彼方の近衛   作:瑠和

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だいぶ遅くなってすいません。かなーり展開に悩んでました。

読む人によってはこの先少し痛いと感じる展開があるかもしれませんが、まぁ間話と思って温かい目で見守っていただきたいと思います。
合う合わないが激しいと思うのでなんなら10話までとばしてもいいかもしれません

しかし、スーパースターも面白いですね。オニナッツ悪い子じゃないとは思ってましたが本当にいいキャラだと思いました。自分の中でのオニナッツの株爆あがり中です。


第七話 ノイズ♪存在意義

果林と愛がユニットを組んでライブを行った。先日の夜、瑠和が伝えたように果林が思ったことを伝えた結果だった。その話を聞いて瑠和も素直にうれしくなった。しかし、しばらくしてからなぜか妙な気分になった。その気持ちの原因は何かはわからなかった。

 

「どうしたの?瑠和、集中できてないわよ」

 

「………すまない。調子が良くないようだ」

 

「………今日はここまでにしましょ、調子悪いのに続けてもむしろ悪影響だわ」

 

「悪いな」

 

その日の練習は中断され、瑠和はソファに横になった。この生活を初めて一週間。流石に疲れも溜まってくるころだった。そこに、普段よりは少し緊張の色が見える嵐珠が来た。

 

「ね、ねぇ瑠和」

 

「ん?」

 

「次の休みなんだけど………ここ、一緒に行かない!?日本に来た時から楽しみだったの!」

 

そう言って嵐珠が見せてきたスマホの画面にはスクールアイドル記念館の案内が表示されていた。まるで遠足の日のことを親に報告するような瞳の嵐珠から見えたのは、期待、興奮、そして恐怖の色。

 

「……ああ、いいぜ」

 

「本当!?ありがとう!」

 

瑠和は応える。

 

嵐珠の望む回答を。

 

承諾してやると嵐珠からは恐怖の色は消えた。早速嵐珠は部屋に行き明日の準備を始める。

 

そんな嵐珠を見ながら楽しそうなところなので全て終わったら改めて彼方と一緒にデートで行こうと瑠和は思っていた。しかし、そんな中でふと同好会にあるもう一つのカップルを思い出す。

 

(そういや………あいつはどうしてんだろうな)

 

 

 

―東雲学院―

 

 

 

「1、2、3、4!1、2、3、4!遥さん!センターですからもっと大きく!クリスティーナさん!少し遅れ気味です!1、2、3、4!ラスト!ポーズ!!」

 

ここは東雲学院のスクールアイドル部の練習場所。ラブライブとスクールアイドルフェスティバルが控えている東雲にとっては今が踏ん張りどころだった。普段より過酷で多忙な練習期間が続いていた。

 

「…………いい感じです。本日はここまでにしましょう。皆さん、気を付けて帰ってください」

 

「ありがとうございましたー!」

 

多忙なのはそのスクールアイドルをまとめる立場にある後川現直も同じだった。多くの過程を経てようやく上原歩夢に出会えたのだが、デートに行く暇もなかった。おまけに追い打ちをかけるように幼少期によく出ていた頭痛が再発していた。

 

そんな現直を見かねて遥が尋ねる。

 

「現直さん………その、大丈夫ですか?」

 

「何がですか?」

 

「最近、歩夢さんと会えてないって聞きましたけど…」

 

「僕は大丈夫です。これもありますし」

 

そう言って現直は写真が入った手帳を出した。二人でツーショットを撮って半分にした写真を入れた手帳だ。それがあれば寂しくはないということだろう。

 

「でも、なんだか最近体調悪そうですよ?」

 

「………持病みたいなものですから、お気になさらず」

 

「そうはいっても頑張りすぎだよ」

 

「かさねさん」

 

「明日の土曜練習は私たちだけでもできるし、たまには休みなさいよ」

 

「そんなわけには…」

 

「あんまり彼女放っておくと、他の男に取られるわよ」

 

