに」
『それ、無神経って言ってない?』
「悪く言えばそうかもしれませんが、人が口に出しにくいことを言ってくれる人っていうのは貴重なんですよ。同好会のみんなも、俺も、アナタに背中を押された」
(うんざりなのよ!!!そんなナヨナヨなあなたも!!!彼方の…………彼方の代わりの女だって思われることも!!!!!!)
あの日果林がそういう性格で、勇気を出してくれたから今、彼方と恋人という関係になれたのだ。
「だから、自信もって伝えてください。果林さんの思ってること。それが今、愛に一番必要なことだと思います」
『………そうね。私らしくなかったかもしれないわ。ありがとう』
「いえ」
『あなたも早く帰ってきなさい?彼方が寂しそうだったわよ』
「はは、痛いほど感じてます」
瑠和は笑いながら首元を撫でた。
『じゃあ、おやすみなさい。愛のことは私たちで何とかするから、アナタはアナタのやるべきことをやりなさい』
「ええ。ありがとうございます。おやすみなさい」
続く
すこ~しアダルティなテイストで仕上げてます。
同人誌読んでてなんか悔しかったので。本当に書きたいストーリーはあと2話くらい後から始まるのでご期待ください。
こんな展開ほしい!誰かを活躍させてほしい!等要望ございましたら感想以外にも作者にメッセージを送るシステムがあるので、できる限りで要望に応えたいなと思います。もちろん感想も大募集中です。