かさねに戒められた時、現直の頭がチクリと痛む。

 

「……………わかりました、ではせっかくですし明日はお休みをいただきます」

 

部員の思いやりで現直には急遽休みができた。現直から歩夢にアプローチすることは少なかったが今回だけは思い切って歩夢をショッピングから始まり、夜景のディナーで終わるデートプランに誘うことにした。

 

夜、現直はさっそく歩夢をデートに誘ってみる。丁寧な文章でメッセージを送り、正座で待機した。

 

「………」

 

返事を待つこと数分、現直のスマホに歩夢からの返信が届く。現直は慌ててスマホを取り、メッセージを確認した。

 

「…よしっ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

―有明駅―

 

 

 

「おはよー」

 

「おはようございます、歩夢さん」

 

朝の9時、有明駅に歩夢と現直は集合した。これからお台場を順番に巡っていく予定だ。とりあえずダイバーシティへ向かうべく有明駅から虹ヶ咲学園前駅に向かう。

 

「現直君から誘ってくれるって珍しいね」

 

「歩夢さんには寂しい思いをさせてますから。せめてもの償いです」

 

「そんな、別にいいのに」

 

他愛ない話をしながら階段を下りていると、先の道に高咲侑が歩いているのが見えた。

 

「あれは……」

 

「どうしたの………あれ?侑ちゃん?」

 

「どこかへお出かけでしょうか……」

 

侑が歩いていく先をなんとなしに見守っていると、侑はしずくと待ち合わせをしていた。どうやら二人でどこかへ出かけるらしい。そのことに少し動揺を覚えながら歩夢は侑を見つめていた。

 

「………」

 

「歩夢さん?」

 

侑を見つめたまま立ち止まってしまった歩夢に声をかける。

 

「え!?あ、ご、ごめんね!行こうか!」

 

歩夢は慌てて反応し、再び歩き出そうとした。そんな歩夢を見て現直は少し考える。

 

「………侑さんの後、追いかけてみますか?」

 

「い、いいよ!せっかく二人きりのデートなんだし!」

 

そうは言うものの、歩夢が侑のことを気にしているのは誰の目にも明らかだった。現直はやれやれと歩夢の腕を掴み、歩き出す。

 

「良いじゃないですか、探偵みたいで面白そうですし、行ってみましょう!」

 

「ちょ、現直くん!?」

 

そしてそのまま侑の追跡を開始してしまった。歩夢が侑の姿を目にした瞬間から、デートプランが崩れてしまったことに現直は何となく気づいていた。そしてまた、頭痛がした。

 

 

 

―ホーム―

 

 

 

駅のホームに来た侑としずくを歩夢と現直は近くの柱の影から観察する。

 

「二人きりでどこに行くんでしょうね」

 

「うん………」

 

「おや?現直さんに歩夢さん?」

 

「せつ菜さん」

 

そんな怪しい行動をしていた二人の背後にせつ菜が現れた。

 

「どうしたんですか?こんなところで」

 

「せつ菜さん、ちょっと失礼。歩夢さん、お二人から目を離さない様にお願いします」」

 

「う、うん」

 

現直は歩夢に二人の監視を任せ、はみ出して侑たちにバレてしまいそうな位置にいるせつ菜を、そっと柱の影に隠す。柱の影で現直は事情を説明した。

 

「はぁなるほど………」

 

「なので、少しだけ静かにしていてください」

 

「別にそれは構いませんが……………現直さんはそれでいいんですか?」

 

「え?」

 

「せっかくお久しぶりのデートでしたのに……」

 

現直はちらりと二人の様子を見ている歩夢を見る。その横顔からさっきは別にいいと言っていたもののやはり侑のことが気になっているのだろうとわかった。

 

「良いんです。僕は侑さんが大好きな歩夢さんが大好きなんです」

 

また頭痛がした。

 

「そうですか……」

 

そうこうしているうちに電車が到着し、しずくと侑はその電車に乗車する。

 

「現直君!せつ菜ちゃん!行こう!」

 

「あ、はい!」

 

「え?は、はい!」

 

なぜか成り行きでせつ菜まで尾行について行くことになった。

 

電車が到着したのはスクールアイドル記念館がある街。開館前に作られていた列にしずくと侑は並んでいった。どうやらここに用事があるらしい。

 

「…こんなところに二人で何しに?」

 

「スクールアイドル記念館………」

 

二人の動向を探っていると、せつ菜と歩夢の近くを走っていた少女が転びかける。それを見逃さなかったせつ菜と歩夢はとっさに身体が動き、少女を助ける。

 

「気を付けてね」

 

「ありがとうお姉ちゃん」

 

少女を助けて一安心したのもつかの間、背後にいつのまにやらしずくと侑がいた。

 

「あれ?歩夢?」

 

「せつ菜さんに現直さんも」

 

「あ………」

 

騒いでいたら見つかってしまった。歩夢がとっさにせつ菜がヒーローショーを観たいと誘ってきたのでデートがてら一緒に来たことにした。

 

「そうだったんだ偶然だね」

 

「そうそう偶然……ねぇ現直君」

 

「はい、偶然です」

 

歩夢が言ったことを嘘にするわけにもいかず五人はヒーローショーを見に行き、そのまま侑がもらってきた整理券の時間になるまで遊園地で遊ぶことにした。

 

様々なアトラクションを遊ぶ間、せつ菜は現直の横顔に見えるどこか浮かない表情を気にしていた。

 

時間になり、侑が取っていた整理券で現直も含め全員記念館に入ることができた。しばらくは固まって展示を見ていたが、次第にばらけていき、歩夢がお手洗いに行ったタイミングでせつ菜は思い切って現直に尋ねてみることにした。

 

「現直さん、少しいいですか?」

 

「せつ菜さん。なんでしょう?」

 

「その………ずっと浮かない顔をされていますので………私でよければ相談に乗りますよ!」

 

せつ菜の言葉に現直は少し驚いたような顔をした。

 

「…顔に出てましたか。いけませんね。歩夢さんと一緒にいられてるのに………暗い顔をしてちゃ」

 

「何かあったんですか?」

 

「…………最近、自分の存在意義に悩んでいまして」

 

「え?」

 

「僕は歩夢さんと再会することが人生の目標のようなところがありました。それが果たされ、恋仲にまでなって、次は何するべきなのか…………思い悩んでいる部分があるんです」

 

「………」

 

現直は生まれた時から生を否定される立場にいた。それ故に歩夢との、人生の恩人との再会を超えて恋仲になったことで生きる目標というか、やることを見失っていたのだ。

 

「でも、歩夢さんとデートするとか、恋人らしいことができる、色々これからじゃないですか!」

 

「………歩夢さんの幸せが僕の幸せです。そして………歩夢さんの幸せには侑さんが必要なんです」

 

「現直さん…」

 

何となく言わんとしていることがせつ菜に伝わった。歩夢を支えるだとか、そういう歩夢を幸せにするための役割には侑という存在がいて、現直には居場所がないようなものなのだ。だが、現直としては侑の居場所を奪いたいわけではない。

 

なぜなら、侑が好きな歩夢も好きだからだ。

 

「歩夢さんが僕に好意を、恋心を寄せてくれていることはわかります。だけど、彼女は全部を愛すると決めた。だから、僕だけ見るなんてこともできない……。そして僕は歩夢さんの隣にいることに対する大義や夢がない…」

 

そう言って現直は展示されているスクールアイドルの写真を見る。

 

「かつて輝いたこの人たちがラブライブ優勝という到達点を目指したのなら、僕は歩夢さんのそばにいることを到達点でした。だけど、ただ隣にいるだけじゃカカシと変わらない…だから、その先が見えないんです」

 

「…」

 

ラブライブ関連のことだったらまだ何となくアドバイスできると思い、話しかけてみたが思ったより深刻な悩みの様子だった。何なら生死に関わるであろう問題に発展しそうなくらいには難しいものだった。

 

そこに、お手洗いにいっていた歩夢が戻ってくる。

 

「現直くーん、お待たせ。あ、せつ菜ちゃんも一緒だったんだ」

 

「は、はい」

 

「ええ、ラブライブ優勝校について。僕らもスクールアイドルフェスティバルを終えたらラブライブ予選ですから」

 

「頑張ってね、現直君!」

 

「はい!」

 

そうやって歩夢と話している現直はとても良い笑顔で、それ以上を求めている様には見えなかった。だが、そのままではいけないことを現直と誰もが知っていたからこその悩みだったのだろうとせつ菜は思う。

 

「向こうでグッズの販売があったから一緒に行こう♪」

 

「はい、喜んで」

 

「せつ菜ちゃんも!」

 

「あ………はい!そうですね!」

 

グッズ売り場に到着するとさっそく侑がトキメキを全開にしてはしゃぐ。そんな侑が暴走しすぎないように歩夢が戒めた。

 

「侑ちゃん、買いすぎ注意だよ。ほら、あの人みたいに」

 

歩夢が指さした先にはコミケ帰りのように荷物を山のように買い込んだ格好の女性がいた。

 

「是不是买太多了呢?」

 

しかしその女性が発した一言とよく見たら見覚えのある外見であることに全員が気づいた。

 

「アレは……」

 

「嵐珠さん!?」

 

「なんだ、みんなも来てたのか」

 

さらに背後から聞き覚えのある声がした。振りかえるとそこには荷物を大量に持っている瑠和がいた。

 

「瑠和さんまで!」

 

 

 

―カフェ―

 

 

 

歩夢ら五人と嵐珠と瑠和は近くのカフェまで移動した。歩夢らと嵐珠の六人は丸テーブルに、瑠和は人数の関係で別のテーブルに座って六人の会話に耳を傾ける。

 

「じゃあ、アナタは歩夢のボーイフレンドなのね」

 

「はい、お噂はかねがね。稀代のスクールアイドルと会えて光栄です。鐘嵐珠さん」

 

相変わらず人当たりのいい性格の現直はいい感じに嵐珠の機嫌を取る。

 

「あら、うれしいこと言ってくれるじゃない。よろしくね」

 

「じゃあ今日は歩夢とデート?それともハーレムでも築いているのかしら?」

 

「まさか、たまたま皆さんと合流しただけで。それにしてもすごかったですねスクールアイドル展」

 

変な方向に持っていかれそうになったので現直は軽く話を逸らす。その反らした話に侑が食いつく。

 

「そうだよね!同好会のみんなも誘ってまた来たいね!」

 

侑の発言に、嵐珠の色が変わったのを瑠和が感づいた。

 

「相変わらずなのね、アナタ」

 

「え?」

 

「そうやって遊んでる暇あるって聞いてるの。音楽家の成績、どうなのよ」

 

「ミアちゃんから聞いたの?……まぁ、前よりは上がってるけど、ギリギリは、ギリギリかなぁ」

 

「やっぱりそうなのね、アタシ、中途半端なのって見ていてイライラするの。いい加減、同好会の活動に付き合うのなんかやめて、もっと自分の夢に向き合ったら?」

 

「勝手なこと、言わないで」

 

「そうですよ、侑さんは…」

 

「そうやって甘やかすから良くないのよ。同好会で夢を叶える。そう言っていたのに、今のあなたは同好会に自分の夢を重ね合わせているだけよ。あなたはそれで満たされたとしても、何も生み出してないわ」

 

嵐珠の意見は的を得ていた。嵐珠の強みの一つだ。人を見る目があると言えばいいのか、物事の根幹を見抜く力があるのだ。瑠和をスクールアイドルに誘ったりしたのもそれがあったからだ。

 

だが正論は時に反感を買う。一触即発しそうな雰囲気ではあったが瑠和はあえて静観していた。

 

「………ありがとう。嵐珠ちゃんは優しいんだね。あの時、嵐珠ちゃんに言ってもらえたから。今はまだ全然だけど、私結構前向きに頑張れてるんだ。だから、もし気にしてくれてるんなら……もう少しだけ、見ててくれないかな」

 

侑はその場で最も正解の回答をした。痛いところを突かれ、激昂するわけでも落ち込み、涙するわけでもない。相手の言葉を受け止め、それでいてこれからどうするかを示した。嵐珠にとって経験のないことだった。

 

「だ、誰が気にしてるなんて言ったのよ!もういいわ。瑠和、行きましょ」

 

「ああ………」

 

瑠和は立ちあがり、嵐珠が先に歩いていくのを確認してから全員のテーブルに行って請求書を取った。

 

「悪く思わないでくれ。あれが鐘嵐珠ってヤツなんだ」

 

「……でも…」

 

どこか飲み込めなさそうな歩夢に対し、瑠和は軽く微笑んだ。

 

「さっき、侑に小言を言っていた時、嵐珠に見えたのはイラつきでも、悪意でもない。「心配」の色だった。それだけは信じてくれ」

 

「瑠和ー!何やってるのー!?」

 

「すぐに行くよ!……じゃあな」

 

瑠和はそう言って全員分の料金を奢って去っていった。

 

取り残された五人の中で、暗い顔をしてる二人がいた。しずくと現直だった。

 

「…………ごめんなさい。僕もう、帰ります」

 

「現直君?」

 

「少し体調が優れなくて………ごめんなさい歩夢さん」

 

「ううん、気にしないで。私の方こそ………その、ごめんね?」

 

「いえ…お気になさらず」

 

現直は逃げるようにその場を立ち去って行った。

 

(今のあなたは同好会に自分の夢を重ね合わせているだけよ。あなたはそれで満たされたとしても、何も生み出してないわ)

 

嵐珠の言葉が現直の胸に突き刺さる。侑に向けられたはずの言葉なのにまるで自分に向けられた言葉のようだった。

 

歩夢を愛し、歩夢の幸せを望むだけの自分は何も生み出していない。

 

自分は、存在価値がない。

 

その事を意識した瞬間現直の頭が激しく痛む。

 

「あ………ぐ……あぁぁぁ!」

 

頭を押さえ、現直はその場にひざまずく。視界が歪み、意識が遠退くのを感じたのが最後、現直は気を失った。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「じゃあ、三人でユニットを組むことにしたんだね~」

 

休み明け、現直が去ってから色々あってせつ菜、歩夢、しずくの三人でユニットを組むことになった。そのことをたまたま部室に一人きりだった彼方にまずは報告する。

 

「はい!この調子でスクールアイドルフェスティバルに向けて頑張りましょう!」

 

せつ菜はいつも通り元気だったが、内心では途中で帰ってしまった現直のことを心配していた。それはしずくも、そして彼女である歩夢もそうだった。

 

「………ユニット組むことにしたのはめでたいけど、なんだかみんな浮かない顔をしてるねぇ」

 

いつも通り枕を机に置き、ほぼうつ伏せで話を聞いていた彼方が鋭い指摘をした。

 

「え!?」

 

「彼方ちゃん結構みんなのこと見てるからねぇ。それにぃ、そういうの気づける瑠和君が戻ってくるまで、相談くらいなら乗るよぉ?」

 

「………ありがとうございます。実は……この間…………そのぉ、現直君とデートをしてまして……それでたまたま……侑ちゃんとしずくちゃんと合流しちゃったんですよね、ね?せつ菜ちゃん?」

 

「え?あ、そう!そうですね!私のお願いを聞いてくださったんです!」

 

一応全部話すのが大切だとは思うが、尾行をしていたことをばらすわけにもいかず、とりあえずとっさについた嘘の設定のまま彼方に先日あったことを話した。

 

「そういえば遥ちゃんも現直君のこと心配してたなぁ。何かあったのかもねぇ」

 

「そうなんですか………じゃあちょっと遥ちゃんにも聞いてみてもいいですか?現直君のこと」

 

「どうぞどうぞ~」

 

歩夢は遥に電話をかけてみる。

 

『もしもし歩夢さん?よかったぁ~ちょうどこっちから連絡入れようとしてたんです』

 

「そうなの?ひょっとして現直君のこと?」

 

『そうなんです!実は今日現直さんが学校を無断欠席していて!同級生の子に聞いたら一昨日から家にも帰ってないって!』

 

「ええ!?」

 

一昨日といえばスクールアイドル記念館に行った日だ。つまり現直はこの間歩夢たちと別れた後完全に消息を絶っているということになる。歩夢は慌てて彼方に話した話と同じ話を遥にも聞かせた。

 

『そうだったんですか………では、歩夢さんも知らないんですね…』

 

「うん、ごめんね………」

 

『いえ…何か事件に巻き込まれていなければいいんですが…』

 

「心配ですね……」

 

「そうですね…………優しい現直さんの性格が裏目に出てなければいいんですが」

 

電話越しにだが現直のことはすぐに彼方たちにも共有される。その時、同好会の扉が勢いよく開かれた。

 

最初は誰か同好会のメンバーがやってきたのかと思ったがそれは違った。最初に入ってきた人物を視認したのは彼方だったが、だらけた姿勢から立ち上がりそうな勢いで姿勢を起こす。

 

そんな彼方の反応に驚いたしずくとせつ菜が同時に振り返り、驚愕する。最後に電話で遥と話しながらだったので反応が遅れた歩夢が振り返ると、そこには現直がいた。

 

しかしいつもの現直ではない。普段は暑苦しいんじゃないかっていうくらいきっちり着こなされた制服は着崩され、まっすぐな姿勢も横に傾くような気だるげな姿勢になっている。

 

「よぉ、この学校広いから探すのにずいぶん手間かかっちまったけど……ようやく会えたなぁ、歩夢」

 

言葉遣いまでおかしくなった現直に驚愕し、歩夢はスマホをその場に落とす。

 

『あれ?歩夢さん?もしもし!?』

 

「あ、現直君?」

 

「あ?なんだそりゃ。まぁいいや。やっと見つけた。来てくれよ。歩夢」

 

そう言って現直は歩夢の手を掴み立ち上がらせる。

 

「え、ちょ、ちょっと!行くってどこに!?それに、昨日はどこにいたの!?」

 

「いいから来いよ。俺の家に案内するから」

 

「待ってください!」

 

慌てて髪留めを外し、眼鏡を付けた生徒会長モードのせつ菜が現直の前に立ちはだかる。

 

「いくら現直さんとはいえ、無断での校内への入場は生徒会長として見逃せません!それに、家にも帰っていないって……」

 

「チッ」

 

目の前に立ちはだかったせつ菜に対し、現直は小さく舌打ちをして表情を曇らせる。そして、現直はせつ菜の胸倉を掴み、そのままソファに投げた。

 

「きゃぁ!」

 

「せつ菜ちゃん!」

 

「せつ菜さん!」

 

しずくと彼方がせつ菜に駆け寄る。幸い怪我はない様だった。

 

「邪魔だ。ガキ」

 

「も、もうやめて!全然現直君らしくないよ!いったいどうしちゃったの!?」

 

歩夢が現直の腕を掴んで制止させようとする。しかし現直は言ってる意味が分からないというような表情をした。

 

「歩夢、さっきから現直現直って何のことだ?俺のこと忘れちまったのか?」

 

「え?」

 

「俺は……現直じゃなくて………シノノメ リクだ」

 

「ええ?」

 

それは、季節の変わり目に吹く風に含まれる特徴的な香りのように、突然に、そして再会を思い出させるようにやってきた出会いだった。

 

 

 

続く




アンケート取ってます。よかったら答えていただけると幸いです。(終了しました)

最新話の終盤の展開について

  • シリアス多め
  • ラブライブらしく
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